Gomi and Station

幸せになりたい

カテゴリ: カメラ・演出・カット


ID: INVADED 公式サイト

NAZによる制作。数少ないオリジナルアニメ。監督にあおきえいを据え、キャラデザには碇谷敦(板垣敦)を採用。衆目を引いたのは、なんといっても脚本:舞城王太郎でしょう。「龍の歯医者」「ハンマーヘッド」以来のアニメ作品参加。なによりテレビシリーズにがっつりと参加するのはこれが初めて。


碇谷キャラデが目を引きますねえ
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リアルなお話に、すごくリアルなキャラデというのはそれだけで辛くなってしまう。碇谷キャラデぐらいデフォルメされているくらいが、少し遠目から作品を見れるんですよ。リアルなキャラデだと自己投影しすぎてしまう。それが分かってないから、「没個性リーマン主人公」みたいなキャラデが氾濫しているわけです。これはけっこう良い判断材料ですよ。お話はどっちにせよ、ダメなデザインだなってすぐに分かる。


1話のテーマは「欠損」だったので、ダイレクトに犯罪者の無意識って感じがして良いですよね。絵として良かったのは、圧倒的にAパート前半。

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三回ポンバック
同ポジから三回それぞれ引いた絵を作る。
レイアウトはこういうふうに連続して良いものが作られるときもあります。ラストカットはそれ以外も中央に枠が作られるように、物が配置されていて良い




やっぱり1話はここだなと
Bパートのぐるぐるパズル組み立てや、カエルちゃんから外れていく犯人のシーンも爽快感があっていいけれど、酒井戸が起き上がるところのシーン。ここが個人的には最も良かった。

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戸惑いや混乱だけならば絵で表現するのは大して難しくないですが、そこから落ち着くまでを描こうとすると一気に難易度が上がる。酒井戸の混乱~落ち着きまでの描写はそうとうに良かった。酒井戸がイラついて壁を殴る。当たらないはずの手が壁に当たっている、それに酒井戸が気付く。


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同じように足を救出する。バネの感じがいいんだろうなあコレ。足元がバラバラで不安定な世界に安心を与えてくれる。この一連の流れはスゴク良かった。


今回の主人公
ゴルシOP

まて競馬だからといって逃げるな、とりあえず下の映像だけでも見ていけ。


競馬ワープ

(※最後方の14番、白い馬に注目)

こんなん最下位やがな…と思うような最後方から、内田騎手の見事なイン付きによって、全馬ごぼう抜きで勝利を収める。名馬ゴールドシップの皐月賞です。競馬実況も「あっその内からゴールドシップ上がってきた!」と、予期せぬ展開によってリアクションが遅れている。競馬ではこういう映像がときどきあります。

競馬に詳しくない人はこの「ワープ」がよく分からないと思うので少し説明する。なんでこんなことが起きるのか?というのは、つまりは「カメラが追えていない・拾えてない」というだけですから。



<ゴールドシップとレースの状況>

・2000mのレース
・ゴールドシップはレース序盤から最後方で最終コーナーを迎える
・先頭とは30~35馬身差(約120m!
・人気どころの馬(ワールドエースらは外にいた)ので、内側に目線がいかなかった

全体図
ゴルシ皐月加工
(※水色が人気馬、赤色がゴルシ)




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※ちなみにウマ娘OPのゴルシはこの皐月賞がモデルレース


<使われているカメラ>
・馬群を映すロングショット用(ロングショット・カメラ)
・コーナーを映す固定カメラ(固定PANカメラ)の2つ

★18頭もいるので、レース終盤は人気の馬に絞ってカメラは追う

・基本的にロングショット・カメラで撮っている
・最後のコーナーでいったん固定PANカメラに切り替わってから、ゴール前の直線でまたロングショット・カメラに戻る。

要するに、2つのカメラ切り替え・カメラスイッチの間に、映せない場面が発生してしまう。映せない場面で起きたことが分からないまま、次のシーンへと移動して、そこでやっと起きたことが変わる。これがワープの原因です。

(※最近では、2018年の「チャンピオンズカップ」のウェスタールンドの例あり、これもすごかった)





