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2025-1

2016年04月

京アニは、OPアニメの演出でしばしばカメラをぐるっと回す演出をします。


■『中二病でも恋がしたい!戀(2014/TV)』 OP
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(モリサマーえろい)

さて、回転させることで、まずぼくらが感じられるのは”キャラクターの立体感”です。キャラクターの周りをぐるっと回ることで、様々な角度から見ることができる。平面的な画面よりも、リアルさが増す。
 
まずは、こういったキャラクター・状況を立体的にする効果があります。キャラクターを立体の空間に置くことで、キャラクターにもその状況じたいにも存在感や肉感が出てきます。


このような回転演出が、近年の京アニOPでは多く見られます。


今回は、「この回転演出を、京アニが多用する理由」をについて少し考えていきたい。

 

まずは、この回転演出なるものを京アニに持ち込んだキーパーソンについて。
おそらくそのキーパーソンは、木上益治(きがみよしじ)さんです。

木上益治さんはシンエイ動画出身で、現在は京アニの重鎮のアニメーターです。最近はコンテ・演出中心で関わっていますが、初期は原画マンとしての活躍が目立ちました。「AKIRA」に参加した人、というイメージを持ってる人も多いんじゃないのかな。

さて、原画キャリア初期にあたる「さすがの猿飛」では、破天荒な作画を披露しました。背景動画をよく使います。直近だと「中二病でも恋がしたい!戀」OPとかですかね、まあ相当に上手いです。

■『さすがの猿飛(1983/TV)』 16話
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小気味よいタイミングの追っかけ作画。爺さんが着地するときは意外とタメており、緩急がある。

■同15話
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(※パートは推測)

背動もめっちゃやります。左はメタモルですね。一瞬のタメが良い。
右は回り込みながらのQTBで、眼鏡っ子と肉丸の敵対感を描写。眼鏡っこ強そう。


このように、彼は金田系として、けっこうハチャメチャな作画をしていました。その後は落ち着いた感じで芝居メイン。「中二病」みたく、今でもド派手なアクションとかやる印象ですが。


それで、この木上さんが回転演出を持ち込んだと思うのは、演出を始めてまもない頃の「パワプロOP」に、その演出が垣間見えるからです。「パワプロOP(8~10)」は京アニが担当したことで有名ですが、木上さんも深く関わっています。

■『実況パワフルプロ野球9(2002/PS2)』と『同10(2003/PS2)』OP
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カメラはパワプロくんの周囲を回りながら、TB。パワプロくんが立っている球場の広大さ、プロ野球じたいの壮大さ、はたまた試合前の緊張感がよく出てますね。


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ちなみに、「各球団の選手同士が順繰りに登場する」という、今のパワプロOPのお決まりは『9』の時に既に木上と京アニが作っています。このお決まりが使われるようになったのは、2011ごろからかな。本題ではないので詳しくは書きませんが、目パチとか場面転換の手法がオマージュされてる。


特に2012はうまく昇華されていて、めっちゃカッコイイ。お気に入り。

■『実況パワフルプロ野球2012(2013/PS3)』OP

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疾走感溢れるカメラワークからのマッチカット。このOPはテーマもめっちゃ良いです。ゲーム本体はあれだけど。2012はすごく「8~10」とよく似てます、これで参考にしてなかったら嘘だぜ。
 


さて、本題に戻ります。パワプロOPの仕事をどういう経緯・内容で受けたかは定かではありませんが、とにかく木上さんはここに「回転」を持ち込みました。これには、どういう意図があったのか。

僕は、「野球というスポーツの爽快感や壮大さ」を表現するためだと思う。

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相手に強打されても、ダイビングキャッチで取ることができる。打ち損じでも、ヘッスラすればセーフになりうる。サヨナラがかかった場面ともなれば、応援にも熱が入り、球場全体は異様な雰囲気になる。


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要するに、野球の魅力の一つには、異様な熱気がある。そこには、試合にかける選手の思いや、観客の興奮が入り混じって、球場全体は異様な雰囲気に包まれる。この部分を表現するために、木上さんは回転演出を使ったと考えています。


このように、京アニにおける回転演出の土台は木上益治が作りました。しかし、当然ながら京アニは野球のアニメばっかり作っているわけではない。萌えやコメディからシリアスまで、幅広く扱っている。そして、すべての作品が熱気に溢れているわけでもありません。そのような中でも、回転演出は顕著に見られる。これはいったいどうしてか。どうして京アニの演出家は、回転演出を使うのか。


