GOMIstation

2025-1

2014年04月

「老人Z」の監督などで、有名な北久保さんのaskで興味深い発言がありました。

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http://ask.fm/LawofGreen/answer/108172670159 


王立が1987で、AKIRAが1988なので可能性としてはある。

けど、庵野さんと本谷さんの交流って聞いたことないなあと。
ここで少し整理してみます。
 

■庵野サイド
ダイコンフィルム(1981-1984)→ガイナックス(1984-2006)→カラー(2006-)
          →グラビトン(?)

■本谷サイド
日アニ(1982-1984?)→アートランドⅢ(-1986?)→AIC(1987-1989)→GONZO(-1991?)
                      →D.A.S.T(?) →ゲーム業界

■両者参加作品
・「メガゾーン23(OVA/1985)」
・「真魔神伝バトルロイヤルハイスクール(OVA/1987)」 
・「王立宇宙軍 オネアミスの翼(劇場/1987)」
・「紅狼 HONG LANG(OVA/1993)」

これぐらい。
あんまり接点がないように感じます。しかし、「遺言」や「のーてんき通信」を読まれた人だとご存知だと思いますが、ガイナックスは一時期パソゲーの方に力を入れていたこともあるのです。(トップ以後とか)
まあ、これも両者の交流を証明するものではないので、なんとも言えませんが…
(※というか、そもそも交流が無くても、技法を確かめることはできるか…)

とりあえずは、「王立宇宙軍」の本谷パートでも探してみようかなあとか思ってます。
シロツグのバイクシーンだとか、列車の煙だとか色々候補はありますが、どれも確定には至ってないです。もうちょっと、特徴と照らし合わせてみます。



実際問題、Twitter始めてるんだし、本人に聞けば一番早いんでしょうけどね。
ナイーブな問題のような気がして、失礼じゃねえのかなあと。 
後、ボク超小心者なので… 

寄生生物が、人間を宿主にするという設定は昔からありまして。
そのパターンは、おおまかに二分することができます。

1つ目のパターンとしては、『宿主(人間)の姿形にそのまま、寄生し乗っ取る』というもの。
比較的、ホラーとSF要素が強い作品が散見されます。
このパターンの具体的な例は、「ボディ・スナッチャー」シリーズとか、「遊星からの物体X」とか、また日本の漫画でいくと、岩明均の代表作「寄生獣」とかが該当します。

宿主に寄生した別生命体は、元の宿主のフリをするというのが定番。

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(寄生獣 1巻より引用)


2つ目のパターンとしては、『宿主の体を乗っ取り、寄生生物個体の姿を発現させる』というものです。
まあ、要するに、寄生生物がクモのような生き物だとすると、人間の体を破壊して、クモになっちゃうってことですね。こっちは、比較的パニック映画が多いです。 題名は忘れたんですけど、ある洋画が一番印象に残っており、なおかつトラウマです。女の人の背中から、クモの足が生えるんですよ…怖すぎる。

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そして、本題のアニメ「ブラック・ブレット」ですが、後者のパターンの作品です。
「ガストレアウイルス」に感染してしまうと、化け物の姿(クモとか色々)の「ガストレア」に宿主が乗っ取られてしまうというものです。

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で、この幼女は「呪われた子供たち」の一人で、ガストレアウイルスを保菌しています。保菌していますが、抑制因子も持ってるので、ガストレアになることなく、超人的な力を得ることで「イニシエーター」として街を守る…という感じです。


建前はこうですが、実際には、一旦「呪われた子供」と知れると、差別的な対応をするに留まらず、小学生でさせも「敵」とみなします。これは、昔で言うと公害被害者への差別であったり、ハンセン病患者への差別と同じです。ハンセン病の方は、その病気の特性ゆえ、皮膚がただれたりします。それを見た人たちが、「自分にも感染するのではないか」という無知からくる恐怖心によって、薬品をドバドバ入れた風呂に患者を入れたりと、とんでもない差別にあっています。

