GOMIstation

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2014年08月

お待ちかね。回り込み作画の時間だよ!

今回タイトルにあります、「擬似的な」というのは、(実際には、カメラが回り込んでいないのに)回り込みをしているように見えるという意味です。まずは、BG(背景)やbook(背景の前に置かれる背景素材のこと)で、キャラを回り込んで撮っているような手法でやってるカットから紹介。


■『これはゾンビですか?オブ・ザ・デッド(2012)』 OP
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BG引き回り込み。BGを右に高速に引いて、リピートしてる。(※ちょっとレンズは、魚眼っぽい)映像演出的には、3人のキャラを回転させて、3人の違いを描写しているシーン。この回転表現はよく見られて、『神様のメモ帳』とかでも見られる。


■『フォーチュンアテリアル(2010)』 OP
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1枚のbook(前方の流れていく木)をSLとBG引き。でも、所々セルでキャラを置いたりすることで、真ん中の女の子が戸惑うのを上手く演出してる。1枚のbook配置、単なるBG引き、この2つだけでも色々な回り込み表現が作れることはわかると思います。そんで、この応用例が次。


■『神さまのいない日曜日(2013)』 3話ED
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これは、単なるBG引きでの回り込みもあるけど、より面白いのは1カット目。よーく見てください、1カット目はBGほとんど動いてません。多数のbookを女の子のいるポジションの前後どちらにも配置して、SL(スライド)させることにより、カメラが回り込んでるように見せてる。


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これはBG引き+多段bookをそれぞれ違う速度で動かすことで、擬似的に回り込みのカメラワークを演出してる。いわゆる、「密着マルチ」と呼ばれる技法です。大体5個ほど墓標のbook(画面前方に3個、後方に2個)が重ねられていて、よく見ると奥の方に山のbookもある。後は、光のエフェクトも綺麗です。すごいっすね。



そんで擬似的な回り込みには、もう一つありまして。こちらは、逆にキャラの動きだけで回りこみを表現するというもの。背景、book等をさほど使用せず、セルで描かれるキャラのアクションにより、回り込んでいるかのような擬似カメラワークを演出します。


A、キャラが勝手に回るよタイプ

■『ふたりはミルキィホームズ(2013)』 1話
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ぶわあっという感じのエフェクトと共に、弓を装備するときに(演出的に多分カッコイイから)キャラが回転して、結果的に回り込み作画になる。


■『キン肉マンII世(2002)』 OP
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キャラの顔と体だけが作画で流れていき、BGはほとんどない。けど、カメラが回り込んでいる感じが出ていますよね。こういうの多いです。『パパのいうことを聞きなさい!』とかのOPでも見られる。


■『ベン・トー(2011)』 OP
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これも同じく。互いに背中を向けて、対立構造を示すと共に、謎のキャラを唐突に真ん中に置くことで、画面のトリック感が強い。実写でやると、当然カメラが回り込まないといけないので、バレットタイムみたいになって大変ですよね多分。擬似的なカメラワークを作れるのは、アニメの利点ですね~。


B、回転台座タイプ

■『忍者戦士飛影(1985)』 OP
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これは、キャラ自体が回転して結果的に回り込み作画になる例。床に回転台座でもあんのかと思うよね。グルグル回る。なんですか、古すぎて参考にならないって?しゃーねえなあ、それでは、近年の作品をドン!


■『中二病でも恋がしたい!戀(2013)』 OP
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回るモリサマーたち。これは全然作画崩れないし、3DCGでアタリを出力してから、ロトスコっぽく描いてるんですかねえ。ホント、全然キャラの顔も体も崩れねえ。京アニが広域に受けてるのは、こういった理由があるかもしれません。


スライダーでぐるぐるすると多分楽しい。


今回は、こんな感じで。
擬似的な回り込み作画を、色々と見てみました。

次回は、デジタルならではの回り込み表現などを見ていくつもりですよ、タブン。

「AKIRA」の後とは、意外と違うトコが多かったりします。

AKIRA以後、例えば「紅狼(1993)」とかでは、AKIRAドームのフルアニメーションの煙みたいな、ぷるぷる1kで動く煙など、色々とAKIRAっぽい写実作画であるんですけど、AKIRA以前は写実表現の方向性が違っています。

