GOMIstation

2025-1

2015年09月

世界の国からこんにちは」は、片山一良による万博パビリオンぶち壊し映像作品です。この作品では良いエフェクトが山ほど見られたが、これは見本市の作品の中で一番優れていると言ってもいいだろう。


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日本ロボが着地してからの煙。
影は2色使われており、立体的である。左右に流れていくタイミングも見事。


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ビームからの連続爆発。
爆発が生えるタイミングが素晴らしい。連続で速いタイミングながらも、上手く繋いでいる。温度表現は黄色のみだが、これまた内部に巻き込んでいくタイミングが上手い。この人はタイミングが非常に上手いですね。後ヅメも完璧。対して2カット目は、ややゆっくり目で透過光が効いている。


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格納庫が爆発していく、スペクタクルな絵面。
先ほどの爆発とは真反対に、爆発は内部から展開する。色使いが独特ながら、白コマの使用も的確。


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空中からのビームによる連続爆発。高瀬さんだろうか。
透過光を全面に押し出した後で、風船のような煙の膨らみを表現している。もう少し多めの枚数で見たいところではあるが、やや勢いで魅せるシーンということを考えるとこれでいいのかもしれない。


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交錯するビームが海に流れ弾のように突き刺さった爆発。
シンプルなフォルムであるが、煙の間の炎によって迫力が増す。また、煙と同じタイミングで広がる波の表現も上手い。押し寄せる波と上部に膨らむ煙、見事である。


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パビリオンの一角にぶつかる爆発。
内部で動くディテールに注目。これが温度表現の役割を担っている。赤色の楕円的ディテールが一度消えかけた後、再び広がるのが斬新で面白い。


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巻き上がる破片、シャギー(トゲトゲ)な煙。鴨川さんによる見事なエフェクト作画。
シャギーの形で発生した煙は、丸くじんわりと(後ヅメを効かせて)展開する。その後、落下した後に怒る水しぶきは、最初に落下した地点で大きく上がり、次第に小さくなる。そして最後に水中で大爆発をし、巨大な水しぶきを上げる。


メカ作画もさることながら、今回の作品ではエフェクトアニメーションの良さが際立っていた。その上、画一的でなく様々な多様性あふれるエフェクトが見れたのは、まさしく見本市という企画において素晴らしいことであろう。

 
[図版は、http://animatorexpo.com/ragnarok/から引用]

新世紀いんぱくつ。」は日本アニメーター見本市で公開された映像作品です。これはカメラワークが非常に良く出来てまして。特に前半部分。氷川言及あり(http://animatorexpo.com/news/125)。

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アヤコを見送るシーン。ここではカメラは客観位置。第三者的な立ち位置。


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これはイズミの主観POV。自動販売機でコーヒーを買ってハルカに渡そうというシーンなんだけど、バストショットを映さないことでコーヒーを握るイズミが緊張感を持つことを示す。


26]
☆ハルカの主観POV。ここでカメラに手ブレが入る。これがハルカの視線で、有している不安・恐怖というものをカメラで間接的に表している。


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34]37]
その後は、客観位置のカメラが続く。イマジナリーラインは跨がずに、ここではハルカを主に取り上げる。画像2では、不安の大きさをハルカのキャラ自体の大きさで演出し、逆に画像3では彼女を画面の下部に設置することで、その小ささ(不安)を強調する。会話の内容自体は日常に溢れているけど、郷愁や哀愁が感じられるのはカメラに起因する。

 
42]44]
画像1:ハルカ「どんどん人減っちゃうな…」を受けて、画像2ではイズミの目線で葛藤を表す。言わなくてはいけないが、疎開することを発言することは序盤のアヤコを見送る描写に現れている通り、ハルカを悲しくさせるものであり、イズミはそれを理解した上でためらっている。


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59]01]
10]13]
☆ここからが上手い。
画像1でアヤコはハルカに疎開する意図を伝える。これはハルカにとって予期せぬ事態であり、画像2の主観んPOV画面(画像1のポン寄り)は手ブレする。ハルカの動揺をカメラ越しに伝えているのだ。予期せぬ事態に動揺する口元を画像3で映した後、画像4から客観位置にカメラは戻る。客観位置に戻ると、会話の中でハルカは気丈に振る舞う。しかし、ハルカの動揺は彼女では制御できず、画像5のハルカ主観POVになると、すぐさまブレてしまう。彼女が友達に心配をかけまいと努力しながらも、やはり心の底では不安と不服があり、暗示をかけるように「仕方ないよね…」を繰り返す。画像6になると再びカメラは客観(ややハルカなめて)位置に戻る。ここでは、そのハルカの意志をイズミが察しており、ハルカよりも画面上部に位置することで精神的な優劣を表している。


