GOMIstation

2025-1

2015年06月

そうそう、この煙を紹介したかった。


・「魔法少女リリカルなのは(2015/TV)」 06話

流れ星爆発
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小澤作画(※推測)。戦闘シーンの爆発。爆煙といった方が正確かも。
ああ、これはいいです。後ヅメが特に良い。じわあっと残ってますよね。フォルムで動かす(煙の輪郭全体を中心に動かしてる)ことによって、煙に対し立ち上る黒煙のようなモクモクとした印象をもたらす。後は、なんといってもカゲです。カゲの移動、拡大縮小によって、煙がどういった動きをしているのかを表現している。

特に画面左の中心部のカゲは上手い。手前から上に上昇する煙(3個ぐらいのヤツ)がその上にある煙(一番上)を押しのけようとしていることが、カゲの入れ方によって示されている。ここは、グッという感じに持ち上がっててタイミングも上手いなあ。



連続爆発
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これも同じくたぶん小澤作画。白コマの使用が印象的で良い。
画面右端の膨張していく煙が上手い。中心部に広がるカゲが終盤、内部から発生した煙によって押し出される格好になり、少なくなっていることが分かると思う。ただ煙が広がるのみに終わるんじゃなくて、内部からグッと押し出されるのが良いですね。 

■近況

多忙。アニメさほど見れていない。
(※パンチライン3話から積んでいる、なんてこった)
とりあえず、『COPPELION』だけでも見通して感想を書き連ねたいのだけども。
3個ぐらい小分けにして感想書いてみようか。
今までは一個に詰めようとしすぎな気がする。 

色々適当なことも言いたいなあ。
(※抽象的なことではなく、画面がどんな風に構成されているかに関しての適当なこと)
未だに色々とよく分かってないので、そこで突っ込み入れてもらえれば…なんて思ってたり。

まずは野球観戦やめろって話ですね。

他にフリッカーねえかなあと思って探してた意外と見つかったのでちょっと。
(※それにしても、相変わらず守備範囲が狭すぎるNE)

・「世界征服~謀略のズヴィズダー~(2014/TV)」 02話

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ヴィニエイラ様のお食事タイム。かわいい。
逸花お手製のマズメシを恐る恐る食べようとしている、ケイトの腕の動きに注目。
恐る恐るなので、手が行ったり来たりしてるのが分かると思う。

これもガクガクして、ぎくしゃくした映像になっているから、フリッカーと呼んでええと思う。
間違ってたらゴメンチ。


・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012/劇場)」

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アスカがメットを引っかかりながら外すカット。
やや、顎の部分の画が往復していて、ガクガクとなっている。
ちょっとこれは微妙かなあ。それっぽいんですけどね。



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アスカ食いしばりカット。これはフリッカーを素晴らしく上手く使ってる。
「歯の食いしばり」を表現するために、歯茎(右下)をわざとチラッチラッと見せてて。食いしばる時は、歯よりも口周辺の筋肉が動くんだよね。原画枚数は増やさずに、その順番をズラして歪にリピートさせることで、その表現を達成している。



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ここも同じく。弐号機コード777(トリプルセブン)状態のシーン。
アスカがカメラに迫ってくるカットなんだけど、その迫り方がぎこちない。映像が滑らかに進まないことで、力の拮抗感を出している。

同スロー
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次の画に進んだと思ったら、前の画にひゅっと戻るのがこれで分かると思う。
歯の食いしばり方がまた良いですね。



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ここはCGだけど、ガタツキ方が似ていたので。
まあこれはブレとかガタツキの表現だけど、根底にはフリッカー作画に対しての意識というか参考というか、そういうのがあるかもしれないということで。ガタツキ方も一定じゃないんですよね、全部バラバラで歪にリピートしてる。




・「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 AIR/まごころを、君に(1997/劇場)」

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量産型が弐号機に刺されて、少し硬直した後にやんわりと力が抜けていくカット。
手が伸び切る前の場面での動きに注目。
3回ぐらいブレて痙攣している様子を表現してる。



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吉成作画。弐号機が量産型を2体ぶち抜いて、血しぶきブシャーのカット。
弐号機の腕と、量産型のもだえ苦しむ姿がフリッカーによって作画されている。
これめっちゃ良いフリッカー作画だと思う。素晴らしい。
舌出してる量産型の顔が、中央→下→中央→左とぎこちなく移動するのが特に上手い。



