GOMIstation

2025-1

2015年03月

まずマップ兵器表現とは、なんぞやという方のために少し。

・「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日(1992-98)」
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今川監督作。アルベルトのビーム。このように、「狙い撃つぜ!」というよりは、「全方位に向けてミサイル発射!」みたいな感じですね。網羅的に敵を殲滅する描写の表現です。これは光球爆発同士がつながることで、攻撃範囲の大きさを描写してる。後、放射状のラインは光のピカっとする感じを表してますね。かっちょいい。



今回は、深夜アニメ3本に何ともタイムリーに「マップ兵器表現」が使用されていたので、ちょっと取り上げます。それぞれの工夫に注目されたし。



・「アルドノアゼロ(2015)」 21話
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ゼブリンによる雷撃。これはマップ兵器表現の光球爆発ではないバージョン。記号化されずに、煙の柱がドドドンと展開されていく。アトランダムな爆発の発生も魅力的。



・「ローリング☆ガールズ(2015)」 08話
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これカッコ良かった。ショックコマ(全面黒とか全面白)をはさみながらの、マップ兵器表現。その上、光球爆発は板野一郎発明の円→三日月→円のリピート光球。表現をいくつも使って、挑戦してる感じが出てていいですね。


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こちらは円周的に展開されていく、マップ兵器表現。「エヴァ序」とも似てるけど、こちらのほうはやや展開されていくスピードが早い。ここに光球爆発の縮小・拡大や光球の大小さが追加されると。さらに気持ちいいものになると思う。ちょっと惜しい。



・「蒼穹のファフナー EXODUS(2015)」 09話
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実にオーソドックスなマップ兵器表現。クロス光から球体が生成されていく過程が美しい。gif2個目はPANの感じがいいです。ばばーんと敵を倒していく爽快感みたいなのが描写されてるなあと。厳密には光球じゃないんですけど、形は球体ですので、これもマップ兵器表現でいいかなと思います。



定義に関しては、前回も言ったとおり曖昧なままです。言葉の選び方がどうのこうのとか、用語(マップ兵器)の使い方が正しくないとかいろんな所で散見されて言いたいことは分かるんだけど、そこは的外れというか。本質ではないというか。まあ上手く言えないので、ちょっととある方のツイートを引用。



まさしくこの人の仰るとおりで。ある1つの映像表現に対して、一対一で対応する用語ができると理解や認識がすごく深まるんですよ。それこそ、バレットタイムが代表的な例ですよね。ネオが弾を避けるというシーンをみんな知ってる。けれど、バレットタイムという用語を当てはめることで、さらに表現についての考えや理解が深まる。スチルカメラいっぱい使って取ってるんだ、とか。これは高速度撮影の一種なんだ、とか。つまり、共通の認識ができることで、その表現に対しての理解や考え方が深まるということなんですね。

ということが言いたかった。定義とかどうでもいいってことはないんですけど、そこを目的化しちゃうと、表現に関する理解は広がらないので、みんなで楽しく「マップ兵器表現」について話をすることができない。そうなると、何かどうでもいいことにばっかりお話が発展していっちゃう。結果、どうでもいいお話に終始してしまいます。これって、すごく意味ないですよね。

12話「トゥインクル・リトルスター」
絵コンテ:神戸守
演出:福島利規


アバン:クライスラーの「愛の悲しみ」について

A:イマイチ
・ピアノと母親
・今とこれから

B:良かった
・プールでの溺れかけ
・三池くんかわいそう



脚本・構成・演出・作画

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さて毎報コンクールの余韻も終わりに近づき、ガラ・コンサートへの練習が始まる。宮園が選んだのは、「愛の悲しみ」で有馬は何度も拒否をする。有馬にとっては、母親との思い出深すぎる曲であるため、露骨に嫌がる。毎報コンでは、宮園かをり1人のために弾いたが、小学生時代には母親のために弾いていたので、構造的には変わってないことが分かる。「誰かのため」という依存性がなければ、彼は今ピアノが弾けぬのだ。



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「この曲は母さんの匂いがしすぎるんだよ」というセリフに至るまでの描写。ここはあまり良くなかった。音声1つとっても映像に与える影響は大きく、(音声が)あまりにくどすぎるために、なかなか有馬に同情・同化できない。つまり、第三者の想像力が入り込む隙間を排除してしまっている。「お前なんか死んじゃえばいいんだ」という1シーンを無音声にすることで、想像は少しばかりでも広がるのになあと。