それは回転演出の根底・本質に、「背景動画の持つ気持ちよさ」があるからです。



さきほど少し触れましたが、木上さんはアニメーターとして背動を多用します。
ここから、背動の気持ちよさを紐解いていきたい。

■『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望(1995/劇場)』
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終盤。吹雪丸としんのすけは敵の銃撃をかわしつつ、馬で駆けていく。
2カット目はしんのすけたちのPOVですね、疾走感が見事。馬の浮遊スロモも上手いなあ。


■『ドラえもん のび太と翼の勇者たち(2001/劇場)』
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ええと、これは確かラストの大会だったかな。狭い空路を低空飛行で突っ走っていて、迫力満点。ゴツゴツした岩が迫ってくるのが怖いんですよねえ、すごい臨場感です。


■『中二病でも恋がしたい!戀(2014/TV)』 OP
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迫力ある回り込みカメラワークから、キャラクターへの寄り。
走っている六花のガクガクする感じ(一歩進んで少し戻る)が、戦闘の緊張感を醸し出す。


木上さんの背動作画はこんな感じ(もちろん背動以外も上手いけど、ここでは割愛)。背動の持つ、気持ちよさみたいなものは分かってもらえたと思います。なんか爽快感ありますよね。


ですが、汎用性の低い背動を演出に持ち込むことは、作画リソースの面を考えても難しい。それに、ちゃんとした背動って誰でも書けるものじゃない。パースは刻々と変化するし、それに伴って背景とキャラのバランスも取らなきゃいけない。一言でいうと、「ちょームズイ」わけです。だけど、木上さんは、背動を何とか演出に持ち込めないかと試行錯誤したと思うんです。

「ちょームズイ」背動がもつ爽快さ・壮大さを、もっと多くの場面で使いたい。すなわち、一つの演出手法に落とし込みたいのであれば、木上さん以外の人でも使えるように、難易度を「ふつう」くらいに下げる必要があります。そこで、木上さんは、背景動画の一番の特徴であるパースの変化を抑えるために、画面が動く方向を一つに絞った。その結果、「回す」という手法に繋がったと思うんですよ。CG技術も発達してきて、昔より回転させるカメラワークを描くのが楽になったというのもあると思う。


その結果として、京アニOPで多用されるようになったのではないのかな。
背動の根源的な気持ちよさを、リーズナブルに演出できるので。


■『けいおん!(2009/TV)』 OP02
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和気あいあいと演奏、光の差し込みも良い。バンドの楽しさや一体感が伝わってくる。


■『フルメタル・パニック ふもっふ(2003/TV)』 OP
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3D背景での回転から、俯瞰方向にTB。くつろいでる軍曹がかっこいい。
逆光もいい味出してますね。


■『中二病でも恋がしたい!戀(2014/TV)』 OP
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タイトルぐるぐる円運動の疾走感。慣性で少し左に反動を受ける六花の描写も丁寧です。
速い回転の分、てくてく歩きはゆっくりに見えてかわいさ増してる。


■『響け!ユーフォニアム(2015/TV)』 OP
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俯瞰からの大胆な回り込みカメラワーク、ティルトアップ+TU。
オーケストラの熱気・壮大さを表現。見事の一言。



背動でしか出せない壮大さ・疾走感を、それ以外の方法で出す。
それが木上と京アニが生み出した、回転演出だと思うのです。


<参考文献リスト>
京都アニメーション制作「実況パワフルプロ野球OP」のスタッフリストをちゃんと調べてみた-ぬるヲタが斬る
2015春アニメのカメラワークいくつか -大匙屋

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背中はいずり移動。バリ上手い。この後の足を掻く仕草も良かった。


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ふくらはぎの肉感と動きがリアル。フェチに溢れている。


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コメディチックな動き。


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漫画的にマチを描くことで、ナツとの比較になる


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逃げるナツ。混乱しながら、というのが上手く出てるなあ。もっさりした感じも良かった。ここバリ上手い。ここはレイアウトもいいですね。


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ここは左右の首振りがエロかったですね。姿見よりも首の振り方が一番エロイと思った。


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手すりを越えていくマチ。ああ、確かに片足だけ越えると、袴は引っ張られるよなあとか思いながら見てた。引っ張られた袴をちゃんと手で抑えながら、もう片方の足を上げていく。ゆったりと丁寧だった。