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上記のカットを受けての、アスカの描写。
ここでは弐号機とシンクロしてるので、同様にフリッカーさせている。
自分の全体重をかけて、弐号機の腕に伝えていて、見ているこっちにも力が入りますね。
肩にも力が入っていて、肩全体が前面にグッと出てきてるとこがまた上手い。

 
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弐号機が無理やり起き上がろうとしているカット。
口全体のガクガク感が良いですね、
限界でありつつも無茶に起動しようとしているのを画で描写している。




大体こんなとこかなあ


自分がフリッカー作画から感じていることは、次の3点。

1、エンジンの駆動・始動っぽい(ドルルンって感じ)
2、カットにおいて原画・動画が往復することによる、もどかしい感じ
3、目に引っかかり、印象に残りやすい

これらは、ジグザクな中割りっていう点で当たり前かもしんないんですが。
とても印象に残りやすい要因は、これが普通の映像じゃないから。普通のアニメーションって滑らかじゃないですか。今の商業アニメでは、原画をまず書いて動画をその間に(基本的には滑らかにするために)入れていきます。そのポーズトゥポーズにおいては、(カクカクしないで)滑らかになるというのはやはり必然であって。その中に、ある種「引っかかり」のような違和があるカットというのを入れてくると、やっぱりいい意味で浮いてきます。

となると、やはり見所で使おうと誰しも考えると思うんですよ。「ここを見て欲しい」と思うんなら、違和のある画(普段とは違う画)というのをぶち込んでくると俺は思う。じっさい前回や上で見た例も「ここぞ!」って場面で使われてるケースが多い。そんで、これだけ多用されているのは、何よりも負担はさほど増えず(少なくとも原画枚数は変わらないので)に見せ場の演出ができる、というのが大きい、と思う。

ちょっとこういう部分に注目して見ると、またアニメが面白くなるかもしれません。 

フリッカーというのは、笑ったり力を入れたりするときの小刻みなブレを作画する手法です。この1カットを鈴木俊二さんがツイートされてから、各方面で話題に(リンク)。

■「アラタなるセカイ(2012/OVA)」
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同スロー
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高笑いをしながら、少し後ろに後ずさりするカット。このように小刻みなブレを入れることで、「ハッハッハ」という感じを画で示している。時々目にするこの小刻みなブレ、「フリッカー作画」はどのような手法により映像となっているのか。


<1、フリッカー作画の実例いろいろ>

まずは、色々とフリッカー作画の実例を見て行きましょう。

■「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(1995/劇場)」 原画:濱州英喜
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濱州作画。少佐が力をめいいっぱい入れて、ハッチをこじ開けようとしているシーン。カゲとハイライトを動きに合わせて入れることにより、義体の限界を超えた力が入っていることや、ピンと伸長した筋肉がブルブルと震える様子を表現している。


そんで、これに影響を受け、橋本敬史さんがエヴァ破において落下使徒を受け止めるシーンをフリッカー作画で描いています。これがまたすごい。

・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009/劇場)」 原画:橋本敬史
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使徒の重圧によって、エヴァの上腕は膨らみ、前腕はガクガクと震えている様子が存分に伝わってきますよね。これをフリッカーで描写しています。濱州作画との相似点は、カゲの入れ方ですね。筋肉がひしめく感じを表現するために入れている、カゲの移動が上手い。


ちなみに、エヴァ破ではこの他にもフリッカーの作画が見られたりもしています。

ダミーシステム拒絶カット
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ダミーシステムによる起動を、初号機が拒絶しているシーン。ぐぐぐっと頭部が動くところが、フリッカー作画されている。目の点滅とともにブレを起こすことで嫌がっている様子を表現している。



ちょっと、攻殻機動隊に戻ります。
この黄瀬和哉(※推測)パートがとんでもなくスゴイ。

■「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(1995/劇場)」 原画:黄瀬和哉(※推測)
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人形使いを無理やり起動させているシーン。難しいアングルから、人形使いが非正常な状態で起き上がる様子を作画しています。圧巻のアニメート。尋常じゃないですね、この作画は。フリッカーによってラグやバグが生じているような正常ではない状態を表しており、不安を煽る動きを演出しています。音もついてないのに、普通にこわい。こういう不安を煽るシーンに、フリッカーはとても有効です。

何度も見てると感じたのが、この作画エンジンの駆動っぽいですね。ドルルンって感じが。だから、バイク作画とかにはフリッカーは使われてるかもなあと思っていたり。

目玉ぐるーん
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52]