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カメラは完全な客観位置へ。彼女たちではどうにもならない外部環境による選択の無さ、どうしようもない状況で立ち尽くすしかない様子を明確に表している。ここがエヴァ本来のニュアンスと通じる。エヴァパイロットは、搭乗することへの拒否権がほぼ無いに等しい。


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二人は幸せなキスをして終了(大嘘)。使徒の襲来による不安・恐怖に対してはどうしようもない状況であり、彼女たちに出来ることはこれ以外になかったのではないのかなと。世界の決定に対する、子供のささやかな抵抗である。


25]27]
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30]32]
33]37]
後半パート、曲が始まってからの手ブレ・ピンぼけは、彼女たちの持つハンディカムによるものであり、前半で見た演出的なブレとは異なっている。彼女たちが歩んできた、疎開前までの平和な日常を表しており、前半部の陰鬱さを少し吹き飛ばす。


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しかし、ラストは客観カメラによって、無情・非情なまでにハルカの孤独が強調される。結局のところ、使徒や使徒による戦闘とは無関係でいられない。安保法案、シリア難民等の世相も反映しているような感じがする。今までは対岸の火事であった「戦争」や「貧困」「飢餓」が、これからは他人事では済まされない領域があることを示している。


新世紀いんぱくつ。 -日本アニメ(ーター)見本市第32話

どんな整理の仕方してんだ。まあ気になったので。
アニメ(ーター)見本市で公開された作品から、気になったエフェクトを紹介。

・「ME!ME!ME!」(第3話)
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サーカスっぽいビームの追撃からの爆発と爆煙。山下清悟さんかな。
([訂正]山下さんでは確実にないというコメントを頂きました。では誰かということなんですが、分かってないです。この人じゃないかなあというのがあれば、コメントで書いて下さい)

爆発が連続し画面に押し寄せてくるので、迫力がある。アトランダムなビーム、電撃はショック的な使用か。



・「ヤマデロイド」(第10話)
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大男のパンチによって立ち上る粉塵エフェクト。
原画は確か外国の方だったような、名前失念。後ヅメによる煙のタメが素晴らしい。影は1色だけど、タイミングと前述のタメが上手いのですごく立体的になっている。上手いです。



・「I can Friday by day!」(第19話)
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ポップなエフェクト。まるで絵本が動いているみたい。
強い気流によって煙が流されていくのも見所。クロス光からの爆発もタイミングが良い。


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後ヅメが効いてますね、タタキも画面に沿って少しポップなものに。水面への映り込みはディテール少なく影の広がりだけで表現。破片が散って、水柱が数本立っているのも細かい。



・「偶像戦域」(第21話)
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HLVシークエンス。
横に膨らむ煙の展開が上手い。特に右画面では、レイヤーを3つほど重ねることによって、打ち上げ場所からの煙の遠近を表現している。煙色は2色ほど使っている。ロングショットなので、ディテールはさほど細かくなくフォルムとタイミングのみで表現している。


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煙の消滅が美しいシークエンス。
爆発が起き煙が発生した後、たちまち煙が消滅している。右方向からの強い気流によって、左からスッと煙が消えているのが見事。



・「神速のRouge」(第24話)
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CGミサイルからの爆発。
爆発部分はおそらく手書き。特に1カット目の爆発は内部に巻き込まれながらを表現しており、そのディテールも上手い。2カット目は勢い重視だが、ガヤと透過光のタイミングが上手い。



・「ハンマーヘッド」(第25話)
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道路を掘削しながらの爆煙。
ガヤ(破片)がいい味出してる。原画でこの分量の破片は厳しいだろうから、おそらく撮影足し。これぐらい破片があると壮観。対して、最後の押し寄せる煙は破片少なく、地面の下を通って(強い気流の中を)来たからそういう風にしているのかなと。タイミングも良い。