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この「ブラック・ブレット」においても、その差別構造は同じで、「空気感染することなどあり得ない」と科学的に証明されていますが、実際にガストレア感染者の惨事を見ると、感情が理性を上回り、差別へとつながります。世の中にあふれる差別は、感情や根拠のない被害妄想によるものがほとんどです。

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主人公は、この差別や状態をどう解決していいか分かりません。ですので、2話のとき変態仮面から自分の葛藤をズバリ当てられ、何も言い返せなくなってしまいます。ここは、もうちょっと何か欲しかった。変態仮面の仲間になっても、いいぐらいの気持ちの寄り方だと思うんですよね。聖天子は何をするわけでもなく、キレイ事ばっかり言ってて現実を見てない。何のために戦ってるのかが、よく分かんないなら、一旦変態仮面の仲間になってもいいと思うんですよ。ガストレア退治はできるだろうし。その後で、しっかりと自分の気持ちが固まれば、元に戻っていいと思うんですけどね。まあ、原作読んでなくて言うのもアレですけど。

「ブラック・ブレット」自体の設定で真新しいモノはないんですが、コンパクトに1話で説明しててグッと引き寄せられました。情報はちょっと詰め込みすぎぐらいの感じの方が、楽しいです。



作画の方にいきましょう。

とにかく凄かったのは、1話。
オレンジCG。

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これは、結構良きものです。
ガストレアのCGもスゴいんですけど、エフェクトの方もそこそこ。
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ぬるぬる感さえ無くせば、もっと良くなると思ったりしてます。
それでなくても結構いいですけど。

昔どっかで、吉成兄の方は、「CGによるエフェクト作画の模索を進めている」みたいなモンを見たんですけど、これがそうなんですかね。これ見ちゃうと、エフェクトのCG化も進んでいきそうに思いますね。

2、3話のアクションは見事。野中ではないと思いますけど、上手い。
1話の野中パートは、多分食事シーンのどこかじゃないっすかね。
メンドイのでgifにはしませんが。

CGヤバイとばかり言ってきましたが、手書きの煙もやはり素晴らしいモノが多く。
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特に3話。エンジュが地面を蹴る時の煙とか、 ガストレアが倒れる時の煙とか、結構写実的で個人的には大満足。最近、煙や爆発はデフォルメ方面に振れてきてると思っていたんですけど、まだまだ写実で描きたい人がいて安心です。

後は、音響の話。
鷺巣(音楽)×野口(効果)という庵野作品コンビなのに、あんまり誰も触れないという謎。
2話の、変態仮面のバリアーをぶっ叩く時の音とか素晴らしいのに。


まあそんなとこです。 
機会があれば、4~6話でまとめてまた記事にするかも。 

エフェクトには興味を持つ人が少ないようなので、アクションの方を取り上げる作戦。

最近すごく話題なアニメーターの一人。

「ゆるゆり」 「きんいろモザイク」で、脚光を浴びる。
動画工房かと思ったら、JC出身で現在は不明という(フリーランスかも)。
基本的に、アクションアニメーター。 

中割が少ないのに、何故かぬるっとリアルな感じを表現したり、
ツメ方をきつくすることで、タイミングを誇張したり、画全体にダイナミックさを出したりしてる。

…と色々特徴を探しましたが、よく分かってない。
独特のタイミングを持っていて、どんなアニメーターか掴むのが難しいです。

完璧に金田系というタイミングの作画でもないし、どうだろうなあ。


後、野中正幸を調べる中で、この方のブログ記事が非常に興味深かったです。
スカスカした感じ - Mal d’archive 

作画に直接関係するわけではないですが、こういう見方もできるんだなあと。
アニメ作画と、全く違う他の文化を比べるってのは面白いもんですね。


■「問題児たちが異世界から来るそうですよ?(2013)」 #6

カメラを追い越していく、大胆な登場シーン
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中割り自体も少なく、ツメ方が効いている作画。
このツメによって、大胆に登場シーンを演出する。