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日常における「祭り」と、ガラコンへ向けての「ピアノ」というのは、関連性が全くなく、それゆえに水と油のように、有馬の日常にピアノが強調される。これは舞台装置として非常に効果的で上手い。コンクールや学校を描くだけでは、彼らの日常、生活、世界観を読み取ることが難しいし、何よりもピアノ自体も印象的でなくなってしまう。しかし、全く関係のない場所でピアノというものを描くことにより、コンクールのときよりも格段にピアノの話に注目ができる。



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2枚目。ここは引きの画ではなく、寄りの画ではないのかと考えてしまった。寄れば当然、彼らだけの世界になるし、星空も輝くと思うのだけど。引いたのは、おそらく星空を見せるためなんだろうけど、それならばアングル自体はもっとアオリの方がいいような。



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このシーンでは、音楽とデフォルメどっちもカレカノ意識を感じた。が、BGMぶつ切りは何となくもったいない気がする。シーン全体にデフォルメをかければいいのではないかなあ。



さて一転。Bパートは非常に良かったので、追いかけて見ていく。

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そうそう、柏木さんはこのぐらいブスがちょうどいいです。もっとブスでもいい。説教っていうのはね、ブスがしないと意味ないんですよ。現実世界にいそうな女の子って大抵そうでしょ(ひどいこと言ってる)。少なくとも想像上の世界では、嫌な役回りの子っていうのは姿見も相対的に悪くならないと、何か筋が通らないんですよ。あいつイケメンなのに、偉そうに講釈たれてるぜみたいな。もちろんそれが魅力の場合もあるんだけど、基本的にはバランスを取るというか。



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このレイアウトはすごく興味がある。今から記すことは全て推測なんだけど、ここでの主役は宮園と渡、傍観者は有馬と柏木、そして椿の役割はおそらく、「逃避」だと思う。前述のとおり、柏木さんはすごく客観視するキャラクターであって、有馬も現実を素直に受け止める努力をしてる。だけど、椿だけは未だに有馬が宮園に惹かれていることを認めたくないという感じで、逃避してしまっているような印象を受けた。



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プールに飛び込んでからの、「音に束縛されない」シーンの描き方は見事の一言。水中に祭りでの描写をオーバラップさせることで、有馬の思考が重層している感じを出している。溺れていることから、ピアノの音が聞こえないことをショック的に想い出し、そこから祭りでの会話を想い出し、そして水中で演奏しようとする(音が鳴らないピアノを弾こうとする)。この一連の流れは素晴らしかった。


今回は以上です。

先日書いた記事があまりに評判で、びっくりです。たくさんの方に見ていただいたのでお礼記事も兼ねて、今回は満員御礼みたいな感じで、「マップ兵器」的な表現をもう少しgifで紹介したいと思います。

まず、その前に「マップ兵器」という呼称について。これには多様な意見がありました。先日の記事、及びこの記事においては、分かりやすさを優先しこの呼称にしています。一本線ビームと、大量ミサイル、反応兵器など、多種多様な兵器群はあくまで「兵器」であり、その結果として描写される、複数の光球爆発が「マップ兵器(的)表現」と整理しています。「兵器群」について一対一対応で分類して定義するのは、非常に複雑になりますし、そもそもこの定義は元々それなりに曖昧なものでありますので、その「曖昧さ」を含んだ上で定義していいという風に判断しています。

簡単にわかりやすく説明するならば、マップ兵器表現とは、「個別にロックオンして狙うのではなく、多数の兵器や網羅的な攻撃範囲の兵器によって、その場所にいる敵を見境なく倒す表現」という感じですね。



・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(劇場/2007)」
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樋口コンテ。増尾特技監督。ラミエルたんのなぎ払いビーム。ここのカットは本当にレイアウトがよく出来てて、光球爆発の大小もあるんだけど、奥から手前に描写することで、画面全体の立体感と臨場感を出している。



・「コードギアス 反逆のルルーシュR2(TV/2008)」
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光球爆発を半分透過させてのマップ兵器表現。紅蓮の羽根を通って見える光球爆発の描写は、紅蓮自体の大きさや強さといったものを演出している。光球爆発と紅蓮が対比されていて、奥行きあるレイアウトになっている。