■田中宏紀さんについての記事

この前とある所で話していたところ、どうにも田中宏紀のエフェクトは自分の想像とは大きく異なっているらしいことが判明した。うーむ、話を聞く限り、田中エフェクトは3区分ほどありそうで把握が難しい。「なのはvivid」の鏡餅ケムリが通常スタイルだと思っていた(というかまったく分からん)自分では、時間がかかりそうなので、

お話を伺った方に頼み込んで書いていただいた。ありがたい。ご紹介。

田中宏紀煙について - iwakawaのブログ
http://blog.livedoor.jp/iwakawa_sakuga/archives/5658717.html

gif盛りだくさんで楽しい。

僕にとっては、「なのは」「血界戦線」あたり(2014.15)の鏡餅エフェクトが田中さんの煙だと思っていたので、そこそこ衝撃的。というか、スタイルめっちゃ変わってる。3個ぐらいある。田中さんの特徴は、衝撃波・爆風・気流の流れかなあ。田中さんはファンも多けりゃMADもアホみたいに多いんだけど、整理した文章は少ない印象ですね。なんとも、もったいない。

>>0、はじめに<<

「とにかく考えて」というのは、誤魔化しだ

エフェクトの見方をどうすればいいのかという事をたびたびコメントで聞かれていて、そのたびに一応考えて自分なりに答えるんだけど、ごまかしていた部分もあると思った。例えば、どういう風な着眼点で見ればいいかという点において、「とにかく考える」「自分なりの言葉で表現する」「何度も見る」と言っても、何も知らないときの自分なら理解もできず、エフェクトに興味が持てないだろう。すなわち、誠実でないから伝わっていないのだ。求められているのは、その考え方なのだから、とにかく考えろなどとのたまうのは、誤魔化しにしかすぎない。ということで、自分が実践している方法を列挙する。


<エフェクトの見方:チャート>
1、エフェクトを見つける
2、そのシーンだけ10回くらい見る
A1、直感で答え・考えを出す(その1)

3、要素に分けて、検討する
4、そのシーンがなぜ良いのかを考える
A2、ちょっと考えた答え(その2)を出す

6、再度見直す
A3、最終的な答えを出す
(※6以降は余力があれば、やってもいい)


<エフェクトの見方:詳細説明>

>>1、エフェクトを見つける<<
まずは、自分の嗜好にあった、「あっこれなんかいいな」と思ったエフェクトをまずは意識的に見つけようとすることだ。それは、深夜アニメでもいいし、金曜ロードショーでもいい、はたまた実写映画でもいい。とにかく、自分の直感でビビッときたシーンを抜き出し、メモっとくのである。

[ついでの手法1:メモの仕方]
メモはアナログでもデジタルでもいい。ぼくはパソコンでメモするのが苦手なので、B5のリングノートを使ってよかったシーンを抜き出している。このメモは、大げさでなくていい。例えば、SAOだと「19話のBパート後半、アスナが戦う最後のほう」とかおおまかに記録しておき、後でメモを頼りに映像を見直せばよい。決して細かく書こうとする必要はないが、慣れてきたら動画時間をメモしとくと見直すときに楽になる。

最近はTwitterという便利なメモ帳がある。時間がないとき、メモするにも面倒なときには、後で自分が検索できるように、「カバネリ爆発Bパート、最初のほう、列車突っ込み」などと(自分が分かるように)記録したら、最後に「メモ」と付け加えればよい。お気に入りマークをつけておくのもまた便利だ。



>>2、そのシーンだけを10回ほど見る<<

録画には、PS3(トルネ)やブルーレイレコーダーなどを使用している人が多いだろうか。ぼくはブルーレイレコーダーとHDDを使って、アニメを録画している。できうることなら、HDDで自分のパソコンと共有すれば、映像データの確認がしやすいのでオススメである。ただ、どの機器を使ってもやることは同じで、1でメモったシーンを10回ほど見ることだ。ここでは、まだ力を入れず、なんとなくボーッと見る感じで良い。「あーやっぱカッコいいなー」程度で構わない。シーン全体の雰囲気を掴むことのほうが重要だ。

10回としたが別に何回見てもいい。最低限10回見ないと分からないかなと経験則で判断しただけなので、もっと見たい人は見てもいい。1シーンならだいたい5秒程度でそれを10回だから50秒、1分ぐらいだから苦労はないと思う。

