GOMIstation

2025-1

2015年01月

10話 「君といた景色」
コンテ:中村章子
演出:原田孝宏



脚本・構成・演出

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正直なところを言うと、今回はさほど良い演出ではなかったと思う。有馬のピアノに対するもがき苦しみ、そこからの脱出とピアノに対する思考の転換。これが、この毎報コンクールにおいて最も重要な要素であると思うんだけど、そこが上手く出ていなかった。つまるところ、「宮園のために弾く」という思考に至るまでをもっと事細かく刻むべきだった。これでは足りない。宮園との思い出をたくさん出すべきであり、そのことで映像の7割が構成されてもいい。それぐらい、「独占的で・自分勝手な演奏」を演出しなければ、有馬の思考の転換は描写ができない。


後、細かいことを言っていく。

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こういったみんなの個性の演出をもう少し何とかして欲しかった。09話と同じであり、無味に感じる。個人的な要望を言えば、バンクを上手く使うべきだと思った。


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有馬が「ありがとう」を重ねるシークエンス。宮園に対する感情、何を考えても浮かぶのは宮園であるならば、これまた同じく、バンクで回想を紡ぐべきだった。もっと短くフラッシュカットに近い形で。後は、「アゲイン!」のセリフは必要では無かったと思う。あれは蛇足。音にしなくても分かるし、想像させて欲しかった。


10話に関してボロクソに言ってますが、あまり良くない演出だけかと言ったら、そうではなく当然良い点もあった。

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例えば、この時間の演出。これは素晴らしい。たったこれだけの短い時間、瞬間的な時間にあるにも関わらず、観客、視聴者にとっては、とても長く時間を感じる。それだけ、有馬の演奏が濃密であったことがとても伝わってくる。


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後は、同じレイアウトでの撮影効果による変化の入れ方。これも良かった。同じ絵だけども、全く違う意味を持たせている。前者は、コンサートでの暗い描写であり、後者は練習中の描写。この対比は良かった。


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10話に関しては僕は否定的なんだけど、この一枚のカットで全てを許容できてしまう気もする。有馬のイメージ、有馬の一途な思いがコンサートホールを包んでいく、この桜が舞うレイアウト。これは本当に素晴らしい。ここだけは、絶賛してしまう。すごい。


もの凄くハードルの高いことを要求してると思う。原作既読のせいもあって、ここはこうあるべきという確固たる思いが芽生えている。演奏を止めるシーンの有馬の無力感や、再び演奏を始める時の有馬の思考を上手く演出するのは難しいことだろうけど、2014-15を代表するような作品になりうるのだから、頑張って欲しいという気持ちが大きい。





作画・レイアウト

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西井さん1人原画。西井さんをさほど、というか全く知らないので、あれですけど、煽りのアングルが特に上手い。相座兄の先生や有馬の煽りアングルでの作画はとても上手く、コンサートホールや10話全体に立体感を持たす効果があったと思う。


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後、こういったイラスト調のカットも良かった。いいですよね、ちょっと抽象的になってふんわりする。優しい絵作りになってる。


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「ピアノが響かない」という描写で、手が崩壊していくのも良かった。体全体で響かそうとしているんだけど、それが出来ないのが伝わってくる。



10話に関しては、こんなとこです。

緊張感あって、良い回だったと思う。

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09話「共鳴」 
コンテ:神戸守 演出:黒木美幸

アバン:井川の過去
A:井川演奏と有馬の演奏前(緊張感あった)
B:有馬演奏


脚本・構成

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毎報コンクールにおける、有馬の演奏回。前回のコンクールは殆ど宮園に引っ張られる格好であったけど、今回は有馬の決意がある所が異なる点であり、重要な点でもあります。未だピアノの音は聞こえないわけですが、それでもステージへと向かっていく。失敗やミスの不安は、08話において描写されており、それを自覚した上での演奏です。つまり、非凡であった有馬が凡人の思考を辿っているんですね。今まではただ譜面しか気にしていなかったけど、「音が聞こえなくなった」ということを転換点に、必死にもがいている中で見えてきた風景であるわけです。


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その必死にもがいている最中に、再び不安が襲いかかる。これまでの話数では、母親や小学生時代は抽象的なイメージが多かったですが、今回はダイレクトに映像で示されています。虐待とも呼べる母親のレッスン、容赦の無い嫉妬、母親の死。「音が聞こえなくなった」のは必然だということが伝わってきます。これを有馬は罪である(母親に対する酷い言葉に対して)と、合理化してピアノを弾かない理由にしている。そんで、有馬曰くの「罪」が襲いかかってくる。