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クロス光からの爆発と煙。村木さんっぽい。
若干後ヅメの時のタメの特徴で、これがあると煙にすごく目がいくというか。残像がよく残るというか。暗い路地裏で爆発させると、壁面がその影響で明るくなって目立ちますね。破片もグーです。



・「ヒストリー機関(第29話)」
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望遠の核爆発。
これは輪っかの広がりといい、その輪っかが中央部の熱影響を受けているのが分かるように強い光で照らしてるのも上手い。周囲の煙については、密着+ガラス波と当初思っていたんだけど、同トレスではデジタル動画で割ってるらしい。どうやってんだろうね、この煙のじんわり広がる感じはすごい上手い。


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絨毯爆撃による爆発。
カメラワークが良い。中央を撮影してたんだけど、爆発に気付いて右にクイックPAN。そんで、中央部の爆発にも驚き、カメラが反動で中央やや左寄りに戻ってくるのが上手い。温度表現も透過光→赤→黒と良い。ポイントとしては、赤色部分が少し遅く減少していく所か。



・「ザ・ウルトラマン」(第30話)
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ここはメロスよりも、煙に注目。
内部から煙が広がって、その後下に巻き込まれていく。


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ジャッカルの大爆発。上手い誰だろう。
飛沫のような破片によって、肉体の飛散を強調している。その後の爆発は一度目で少しタメて、 二度目でさらに大きな爆発を描いており、迫力が増す。ディテールは少ないが、爆発の展開の仕方が上手い。





といった所で終わり。
エフェクトという観点では、やや物足りない(失礼)シーズン1、2でしたが、シーズン3でたくさん良いエフェクトが見れて嬉しい。特に、「ザ・ウルトラマン」「ヒストリー機関」「ハンマーヘッド」のエフェクトは素晴らしいです。見本市らしくエフェクトにも多様性ありという感じ。

[図版等は、http://animatorexpo.com/から引用] 

■プロ野球 大詰め

さて、ヤクルトとの一騎打ちが始まった。差は2ゲーム。巨人は残り7試合。

日程としては、24日広島戦(ホーム)、26.27日ヤクルト戦(ホーム)、28日阪神戦(甲子園)、10/1.2横浜戦(横浜スタジアム)、そして10/4ヤクルト戦(ホーム)だ。 

まずなんといっても、直接対決での取りこぼしは許されない。
ヤクルトとの残り3つ全て巨人が勝利したとしての優勝ラインはこんな感じだ。

    ヤクルト   巨人
76勝 5-0(.539) 3-1(.535)
75勝 4-1(.531) 2-2(.528) 
74勝 3-2(.524) 1-3(.521) 
73勝 2-3(.517) 0-4(.514)
72勝 1-4(.510)
71勝 0-5(.503)

引き分けを含めればこの限りではないが、相当に厳しいのが分かるだろう。巨人はヤクルト相手に3連勝したうえで、この数字なのだ。単純な確率論にはとどまらない。

ヤクルト3タテ+他チームとの勝敗を3-1以上でなければ、優勝は厳しいだろう。そうだ、とにかく厳しいのだ。V4がそこまで来ている、一時は離れすぎてしまったが、この土壇場で可能性が浮上する辺りまさしく正念場と言えよう。 さて肝とも言える、先発の予測からしよう。

24日広島戦    マイコラス(予告先発)
26日ヤクルト戦  高木勇人(中5日)
27日ヤクルト戦  菅野智之(中4日)
28日阪神戦    ポレダ(中4日)
01日横浜戦    マイコラス
02日横浜戦    ?
04日ヤクルト戦  菅野智之() 

今年の先発陣に最後の奮起をしてもらう時がきた。ポレダ中4日はおそらく強行するだろう。 こうなると、10/2横浜戦の先発は予測しにくい。高木勇人は横浜をめっぽう苦手にしていて、防御率は6.83だ。終盤の大事なゲームということであれば、回避せざるを得ないだろう。

そうなると、現在一軍登録ではない、大竹、田口あたりが筆頭である。横浜はロペス、バルディリス、筒香、梶谷と左右に偏りなくレベルの高い打者が揃っている。ということであれば、右打者の多さから大竹か。もしくは2人を長いイニング使う起用法もあるかもしれない。対横浜戦のデータを見てみよう。