・「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-(劇場/2010)」
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これはマップ兵器表現と呼んでいいか微妙なんだけども、光球爆発が絡んでいるので。PANで勢いをつけてから、急停止させ慣性を感じさせるカメラワークは見事。どことなくガンダム00は、「トップをねらえ!」リスペクトを随所に感じる。ELSの大群とか。


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同作品。こっちはマップ兵器表現と呼んでいいだろう。光球爆発の消滅描写が特に良い。昔のゲームに出てくる爆発のリピート描写のように、球体に沿った線が残ることで、光球の消滅に立体感をもたらしている。



・「シャイニング・ハーツ 〜幸せのパン〜(TV/2012)」 11話
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カメラワークと素材の動かしでの簡易的なマップ兵器表現。2カット目のジグザグカメラワーク、3カット目の光球爆発のスライドによって表現してますね。簡易的ではありますが、しっかりと表現されている。そして、ラストの爆発によって、それまでの記号的なマップ兵器表現に意味がもたらされているように感じる。(※描写は省略してるけど、各地でもこんな爆発が発生してるといった感じの意味。)



・「イナズマイレブンGO クロノ・ストーン(TV/2012-13)」  49話
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クロスフィルターっぽいものを散りばめてからのマップ兵器表現。光球爆発がアトランダム的で、写実さを発現させている。キラキラは現象(マップ兵器表現)の予兆になっている。



・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(劇場/2012)」
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増尾特技監督。(質量兵器の)マップ兵器表現。中野フラッシュからのCGで光球爆発を描く。ここでは、奥行きよりも臨場感を優先していて、あたかも眼前で起こっているかのようにインパクトのある画にしている。


そして、これは「POPCHASER(OVA/1985)」における、増尾作画にとても印象が似ている。

・「POPCHASER(OVA/1985)」
POP増尾昭一

増尾作画。タイミングとショックコマの使い方が何ともそっくりだ。特にタイミングの方が大きい。ショックコマ(黒コマ、白コマ)の使用によって画面にメリハリを出すのは、やはり増尾が大変に得意とするところと感じる。



・「機動戦士ガンダムAGE(TV/2013)」 31話
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ぶったぎりビームからの光球爆発。ここで、光球爆発は右から左にテンポよく発生していき、最後には光球の光が拡散していき爆発へと繋がる。この一連の流れがスムーズで、印象的になっている。



・「蒼き鋼のアルペジオ(TV/2013)」 11話
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これは光球爆発を使っていない、マップ兵器表現。サンジゲンCG。軽巡ナガラを攻撃し、煙の柱がドドドンと立っていくのをフォローで映した後、俯瞰アングルから全体を見せるカット割り。



・「革命機ヴァルヴレイヴ(TV/2013)」 11話
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ダブルアクション的なマップ兵器の表現。光球爆発の間々に、中野フラッシュが所々挿入されていて、印象的にさせようという工夫を感じる。各地戦闘の描写である他の光球との差別化のために、マップ兵器表現の方は、光球自体が爆発した後も消滅せずに描写されている。



これらのgifも合わせて見ると、記号的になった「マップ兵器」の表現に対し、新たな解釈、新たな工夫がなされていることが分かります。ただの模倣に留まるだけでなく、どうすればより魅力的になるかをしっかりと考えている。つまり、記号化された表現の再解釈です。これこそが、「記号的な表現」を新たに表現する際に最も大事なことです。模倣も必要ではありますが、それよりも元の表現に対する深い理解と自分なりの解釈の方が必要不可欠と考えます。それらが、表現を豊かにし、発展させていきます。

この考え方は、「記号的な表現」においてのみだけではなく、アニメーションそのものに対しても言えると思います。例えば、模倣の対象となるアニメーターの元の画が、どれほど魅力的なものであっても、その模倣が必ずしも魅力的になるとは限りません。それどころか、元の画に対する理解や解釈もせずに、表面的な部分だけをなぞり、とんちんかんな画を作ってしまう場合の方が多い印象です。試行錯誤、創意工夫、自分なりの解釈、これらがアニメーションを発展させていくために必要なのは間違いないことだと考えています。

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