例えばこれとか。

■『メガゾーン23(1986)』

本谷煙
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これは、あっちの記事にもある『メガゾーン』における本谷作画ですが、AKIRAとは大分違っています。まず第一に、ぷるぷる煙は存在してません。これは見て分かると思う。さらには、リミテッド調なのとカゲの付け方が違うこと。後は、意図的なセル消しみたいなモンが見られたり、作画リピートによる労力の簡略化、その分画面の情報量を破片等で増やす手法で写実性を表現してると思うんですよ、この時代の本谷さんは。


もっと振り返ると、ここらへん。(※パートは僕の推測なので、参考程度に)

■『超時空世紀オーガス(1984)』 2話 7話

爆発詰め合わせ
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この頃は、まだ本谷さんのキャリアが始まったばかりとも言える時期で、エフェクトの方向性を探っているようにも感じますが、一端にAKIRA以後の本谷作画も見え隠れしてる。「ヘルタゲ」などで見られる、透過光の使い方が若干特定箇所かも。後は、細い煙の触手。これが本谷さんっぽい。後はですね、オーガスにおけるエフェクト作画という意味では、(特定とまではいかないけど)増尾と同じくらい目立ってる。


水中から出現するシーン
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球体にまとわり付く水と、それが飛び散る作画。特に飛び散る水のビチャビチャした感じとかスゴイいいっすよね。こんな密度の高い作画は、オーガスでは中々見られない。だから、まあ本谷さんかなあと思ったわけです。(※もしかしたら、古川さんの可能性もある。)
【2014/08/23 追記】偶然ブログ記事を本谷さんご本人に確認していただいて、このカット群については本谷さんのお仕事で確定のようです。

敵メカが墜落するシーン
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戦闘機の墜落による水柱と、その周辺の飛び上がった水が自然に消え行く描写。多分これタタキ(粉塵エフェクト表現手法の一つ)使ってないですよね、全部原画で細かい散水の動きとか描いてる。庵野や増尾さんは色々原画以外(タタキとかコピック等)も使って爆発描いたりしますが、本谷さんは原画で全部表現する人ですね。

本谷利明の水作画、というものを見た記憶が無いですが、多分「新魔神伝バトルロイヤルスクール」などでは、細かい人体の構成作画みたいなものもしてるので(※リンク先ちょいグロ)、相当に水作画も上手いのではと思う。これまた完全なる推測ですが。まあ、増尾さんも「うる星劇場版」でめっちゃスゴイ水作画描いてますし、上手い人は何描いても多分上手い。


『AKIRA』では、匙屋さんの言及があった通り、チャレンジャー事故の落とし込みのような気がするし(※生クリームという喩えは非常にグッときた)、王立庵野の再現とも思える。何に本谷利明が影響されたかは定かでは無いけど、とにかく『AKIRA』の周辺時期に「写実表現の方向性」が変わったのは事実だと思います。

■著作権関連 の仮説とか

仮説(1)

Q、どんな音楽でもタダでダウンロードできたら、音楽CD買う?
そりゃ買わない。

Q、どんなアニメでもタダでダウンロードできたら、アニメDVD買う?
そりゃ買わない。好きな作家には寄付をする。

Q、どんな本でもKindleか何かでダウンロードできたら、本買う?
あ、これは買うわ。読めても絶対買う。だって単行本と電子書籍ってちょっと違う。

つまり、「マテリアル」としての付加価値が付けられるかどうかに、海賊版コンテンツの未来とかはかかってるのではないの。「本」は、「本」として存在してるから、価値があると思う人は少なくない。「マテリアル」じゃないといけないものでは、基本的に音楽もアニメも既にない。ただ、「所有してるという事」に優位性を感じるんなら、少なくとも安っぽいケースは辞めなきゃいけない。所有の優越性みたいなもんが働くと思う。

CDROMの時代は終わりを告げようとしてるけど、すぐさまデータというわけにもいくまい。プラットフォーム同士で喧嘩してんのに。アップルじゃアニメ置けないだろうし、アニメのプラットフォームはどこになるかね。バンチャ?後はGyaOとかかな。あんまり詳しくないけど。SDが何故流行らなかったのだろう。それは、さっき言った「所有の優越性」があるからかもしれない。SD持っててもCDみたく、ガッコの友達に自慢できないし。ロックマンエグゼみたいな時代は来なかったなあ。データ化というのは、ユーザーとしては楽なのだろうけど。