大竹 1試合 0.00 7回 被安打3 失点0 自責0
田口 2試合 5.14 7回 被安打10 失点4 自責4

大竹は9/13(東京ドーム)に7回無失点の好投を見せている。対して田口は7/15(浜スタ)で4回2失点。9/5(浜スタ)には救援として、3回を投げ自責2。これを見る限り、先発は大竹が濃厚と言えよう。しかし、忘れないでいただきたい。10/2は魔境「浜スタ」である。ここは落とせないだけに、リリーフ陣も総動員だろう。

肝心な試合は、24日の広島戦、そして、26-27日のヤクルト戦である。この3試合は、当然のことながら、3つとも勝たなくてはいけない。24日の広島戦で負け、ヤクルトが勝てば、M4が点灯する。まずはここだ。そして首位直接対決。ここ2つを勝つと、今の段階よりは少しハードルが下がる。逆に一つでも負ければ、ゲーム差が埋まることはなく勝機はない。とにもかくにも今週が最も正念場と言えよう。


最近でよく見られるスタメンは次の通り。
1(中)立岡、2(ニ)片岡、3(遊)坂本、4(一)阿部、5(右)長野、6(左)亀井、7(三)岡本、8(捕)小林

一時期不振に陥っていた亀井は、最近5試合で打率.500をマークしている。対して、片岡、坂本、長野ら主軸は不調。岡本はまだ未知数だが校長。立岡は普通。

先頭バッターは立岡で固定していくだろう。ここは変えられない。3、4も変えにくい。岡本は使うのであれば、7番だろう。仮想スタメンとしては、2番が問題になる。出塁率、打率ともに低い片岡よりは、今乗っている亀井を使いたい。しかし、バントの機会が増えるのもまた事実であり、亀井のバッティングを活かせない。セカンドを守れるのは、吉川、寺内と豊富だ。亀井のバッティングを活かすのであれば、彼らの出場も伺えるだろう。

チャンスメイクを得意とするのは、亀井、立岡である。対して、得点圏を得意とするのは、長野、坂本、アンダーソンら。阿部、長野を原が下げるとは思えないし、この2枠に対しては諦めも必要かもしれない。しかし、一応、自分の理想打順を提出する。

1(中)立岡
2(ニ)寺内、片岡、吉川 or(右)亀井
3(遊)坂本
4(一)アンダーソン、阿部
5(右)亀井、長野
6(左)大田、長野、亀井
7(三)岡本
8(捕)加藤、小林
9投手

まず、アンダーソンは9月に入って打率4割台と調子がいい。外す理由がない。それに一塁守備という観点で見ても、阿部よりアンダーソンのほうが優れている。体裁を気にしないのであれば、4番はアンダーソンだ。2番は昨日のサヨナラ打を放った寺内も候補に入れたい。バント、守備、走塁全てにおいて高水準であり、2番打者としては適切だろう。吉川は守備に秀でているが、打撃にムラがある。もしくは、ここにライトで亀井を入れる選択肢もある。しかし、これは博打だろう。立岡が出れば、亀井はバントを余儀なくされる。

5番に亀井を据えるのが今の時点ではベストだ。出塁率、打率ともに高水準で言うことなし。しかし、得点圏で打てないのが気になるところではある。6番は、大田を起用したい。最近5試合の打率も3割後半と非常に安定している。7番は、大部分岡本だろう。彼があまりに打てない、ということがあれば、寺内、吉川の出場も考えられる。

キーパーソンは、アンダーソンと亀井と坂本だ。彼ら3人の働きによって、勝敗は左右される。原がアンダーソンと大田を起用するとはあまり思えないが、期待をしたい。まずは明日の広島戦だ。 

今回は、シルエットの表現と大畑さんについて。


<1、シルエットの基本的な役割・意味合い>

シルエットの基本的な役割は、「キャラクターがどのような人物であるか」をオシャレに表現できる部分にあります。この部分は「とらドラ!」OP1が分かりやすいので、まずはこれを。

■とらドラ! OP1「プレパレード」(2008)

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53]59]

まずは、シルエットの色に注目。

大河はピンク、竜児はオレンジですね。竜児は不良のような姿見だけど、実際にはとても温和であることは劇中で示されている通りで、このシルエットは、彼が持つ温和な性格を表現している。一方、大河には刺々しいショッキングピンクを使っているのは、彼女の性格に合わせているから、と直感的に分かる。


