>>0、はじめに<<

「とにかく考えて」というのは、誤魔化しだ

エフェクトの見方をどうすればいいのかという事をたびたびコメントで聞かれていて、そのたびに一応考えて自分なりに答えるんだけど、ごまかしていた部分もあると思った。例えば、どういう風な着眼点で見ればいいかという点において、「とにかく考える」「自分なりの言葉で表現する」「何度も見る」と言っても、何も知らないときの自分なら理解もできず、エフェクトに興味が持てないだろう。すなわち、誠実でないから伝わっていないのだ。求められているのは、その考え方なのだから、とにかく考えろなどとのたまうのは、誤魔化しにしかすぎない。ということで、自分が実践している方法を列挙する。


<エフェクトの見方:チャート>
1、エフェクトを見つける
2、そのシーンだけ10回くらい見る
A1、直感で答え・考えを出す(その1)

3、要素に分けて、検討する
4、そのシーンがなぜ良いのかを考える
A2、ちょっと考えた答え(その2)を出す

6、再度見直す
A3、最終的な答えを出す
(※6以降は余力があれば、やってもいい)


<エフェクトの見方:詳細説明>

>>1、エフェクトを見つける<<
まずは、自分の嗜好にあった、「あっこれなんかいいな」と思ったエフェクトをまずは意識的に見つけようとすることだ。それは、深夜アニメでもいいし、金曜ロードショーでもいい、はたまた実写映画でもいい。とにかく、自分の直感でビビッときたシーンを抜き出し、メモっとくのである。

[ついでの手法1:メモの仕方]
メモはアナログでもデジタルでもいい。ぼくはパソコンでメモするのが苦手なので、B5のリングノートを使ってよかったシーンを抜き出している。このメモは、大げさでなくていい。例えば、SAOだと「19話のBパート後半、アスナが戦う最後のほう」とかおおまかに記録しておき、後でメモを頼りに映像を見直せばよい。決して細かく書こうとする必要はないが、慣れてきたら動画時間をメモしとくと見直すときに楽になる。

最近はTwitterという便利なメモ帳がある。時間がないとき、メモするにも面倒なときには、後で自分が検索できるように、「カバネリ爆発Bパート、最初のほう、列車突っ込み」などと(自分が分かるように)記録したら、最後に「メモ」と付け加えればよい。お気に入りマークをつけておくのもまた便利だ。



>>2、そのシーンだけを10回ほど見る<<

録画には、PS3(トルネ)やブルーレイレコーダーなどを使用している人が多いだろうか。ぼくはブルーレイレコーダーとHDDを使って、アニメを録画している。できうることなら、HDDで自分のパソコンと共有すれば、映像データの確認がしやすいのでオススメである。ただ、どの機器を使ってもやることは同じで、1でメモったシーンを10回ほど見ることだ。ここでは、まだ力を入れず、なんとなくボーッと見る感じで良い。「あーやっぱカッコいいなー」程度で構わない。シーン全体の雰囲気を掴むことのほうが重要だ。

10回としたが別に何回見てもいい。最低限10回見ないと分からないかなと経験則で判断しただけなので、もっと見たい人は見てもいい。1シーンならだいたい5秒程度でそれを10回だから50秒、1分ぐらいだから苦労はないと思う。

さて、具体的として1つ映像を出す。

練習問題1:『ブルージェンダー』 OP
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まずは、心の赴くままに、なんとなく見ればよい。小難しいことをここでゴチャゴチャ考えても詮なきことなので、あまりしない方がいいと個人的には思う。「あー煙かっこいいなー、なんかぶわっとなってるのがいいなー」などと軽く感じればよい。これが最初の自分なりの考え(その1)である。

[ついでの手法1:繰り返し見る方法]
gifにしてあげるのが一番楽である。さいきんは、映像データを勝手にgif化してくれるフリーソフトもあり、そういうのでgifにしてから、見直すと便利だ。私的利用の範疇ならば、著作権侵害にはならない。このブログはグレーゾーンだけれど。

ゆっくり見たいというひとは、動画再生ソフトの機能を使い、コマ送りすればよい。これはMPC-HCというソフトをオススメする。キーコンフィグさえ設定すれば、あとはコマ送りも早送りも自由自在だ。ただ、最初からコマ送りはやめたほうがいいと思う。あくまで、全体の雰囲気を掴んでからでないと意味が無い。マクロからミクロへ、大きなところから小さい部分へ、これはどんなことでも同じだ。

この時点で一度、先ほどのように自分の答え・考えをまず脳内に出す。できれば、これもメモっといたら良い。何よりも大事なのはアウトプットだ。完全な正解など、この世には存在しないのだから、まずは繰り返し見て、素直に感じたことを答えとして出せばよい。


さて、だいたい10回ほど見れば、シーンの雰囲気がわかってくる。つまり、このシーンがどういう要素で構成されているかがわかってくる。それは煙であったり、火花であったり、破片であったり、する「内容的な要素」と、透過光であったり、ダブラシであったり、影の付け方であったり、する「技術的な要素」の2つだ。