今、アニメDVDを高価で売れるのは、「マテリアル」自体の大きさに起因してる。つまり、前時代的である。ヤクザモンが幅を利かせて、金巻き上げるのと同じ。SDみたくちっちゃくなれば、チワワになる。つまり、値段は今の半分にはなる。面倒な管理費用とか、通運とか、版権関連の許諾とか全部なくせば、安くなる。ゲームのダウンロードは当然あるけど、パッケージが全滅したわけじゃない。だから、まだゲームもヤクザ。本当はもっと安く売れる。 事実、ポータブルゲーム機のそれは比較的安いと思う。

CDからSDを経ずにデータにいくのには、こういう理由があるかもしれない。


■エヴァQ ブコメについて

正直ここまで、文意が分からない人だらけとは思わなかった。いや、ちゃんとした記事描いてないこっちが悪いんだけど。はてな民ってバカが賢いふりしてるだけだと思ってたけど、おおよそ当たってた。1+1=2を全力で難解にして、それぞれのムラを作って相互リンク貼ってる感じ。後はカウンター記事にカウンターして、お互いにマッチポンプしてる感じ。とってもつまんない。

いや賢い人がいないわけではないと思う。でも、ブコメって性質が悪いから、いいなあと思ったブログはまさしく「数の暴力」で潰される。悲しいことだと思う。例えば、生活保護エントリーを書いた人がいたんだけど、即効で叩かれまくってブログ消しちゃった。可哀想だと思うし、意見の封殺感がパねえ。怖い。


■気になってること

2chの著作者人格権の扱い方。後は、残響のテロルのエフェクトとか、アルノアドゼロだっけか、そんな感じの作品のエフェクトとか。橋本さん大活躍らしいってことだけ聞いてる。

後は、ブーン系の作品。2009はいい作品が多いので何でもオススメできそう。この時代に一番よく読んでたと思うけど、記憶があまりない。パワードスーツのヤツとか。でもいい作品が多いのは、確実。後は2006から、2010あたり。2013は、海面上昇がずば抜けすぎて、他を知らない。

甲子園は、豊中の田中くんのスライダーが見れなくて悲しいです。まあ桐蔭が優勝するんじゃないんすかねえ。知らんけど。ワンサイドゲームが多すぎて、つまらん。監督はバント命の馬鹿ばっかだし、継投後手後手だし、指示おせーし。狙い球絞らせないしな。スライダー空振りばっかで選手が可哀想。八頭の監督は賢いと思った。面白いと思ったゲームは、三重VS広陵と、日本文理VS東邦。日本文理と愛知勢はなぜか面白い試合するよね。お互い丁寧なのかな。 

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こちらの記事へ頂いた、熱いブコメへの返答です。(※ブコメはこちらから引用)

wow64
なんでニコニコにはレターボックス付けてシネスコで上げなかったんだ?そっちの方が気になる。
確かに、一理ありますね。シネスコで上げてれば、こんな事は起きなかったですし。まあ理由としては、ちょっとでも映像的なネタバレを防ぎたかったんじゃないのかと。「Q冒頭」も、同じくビスタですし。ネタバレ回避が理由として、最も近いかと。

ricenoodles
あいかわらず作画クオリティどうのこうのはつまらない話。アニメそのものよりその周辺で何を語れるかっていう80年代的文脈の焼き直し
前半は同意です。えっ80年代はそんな話ばっかだったんですか?僕としては、むしろ00年代の方がそういうイメージが強いんですが。初めて知りました。


underd
連続するアニメーションの中から一枚を切り取って指摘する事自体がナンセンスとは思っていますが、それを前提として比較画像を見ても違いがわかりませんでした。全く変わらず鼻は長く見えます
まあ色々と誤解されてるんで、結論言っちゃいますね。鼻が長く見えるかどうかは、主観的な問題であり、水掛け論にしかなりませんので、どうでもいいんです。鼻が少し長かろうが、その1カットを拡大解釈することで、公開前・放映前に「作画崩壊している」という風潮を流すのはダメだろうという意見です。ちょっと文意が伝わりにくかったでしょうかね、ごめんね。


eteru
陰謀論要素が加わっている分、青二才くんよりやばそう。まとめブログを嫌っているようだか、その周辺で見かけるいわゆる「ネトウヨ」「鬼女」と似た印象をうけた 
青二才さんを知らないので、何とも言えませんが、もう一度文章をよく読んでください。あなたが思い違いしている「陰謀論要素」なんてモノはありません、存在しておりません。コンテクストをしっかりと追っていけば分かるはずです。それでも理解できなければ、それは僕の文章力の無さに帰結しますのでどうしようもないですが。それは、ごめんね。あなたには、全く責任はありません。


haruways
まるで小姑のような記事
「まあ、こんなトコにホコリたまってるわあっ!ちょっとあなた~」みたいな感じですかね。ごめん、言いたいことが正直良くわかんないです。ブコメの人は、文章力ありますね。僕には読解できないので、申し訳ないですけど。