攻殻もう一つ。3方向(右、左、上下)のブレをフリッカーで作画。目の焦点が合ってない感じが伝わってきますよね、壊れている機械を無理やり動かしている感じ。カット終盤、目玉がギョロッと下に移行するのがまた上手い。こわいです、めっちゃこわい。


■「サンダーキャッツ(1985)」 OP 原画:摩砂雪
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エフェクトを剣で抑えるシーン。剣で受け止める部分に、フリッカーが使われています。グッグッという感じがして良いですよね。エヴァの監督・コンテ等で有名な摩砂雪さんですが、この人は元々めっちゃ上手いアニメーターです。金田系アニメーターであり、特にジャンプの作画が上手い印象(個人観)。この剣のカット以外もキレッキレな動きが堪能できるので、暇な人はOP見たら楽しめます。


・「問題児たちが異世界から来るそうですよ?(2013/TV)」 01話
・「勇しぶ-勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。-(2013/TV)」01話
(※アニメタイトル間違えていました 2016/08/09修正)
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音声なしでも、「ガッハハハ」と笑う感じが伝わってくるシーン。顔だけ揺らすんじゃなくて、肩も連動させて上下していて上手いですよね。多分こういうのが絵の魅力というのかもしれんです。



<2、フリッカーの表現手法>

そんで、ここからは技術の紹介。

このフリッカーは、タイムシートによって調整されることが多いようで、少しだけ紹介します。

タイムシートとは、カットの設計書のようなものです。このセルは何コマ映すのかとか、中割りは何枚入れるのか、どんな特殊効果を入れるのかということを原画マンが書き込んでいきます。これが動画マンに渡り、指示どおり中割りされ、それが演出でチェックされ、最終的には撮影へと回っていきます。

CBZTGFFVIAA-Guu (1)
(引用:https://twitter.com/sato_masafumi/status/582744570821103617

フリッカー作画の方法には、基本形の絵とブレた絵の2つを予め原画として用意し、その中割りを交互に繋いでいくことによってフリッカーさせる方法があります。これは、佐藤まさふみさんが言及されていた方法(リンク)で、直感的で分かりやすいと個人的には思ったり。言及されている通り、使いどころを選びそうではあります。


もう一つは、本来原画を滑らかにつなぐための中割り(動画)を、わざとずらしてブレさせる方法。こちらがおそらく、主流だと思われます。滑らかに並んでいる動画をわざとずらすことによって、ガタツキが起き、結果フリッカー作画となります。[訂正]上記の図で言えば、①→②→ア→カ→イ→キ→ウ→ク→エ→ケ→オ→コ→③という風に繋いででフリッカー作画をします。

その実例を一つ見てみましょう。

■「未来少年コナン(1978/TV)」 03話 原画:近藤喜文
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コナンとジムシーが取っ組み合いのケンカをしているシーン。「お前の足なんかポッキンだ」のシーンです。『耳をすませば』の監督で知られる、故・近藤喜文さんの作画。両者の力の拮抗具合、力のぶつかり具合がフリッカーによって上手く描写されていますね。


同カット-原画
CF777CXUMAAptdk
(引用:https://twitter.com/ESAKUGA/status/605704205353885698

右上が中割り指示です。②と③の間をイロハで繋いでいますよね。中割り指示というのは、通常一直線になるんですが、この場合だと時々上に戻ってジグザグ線になっているのが分かると思います。滑らかに繋ぐ動画を、あえてズラすことによりブレさせているんですね。(※以下この記事では、そういった中割りの仕方を「ジグザグ中割り」と呼びます。)



<3、演出としてのフリッカー表現の整理>

[不安・恐怖の表現]
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「攻殻機動隊」等。フリッカーの不安定な動きによって、不気味の谷みたいな言いようのない怖さを出す。奇妙でオカシイと感じる動きを演出する。


[拮抗・匹敵の表現]
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「未来少年コナン」や「サンダーキャッツ」での表現。
鍔迫り合いのようなもので、両者の力が拮抗しているからこそブレが生じる。
そのブレをフリッカーで表現している。


[メカ物の表現]

・「ガンダムビルドファイターズ(2013/TV)」 16話
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メカ・ロボのギミック的な演出。
これはガシーンと左腕が出た後、その反動によって小刻みに動いているのをフリッカーで表現している。これは探せばたくさんありそうで。メカ物における細かなグググッとした握りこぶしだとか、そういうのがあります。
予兆的な演出ですね、その後に控えている決めポーズや必殺技の前座・予兆としての表現。



