お待ちかね。回り込み作画の時間だよ!

今回タイトルにあります、「擬似的な」というのは、(実際には、カメラが回り込んでいないのに)回り込みをしているように見えるという意味です。まずは、BG(背景)やbook(背景の前に置かれる背景素材のこと)で、キャラを回り込んで撮っているような手法でやってるカットから紹介。


■『これはゾンビですか?オブ・ザ・デッド(2012)』 OP
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BG引き回り込み。BGを右に高速に引いて、リピートしてる。(※ちょっとレンズは、魚眼っぽい)映像演出的には、3人のキャラを回転させて、3人の違いを描写しているシーン。この回転表現はよく見られて、『神様のメモ帳』とかでも見られる。


■『フォーチュンアテリアル(2010)』 OP
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1枚のbook(前方の流れていく木)をSLとBG引き。でも、所々セルでキャラを置いたりすることで、真ん中の女の子が戸惑うのを上手く演出してる。1枚のbook配置、単なるBG引き、この2つだけでも色々な回り込み表現が作れることはわかると思います。そんで、この応用例が次。


■『神さまのいない日曜日(2013)』 3話ED
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これは、単なるBG引きでの回り込みもあるけど、より面白いのは1カット目。よーく見てください、1カット目はBGほとんど動いてません。多数のbookを女の子のいるポジションの前後どちらにも配置して、SL(スライド)させることにより、カメラが回り込んでるように見せてる。


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これはBG引き+多段bookをそれぞれ違う速度で動かすことで、擬似的に回り込みのカメラワークを演出してる。いわゆる、「密着マルチ」と呼ばれる技法です。大体5個ほど墓標のbook(画面前方に3個、後方に2個)が重ねられていて、よく見ると奥の方に山のbookもある。後は、光のエフェクトも綺麗です。すごいっすね。



そんで擬似的な回り込みには、もう一つありまして。こちらは、逆にキャラの動きだけで回りこみを表現するというもの。背景、book等をさほど使用せず、セルで描かれるキャラのアクションにより、回り込んでいるかのような擬似カメラワークを演出します。


A、キャラが勝手に回るよタイプ

■『ふたりはミルキィホームズ(2013)』 1話
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ぶわあっという感じのエフェクトと共に、弓を装備するときに(演出的に多分カッコイイから)キャラが回転して、結果的に回り込み作画になる。


■『キン肉マンII世(2002)』 OP
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キャラの顔と体だけが作画で流れていき、BGはほとんどない。けど、カメラが回り込んでいる感じが出ていますよね。こういうの多いです。『パパのいうことを聞きなさい!』とかのOPでも見られる。


■『ベン・トー(2011)』 OP
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これも同じく。互いに背中を向けて、対立構造を示すと共に、謎のキャラを唐突に真ん中に置くことで、画面のトリック感が強い。実写でやると、当然カメラが回り込まないといけないので、バレットタイムみたいになって大変ですよね多分。擬似的なカメラワークを作れるのは、アニメの利点ですね~。


B、回転台座タイプ

■『忍者戦士飛影(1985)』 OP
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これは、キャラ自体が回転して結果的に回り込み作画になる例。床に回転台座でもあんのかと思うよね。グルグル回る。なんですか、古すぎて参考にならないって?しゃーねえなあ、それでは、近年の作品をドン!


■『中二病でも恋がしたい!戀(2013)』 OP
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回るモリサマーたち。これは全然作画崩れないし、3DCGでアタリを出力してから、ロトスコっぽく描いてるんですかねえ。ホント、全然キャラの顔も体も崩れねえ。京アニが広域に受けてるのは、こういった理由があるかもしれません。


スライダーでぐるぐるすると多分楽しい。


今回は、こんな感じで。
擬似的な回り込み作画を、色々と見てみました。

次回は、デジタルならではの回り込み表現などを見ていくつもりですよ、タブン。