で、この競馬ワープと似た現象は漫画やアニメでも時々起きるんですよ
このワープによって、テンポがいきなり変わる


五頭分の花嫁(5巻144-148頁)
※五月(右下アホ毛)に注目
ワープ-五頭分の花嫁01

ここはフータローの作ったテスト問題をみんなに渡していたら、ニノだけキレているシーンです。構造はゴルシ皐月賞とまったく同じです。ニノのひどい口ぶりや行動に、三玖は苛立ちを募らせていく。そして、ついにと思ったら、実は五月だった。そこに読者はインパクトを覚えるわけです。



ロングショット=全体カメラ
PANカメラ=寄りカメラと置き換えたら、わかりやすい。さっきのレースと構造は同じです。

さっきと同じく色で囲ってみると一目瞭然


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この2つのカメラの切り替えの間には、どうしても物理的なスキが生まれてしまう。カメラが捉えきれない部分ができてしまう。その部分から、キャラクターが現れることによって、唐突さを感じる。すると、虚をつかれて理解が遅れる。ここだと、三玖が叩いたかと思ったら、という感じですよね。最終コマの五月のインパクトで決めゴマになっている。テンポ記事では何度も書きましたが、やはり「ものごとの理解が遅れる」ことは、テンポに大きく影響します。

今回の新しい発見は、カメラの切り替えの際に生じる、物理的なスキを利用したテンポ演出技術です・・・と、ここまで書いてみたはいいものの、これアニメ、ドラマ、漫画問わずにめっちゃ見ますね!もう演出技巧として確立されているんでしょう。なんかあれな感じになってしまった。



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これは石田くんが西宮に会おうとするのを、妹・結弦が妨げるシーンです。大したことないカットに思うかもしれないけど、すごく良いシークエンスでした。

簡単に整理すると、
ポン寄り+ACつなぎ→足元のカットへ

演出技術的には、なんていうことない2つの組み合わせです

やや不安なところがあったので、ポン寄りをもうちょい調べました。ポン寄りの基本原則は、ロング・ミドルショットから、クローズショットになる、ということです。つまり、ポン寄りするときに「カメラと被写体の距離に大きな差が生まれること」が重要だとおもう。

各ショットについてはこちらのサイト様を参考に
◆ ビデオ・写真撮影入門 「構図の基礎・その1」各ショットとアングル

ショットについては定義や種類がブレるので、まあ参考程度で

ロングショット:キャラ米粒くらいで、背景が画面のほとんど
(ミドルショット):キャラ全身入って、背景と半々くらい
(バストショット):キャラの胸から上くらい
クローズショット:キャラの顔が画面をほとんどを占める

キャラと背景の比率で抑えるのが客観的でいいかなあと。まあ大体でいいです、本当に



実例


[2018-MO]聲の形.mp4_snapshot_00.41.12_[2019.08.18_17.08.15]
これはロングショット



[2018-MO]聲の形.mp4_snapshot_00.59.19_[2019.08.18_17.13.33]
これはクローズショット


[2018-MO]聲の形.mp4_snapshot_00.41.35_[2019.08.18_17.12.53]
これなんかは、微妙だよね。バスト~クローズショット
キャラメインだからクローズショットと言い切ってもいいけど


[2018-MO]聲の形.mp4_snapshot_00.44.20_[2019.08.18_17.13.09]
これはミドル~バストショット



じゃあ冒頭の結弦くんのショットはというと、


[2018-MO]聲の形.mp4_snapshot_00.35.43_[2019.08.14_02.09.49]

バストショットですよね


ここからのポン寄りの典型的なパターンは、結弦くんの目元・口元に寄ったりして、最初に述べたとおり、「被写体とカメラの距離の差」を大きく出す。だけど、ここでは西宮にカメラがいくんですよ。これが珍しくて面白かった。

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なんでかっていうのは、とうぜん石田くんの主観視点だから。扉が閉まって行く中、西宮を目で追いかけてしまう。急いで追っているので、カメラは左に少しPANしてるわけです。あと、ACつなぎっていうのは、キャラの行為を切って複数のカットにして繋げることです。ここでいうと、「結弦くんがドアを閉めること」をわざと切って、2カットにしている。

とても小気味よいのは、それまでずっと石田くんの主観視点だったのに、3カット目でいきなり足元を映すところです。客観的なローポジションのカメラは日光もなくなり、拒絶されてしまった彼の心情を伝える。良いシークエンス。


藤原書紀が踊る、かぐや様3話のED通称「チカダンス」はその愛くるしさで、瞬く間に広がっていった。多くの人の感想は「かわいい」「実写に見えるほど動いている」と、とにかく絶賛の嵐が吹き荒れている。ただ、僕は納得がいかない。お得意の逆張りだろうか?