さて、具体的として1つ映像を出す。

練習問題1:『ブルージェンダー』 OP
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まずは、心の赴くままに、なんとなく見ればよい。小難しいことをここでゴチャゴチャ考えても詮なきことなので、あまりしない方がいいと個人的には思う。「あー煙かっこいいなー、なんかぶわっとなってるのがいいなー」などと軽く感じればよい。これが最初の自分なりの考え(その1)である。

[ついでの手法1:繰り返し見る方法]
gifにしてあげるのが一番楽である。さいきんは、映像データを勝手にgif化してくれるフリーソフトもあり、そういうのでgifにしてから、見直すと便利だ。私的利用の範疇ならば、著作権侵害にはならない。このブログはグレーゾーンだけれど。

ゆっくり見たいというひとは、動画再生ソフトの機能を使い、コマ送りすればよい。これはMPC-HCというソフトをオススメする。キーコンフィグさえ設定すれば、あとはコマ送りも早送りも自由自在だ。ただ、最初からコマ送りはやめたほうがいいと思う。あくまで、全体の雰囲気を掴んでからでないと意味が無い。マクロからミクロへ、大きなところから小さい部分へ、これはどんなことでも同じだ。

この時点で一度、先ほどのように自分の答え・考えをまず脳内に出す。できれば、これもメモっといたら良い。何よりも大事なのはアウトプットだ。完全な正解など、この世には存在しないのだから、まずは繰り返し見て、素直に感じたことを答えとして出せばよい。


さて、だいたい10回ほど見れば、シーンの雰囲気がわかってくる。つまり、このシーンがどういう要素で構成されているかがわかってくる。それは煙であったり、火花であったり、破片であったり、する「内容的な要素」と、透過光であったり、ダブラシであったり、影の付け方であったり、する「技術的な要素」の2つだ。



>>3、要素に分けて、検討する<<

2で述べた、2つの要素、内容と技術の2つに分けて、シーンを検討していく。

練習問題1:『ブルージェンダー』 OP
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さて、このシーンを要素に分解していこう。
前述のとおり、「内容」と「技術」の2つに分けて解釈していけばよい。実際にやってみよう。「内容」のコツは、「何が何をして、このエフェクトが生まれたか」ということである。すなわち、原因を具体的に考えればよい。「技術」のコツは、エフェクトに限定すれば、タイミング(速いか、じんわりか)と影の数、あとは透過光ぐらいをまずは考えればよい。

[ついでの手法3:技術の知識]
ダブラシ、透過光、スーパーインポーズなどの知識がない最初は、「なんか透けてる」「なんかすごく強く光っている」「なんか陽炎みたいに揺らいでいる」といった感じに、知識にこだわらず、そのままの印象を技術の要素として考えればよい。その後で、技術の用語が気になれば、MSCや井上ジェットなどの用語集で確認すればいい。


[内容の要素]
・戦車が砲弾を撃った
・その衝撃(砲弾の爆風?)として、周りに煙が広がっている

[技術の要素]
・ピカッとするコマが入っている
・煙は影1色だけ、シンプル
・最初はぐわっとした感じで尖っているが、その後は柔らかいフォルムになっている
・煙が発生した後、なんかゆっくりになってる?

ここで大事なのは、正解を出すことではなく、なるべく具体的にすることだ。僕は、衝撃の影響で周りに煙が広がったと考えたがこれが正解がどうかは分からない。極端に言うと、そんなことはどうでもいい。なにか原因があって、煙が発生し、だからこんな風に煙が動いたんだなと具体的に推測することが大事だ。

正確なことは専門家じゃないとわからないし、素人がそこまでやる必要はない(興味があれば調べればいい)。なにか原因があって、だいたいこんな感じになってるんだな、という程度でオッケーである。要素といっても、細かくやる必要はまったくない。ゴチャゴチャすると混乱するから、2つの要素に区分するだけだ。

技術の要素も同じく、自分なりの表現で、印象を言葉にしよう。「ぐわっと」「しゅっと」などの擬音語をよく自分は使うが、それはいちばん自分にとって親しみやすい、つまり分かりやすい表現だからだ。映像を言語化するときには、「分かりやすく」「具体的に」することを念頭に置くとよい。小難しくする必要性は一切ない。


さて、以上のことを頭に置いて、スローを見てみよう。内容については、ある程度吟味が済んだ。では、技術の要素についてもう少し深く見ていこう。時間を区分して見ていくと、やりやすい。

