GOMISTATION

足が絡まっても、踊り続けて

さて、今回は上妻晋作作画について(カミツマとは読みません、コウズマと読みます)。上妻作画、特にエフェクトは、ジャンル分けできないほど個性的である。とにかく、タイミングがとても独特である点が最大の魅力だ。その点に注目して読んでもらいたい。


★神撃のバハムート VIRGIN SOUL 01話(TV/2015)


辺りを伺う龍と煙
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ちょうど半分くらいの瞬間に注目。煙がいったん、その場で停滞している。ただ単純に、煙が一定の動きをするのではなく、空気を考慮した結果、こうなっていると思う。

煙/爆発のディテール
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煙のディテールは、たいていカゲ1色。煙表面において、大きくしたり小さくしたり、また煙本体と連動させながら動かすことで、煙の動きを表す。炎/爆発時は、カゲとハイライトをそれぞれ使うが、ハイライトに重きを置いている。



龍の立ち上がりと建物の崩壊 ★★
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上妻作画は、どうにも言葉にしにくいんですが、やはり時々「止まる/停滞する」。このカットにおいてもそれは顕著に現れていて、建物が崩れた瞬間、龍が口を開けた瞬間に少し止まって/滞留している。とにかく、タイミングがとても独特と思ってもらえれば良い。建物が崩れた後の微妙な間も、地に足が着かない感じの不安定さがある。これで、単純な絵にならないようにしている。




伸びる炎ブレス ★
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炎の発生と消滅のタイミングに注目。色は2色+透過光ですかね。上妻作画は、主に球形のフォルムを多用する傾向にある。球形フォルムによって、炎を形どった後、色を白→黄→赤へと変化させる。その変化もパターン化されておらず、「どの瞬間に最も高温であるか」を念頭に作画されている。



炎ブレス2
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こちらも同じく。球形を2層に分けて、エフェクトを展開している。前方に透過光で、オレンジの方が後方ですね。消滅するのは、透過光の方が速くて理に適っている。しかし、このタイミング、どう説明したものか…。これだけスッパリと消滅する炎って中々ないのだ、というのも、たいがいは違和感が生じたり、ぎこちなく見えてしまうため。それを違和感なく、やり遂げている。




空中炎ぶわあ ★★
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あとは、こういった風にロール状に色を変化させつつ、炎を表現する場合もある。それぞれ違う速度で落下していくのが分かると思う。やっぱり上手いなあ。



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スミアを映してから右PAN。これも同様に。右PANしてからの外炎のフォルムも柔らかい。上妻作画というのは、球形の持つ「柔らかさ」と「瞬間さ」を上手く利用しているのかも?



とにもかくにも、独特なタイミングが上妻作画の最大の魅力だ。これは誰にも、模倣することができないと言い切っていい。そういうレベルのタイミングのセンスが上妻作画にはある。

黒田、野中が原画参加とあれば、記事にしないわけにはいきません。黒田結花は作画監督も兼任、他には三木達也、北川隆之などもクレジット。



たまちゃん攻略戦:三木作画(※推測)
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中央部に膨らんだ煙を集める。カゲは基本的に上下に分けて描き、それを動かすことで立体感を出す。この辺が三木煙の特徴かなあと思っている。


たまちゃん攻略戦、具体的に言うと、たまちゃんと組み合ってからは三木さんが多くやってると思う。この辺ですね。

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水滴とタイミングが上手かったので。



野中はどこだろうと見直しましたが、ぶっちゃけさっぱり分からん。北川さんもいるし、まあ野中っぽいというよりは上手いところで探しました。


ナナチてくてく:野中作画(※推測)
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おしりフリフリ/耳フリフリに注目。これで重心の移動を示す。野中なら、ナナチがのけぞった時にもうちょっとハッチャケそうな感じがする。


ご飯をよそうナナチ:?
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これバリ上手い。よそう前にちょっと垂れるのを切ってるじゃないですか。こういう細かい芝居はやっぱいいっすね。



あとは完全に趣味ですが、このワイヤーも良かった。

ワイヤーばしゅーん
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いやあ、これはレイアウトが上手いですねえ。画面に空間を感じるように設計されている。




さて本題の黒田結花ですが、原画はほぼやっていないかも。作監修正がメインかもしれない。やっているならば、たまちゃん攻略戦が終わった後の水蒸気あたりかな。

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この辺は黒田煙っぽいです。フォルムも、内部線を重視するカゲ付けも黒田作画の特徴。僕は彼女は素晴らしいエフェクトアーティストだと確信しているので、もっとエフェクトを書いて欲しいですねえ。

「密着マルチ」の技法については、よく説明されますが、効果や魅力はあまり語られない。そして、言葉が何となくわかりにくい。よって、密着マルチの面白さが伝わりにくい。つうか、俺もよく分かってなかった。

まあ、ちょっと具体例を見ましょう。


★神撃のバハムート GENESIS/ED(TV/2014)
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山本沙代コンテ。多くの植物を通り抜けた先に、横たわることで神秘さを出す。植物の動きに注目されたい。それぞれ微妙に速度が異なって、多層感を出してますよね。