待ちきれない様子と首振り
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髪の毛と、スカートの振れ方で慣性を表現。
ツメ方普通、もしくは若干後のような気が。
髪の毛の行って帰ってが、すごく上手い。


ぶん投げるぜ
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そこそこきつめのツメ方。
投げられる人が、どーんといきなり来る感じで画面に迫力が増す。



■「未確認で進行形(TV/2014)」 OP

黒板シーン1
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ここも中割り少なく。
その代わりに、行動が終わった後の動き(慣性による動き)を上手く描いてる。
特に後半のこの2枚が、上手い。

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黒板シーン2
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ふるふる手首の動きが上手い。
この2枚が、画面全体をまとめている感じ。

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今回はこれまで。
野中さんは、髪のリアクションとか、微細な表情の変化とか、服の揺れ方で、慣性を表現してるんじゃないのかなあと今は思ってます。だから、実は枚数を使わずリアルにやるという点では、うつのみやさんに近かったりするのかもしれない。 

まあ、アクション作画に関しては、個人的にまだまだ不勉強なところが多いので、誰か突っ込んでくれたら嬉しいなあと思ったりしとります。アクションムズイ。

まだまだ調べ中ですが。
ちょっと他にも、gifがあるので貼っとく。

破片と煙(AKIRAより)
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パイプの細かな動きと、破片の落ち方がいい。
大きな破片は早く、細かな破片はゆっくりと。
「王立」の打ち上げシーンを思い出すような、破片の動き。


割れるガラスの様子がこっちのガラスに映る(メガゾーンより)
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何か珍しいカットですよね。
ただガラスが割れる作画なら、「マクロスプラス」とかでもあったんですけど。
対面のガラスに、それが映るのは珍しい感じが。


風圧で割れるガラス(マクロスプラスより)
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本谷作画ではありませんが。
これまじまじ見ると、途中までYF-21を鏡像で描いて、次にはパッと実物で描いてる。

スナップショット - 703スナップショット - 704
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これ面白いなあ。
こういう風にやっても違和感ないので、アニメならではの表現ではないかと思います。


ここから、AKIRA本谷の原画の一部を見つけたので紹介。


ドーム崩壊のシーン
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影の付け方が美しい。
これ手前の方の煙は、分けて描いてないんですかね。
てっきり、セル別にして描いてると思ってた。

本谷さんがまさかまさかのTwitter開始ということで、少し紹介。

板野、庵野、増尾、村木などが、写実系エフェクターであるのはご存知だろう。このブログでも再三にわたって取り上げてきた。本谷さんも、そのカテゴリーに入る。しかも、煙に関しては、最も写実的で他の追随を許さない綿密、緻密なエフェクトアニメーションをするのが、本谷利明である。あくまで持論ですけど。

「AKIRA(劇場/1988)」の煙を見た時の驚きといったら、もう言葉では言い表せないぐらい。ゆったりとわずかながら動きつづける煙、煙の圧力で外れたパイプが暴れる様は、この上なく感動した。写実を極めたアニメーターだと思っている。しかし、「AKIRA」以降は、「グランディア(1997)」 など、ゲーム業界で活躍することが多くなり、アニメにはほとんど参加しなくなっていた。AKIRA組には、こういった人が多く、本谷さんも例に漏れず参加作品は少ない。しかし、「ゼクスイグニッション(TV/2014)」で、久々にTVアニメで原画を4話も担当し、往年のファンを驚かせた。主な代表作は、「AKIRA」「王立宇宙軍」「真魔神伝」。


クリエーターズファイル第123回 野田弘一
http://web.archive.org/web/20080102163818/http://www.gpara.com/contents/creator/bn_123.htm

