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戦え/A conclusion is the place where you got tired of thinking.

2019年08月

エヴァ8話の増尾作画記事のときに、エフェクトアニメーターの村木靖、鴨川浩の特徴をそこそこ調べたので、ついでに載せておこう。



<村木靖の煙>

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(※参照画像はすべて「劇場版パトレイバー2」より)

村木煙の特徴は一言でいえば、「ミルフィーユ」のような層です。簡略図で描いているように、基本的にたくさんの円が微妙にずれて全体のフォルムを形どる。その結果、まるでミルフィーユのように、何重にも層が映る。これが大きな特徴、今も変わらない特徴です。もう一つの特徴として、「光源重視のカゲ」です。光源をとても重視されていて望遠だとほとんどカゲは下側なのですが、近い爆煙・広角カメラのシーンだと、左画像のように上側にカゲがつくこともある。まあきわめて写実的ですね。





さて、次は鴨川浩へといこう(※ちなみに、かもがわ「ゆたか」である。そこそこファンなのに、ずっと「ひろし」と読んでいた)。

「コードギアス」で一躍有名になったエフェクトアニメーター。「舞い上がる破片(※爆発した瞬間に、破片が上に飛んでいく)」が有名だが、煙にも特徴があるので見ていこう。



<鴨川浩の煙>

鴨川浩-エフェクト-煙001
(※参照画像はすべて「新世紀エヴァンゲリオン」より)

簡略図1のように、「クルミ・ディテール(※模様を指して)」を使うことが多い。全体のフォルムがあって、そこにディテールを入れ込んでいく感じ。膨張面の表現でしょうね。これじたいは多くの人が使う。次の方が大きな特徴です。もうひとつは、彼の煙には「トゲトゲ煙」があります。簡略図1、2ともに、オレンジ部分がありますがこれです。丸っぽい煙のそばに生やされることも多い、どちらかというと付随的な煙。画像だと右ですね。これは衝撃の表現だろう。この衝撃表現は使う人が少ないなあという感じ、爆発でもよく使います。


お二人ともに、もうベテランの域ですが、まとまった文章や記事が本当に少ない。特徴や構造の整理として、自分も上げていなかったので少しまとめておく。

この世界の片隅に(2016/劇場)



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片隅でいちばん印象に残ったのは、このカット。爆発から絵の具へにシームレスにマッチカットされていく。荒々しい筆の叩きつけは暴力的に映る。



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放射状に広がっていく焼夷弾


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機銃による攻撃で地面や木が抉られていく。この前後の機銃によって街が傷つけられるシーンは、その削られていくタイミングがきわめて光っていた。




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馬鈴薯だったっけ。この辺のシーンも好きですよ。楽しそうなすずさんがいい。


★★
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PVから大好きなワンシーン。まな板バイオリン。馬鈴薯から楽しくなってきているすずさんを見て、いいカットだなあと。レイアウトが良い。画面右のダブラシ煙や柱が、すずさんに目を向けさせる。つまり、画面の中で、「もうひとつの画面」を作っているというわけです。

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手前の柱やダブラシ煙はそういったために配置、レイアウトされている。




片隅といえば──

やはり、僕にとってはキャラデがすごいなあという映画でした。
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感覚的ですが、頭身が3、4頭身ぐらいしかないのに、なんかうまいこと写実的なアニメになっている。正確には言えないけど、少し頭の大きさなんかが変わっただけで、このカットは成立しない気がする。なんで、これでかわいらしい女の人に見えるんだろうね。


このキャラデも相まって、やはり家の中のレイアウトは相当に工夫されていた
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四畳半の居間に4、5人いて大変に面倒くさそうなレイアウトばかり。二枚目の俯瞰画面は特に良い。こじんまりとした感じの中でも、障子は開いているので、さほど窮屈になってない。レイアウトについては、相当に大変だったと思う。



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すずさんが泣いた理由、怒った理由は、他の人ほど分かってない気がする。すずさんは最後までやり切るつもりじゃなかったのかな。だから、ずっと笑っていたし、はるみちゃんと右腕を失って絵が書けなくなった後も何とかぎりぎりで生きていた。

つまり、よう戦争はしらんけど、こんな中途半端なら最初からやるなという風に、すずさんは思った。はるみちゃんと絵を失った時点で、「最後まで戦い抜く、だからすべてに耐えられた」というすずさんの言葉には偽りなく、そういう思いで生きてきた。たぶん、本当に自分一人になっても抵抗するつもりだった。

と思っていたら、終戦。もう戦えなくなってしまった。なんで、こんなにボロボロになって耐えてきたのか。そんな中途半端さに、激情した。




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この辺は圧倒的でした。ここまで、まったく残酷描写のなかった片隅において、きちんと毒というか、現実を最後にぶっ込んでくるところはすごい。すずさんもとりあえずは幸せになっていくんだろうみたいな最後でしたから、そういう安堵していたところに来ると余計に衝撃が走った。

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