※カメラアングルとアイレベルについて致命的な間違いがあると指摘をいただいたので、別の訂正記事を出します
※とりあえず、カメラアングルとアイレベルについてはまったくの別物と捉えてください


カメラアングル=カメラの角度
アイレベル=カメラの高さ

とりあえずは、こういう認識で…申し訳ないです


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レイアウトと構図の違いがあやふやな感じなので、2つの言葉の意味の基本的な違いを考え、整理しました。まずは、アニメーター本谷利明さんのレイアウトと構図の捉え方に関してTwitterから引用したいと思います。というか、おそらくこれが一番的確で分かりやすい。

レイアウト(Layout)を日本語で言うと「配置する」という意味。 そして構図を意味する英語は「コンポジション(Composition)」。 全然別の意味の言葉だよ。「構図が悪い」と言われたら、カメラアングルやフレーミングをもう一度考え直す。 「レイアウトが悪い」と言われたら画面内でのキャラや物品の配置を見直します。 本来はこのように使い分けます。



(A)レイアウトと構図という2つの言葉の違い

本谷さんの仰る通り、「レイアウト(layout)」というのは日本語に直すと「配置する」という意味があります(※参照→レイアウト)。「構図」も同様で、英語に直すときには、コンポジション(composition)という単語を使用し、その用語には「構成する」という原義的な意味があります(※参照→構図)。




(B)構図

殆ど本谷さんのツイート内容の繰り返しですが、「構図」は、基本的にフレーミング(画面にするとき、どこを切り取るか、どれぐらいの大きさにするかを決定すること)とカメラアングル(=アイレベル)の2つで成立します。「構図」は、画面の全体構成であり、一番最初に決定されると言っていいでしょう。それでは、「ソードアート・オンライン」1話のあるシーンを参考に「構図」の実際を見て行きます。


1)最初の画面(どこをフレームにするか決めていない段階)
テスト1

敵モンスターを切り裂くキリトくん。これは元々決まった画面ですが、ここでは決定していない画面とします。どこをフレーミングするか、どんなアングルかも決まってないものとします。これからどんな風に「構図」が決まっていくのかを見ていく。


2)フレーミング(どこを描写するか決めている段階)した画面
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ちょっとキリトくんの顔を寄って画面にしたいな~と思うと、こういうフレーム選択になります。カゲになっている部分はここでは切り取られてます。つまり、選択された部分が表現したい画面です。

これにカメラアングル(アイレベル)の要素が加わることもあります。カメラアングルには、大まかに①アオリ②正面(平行)③俯瞰の3つの画面があります。カメラアングル(アイレベル)について、正方形のモデルで確認しておきましょう。

アイレベル
(参照:アオリ、正面、俯瞰の図)



3)決定した画面(表現したい画面)
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これが新たに起こした(再度、構図を考えた)画面です。バストアップ(胸より上の画面)的で、少し迫力が増したことが分かります。その代わり、元の画面では存在していた奥行きや、剣先の通った跡のカッコ良さは失われています。このように、どこに重点を置いて「構図」するかによって、画面というのは大変な変化を遂げるわけです。




(C)レイアウト

「レイアウト(layout)」というのは、画面内の物体をどこに(where)どう(how)配置するか、ということです。人をここに配置して、木はこっちへ…みたいな感じで、全体に影響を及ぼす部分的な画面の設計と言えます。ここでは、少しサンプル画像を作ったので、そちらを参考にしながら解説していきます。


1)最初の画面(まだ物体の配置状況を決定してない段階)
レイアウト2

簡単にサンプル画像を作りました。画面内には、直方体Bと正四面体Aが存在しています。一本線は、地平線や台を表してると思って下さい。まず最初の画面では、こういった風な配置状況です。これを表現したい画面へと変更していく。


2)配置を変更した画面(より自分の表現したい画面に変更している段階)
レイアウト3
ん~ちょっとAとBの間が空き過ぎてるかなあと思うと、正四面体Aを図のように左上方に少し移動させることになります。移動前が正四面体Aで、移動後が正四面体A’(Aダッシュ)。これが「レイアウトを修正している」という状況です。修正によって変わるのは、配置だけでなく、その物体の向きや大きさなども変わります。


3)変更した画面(表現したい画面)
レイアウト4

レイアウト変更した画面がこれです。最初の画面よりも、AとBの距離が縮まり、さらにはAを奥にやったことでBとAどっちが手前なのかということが分かるようになりました。レイアウトと構図の修正で共通するのは、どちらも「自分の表現・描写したい画面を目指す」ということです。頭の中で思い描いている画面を、どんどん現実の画面に具現化していくことが目的です。

これほど極端ではありませんが、実際のレイアウト修正で良くなった(全く変わった)と庵野秀明が語ったカットがこちら。


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(「風の谷のナウシカ」庵野秀明作画パート)
ここのレイアウトも宮さんがパパっと直して、すっごい良くなってて。やっぱすげえと。この後ろの塔の角度一本で、微妙な角度でね。
 
引用:「風の谷のナウシカ」 オーディオコメンタリー



また、原則として、画面は「構図→レイアウト」の順番で設計されることが自然と分かるはずです。元になる画面がフレーミングやアングルなどで「構図(コンポジション)」されていなければ、画面内の物体を配置することを指す「レイアウト」という行為は困難だからです。これは実写映像で考えたほうが分かりやすいかもしれません。まず風景のどこを画面として使用するかを決めてからでないと、役者の配置や動きの指示は難しくなります。

整理すると以下のことが言えます。

【構図とレイアウトの意味の違いと、両者の目的・意義】

1、「構図」≠「レイアウト」
2、「構図」は、画面全体の構成を指す。構図の要素としては、「フレーミング」「カメラアングル(アイレベル)」が含まれる。
3、「レイアウト」は、画面内における物体の配置を指す。物体をどこに(where)、どんな風に(how)配置するかを決める。
4、画面設計の原則としては、「構図」→「レイアウト」の順番で行われる。
5、どちらも「自分の表現したい画面」を目指して設計される。 



【その他参考文献】

・配置と構図の違い
http://www.jttk.zaq.ne.jp/t-yoshida/hitoridemanaberu/newpage4-10.htm