これは本谷さんのインタビューではなく、 「グランディア」の設定デザイン等を務めた野田弘一さんのインタビュー記事。数年前には、本谷さんの記事も見れていたが、今はすでに消されてる様子。せめてキャッシュが残っていればなあ…

<ついき 2014/04/21>(大匙屋さん提供。アリガトウ。)
クリエーターズファイル第122回 本谷利明
http://web.archive.org/web/20040304051934/http://www.gpara.com/contents/creator/bn_122.htm

というわけで、本谷さんのインタビュー記事。
プログラムに興味があるというのは、凄く意外な印象を受ける。


さて、本題の本谷作画を時系列で見ていこう。


■「メガゾーン23 PART II 秘密く・だ・さ・い(OVA/1985)」

爆発とぶわっと煙
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ここはタイミングも優れているばかりでなく、その後の煙の動かし方もいい。
爆風の流れに沿って、動いている。
また、爆風によって散らかる紙片、破壊される看板の細かさ、飛び散るガラスの破片。
これらのディテールによって、画面の写実性はますます高まる。


爆風からの建物破壊
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街路樹と手前の自転車の動きで、爆風を描写し、後から煙がついてくる。
「さくらや」の看板の崩れ方も、ぐしゃあと崩れていき非常にリアル。
倒れる信号機もまた、ここでは爆風の表現に効果的だ。


■「ヘル・ターゲット(OVA/1987)」

衛星ビームからの本谷爆発1
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透過光が少し主張しすぎて、肝心の爆発が見えづらい。
爆発のリアルな回転が、上手い。
爆発本体のディテールは少なめ。ギザギザの影のようなものを入れることが多い。


本谷爆発2
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画面が右に動きながらの爆発。難しいカット。
動画は、なめらかな感じ。そこまでタイミングは誇張してない。
要所要所に透過光を入れて、リアリティを高めている。


本谷爆発3&煙
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ゆっくりと爆発している様子。核爆発を望遠で眺めた感じ。
やっぱ、「ナウシカ庵野爆発」を思い出してしまう。
当時、本谷さんと庵野さんの交流はあったんでしょうか。


消え行く衛星描写
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ここは確定ではないけど、多分本谷さんだと思う。
これが、また核爆発っぽい。
煙を出しつつ、壊れていくのが核爆発の現象として見られます。


参考資料(リファレンス):核実験の映像集




■「AKIRA(劇場/1988)」

ドーム出現の煙
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本谷煙の基本は、2色で煙はゆっくりと滑らかに広がる。
この場合は、少し尖りつつ広がっているのが分かる。


ドーム出現時の崩壊シーン
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地面の崩壊スピードと破片がリアル。
画面右側の装甲車の動きが、崩れる地面と合わさってすごい。


AKIRAドーム出現前のパイプ煙1
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AKIRA本谷といえば、やはりパイプが外せない。
押し出された煙によって暴れるパイプの挙動が、自然でリアル。
また手前のチューブや、土台が崩れるのも細かく描かれる。

ちなみに、AKIRA本谷パート全般に言えることがある。
後ろに描かれる煙はbookではなく、わずかながら形を変え動いている。


パイプ煙2
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煙の圧力に耐え切れず、外れるパイプ。
この煙の密度は、どう表現していいものか分からない。
とにかく緻密、綿密なほぼ1k作画である。


ドームからのビームによる誘発連続爆発
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透過光を使いながら、上手く連続爆発を描写。
ここでは、タイミングのセンスが光る。
また、触手がいっぱい伸びたりするのも本谷爆発の特徴の一つ。



本谷さんは、大体こんな感じ。
言い方がアレですけど、煙に関しては基地外レベルでうまい。
リアル系の極地!青山さんが若干似ているかなあ。

あの本谷さんが、テレビアニメに帰ってくるとは思っていませんでした。
これから、撮りためてある「ゼクスイグニッション」早く観たいと思います。 

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