はじめに

アニメの違法視聴というのは、言うまでもなく、犯罪行為です。悪いことです。
アニメーターが一生懸命描いた絵を、ネットにアップロードされた違法動画で見るというのは、何とも馬鹿げた話です。
でも、それが「ビデオグラムの売上」と関係性があるかどうかといわれると微妙なのです。



そもそもどうしてビデオを買うのか?

私達、アニメファンはどうしてDVD、Blu-ray、LDなどのビデオグラム(以下ビデオ)を購入するのでしょうか?
もちろん色んな理由があると思いますが、一般的には、「何度も見たい作品であったから。」 ではないでしょうか。
何度も見たい作品であるから、そのビデオを購入する。一見何処もおかしくないように感じます。
しかし、何度も見たいのであれば、まず録画をしているはずです。
今では機器も発達し、HDDなどで高画質に録画をすることが可能です。しかも、深夜アニメの大多数は人が普段寝ている時間に放送します。ならなおさら録画しないワケがない。

どうしてビデオを買うのか。一つには、録画環境がない、というケース。しかし、先述した通り、最近は安価でHDDレコーダーなるものは購入できます。このケースは、全体(ビデオを買う理由)の5%程度の割合ではないかと思います。
2つ目には、 修正が期待できる、期待する作品であったから。最近のケースでは、「進撃の巨人」などがそれに当てはまるのではないでしょうか。しかし、これもそこまで多くない。5%程度。
3つ目には、ビデオについてくる特典目当てというケース。これは最近多くなってきました、劇場版でも「ワンピース」や「トリコ」などでは0巻商法をやって成功しています。でも始まったのは最近なので、そんなに多くない。
4つ目には、別メディア(漫画、ライトノベル)等で既にファンになっていたというケース。そこそこ固定顧客層が決まっていて、売上に反映されやすいと思います。これは結構多いと思う。

最後には、やはり「何度も見るべきだ、と感じたから」という理由も入ります。

また考えられる理由としては他にも「面白かったから」というのが考えられますが、これは購入理由としては弱いのです。例えば、最近で言うと「人類は衰退しました」「日常」「はたらく魔王さま!」のように比較的面白い作品でもビデオの売上はそこまでではないというケースは多々あります。(※「はたらく魔王さま!」に関してはまだですが、そうなるのではと予想しています。)
これは、サザエさんは面白いけれど、ビデオを買うかと言われるとそこまでではない。つまり、一回見たら消費したと感じる作品性のためなのです。 

まとめると、別メディアで既にファンになっていたケースと、「何度も見たい」というケース、これら2つの理由がビデオの購入につながっていると思います。



違法視聴をしてもファンになることはありえる

例えば、Aくんが「コードギアス」 について違法視聴したとしましょう。 違法動画というのは、大抵外国人の方が挙げているケースが多く、大半は外国語の字幕が付いています。Aくんは、「コードギアス」にハマったとします。もっと綺麗で大きな画面で見たい、そう思うAくんはTSUTAYAへと足を運ぶはずです。

1ヶ月が過ぎ、すっかり「コードギアス」 の虜になったAくん。「亡国のアキト」に文句を言いながらも、やはり劇場に足を運んでしまう。「C2」のフィギュアを買い、DVD‐BOXも買い、劇場へスピンオフ作品も見に行く。もはや、シングル消費者ではなくマルチ消費者にまでなっています。

これは新規顧客の獲得なのではないでしょうか?

当然、こうならない場合もあります。Bくんは、「コードギアス」を見たけれど、ハマらない。一回の視聴で、そこそこ楽しんで終わり。こういうケースも考えられます。

しかし、可能性の問題としては、Aくんのようなケースも考えられるのです。

「におい」という無料の宣伝に誘われて、たこ焼きを買うように、ドモホルンリンクルで無料お試しセットがあるように、アニメに1話無料というのがあっても最終的に損にはならないのです。

そのことに気が付いて、今では ニコニコ動画やバンダイチャンネルなどで動画の配信が進んでいます。
「におい」を嗅がせて買わせることは、宣伝費もかからず良い手段だと思ったのではないでしょうか。



アニメだけではない「におい」の増加

大きな具体例として、ガンガンオンラインという媒体があります。
これは、最新話もしくは第一話をお試しで読むことができるというものです。自分と波長が会う作品があれば、書店まで足を運びそれを購入する。両者に関してメリットがある方法だと思います。出版社は、購入機会のウインドウを増やすことで、購入を促進できます。消費者側は、作品の選択幅が広がり、より安い費用で面白いマンガと出会う可能性が高まるからです。



最終的に行き着くのは「作品に力があるかどうか」

面白い、何度も見たい作品というのは作品として力があります。そういう力がある作品は、例え違法動画が野放しになっていても、ビデオの売上にはさほど関係ない、むしろ機会のウインドウを増やすことに繋がりかねないので伸びる可能性まで考えられます。

といっても違法視聴・動画自体を肯定しているわけではありません。れっきとした犯罪行為であり、今行なっている人々は深く反省をしてすぐさま止めるべきなのです。

しかし、そういった「違法視聴組」だけではなく、違法動画に対してきちんとした対策を取ってこなかったアニメ業界にも責任があります。

海外の視聴者のために、一週間無料で配信をしてあげる、それを過ぎたら有料だけど配信してあげる。外国人のための公式ページを作る、違法動画の削除に業界全体で声をあげる。これ以外にも、いくらでもやりようはあるのです。

しかし、対策が取りづらいのもまた理解できます。違法動画サイトは、増えていく一方ですし、次のような問題もある。例えば「MAD」「AMV」のような、個人の投稿動画だけれども本編の映像が使われているモノについてはどう判断すればいいのか。

僕個人の意見としては、アニメに対しての接触機会が増えるので制作会社にとってはプラスになると思いますが。

では作品に力がない場合はどうすればいいのか。そのような作品は、違法視聴があってもなくても売れないような気がします。