何か思う所があれば、コメント欄でお願いします。何なら、ツイッターでもいいです。会話ができれば、何でもいいですよ。ブコメは双方向性が欠如しているので。 

昨今、「2ちゃんねるにおける転載禁止問題」であったり、「電子書籍」「ダウンロードミュージック」の増加と「違法ダウンロード罰則化」などの立法につれ、ますます著作権はボクたちの身近なモノになりつつあります。そして、先日には、「ハイスコアガール版権無許可使用」という事件まで発生し、僕らは著作権を考えざるを得ないし、知らなければいけない状況です。「一億総クリエイター」と言われる時代に、「ハイスコアガール問題」を弁護士先生にお任せして、自分ではさほど考えないスタンスは、賢いようでアホです。

また、アニメや漫画においても、著作権というのは重要であり
、それらを享受する人にとっても、考えて損になるモノではありません。早速、著作権の基本を見て行きましょう。


1、著作権の目的について


■著作権の意義とは:「創作者の経済的利益保護→文化の発展」

著作権の目的としては、まず「作品を作った人の経済的な利益の保護」というのがあります。シェイクスピアの時代、18世紀には、著作権は存在していませんでした。結果、海賊版が出回り、貧困に苦しむ作家・画家も少なくなかったのです。このように、「著作権」が無いと、自分が作った小説も他の人に盗まれても文句が言えません。利益も名誉もすべて盗まれた人のモノとなっても、何もできないやる気も起きない。これでは、せっかく創作した作品を発表する意味などありません。面白い話を書く人は、すぐにペンキ塗りに転職します。

そして、この「著作権法で自分の作品が経済的な利益保護」により、創作者Aさんは安心して創作活動を続けることができるようになります。そうなると、例えばAさんの作品にインスピレーションを受けたBさんが、新しくいい創作物を作る可能性も出てくるわけです。つまり、「文化の発展」が期待できるわけです。


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この具体例としては、『宇宙戦艦ヤマト』が分かりやすいかと思います。松本零士の『宇宙戦艦ヤマト』は、今の40~50代に多大なる影響を与えました。庵野秀明が、大のヤマトファンであることは有名です。彼は、塾帰りの本屋で『ヤマト』を見つけなかったら、この業界には入ってなかったかもしれないとインタビュー等で何度も発言しています。そうです、『ヤマト』がなければ、『エヴァ』はなかった可能性が大いにあるのです。またこの『エヴァ』に影響を受けたクリエイターというのは、ヤマカンを筆頭に、多くいます。著作権という保護の元で、『宇宙戦艦ヤマト』は無事放映された結果、庵野秀明に影響を与え、アニメーションという「文化の発展」を促したのです。


■「©」ってよく見るけど何なのか

©(マルシー)は著作権の許諾を受けた、という意味ではなく、著作者を明示しているだけのマークです。現在、カンボジアを除く国々では無方式主義というものを採用しており、わざわざ©を付けなくても、著作物を作った瞬間に著作権は発生します。もしも、あなたがオリジナルな絵や文章を書けば、その時点で著作物となります画集などでよく見られる、何十個もの©は慣習としての意味合いと、著作者を分かりやすく明示する意味合いで付けられているのです。

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だから画集ってコミケとか通販とかでアニメーターが出すんですよ。
(※上が貞本義行画集、下がエヴァ画集)


■法律上の「公衆」の意味

「公衆」は、「不特定」、または「特定かつ多数」の者を指します。不特定とは、全く知らない人のこと。特定は、知人や家族などの知り合いのことです。つまり、満員電車で乗り合わせた、全く知らない人たちのような「不特定」と、親戚同士100人ぐらいで集まった「特定かつ多数」は、どちらも「公衆」と認識されます。後々、というか、著作権や法律関係では度々出てくるので、ここで一旦説明。


■著作権の中身(著作財産権)

著作権は、様々な多数の権利を内包しています。支分権という言い方もありますが、簡単に言えば、果物がたくさん入ってるバスケットのようなものです。色々ありますが、ここでは重要な権利のみを紹介します。