◆かぐや様は告らせたい「チカっとチカ千花っ♡」


ロトスコープによって描かれた本映像は、近々にメイキング映像が出されるそうだが、その前にすべての陰謀を暴いてやる(※なにもかも間に合いませんでした)。世界を騙せ、可能性をつなげ、世界は欺ける、というコンセプト。


まあロトスコ関係の細かい話はやめにしました。どうせ文章なんて読み飛ばされるものですから。ロトスコープが、M・フライシャーによって発明されたという通説はあるけれど、彼がギャロップ連続写真(1886/エドワード・マイブリッジ)にすげえ影響を受けたんじゃねっていう推論なんて誰も読みません。それで、かぐや様3話EDっていうのはぶっちゃけ大したことしていない。たしかに、ロトスコープなのに、線が歪んでいない、実写映像からの抜き取りが上手い、というのは確実にあります。どうやって抜き取って整理したんだろうか、繋げたんだろうか、というのは疑問です。高いレベルで、「大したことない」と言っているので注意されたい。ちゃんと読め。



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それで、まあ本題はそういうことではない。素晴らしく可愛いならそれでいいじゃないか。たくさんの人を幸せにしたならそれでいいじゃないか。しかし、これだけ絶賛されているのはなにかあるはずだ…と考えた結果、これは「TikTok」である、という結論に辿り着きました。




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TikTokとは、ティーン向けの動画投稿SNSサービス。リズムに合わせて芝居をする動画が日々アップロードされています。んで、これは藤原書紀のTikTokなんですよ(鍵垢)。だってさ、一人残った放課後の生徒会室で、カメラを固定しながら音楽に乗せて、芝居している。最初から、伏線としてウルシゴキブリを配置しオチ要因まで用意している。TikTok以外のなにものでもない。

TikTokとアニメオタクって一見離れたところにあるように見えますが、今回の件を見るに、なんだろう近いところにあると思う。けっこうVtuberと同じ感じなんですよ、だからTikTokなんて使わない20代付近のアニメオタクにも受けたんじゃないかなあ。Vtuberと違うのは、ポップでリズミカルな音楽に乗せて「自分らしい情緒的な芝居」をするところ。それ以外は大雑把に言えば、かわいい女の子がかわいく演技する、みたいなもんですから。そのため、着想としてはTikTokみたいな動画共有SNS、みたいなものがあるのかなあ、そのためティーンから20代の共感を得て絶賛されているのかなと結論付けました。自分でも思います、ちょっと強引ですね。普段こういう語り方をしないにしても、いかがなものか。すいません。


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連続2カット
(積分公式と微分定義で天才なのかあ、まあこれはイチャモンかあ)

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連続2カット


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[藤原書紀の飯テロ省き、連続8カット]

ここまで来ると、わざとやってんのか?って思えてきますよね。
ナレーションなんかよりこのコンテどうなってんだ。



#2
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連続3カット

この画面よく通したなと思う。鏡見ながらコンテ切ったのかな。
なんだろう、僕はふだん上手下手とかさほど気にしないんですよ。
画面だけでイライラさせるのって凄いことですよ。普通はできない。


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連続3カット

かぐや様の画面に違和感を抱いている人がいれば、それは正しい。
こういった画面を見ると、ふだんのコンテマンがどれだけ高度か分かる。


頭脳戦というのは独白が多くなる上、お互いに口論し合うわけですからキャラの位置はよりいっそう重要になる。いやまあこんなのは、なんというか説明することじゃない。コンテやレイアウトの基礎の基礎、今からでも遅くないんでガイナックスの鶴巻講座でも見てきた方がいい。このつなぎに誰も違和感を抱かなかったのか、それはそれですげえなと思います。

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