これは本当に勝手な推測なんだけど、有馬は母親の死を認めたくないのではと思う。嫌なのイメージ・思い出を繰り返し顧みると、その人物の死は自分にとって些細なことであり、大したことではないと言い聞かせているような感じ。死んでしまった人に対し楽しかったイメージを持つと、死んだことを認めてしまうような気がするんですよね。まだ彼の中に、母親は生きているし、やはりまだ生きていて欲しいと願っている様子。





作画・レイアウト

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作見としては、やはりアバンのジャングルジム井川でしょうね。ここが大変に上手かった。滑り落ちる感じ、危うい感じ、「銀河鉄道999劇場版」における金田パートのような、「ああっ!」と声が出てしまうほどリアルな描写。上手かった。


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これは、相座兄とレイアウトまんま同じで僕はあんま好みではないです。変化が欲しいですね。井川であるなら、有馬に対して強い感情を持っているのだから、それをぶつけるようなレイアウトにして欲しかった。極端に言えば、口元・手元アップだけでも十二分にその感情は表現できると思う。


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スクワッシュ&ストレッチの表現。元になっている物体をAとすると、スクワッシュしたAダッシュは輪郭線がびよーんと伸びます。ディズニーでお馴染みの誇張表現ですね。後、ここらへんの母親の喋る作画良かった。すげー嫌なオバサンな感じがバンバン出てますよね。


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抜けていく鍵盤。鍵が外れたピアノとかピアニカってスゴイ不気味ですよね、それと綺麗な桜のミスマッチ感が上手く表現されてた。ここはCGと撮影が特に力を入れたと思う。これ大変ですよね。


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01話の流血描写があるからこそ引き立つ、この一滴の血の表現。ドバドバ出てたら大変とかそういうことじゃないんだよね。この一滴には、小学生有馬の今までの思いが全て詰まってる。だから、やっぱり01話の流血描写は必要ですし、オカシクもない。




09話に関しては、こんなとこです。 

■「告白(2010)」  監督:中島哲也 原作:湊かなえ

当時(2011)ぐらいに見た記憶を頼りに書く。主人公は娘を殺された女教師(松たか子)であり、その他の主な登場人物は少年A(頭いいヤツ)とB(自尊心が大きすぎるガキ)、そして少年Aと多くの描写がある少女(橋本愛)である。各家庭の状況をそれぞれに描いていて、特に母親に対しての焦点が鋭かった。少年Aの母親は大学教授であり、少年Aはマザーコンプレックスであった。また「家庭」においては断絶の状態であり、少年Aの聡明さが災いし、結果あの結末となる。一方少年Bの母親は、過保護・過干渉の存在として描かれ、最後には、自分の息子を殺そうとするという結末に至る。両者はどちらも悲劇的な最後であるし、どちらにも救いはない。このどちらにも救いがない悲劇的なラストに爆発を持ってくるのが、まさしくカタルシスといったところだろうか。女教師にとっては、完全なる復讐の完遂である。

少女を少年Aが殺害した理由、というのをはっきりと覚えていないからまた見直そうと思う。橋本愛は凄くかわいい。多分この時に初めて知ったと思う。しかし、このそれぞれの「告白」によって、段々と状況が把握できてくる感じ、霧が晴れていくような感覚は素晴らしい構成。後は、監督について。

監督は中島哲也。「嫌われ松子の一生(2006)」 がそれまでは有名だったと思うけど、あれは見てないから何とも言えない。タイポグラフィは確か、「下妻物語(2004)」では、ゴシック系(「木更津キャッツアイ」みたいな、シュビーン系)で、「松子」では金文体な感じだったんですけど、「告白」から急に明朝に変わった気がする。そんで、「渇き。(2014)」でも、明朝押しは激しく、市川崑のタイポグラフィを凄く真似ている。推測すると、エヴァ新劇序は2007であり、日本映画界においても耳に届いてないはずもなく。まあ簡単にいえば、インパクトが強いということで採用したんではないかと。



■「容疑者Xの献身」 監督:西谷弘 原作:東野圭吾

天才数学者である石神は、隣の家で起こった殺人を全て自分にふっかけ、犯人の親子2人を匿う。この献身さの描写が素晴らしい。一点の曇りもないその純粋で緻密な献身は、愛情・恋愛という方程式を解くという行為である。石神にとっては解答が完成していたが、最後に女がやってくることで、破綻を迎える。

湯川と刑事のアバンでの会話をメインテーマに据え、「愛は解けるか」ということを描く。湯川が石神の家を訪れ、リーマン予想に関する反論の精査を依頼するのだけれど、解き終わった後のシーンの石神のセリフがいい。「素数の分布に対する考えが根本から間違っている」というセリフで、実はこれが最後のシーンに対する伏線になっている。恋愛に関して「こうすれば、こうなる」と石神が前提を立てていた故に、あの献身さがあったのだが、一番最後に重要な可能性を見落としていたのだということが分かる。それは人の思いもよらない想定外・非合理な行動であり、この部分を石神は勘違いしていた。最後の絶叫はその気付きである。