・「複製権
著作物を、有形的に複製する権利のことです。著作者側からすれば、著作物のコピーをコントロールできるものです。有形的に、というのがポイントで、それ以外の無形的な、形を持たない複製は上演・演奏権などで保護されています。

<実際のトラブル事例>
ディズニーによる『ふしぎの海のナディア』設定・構成剽窃問題 (複製権等の侵害)
有名。『ライオン・キング』もまた有名。

「アナと雪の女王」一部シークエンス剽窃問題
氷を滑る一連のシークエンスが酷似しすぎている(複製権等の侵害)


・「公衆送信権等
インターネットなどの使用で、データの送受信に関係する権利を公衆送信権等といいます。書籍、アニメのデジタル化が進んでいる昨今、特に大事な権利です。著作物のアップロードや、それに伴う「割れ」などといった著作権侵害問題は数え切れないほど存在しています。漫画名で検索したときに、検索候補に「zip」が出るのはGoogle先生おかしいですよと言いたい。


・「翻案権」、「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
これは、Aという著作物を使って、Bという新しい著作物を作ることのできる権利です。そうして、このBは「二次的著作物」と呼ばれます。岩明均の漫画作品「寄生獣」のアニメ化、映画化は翻案権に基いて行われているのですね。漫画版「寄生獣」をAとするならば、「セイの格率」「実写 寄生獣」はBとなり、二次的著作物となります。

寄生獣 著作権

「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」というのは、上記の例でいくと、二次的著作物の「セイの格率」「実写 寄生獣」に対しても、岩明均は(二次的著作物を創作した著作者と)同等の著作者も有しているということです。つまり、「セイの格率」を利用する時には、岩明均にも版権許諾をとらなきゃダメってことです。

ちなみに、二次的著作物と認識されるためには、当然ながら元の著作者に対して、許可を取らなくてはなりません。著作者に許可をとっている場合を除くと、コミケ等の二次創作が存在しているのは、「規模が小さいから許されている」、「著作者が把握してない」「規制してしまうと、創作活動が萎縮してしまう」などの理由です。今のこの状態は、グラデーションがかかったグレーゾーンの往来ですね。


■著作者人格権とは

著作権は、著作者の経済的な利益保護のためにあるものでした。「著作者人格権」とは、著作者の人格的・社会的保護のためにある権利です。これには、3つの権利が含まれています。

1つ目は、「公表権
これは、公表に関することを著作者が好きにコントロールできる権利です。どのタイミングで公表するかや、そもそも公表しないなど色々決められます。

2つ目は、「氏名表示権
著作物を発表するときに、氏名の表示に関することをコントロールできる権利です。表示するか否か、また表示する場合はペンネームか本名かなどを決めます。

3つ目は、「同一性保持権
著作物のタイトルや、著作物そのものが勝手に、著作者の意に反して変更されるのを許可しない権利です。例えば、「まとめブログ」では、新聞のコラムやネットメディアのニュースの一部分を取り出し、ミスリードを生むような改変記事が問題となっています。ニコニコ大百科で、比較的中立的に情報がまとまっているので、参照してください。(「やらおん!」「保守速報」「はちま起稿」「オレ的ゲーム速報@刃」など)

<実際のトラブル事例>
脱ゴーマニズム宣言事件
・大学講師による、意図的なコマの改変(同一性保持権の侵害)

・「唄歌テフテフ・コヒノボリ等」事件
作詞家の原告がJASRACらと、氏名表示について争った事件(著作者人格権の侵害)

パロディ・モンタージュ写真事件
・パロディ的モンタージュの使い方で揉めた(著作者人格権の侵害)


■権利の譲渡

著作権は、他人に譲渡することができます。それも、著作権1パックというわけではなく、複製権はAさんに、翻案権はBさんにといった具合に、それぞれ譲渡ができます。ですが、創作者の人格を保護する「著作者人格権」は譲渡できません。

ここで、著作者Aさんの持つ著作権を、全てCさんに譲渡したケースを考えてみましょう。このとき、Cさんは著作権者となります。著作権者たる(※あくまで著作者ではない)Cさんは、著作物を発表しようとします。しかし、ここで著作者たるAさんが、著作者人格権の「公表権」を行使し、「いや、やっぱ発表すんのやめようぜ、何かメンドイ」となったとしましょう。当然、譲渡時には著作権の対価となる金銭等をCさんは払っているに、これでは意味が無い。こういった事態を避けるため、実務的には、「著作者人格権を行使しない」という確認を両者ですることが行われます。

