「AKIRA」の後とは、意外と違うトコが多かったりします。

AKIRA以後、例えば「紅狼(1993)」とかでは、AKIRAドームのフルアニメーションの煙みたいな、ぷるぷる1kで動く煙など、色々とAKIRAっぽい写実作画であるんですけど、AKIRA以前は写実表現の方向性が違っています。

例えばこれとか。

■『メガゾーン23(1986)』

本谷煙
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これは、あっちの記事にもある『メガゾーン』における本谷作画ですが、AKIRAとは大分違っています。まず第一に、ぷるぷる煙は存在してません。これは見て分かると思う。さらには、リミテッド調なのとカゲの付け方が違うこと。後は、意図的なセル消しみたいなモンが見られたり、作画リピートによる労力の簡略化、その分画面の情報量を破片等で増やす手法で写実性を表現してると思うんですよ、この時代の本谷さんは。


もっと振り返ると、ここらへん。(※パートは僕の推測なので、参考程度に)

■『超時空世紀オーガス(1984)』 2話 7話

爆発詰め合わせ
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この頃は、まだ本谷さんのキャリアが始まったばかりとも言える時期で、エフェクトの方向性を探っているようにも感じますが、一端にAKIRA以後の本谷作画も見え隠れしてる。「ヘルタゲ」などで見られる、透過光の使い方が若干特定箇所かも。後は、細い煙の触手。これが本谷さんっぽい。後はですね、オーガスにおけるエフェクト作画という意味では、(特定とまではいかないけど)増尾と同じくらい目立ってる。


水中から出現するシーン
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球体にまとわり付く水と、それが飛び散る作画。特に飛び散る水のビチャビチャした感じとかスゴイいいっすよね。こんな密度の高い作画は、オーガスでは中々見られない。だから、まあ本谷さんかなあと思ったわけです。(※もしかしたら、古川さんの可能性もある。)
【2014/08/23 追記】偶然ブログ記事を本谷さんご本人に確認していただいて、このカット群については本谷さんのお仕事で確定のようです。

敵メカが墜落するシーン
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戦闘機の墜落による水柱と、その周辺の飛び上がった水が自然に消え行く描写。多分これタタキ(粉塵エフェクト表現手法の一つ)使ってないですよね、全部原画で細かい散水の動きとか描いてる。庵野や増尾さんは色々原画以外(タタキとかコピック等)も使って爆発描いたりしますが、本谷さんは原画で全部表現する人ですね。

本谷利明の水作画、というものを見た記憶が無いですが、多分「新魔神伝バトルロイヤルスクール」などでは、細かい人体の構成作画みたいなものもしてるので(※リンク先ちょいグロ)、相当に水作画も上手いのではと思う。これまた完全なる推測ですが。まあ、増尾さんも「うる星劇場版」でめっちゃスゴイ水作画描いてますし、上手い人は何描いても多分上手い。


『AKIRA』では、匙屋さんの言及があった通り、チャレンジャー事故の落とし込みのような気がするし(※生クリームという喩えは非常にグッときた)、王立庵野の再現とも思える。何に本谷利明が影響されたかは定かでは無いけど、とにかく『AKIRA』の周辺時期に「写実表現の方向性」が変わったのは事実だと思います。