こういった画を見て多くの人が思う/抱くのは、「(密着マルチを使うことで)どこらへんが画期的で面白いのか?」ということだと思うんですよ。



<密着マルチの3段階>

1、目的:「運動視差」を利用して、奥行きを表現するため

2、技法:それぞれ異なった速度で、それぞれの素材を引く

3、効果:平面なはずのアニメに奥行が感じられる

現時点では「ほーん」ぐらいの気持ちでいてください。まず、運動視差ですが、これは映像を見てもらった方が速いと思う。


・新幹線からの車窓映像(引用元
 

カメラに近い物体はヒュンヒュンと速いスピードで動き、遠くなればなるほど、ゆっくりと動く。これが「運動視差」です。新幹線とか電車乗ると、よくわかりますよね。あのビルあんま動かないけど、線路内の柵はめっちゃ速く動くわ~みたいな。



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現実では、ごくごく当たり前の事ですが、アニメーションの世界では、これを表現するのが大変に困難だった。なぜかというと、近くと遠くで、素材(ミッ◯ーや、木、柵など)を引く速度をそれぞれ変える必要があったため。アニメーション黎明期は、図1のような撮影台でアニメを作っていました。


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(図1:撮影台の一例)

この撮影台にも、素材を引く速度を調整する装置(スライド装置)はありました。しかし、この撮影台は一つの速度しか作れない。これでは、遠近で異なった速度から生まれる、運動視差が描写できない。結果として、画面の奥行きを表現することは非常に困難なままでした。

だけど、アニメーションに奥行が欲しい。なんとかして、立体を感じる元である、運動視差をアニメに持ち込みたい。そう思った先人は、マルチプレーン・カメラというものを発明します。このマルチプレーン・カメラの変わったところは、撮影台の多さです。素材を載せる台が、一つではなく、複数あったんですね。基本は4台でしたが、「ファンタジア」では、最大なんと9台も使われた。スライド装置も各台にあったので、それぞれ異なる速度で、複数の素材を引くことが可能になった。


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これは練馬の博物館に飾ってある、マルチプレーン・カメラです。複数の撮影台のおかげで、「近くの木は速く動かして、遠くのお城はゆっくり動かそう」という事が可能になった。マルチプレーン・カメラぱねえ、最強すぎる。これを使って、描かれた名シーンがこちら。



★白雪姫(劇場/1937)
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手前の樹木は速く動き、奥の木や霧の背景はゆっくり動いていますよね。で、平面であるはずのアニメに、なんと奥行が感じられる。こりゃすげえや、となって、こぞってどこの会社も使い始めます。しかし、そう長くはマルチプレーン・カメラの覇権は続かない。

「改良型が出たのかな?」と思われる方もいるかもしれない。いや違うんです。まず、こいつクソでかいからスタジオ内で場所を取ってしまう。そして、こいつ自体に高い金がかかる上に、樹木や家などの背景素材をこいつ専用にアレンジしなきゃいけない。つまり、コストが半端なくかかる。んで、こいつ全然、最強じゃねえや金食い虫が!ということで、使う会社はだんだんと減少していく。マルチプレーン・カメラくんかわいそう。


でも、やっぱり、アニメに奥行/立体感は欲しいわけです。贅沢だな。

どのような経路を通ったか不明ですが、ついに、一つの撮影台で、マルチプレーン・カメラの効果を再現することに成功しました。はい、そうです。これが「密着マルチ」です。大事なことなので、もう一度言います。マルチプレーン・カメラ効果の再現が、密着マルチです(被写界深度の件は割愛)。ちなみに、この呼び方は日本でのみ。

※撮影台については、こちらのサイト様がビジュアル的に分かりやすいので、参考にしてもらいたい。
★撮影台 http://www.da-tools.com/junk/cn25/camStand.html


なんで、「密着マルチ」と呼ぶのか?これは2つの説がある。

■1:「マルチ」プレーン・カメラ時代には、台ごとを「密着」させる必要があったから
■2:今は素材を「密着」させて、「マルチ」プレーン・カメラの効果を再現しているから

どっちかは不明。用語なんてそんなもんなんで、深く考えないでください。「土用の丑の日」だって、平賀源内がホラ吹いたようなもんでしょう。思ってるよりテキトーなんですよ、世の中って。





さて、目的と技法については分かってもらえたと思います。残るは魅力ですね。実際の作品で使われたものを通して、見ていきましょう。



★COPPELION 04話(TV/2013)★★
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雲book密着SL+建物Follow

以前紹介しましたが再度。やはりこれ素晴らしいんですよ。密着マルチによって、雲の大きさ/多層感を先に見せておいて、地上の主人公までカメラを引っ張ってくる。空や雲と主人公、戦闘機を一つのカットに収めている上に、最後には戦闘機と主人公を対比して見せる。



★神さまのいない日曜日 03話(TV/2013)
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泣いている少女の周りを墓標が回り込んでいく。少女の眼前を通過する墓標は、彼女の気持ちにお構いなしに世界が回っているということ。


★★
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墓標book5個ほどSL+逆方向にBGをSL

ロングショットから速くbookを引くことで、少女の孤独さを強調する。ここでも、遠い墓標と近い墓標では、速度に差があることに注目しながら見て欲しい。ボカシもいい。


密着マルチの基本は、奥行/立体感です。ただ、それから派生して、「神さまのいない日曜日」の情景描写や「COPPELION」のような大きさの対比表現もできる。使う人のセンスによって、表現の幅が広がっていく。それが面白いところです。ただ単に「奥行」だけという、単一な描写に留まらない。複数の素材を異なったスピードで引くだけで、少女の切ない感情が表現できるって素晴らしいと思うんですよ。


<参考文献>
アニメーション撮影台-練馬区
立体撮影2
撮影台

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