>>3、要素に分けて、検討する<<

2で述べた、2つの要素、内容と技術の2つに分けて、シーンを検討していく。

練習問題1:『ブルージェンダー』 OP
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さて、このシーンを要素に分解していこう。
前述のとおり、「内容」と「技術」の2つに分けて解釈していけばよい。実際にやってみよう。「内容」のコツは、「何が何をして、このエフェクトが生まれたか」ということである。すなわち、原因を具体的に考えればよい。「技術」のコツは、エフェクトに限定すれば、タイミング(速いか、じんわりか)と影の数、あとは透過光ぐらいをまずは考えればよい。

[ついでの手法3:技術の知識]
ダブラシ、透過光、スーパーインポーズなどの知識がない最初は、「なんか透けてる」「なんかすごく強く光っている」「なんか陽炎みたいに揺らいでいる」といった感じに、知識にこだわらず、そのままの印象を技術の要素として考えればよい。その後で、技術の用語が気になれば、MSCや井上ジェットなどの用語集で確認すればいい。


[内容の要素]
・戦車が砲弾を撃った
・その衝撃(砲弾の爆風?)として、周りに煙が広がっている

[技術の要素]
・ピカッとするコマが入っている
・煙は影1色だけ、シンプル
・最初はぐわっとした感じで尖っているが、その後は柔らかいフォルムになっている
・煙が発生した後、なんかゆっくりになってる?

ここで大事なのは、正解を出すことではなく、なるべく具体的にすることだ。僕は、衝撃の影響で周りに煙が広がったと考えたがこれが正解がどうかは分からない。極端に言うと、そんなことはどうでもいい。なにか原因があって、煙が発生し、だからこんな風に煙が動いたんだなと具体的に推測することが大事だ。

正確なことは専門家じゃないとわからないし、素人がそこまでやる必要はない(興味があれば調べればいい)。なにか原因があって、だいたいこんな感じになってるんだな、という程度でオッケーである。要素といっても、細かくやる必要はまったくない。ゴチャゴチャすると混乱するから、2つの要素に区分するだけだ。

技術の要素も同じく、自分なりの表現で、印象を言葉にしよう。「ぐわっと」「しゅっと」などの擬音語をよく自分は使うが、それはいちばん自分にとって親しみやすい、つまり分かりやすい表現だからだ。映像を言語化するときには、「分かりやすく」「具体的に」することを念頭に置くとよい。小難しくする必要性は一切ない。


さて、以上のことを頭に置いて、スローを見てみよう。内容については、ある程度吟味が済んだ。では、技術の要素についてもう少し深く見ていこう。時間を区分して見ていくと、やりやすい。

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撃った直後:発射の衝撃によって、下の砂場からはごろもフーズみたいな輪っかの形から煙が発生している。煙が発生するまでには、ほんのわずかしか時間がなく(枚数も2、3枚だ)、急速に発生したことが分かる。

撃った直後~終わりまで:最初は尖ったフォルムだが、その後はやわらかくモコモコしたフォルムになっている。影や煙全体はそこまで大きく動いてないので、その場で煙が残っていることが分かる。


大事なのは、「◯だから、△が分かる」というフレーズだ。ここも正解を出す必要はないが、ほとんどの絵は人が書いたものだから必ず理由があり、その理由を自分で考えることが最も大事なのだ。ここでいえば、「何故尖った絵があるのか?」「何故、発生した後の方の時間が多いのか?」ということに対する理由を考えることが大切だ。



>>4、そのシーンがなぜ良いかを考える<<

さて、聡明な方ならもうお分かりだろう。そう、後は最初に分けた内容の要素と技術の要素を一緒にして、考えればよいのだ。この時点で、取りこぼしている要素があれば付け加えればよい。

[内容の要素]
・戦車が砲弾を撃った
・その衝撃(発射による爆風?)として(よくワカラン放置)、周りに煙が広がっている
・そういやここって、砂漠っぽいな
→だから、この煙は砂埃かな

[技術の要素]
・ピカッとするコマが入っている:これはショックコマ
→砲弾の閃光を表現しているのかも!
・煙は影1色だけ、シンプル
→砂埃を表現するため?それとも、アニメーターの描き方?
・最初はぐわっとした感じで尖っているが、その後は柔らかいフォルムになっている
→煙がすごい速さで発生して、その後はその場に漂ってるんじゃないのかな~?
・煙が発生した後、なんかゆっくりになってる?
→漂ってるのを表現したいから、ゆっくりにしてるのかも!


あとはこれをまとめて、印象に残った理由とすればよい。

戦車が砲弾を撃つシーン。砲弾を発射にした後の爆風がすさまじい勢いだったことにより、煙は瞬間的に発生し、急速的に広がるようになった。その後じんわりとしたタイミングになっているのは、煙がその場に残っているの表現するためだ。最初、煙は瞬間的に広がり、その後じんわりとその場を漂う。これら2つのタイミングの違いによって映像にメリハリ(緩急)が生まれ、とても気持ちのいいエフェクトとなっている。


という感じになる。正直、こうやって整理するのが一番苦労する。ここまではやらなくていい。その前まででいい。これは疲れる。


さて、以上で自分のエフェクトの見方は説明し終えた。もちろん、これが唯一の正しい見方とは思わないが、エフェクトの見方がよくわからないという人に、少しでも参考になれば、幸いである。