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撃った直後:発射の衝撃によって、下の砂場からはごろもフーズみたいな輪っかの形から煙が発生している。煙が発生するまでには、ほんのわずかしか時間がなく(枚数も2、3枚だ)、急速に発生したことが分かる。

撃った直後~終わりまで:最初は尖ったフォルムだが、その後はやわらかくモコモコしたフォルムになっている。影や煙全体はそこまで大きく動いてないので、その場で煙が残っていることが分かる。


大事なのは、「◯だから、△が分かる」というフレーズだ。ここも正解を出す必要はないが、ほとんどの絵は人が書いたものだから必ず理由があり、その理由を自分で考えることが最も大事なのだ。ここでいえば、「何故尖った絵があるのか?」「何故、発生した後の方の時間が多いのか?」ということに対する理由を考えることが大切だ。



>>4、そのシーンがなぜ良いかを考える<<

さて、聡明な方ならもうお分かりだろう。そう、後は最初に分けた内容の要素と技術の要素を一緒にして、考えればよいのだ。この時点で、取りこぼしている要素があれば付け加えればよい。

[内容の要素]
・戦車が砲弾を撃った
・その衝撃(発射による爆風?)として(よくワカラン放置)、周りに煙が広がっている
・そういやここって、砂漠っぽいな
→だから、この煙は砂埃かな

[技術の要素]
・ピカッとするコマが入っている:これはショックコマ
→砲弾の閃光を表現しているのかも!
・煙は影1色だけ、シンプル
→砂埃を表現するため?それとも、アニメーターの描き方?
・最初はぐわっとした感じで尖っているが、その後は柔らかいフォルムになっている
→煙がすごい速さで発生して、その後はその場に漂ってるんじゃないのかな~?
・煙が発生した後、なんかゆっくりになってる?
→漂ってるのを表現したいから、ゆっくりにしてるのかも!


あとはこれをまとめて、印象に残った理由とすればよい。

戦車が砲弾を撃つシーン。砲弾を発射にした後の爆風がすさまじい勢いだったことにより、煙は瞬間的に発生し、急速的に広がるようになった。その後じんわりとしたタイミングになっているのは、煙がその場に残っているの表現するためだ。最初、煙は瞬間的に広がり、その後じんわりとその場を漂う。これら2つのタイミングの違いによって映像にメリハリ(緩急)が生まれ、とても気持ちのいいエフェクトとなっている。


という感じになる。正直、こうやって整理するのが一番苦労する。ここまではやらなくていい。その前まででいい。これは疲れる。


さて、以上で自分のエフェクトの見方は説明し終えた。もちろん、これが唯一の正しい見方とは思わないが、エフェクトの見方がよくわからないという人に、少しでも参考になれば、幸いである。


■『シン・ゴジラ(2016)』 予告
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この辺はお馴染みの戦闘風景ですね
射出される弾丸、砲身の軌道、この辺は庵野さんめっちゃこだわります


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予告の中でいちばんお気に入りのカット
崩れゆくコンクリート擁壁(間知ブロック構造)に押し潰される家屋、倒れる電柱の細かいディテール
右下の瓦礫・破片ジャンプはウソっぽいのに、全体で見るとリアルになっちゃう不思議

割れるビルの窓ガラスはスローモーションっぽく描かれる
これガラスの材料はなにを使っているんだろう、砂糖?


とりあえず以上です

「シン・ゴジラ」は311の風景・ショックをどのように残すのか、311に対するアンサーがメインテーマになりそうです。この作品の意義というのをいろいろ考えてみたけれど、いちばんは自分のような特撮をあまり知らない人たちに、庵野作品ということで、より広く知ってもらえる、興味を持ってもらえるということじゃないかなと思います。元からどっちも好きな人もいるだろうけど、もっと多くの人と自分の好きなことを共有できる。


岩明均の漫画、「ヒストリエ」の中でこんなシーンがあります。

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(「ヒストリエ」第三巻:161頁)

という感じ。ぼくら受け手側だけでなく、きっと作っている人たちにも得というか、なにか掴めるものはある。それが、特撮の本来的な楽しさだと思うんですね。前々から作っている人たちは楽しんではいただろうけど、特撮の楽しさというのを今さらに享受している、と思います。それで、庵野さんの心が少しづつ癒えていくといいなと思っています。

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