コロナ禍の影響もほどほどになり、ようやく有観客での久々の日本ダービーである。予想以上の人の多さだった。約7万人が東京競馬場に来場した、テレビで見ていた自分は、その風景に改めて圧倒されてしまった。あまりに無観客競馬に慣れすぎていた。

直感はあった。いちばんの直感には、この馬は確実に思い浮かんだ。「1998年との構図*」が似ていることも自分としては、どこか嘘っぽかった。あまりに直感的すぎるきらいがあるし、スローペースがやや多く見られる近年のダービーだともしかすると前に届かないのでは、差し損ねるのでは、いまさらダービーを53歳の老体で取るのは困難ではないのか。

ああ、ああ、あの皐月賞はまさしく”試走”であった。どれくらい脚が使えるか試した。逆算していた。全てはこの日のために。この熱きダービーの日、いちばん最初にゴール板を駆けるために。

ドウデュース武豊、6回目のダービー制覇。もちろん、史上最多勝利回数である。2位は3回(福永祐一)、3位は2回(四位洋文、横山典弘、M・デムーロ)。2位にダブルスコアである。アンタッチャブルな記録だ、破られることはないだろう。


*似た「構図」
「構図」とはなにか、それは1998年のスペシャルウィーク、武豊ダービー初勝利のときの構図とよくニ似ていたのだ。さて、某アニメ・アプリの影響によって、皐月賞ではスペシャルウィークが3着に敗れたことはみなさんご存知であることと思う。

しかし、「どう負けたのか」までは知らない方が多いのではないだろうか。
説明をしよう。

1998 / 皐月賞 /セイウンスカイ:横山典


セイウンスカイ騎乗の横山典弘jは中山コースの名手であり、巧みなペース取りによって、中山2000mを逃げ切った。つまり、スペシャルウィーク騎乗の武豊からすると、「差し切れなかった」という表現が正しい。

1998satuki

最後の3ハロンの上がり(※最後の600m、末脚)は最速36.1秒を叩き出しながらも、1+1/2馬身差で差し損ねた。後方に位置する馬(※通過の「15」とは前から何番目にいたかを表す指標である)は常にハイリスクである。直線で馬群をさばけなかったり、混雑してしまって外に持ち出しても減速してしまい距離をロスしてしまう場合もある。とかく、後方の馬は勝ち切るのが難しいのだ


さて、それも踏まえて今年の皐月賞を見てもらおう。

2022 / 皐月賞 /ジオグリフ:福永祐


2022satuki

あまりに1998年と似すぎている。ドウデュースは後方すぎて、追い出しが遅れてもっとも外側の馬場を選択せざるを得なかったが、上がり3ハロンは33.8秒と最速だった。勝ったのは先行馬、ジオグリフ。


この構図があまりにも似すぎていた。どれぐらい似ていたかというと、2019年の共同通信杯と2022年の共同通信杯ぐらい似ていた(**後述:ぼくのダービー)。


さて、ダービーである。だいたい諸君も分かってきたはずだろうから、もはや成績表を並べるだけでも良さそうだろう。映像は好きに探せば良い。

1998 / 日本ダービー /スペシャルウィーク:武豊
1998da-bi-


2022/ 日本ダービー /ドウデュース:武豊
2022da-bi-

※通過順がなかったので(無能サイト)補足しておくと、
ドウデュース    15-15-15-14 
イクイノックス   16-16-16-15
アスクビクターモア    2-2-2-2

こんな感じ( ^ω^)




最後はイクイノックスの猛追を凌いで、クビ差圧勝(いや、後200mあっても脚色は同じだったと個人的には思う)。


ダノンベルーガは、やはり、坂に堪えてしまった感じがあり、伸びきれず4着。まあ今から言うが、上位4頭はG1を勝てるだけの能力が十二分にある。

とくに、アスクビクターモアは、面白い馬だ。よくこのハイペースで粘った。2000mが最も合いそう。前目ならば、古馬になってから大阪杯で狙いたい。菊花賞は…2着感がものすごい…

プラダリアはダービーの舞台に3歳新馬からスタートしてよく間に合った。時計がかかるような馬場であれば、良い。距離はわからんなあ。



あ、ドウデュースの血統構成を述べよう

父ハーツクライ 母父Vindication(シアトルスルー系)
Vindication(ヴィンディケーション):ダートマイルを主戦場に早くから活躍した。BCジュベナイル勝ち馬。
参照:https://ahonoora.com/vindication.html

母:ダストアンドダイヤモンズもスプリンター。兄弟馬はぜんいんダート馬だ。
母母父:Gone Westだけ見ると、ダートマイラーが多い傾向にあるので、まあこれはハーツクライとの組み合わせが良い方向に出たというのが今のところ良さそうだ。




**ぼくのダービー:ダノンキングリー
2019/ アドマイヤマーズ:ダノンキングリー
2022/ ジオグリフ:ダノンベルーガ
共同通信杯はこの構図が似ていた( ^ω^)

前述した通り、さいきんのダービーはスローペースも多く、面白くないものが多かったが、2019年は今年と同じくらい熱かった。ぼくが最も愛している馬である、ダノンキングリーは、共同通信杯をベルーガよりも強く勝ってダービーに臨んだ。3番手で競馬を進めて、後は直線で逃げ馬を交わすだけだったが、クビ差と届かずロジャーバローズの2着に敗れた。



ぼくはこの映像を見て、あと一歩だった悔しさがずっとあった。なにも関与していないのに。惰性で続けてきた競馬の中にある違和感・しこりのようなものは、やはりキングリーのダービーの負けがあったのだ。共同通信杯勝ち馬のベルーガにキングリーを重ねてしまった。しかし、もうようやっと本当に憑き物は落ちた、とおもう。本当に落ちた。清々しい気持ちだ。ドウデュースが勝ったダービーはとても気持ちの良いものだった。

武豊のダービー制覇6回目は、気持ちを前進させてくれる希望に満ち満ちている。文句なしのダービーレコードを叩き出した武豊とドウデュースの今後はとても楽しみだ(※まずはキングジョージ6世から!親父の仇を取ろうぜ!)。本当に良いレースでした。良かったです。