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このように、シルエットによる簡略化はキャラクターがどんな性格・性質であるか、極めて簡単にいえば、「こいつは青だからクールなキャラだな」のような印象付けに効果的な手段と思います。アニメキャラの髪色の役割と似ていますね。



<2、シルエットの動きを活かした、「踊り」の芝居>

シルエットではキャラクターの輪郭が強調されるために、「キャラの動き」というものがとても目を引く。そのため、踊りの芝居をするOP・EDも多く散見されるのもまた特徴の一つであって。具体例を何個か見てもらいたい。


■つり球 OP「徒然モノクローム」(2012)
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目、鼻、表情、服、その他のディテールを全て排除され、キャラの輪郭のみを描くことにより、焦点は「動き」そのものに自然と行く。魚というモチーフをシルエットにし、クレジットや背景で使っているのもポイント。

彼らの陽気さ・元気さ、お話自体の爽快さを小気味いい踊りによって演出するとともに、キャラ立ても達成している上手いOP。



■うる星やつら ED07「OPEN INVITATION」(1984-85)
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踊るラムちゃん。つり玉OPと構造は似ていて、やはりディテールの有無によって比較させる。これは点滅が特徴的かな。点滅を繰り返すことで、(色付きのラムちゃんが強調され)より可愛さが引き立つ。ちょっと見えない方がエロいみたいな、そんな感じ。


■東京アンダーグラウンド OP2「HEY YOU!!〜失ってはならないもの〜」(2002)
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(絵コンテ・演出:都留稔幸)

情念たっぷりの手の芝居が見所。ふんわりしてるスカートもいいですね。これを手掛けたのは、都留稔幸というアニメーターで、彼は『NARUTO』での活躍が有名でしょうか。この都留さん関連でもう一つ。


■GTO OP2「ヒトリノ夜」(2000)
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(絵コンテ・演出・作画:都留稔幸)

アクション作画に造詣が深くなくても分かる、キレッキレの芝居。シルエットによって確かに動きは強調されるけれども、それは芝居の細かさ・内容までを担保しない。鬼塚がパンチを避けて、一発ぶち込んで、キックしてというのが鮮明に伝わる。芝居が上手い。


このように、シルエットを採用することでキャラクターの動きが強調・誇張され、結果的にシルエットの使用はキャラクターが躍動的になるかどうかにも影響することが分かります。作画だけでも押しきれる場合はあるけれど、シルエットを採用すると、アクションがより際立ちキャラが躍動する。

このシルエットの効果を非常に洗練して使ったOPがありまして。日常系アニメOPの歴史において、このOPがエポックではないかなと。



<3、エポックメイキングな発明:「シルエット影」>


あずまんが大王 OP「空耳ケーキ」(2002) 
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(絵コンテ・演出:大畑清隆)

それが、「あずまんが大王のOP」です。これは後続作品に多大なる影響を与えたのではないかなと。特に、踊り跳ねる少女たちの後ろの影、このシルエット風の影(以下、シルエット影)がエポックな発明です。


59]53]

とてもシンプルな背景に、キャラクターと影のみという構成。この時点で度肝も抜かれる。シルエット影の使用の意図は、立体と躍動の演出でしょう。真ん中に光源があるかのような感じですよね。この影が凄まじい。


32]07]

さきほどまで散々見てましたが、シルエットでは動きが強調されます。ただ全部シルエットにしてしまうと、キャラクターのディテール的可愛さが消えてしまうのは言うまでもなく。キャラクターの可愛さと動きを両立させ、躍動感を出せているのは、このシルエット影のおかげ。


このシルエットの使い方は当時、画期的だったはず。というのも、今となって、これぐらいのシンプルな背景は「日常系アニメ」で散々に見られますが、当時は当然そんなジャンルは無く、4コマ萌え漫画も皆無に等しい状況でした。そうなると、シンプルな背景を使ったOPもほとんどないわけで、そもそもシルエット影自体を使う機会が無かった。「日常系アニメ」の黎明期たる2002年近辺で、このOPが画期的なのは必然とも言える。

そういう具合に考えると、4コマ萌え漫画の始祖たる「あずまんが大王」のアニメが後続作品(※特に日常系アニメ)に与えた影響は相当なものだろうと思うわけで。特にOPの影響は大きい。



