3月13日に行われた、金鯱賞(G2/中京・芝2000m) は大阪杯(G1)への前哨戦だ
注目は、昨年、大阪杯の舞台でコントレイルとグランアレグリアをなぎ倒したレイパパレ、エリザベス女王杯でキズナ産駒初G1勝ちを飾ったアカイイト、などが出走していた。そんなG1馬2頭の中、1番人気に支持され見事勝ちきったのは、重賞すら勝っていない馬だった。ジャックドールだ。
2022/金鯱賞
ジャックドール号は、父モーリス 母父Unbridled's Songという血統構成
ミスプロ5×4、ノーザンダンサー5×5というクロス
(※父モーリスは、1600~2000mで圧倒的な戦績を残した。マイルG1を4つ、秋天、香港C、合計6つのG1を取った名馬である)
さて、ジャックドールは前走・白富士S(東京・芝2000m)でも逃げ切りを果たしており、今回が試金石と見られていたが、むしろもっと強いレースを見せた。ラップを見ていただこう。
金鯱賞/ラップ
12.5 11.0 12.2 11.9 11.7 11.7 11.6 11.0 11.3 12.3
※これは1ハロンあたりのラップだ。1ハロン=200mだから、10個ある
最初の3ハロン、かれは35,7秒で通過した。ここまではミドルペース、それでもまあまあ速い。注目されたいのは、それ以降、最後の1ハロンを除いて11秒台で逃げ続けたことだ。基本的に、これはありえないと思っていい。どこかの区間で、12秒台を入れる、いわゆる「息を入れる」行為をしなければ、ふつうの馬は最後まで持たない。バテて下がってしまう。
極めつけは、最後の4コーナーを曲がるところの1ハロン区間が「11.0」という点だ
そう、先頭で駆け抜けている馬が、ラストのコーナーでさらに加速したのだ。これには手も足も出ない。ありえない。逃げ馬が有利ではない、現代の日本競馬で、このようなことはありえない。この金鯱賞は、もちろんゲームではないのだ。
「前の馬、逃げ馬が有利なレース展開であったのでは?」
じっさいはそんな次元ではなかった
2番手で競馬を進めた、シフルマンは相当にジャックドールをつついた(楽な逃げ方をさせなかった)が、かれはこの息も入らぬラップに敗れしんがり負け。さらにその後ろで続いた、ギベオンは1.8秒も離されての5着に敗れた。
G1ホースである2頭はどうだ?レイパパレは4番手の追走でやっとだった。最後はさらに差が開き2馬身差の2着。中団につけたアカイイトは、いつもの切れ味鋭い末脚を発揮する脚もなく、3着に敗れた。
サイレンススズカ
タップダンスシチー
ダイワスカーレット
アイネスフウジン
キタサンブラック
どの時代も逃げ馬は人々の心を魅了する。そういう逃げ馬の夢をぼくらは追い続けている。武豊をして最強と言わしめたサイレンススズカ、佐藤哲と言えばのタップダンスシチー、かれらと遜色なく、中京のターフを最初から最後まで先頭で駆け抜けた。G1馬2頭を蹴散らして。
どこまでも後ろの馬に影すら踏ませずに、もしかしたら勝ち進むのかもしれない。そんな興奮に近い、期待が膨らむ。ジャックドールはそういうレベルの馬だ。
大阪杯では昨年の年度代表馬・エフフォーリアとの対決となる。それもあるが、ぼくは、かれを怪物と断言したい。こんなにすごい馬は今なかなかいない。今からかれがどのような走りをするかが楽しみで仕方がないのだ。
(*元々のタイトルは「あの夢のつづきを見せてくれるのか」でした)