それにしても細かい絵作りが良かったと思う。ラストの壊れたスノーボールとか、ホームレスの描写とか、良かった。終盤における留置所の四色問題のシークエンスとか、良かったなあ。 

■秋アニメ感想記事について

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去年から見てくださってる方は少数だと思うんですが、この画像久しぶりですね。9月10月は割りかし暇だったんですが、仕事柄この時期は忙しいのと後色々あって、結果「新Fate」 も「グリザイア」も多分感想記事出せません。ごめんなさい。

もう本当にね、各話感想は結構キツイ。何であんな長くなるかと言ったら、自分の考え、その時思ったこと、作画に対して感じたことをリアルタイムで書いていくとあの字数になるんですよ。めっちゃ要約の力が欲しいですね。ざっくりした感想であれば、多分出せるけど、何かもう自分ではそれが納得できなくなってしまって。各話感想の最初は、あくまで自分のための備忘録的な感じ(※去年のキルラキルとか役員共とか)だったんですが、少しブログの規模も大きくなってしまったので製作側にも届いてしまうし、見ている人もそこそこいるので、あんまり適当にはやりたくないなあというのが正直なとこ。少しでも丁寧に自分の考えを説明したいし、どういう風な解釈をしているのかも書きたい。もうちっと上手く整理できたらなあ…能力不足です。中途半端にはしたくないので、ざっくりな映像主体の感想は別のブログ作って、そこでやるかも。楽しみにされていた方には、本当に申し訳ない。 

君嘘に関しては、今から9-13話ぐらいまで見ていって、感想書きます。これだけは書きたい。2クール目も全部行きたいですけど、そこもよく分からん。他のエフェクト記事も書きたいし、やること(やるべきこと・やりたいこと)はリアルでもネットでもありますので。

とりあえず、1クール終わりまでは書きます。そこまでは必ず。

まあ適度にお付き合いください。何でもかんでもやろうとすると、こんな風にパンクしますので注意してね!もう2回目だよ(去年の春アニメ時)、これ!本当ゴメン。

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自分のできる範囲をちゃんと認識してから、やっていきます。そこからじゃないと何やっても駄目ですね。

さて、以前「取り留めのない雑記(19)」において、ほっけさんから意見を頂き、「話数単位で選ぶこと」に対する意義をとても深く理解することができた。確かにCMやNHKアニメ短編はその映像の短さゆえに、語られることも話題になることも、今日の情報過多社会ではあまり見られない。それを年のまとめとして、機会を設け、語る、というのは非常に大事なことと共感できる。

既に年は明けてしまったが、去年を中心にアニメーションによるCM、アニメーションが使われているCMを整理した。コマーシャル・アニメーションに潜む魅力が伝わり、何かの参考になれば幸いである。


■「南アルプスの天然水/サントリー(2013-14)」


アクリル絵具のような質感のアニメーション。「動き続ける絵画」と言えなくもない。これは「Wild Life(2011)」からのキャラクター引用で、新しく制作されたものだと思われます。「Wild Life」とは、カナダのアマンダ・フォービスとウェンディ・ティルビーによって制作された短編アニメーション。2012年のアカデミー賞において短編アニメ賞に輝いています。ちなみにオスカーもノミネート。

ここがやはり素晴らしい。

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水流表現。多分12枚リピート。ペットボトルがカチャカチャなってるのもいいよね。とにかく、ここは川の透明度と流れの表現が巧すぎる。「水の透明度」っておそらく表現が一番難しい部類だと思うんですけど、これ見事ですよね。ある一つの水の流れでは、石があって、それを乗り越えていっているのが分かる。障壁がないところは、スムーズに通っている。



■「東京ディズニーリゾート/ディズニー(2012)」


ディズニーランドを舞台に、人の一生を描く。カット割りのテンポ、明暗が特に良かった。最後の方は、お母さんになって、おばあちゃんになるんですが、画面のレイアウトが反転しているのがいいんですよね。時間の移ろいを感じる。未だに制作会社が明かされていないようですが、どうにもIGっぽいですよね。撮影的な意味で、少なくともマッドハウスとかこういうのはしなさそうです。同時期には、LED電球による東芝のCMでも「人の一生」を表現していたりと、伝播するものがあったんでしょうか。



