ちゃんとした再考記事↓




ようやく見ました。絶賛されているものはハードルを上げてしまう癖があり、けっ大したことはねえじゃねえか。となるんですが、まあこれは割と面白かったです。各所でいろいろな感想やら論評やら書かれていると思うので、ぼくは絶賛された要因と、さほど取り上げられていないであろう部分に絞って取り上げたい。


好評の要因は、「ホラー映画にマッチしている部分が、実はこういう偶然の連続でした」というところに集約されるかと思います。違和感がある部分がほぼすべて伏線として回収された、そこが受けたんだろうなあ。あっ!これ進研ゼミでやったところだ!みたいな。

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廃墟にまつわる噂話をしていると、いきなり奇妙な音が響く。重苦しい雰囲気を打開しようと、助監督役がマオさんに趣味を聞く展開へ。雰囲気を変えようとして失敗しているのが、ホラー映画としては効果的に働いた。カメラが地面に落ちたときもそう。ダッチアングルも相まって、カメラ役が倒れてしまったのか?と身構える。


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要するに、(ホラー映画に)マッチしていた部分の裏側はこんなに苦労していた、こんな偶然があった、というピタゴラスイッチみたいな演出が好評を博したんだろうなあ。受け手側はパズルがはまっていく感覚だと思う。


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親子の確執、ベテランと若手の意見の相違。このへんはちょっとくどかった。中だるみ感は否めず。そんなにやらなくても伝わる伝わる。


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アル中おじさん好きですよ。本番でも失敗しているのがさらに良い。理想どおりに現実はうまくいかないっていうのが全体のテーマなんで、こっちを深掘りしたのはすごく良かった。


ただ、大絶賛されるほどの内容かと言われれば懐疑的にならざるを得ず。現場側と企画側で勧善懲悪の対立構造を作ったのはいいけれど、ラスト以外さほど活かされていないような。「番組として無事終わらせて」という要求をしていたライン・プロデューサーが、監督の激昂には応えずに、娘になんで従ったのか、そういう説得力は今ひとつない。だからその辺はばっさり画面にしていない。


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まあこれはヒューマン・ドラマなんですよ。親子の確執が出てきた時点でそうなる。だから、画面の説得力よりも、娘が弱気な父親を助ける、という筋にした方がまとまりやすいのかもしれない。ただ、このシーンはライン・プロデューサー役と監督役の人の演技が際立っていたので、もったいない。


個人的には、劇中劇のカメラリレーに注目していました。だから、ラストのカメラって誰なんだろうとか考えてたけど、そこは上手くやられたなあと。コメディですから、腰痛おじさんのリタイアは早すぎた。いや、リタイアするのは当然だけど、腰痛で倒れたまんまのおじさんをまったく映さないというのは前半のやり取りが活きない。でも、ラストを踏まえると仕方ないのかな。微妙なところ。