<4、シルエット影の影響と一般化、その後の大畑OP>

そんで、ここからはその影響について見て行きたい。


特に分かりやすいのは、シャフトの演出家である大沼心さん。
彼は非常に影響を受けていて、手がけた作品に顕著に出ている。

■ひだまりスケッチ×365(第2期)「?でわっしょい」(2008)
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お手玉な感じでぽんぽんと女の子が飛ぶ。こりゃまあオマージュですよね。
オマージュだと思うけど、本家と見比べると落ちていく様子が足されているのが分かる。
新たな表現を追加して昇華しているのが良い。


■化物語 10話OP「恋愛サーキュレーション」(2009)
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有名な化物語のOP。シルエット影を効果的に使用することで、彼女の重層性を表している。
影も単調にならないように、カットによってスピードを変えてたり。
特に1カット目は、PAN方向に合わせて慣性が効いてる感じが出てて上手い。


■ef - a tale of memories「euphoric field」最終話ver(2007)
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全面シルエットの飛び込み。
2人の関係性について、想像が深まる。
最終話以外だと泡のように弾けていて、それも良かった。


後は、「夏のあらし」(※ED)ではシルエットオンリーで演出していたりする。こんな感じで、大沼さんはすごく影響受けてます。まあ大沼さんぐらい凄腕の演出家が影響を受けているのならば、その他諸々大勢の演出家にも同じように影響はあっただろうと。実際に、次のように日常系アニメでは散見される。



そんで、大畑OPのシルエット影の影響というのはもう沢山ありまして、少し探しただけでもこれだけ見つかる。「よく分からない所(背景)にキャラクターがいて、そこに影がつく」というのは凡そ大畑OPの影響と言っても良いのではないかと思う(※キャラの縁取りとかは4コマ漫画からの影響かもしれないから微妙な所だけど、まあ広義的に)。

46]16]
(とらドラ! OP1「プレパレード」(2008))


59]42]
30]41]
(上から順に「僕は友達が少ない」、「GJ部」、「SHIROBAKO」、「がっこうぐらし!」OP)

日常系アニメの乱発と、それによるシルエット影の一般化により、まあ珍しいもんではなくなってしまった。その結果、今大畑OPを見てもさほど驚きがない。特殊な物が一般化したことで、良くも悪くもオリジナルの特殊性が喪失してしまった。



さてその後の大畑OPはというと、更に洗練されたものになっている。


■WORKING!!(第1期)「SOMEONE ELSE」(2010)
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本家のシルエット影は一味違う。他のと比べるとちょっと遠目に付けてますね。影自体は、「あずまんが大王」と比べるとシンプルなものに。動き重視で、影とキャラの連動で立体を生み出す。さらに、クレジットや背景に被さる時に影が屈折してることで、キャラクターの存在・立体感がより増している。

58]17]

驚くのは、影が付いてる場所。「あずまんが大王」のシルエット影も(ビジュアル重視だったので)さほど厳密ではなかったけれども、これだけずらしているのに違和感ないどころか立体を感じられるのはまあスゴイ。


■WORKING!!'(第2期)「COOLISH WALK」(2011)
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2期も同じく、やはりこの影の屈折・曲がり方が上手い。
「キャラ→クレジット→BG」と段差が設けられているので、奥行きが出ている。


■WORKING!!!(第3期)「NOW!!!GAMBLE」(2015)
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37]50]

山田ァ!うざ可愛いじゃねえか!
アクションつなぎからの着地のキレ、そして髪の毛のリアクションが良い。
こういうところで、シルエット影は大活躍する。


シルエットという部分に絞って、大畑清隆という演出家について少し見てきました。遅筆だとか色々言われますが、それを補って余りあるくらいには才がある。各話演出もいいんだけど、個人的にはOPですね。OPのコントロールは抜群にずば抜けている。最近は、「魔法少女リリカルなのはViVid」「WORKING!!!」で久々に各話演出を担当しているので、これから各話演出・コンテを多くやってくれるかもということで期待。

何か上手くまとまらないが、こんな感じで…
大畑清隆と言えば、「シスプリ」のEDも必見です。岸田隆宏との名ED。



<参考文献>
原作のラストまで描ききる! TVアニメ「WORKING!!!」鎌倉由実監督インタビュー
大畑清隆 OP・ED集

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