■「ムーヴ カクカクシカジカ/ダイハツ(2008-2014)」


カクカクシカジカ自体は、記憶に新しい人も多いと思うが、この滑り込んだ後の作画について、特にエフェクト(煙・粉塵・砂埃)が素晴らしい。


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粉塵・砂埃が現れ消え行く、そのプロセスやタイミングが時間軸を表している。滑り込んだ直後は、スローモーション的な時間の流れ方だけど、セーフの後にスッと消えることにより、時間が現実に戻ったことをまさしく見事に表現している。



■「20代の部屋編/マイナビ賃貸(2015)」


これこの前見て、びっくりした。サラリーマンの男の子がカバンを引きずっていくところとか、自転車の挙動とかいいですよね。最後のカメラのじわ回りも(ちょっと手前の方が早過ぎる気もしますが)いい。

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「浅野先生が原画を担当!」と公式サイトに記載してあるんだけど、これ全部原画描いたのは流石に嘘やろ、と思う(※浅野先生全カット原画ならそれはそれで凄まじいですが)。どこが作って誰が描いてんやろね。



■「頭は使いよう。/クレディセゾン(2014)」

(みんな大好き)らっパル/山下清悟作画。

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衝撃波がなんとも絶妙な感じでいいですよね、こうぶわあっと。大地が割れて、石がずわあっと。やっぱり、らっパルさんとかってタイミングがこう上手いんですよねえ。女の子も可愛い。後は漫符が地味にアニメーションしているのがいい。



■「クロスロード/Z会(2014)」


新海誠作品。通信教育のZ会のCM。離島に住んでいる少女と、母子家庭と思われる少年の受験を描く。これが上手かった。一般的に、学校以外の教育と言えば、「塾」「予備校」でありますが、この作品に出てくる2人はそれが利用できない。少女は塾が近くないという距離的な問題で、少年は塾の費用が払えないという経済面の問題が原因です。それを解消するための通信教育ということで見事なコマーシャルになっている。さらに言うと、少年はその費用を捻出するためにアルバイトまでしているのが凄まじい描写で。また、家族や親戚に囲まれる少女に対し、最後まで少年側の親が映らないのは、やはり母子家庭の暗示だと思います。


映像としては(去年の最初にも触れたんですが)、やはりこの2カットが素晴らしい。


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おおっとなりますよね。試験をそれぞれのやり方で(深呼吸をする、すぐに取り掛かる、緊張から肩に力が入っているなど)、過ごしているのがいいですね。試験用紙のめくるタイミングもめくり方もみんな違う。こういった細部のディテールは画面の、ひいては映像全体の写実性をやっぱり増します。後は、差し込む光とパーティクルの効果がいい。現象としては空気中の埃が日光で照らされていて教室っぽいなあと。



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ここは年間エフェクトでも触れました。いいですよね、何度見てもいい。消え行く吐息(ダブラシ煙)はセクシーです。細かく髪とメガネを直しているのがまた(女の子らしい)仕草で良かった。



■「ワゴンR エネチャージ篇/スズキ(2012-14)」
 

これは一つ、CG部門として。渡辺謙さんが何か電気の超エネルギーみたいなもんを使ってますよね(笑)。これが当時見てて面白かった。放電エフェクトを作ったのが、「ガティット」というCG・アニメ制作会社。この会社は、アーティストのコンサート・ライブ映像であったり、コマーシャルのC.Iカットなんかも担当されています。



■「コニャラの歌/日清製粉グループ(2010-)」 


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近藤勝也さんによる作画。ジブリと矢野顕子タッグの有名なコマーシャル。やはり、アニメCMで馴染み深いものといったらこれだろうか。何と言っても最後に子猫が母猫寄って、毛並みがふわっとなるところが良い。「柔らかさ・安心・母性」といったものをこれだけの線で描写しているので凄いなあと。 




以上7選+αでした。

コマーシャルのようなショートフィルムには、物語性を持たせることが難しいです。その上、元々の商品の宣伝もしなければならないのですから、負担は単純に考えても2倍増です。それでもなお、これらのCMのように「作品」になり得ている映像が作られるのは、クリエイターの「手加減なし」を感じます。そこには、「コマーシャルだから、物語性の欠如を許そう」とかいう合理化もないんですよね。「あくまでCMであるけども、一つの作品を作ろう」としていることが、制限付きのショートフィルムにおける、瞬間的な魅力と拘束的な妙技だと思います。

これからは、アニメーションCM、CGが含まれるCMはより増加すると思います。個人的には、煙とかを中心に注目していきたいです。


<参考文献>
CM情報-サントリー天然水
コニャラ-日清製粉グループ
カナダのアニメーションデュオ、ウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービスのデザイン-17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード  
Wild Life by Amanda Forbis & Wendy Tilby, 
・CGWorld 180号特別付録
らっぱるさんのツイート  
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