<実際のトラブル事例>
ユニクロのTシャツ作成アプリ「UTme!」問題
ジャイアン理論によるユニクロの横暴(著作権帰属の問題)

テレ朝投稿サイト「みんながカメラマン」規約問題
著作権譲渡なのに、責任の所在は投稿者に存在する点が不可解


■著作権の制限規定:「私的複製」と「引用」

ここまでは著作権者側からの権利を見てきました。でも、あまりに消費者に規制を課すと、著作物の利用は円滑ではなくなります。そういう事態を防ぐためにあるのが、「著作権の制限規定」です。試験に使うためとか、公的な図書館への複製だとか、教科書に載せるための図版の利用とか、こういったことには許可が要りません。

そして僕らに最も身近であるのが、「私的複製」と「引用」です。

私的複製」は、自分や家族が家庭内等で複製・利用するときの規定です。よくあるのは、「テレビ録画」ですね。テレビの映像・音声というのは、例えばNHKが制作していれば、NHKが著作者であるのは当然ですね。今まで見たケースだと、複製や使用には著作権者から許可を取らなければなりませんが、イチイチこんなことをしていたら煩雑すぎて面倒です。だから、「私的複製」に関しては、著作権者の許可なしに行うことができます。

引用」に関しては、このブログでも時々行いますが、これも著作者の許可が必要ありません。著作権法上の、引用の定義は、次のようになっています。

(著作権法32条)
「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない

固っ苦しいですが、要するに「その著作物を引用する必要性があるかどうか」ということです。自分の意見・主張をより強固なものにする、具体例としてインタビュー記事を書き起こす等、新しく作成される著作物にとって必要かどうかが重要です。必要でない著作物を転載することは、引用ではなく複製となります。つまり、ネット上でし時折問題になる「無断転載」とは、「無断複製」のことで、複製権の侵害に当たるのです。

ここで、「引用」に関して言及している本を引用をします。(ヤヤコシイ!)

福井 例えば、『著作権の世紀』などの図版はすべて無許可で引用して、筆者の選択と責任の下で掲載しています。編集者にしてみれば、普通はいちいち許諾を取って掲載するケースが多いから、内心心配だったかもしれない。だけど、自由にさせて下さった。引用は著作権法の例外として法的に認められている行為です。法的に認められているのに、みんな許可を取って引用する、そんな馬鹿な話はない。

岡田 引用するときに許諾を求める「癖」を付けちゃいけませんね。先日発売された僕の『遺言』は、400ページと分厚くて、図版も大量に収録していますが、許諾は一切取りませんでした。それぞれの図版について、本文をきちんと対応させているし、説明する上で絶対にこれらの図版が必要ということで、引用の要件を満たしていると判断しました。

福井 引用は法律で認められているのだから、別に「冒険」でも何でもないじゃないかと言われるかもしれないけど、実際どこまでが引用で許されるのかはグレーの範囲も大きいですね。だから、若干は冒険も必要になる。

福井=福井健策 岡田=岡田斗司夫
なんでコンテンツにカネを払うのさ?(68.69ページから引用)
という感じで、許諾を取らないと駄目だ!と思い込んでる編集者も多いようです。というか、今回のハイスコアガールみたいにトラブってしまうのを恐れての事なんでしょうね。ハイスコアガールは、見事にトラブってしまったわけですが。



Q、今回の「ハイスコアガール」は何が問題なのか?

著作権法上に則って、簡単に言うと、SNKからの版権許諾を取っていなかったというだけです。

チラ見しただけの分際で申し訳ないですが、確か女の子がゲーセンで格闘ゲームが上手いみたいな話だと記憶してます。そこで、実際のキャラがアーゲードの画面上に出てくるんじゃなかったのかな。そこに出てくるキャラの中で、カプコン、コナミとかからは版権の許可取ってたけど、SNKだけは取ってなかったというもの。

つまりは、問題の責任の所在は、スクエニ法務部にあるわけです。そこの誰か知りませんが、版権許諾をきちっと取っておけば、今回のような騒動にはなってないでしょうね。スクエニが著作権に厳しいとか、そういうバイアスは置いといた方がいいと思います。問題は、ハイスコアガールが著作権侵害をしているかどうかなので。

本質的な問題はもっと根深いところにあるようです。それは次回お楽しみに。 

リファレンス:「なんでコンテンツにカネを払うのさ?(阪急コミュニケーションズ)」 
      :「アニメ学(NTT出版)
      :「図説著作権(ディスカバリー出版)」 

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