フリッカー、面白いです。




<参考文献>
M.S.Cアニメーション用語集-フリッカー 

もりたけし監督作品。全3巻OVAとして1995-96年に発売。増尾昭一作画の調べがきっかけで見ましたが、面白かったので少し紹介しとこう。

ストーリーは、賞金稼ぎのラリーがその相方のメイとともに、マフィアと連邦(公安)組織の上層部との癒着、腐敗を暴いでいく。鮮やかでなく、泥臭く暴いていくのが何ともリアルな感じがして良い。『攻殻機動隊SAC』みたく、色んな組織や人が交錯し合うとごっちゃになって面白いですよね。


<1、OP作画>


オサレなOP。ビバップと似てるけど、ちょっとまた違うような気がする。序盤はマッチカットの多用が小気味いい。メカ、爆弾、銃器は(図形を織り交ぜて)記号的に見せつつ、キャラは柔らかく描写している。キャラは大部分、松原さんかも。

そんで特に良かったのが、このシークエンス。
29]33]
38]48]

ここはgif・画像だとわかりにくいので、是非OPを見て欲しい。このペダルの踏み方は、「ヒールアンドトゥ」というらしい。減速して低いギアに入れた後、再加速するために使う踏み方です。ペダル、吸気口、タイミングベルト、マフラーと、機構が作用する順番で短いショットが流れていく。それが気持ち良い。



<2、本編作画・レイアウト-車>


本編の作画は、2話の車関連が特に素晴らしかった。

回りこんでからの急ブレーキ
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1カット目、急ブレーキしながら車がギュギュっと回りこむ。2カット目における、車体の上下動によりサスペンションが効いている様子が良く伝わってくる。一回沈み込んで二回目は少し揺り戻している。


ドリフト
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はみ出して画面左の家に突っ込んでしまうのではないのかと思うくらいのドリフト。そのブレーキによって、煙が発生している。こういうところを外さないでしっかり描いているので、画面はリアルになる。


カーチェイス1
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一部背景動画による、カーチェイスシークエンス。精緻なパースが正確に作画されている。敵の車(赤)がカットの後半部分で、スピードを出しすぎて少しタイヤが滑る所がまたいい。


カーチェイス2
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被弾を恐れての急制動、からの車体の後ずさり。めっちゃ素晴らしい。このシーンは後輪部分のサスペンションが沈み込んで急制動を吸収しているんだけど、肝心の後輪は全く画面に映っていない。それなのに、車体が沈み込む様子、サスペンションの効き、紙一重の差で避けた様子が全部伝わってくる描写の濃さ。

また画面の事でもう一つ言うと、入射する光が良い。画面右上、太陽がニョっと出てくるんですが、その光がボンネットに反射してキラキラと輝いているのが美しい。

ここは本当にすごいです。


サスペンション繋がりでもう一つ。

バックから発進
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3カット目のガコッとした感じ、わかりますよね。バックしてから急制動したので、重心が後ろになっている。ここはACつなぎでカットを細かく割っているので、焦燥・急速感が表現されている。そこがまたいいんですね。





車の作画ばかり見てきましたが、人の作画も少し見て行きましょうか。

<3、キャラの作画>

ヨタヨタ歩き
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慣れないハイヒールをラリーが履いて、画面左に少しよろけて、ぎこちなく歩く様子を上手く作画している。重心の移動が特にいい。ここでは、重心が片方の足にそれぞれ乗っかっている様子がわかりますかね。右足、左足という感じで点と点で重心が移動している。

後は、ぎこちなさの表現、ということで肩がこわばっているのがまた上手いですよね。ハイヒールなんて履いたこともない、というのが一目で分かる。


銃撃を避けるシーン
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同スロー
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カメラが俯瞰から煽りへと移動していく、一部背景動画のカット。ここ面白かった。ティルトダウン+TBのカメラワークで、キャラの作画は寄ってるのかな。ここのカット正直よく分からんです。でも何か臨場感あるんですよね。後は、飛び込んだ時の空中での一瞬のタメが良い。




<3、レイアウト>

後日追記。




大体こんな感じ。「キャラの顔を2話以降で変更した」とwikiで見ましたが、(いつもどおり)言われてみればそうかなぐらいの感じであまり気にならなかった。園田さんの画もちょっと大人っぽくていいですね。でもやっぱ、キャラの顔って未だにあんま分かんないです。

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