GOMISTATION

足が絡まっても、踊り続けて

カテゴリ: カメラ・演出・カット


今回は、シルエットの表現と大畑さんについて。


<1、シルエットの基本的な役割・意味合い>

シルエットの基本的な役割は、「キャラクターがどのような人物であるか」をオシャレに表現できる部分にあります。この部分は「とらドラ!」OP1が分かりやすいので、まずはこれを。

■とらドラ! OP1「プレパレード」(2008)

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まずは、シルエットの色に注目。

大河はピンク、竜児はオレンジですね。竜児は不良のような姿見だけど、実際にはとても温和であることは劇中で示されている通りで、このシルエットは、彼が持つ温和な性格を表現している。一方、大河には刺々しいショッキングピンクを使っているのは、彼女の性格に合わせているから、と直感的に分かる。


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このように、シルエットによる簡略化はキャラクターがどんな性格・性質であるか、極めて簡単にいえば、「こいつは青だからクールなキャラだな」のような印象付けに効果的な手段と思います。アニメキャラの髪色の役割と似ていますね。



<2、シルエットの動きを活かした、「踊り」の芝居>

シルエットではキャラクターの輪郭が強調されるために、「キャラの動き」というものがとても目を引く。そのため、踊りの芝居をするOP・EDも多く散見されるのもまた特徴の一つであって。具体例を何個か見てもらいたい。


■つり球 OP「徒然モノクローム」(2012)
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目、鼻、表情、服、その他のディテールを全て排除され、キャラの輪郭のみを描くことにより、焦点は「動き」そのものに自然と行く。魚というモチーフをシルエットにし、クレジットや背景で使っているのもポイント。

彼らの陽気さ・元気さ、お話自体の爽快さを小気味いい踊りによって演出するとともに、キャラ立ても達成している上手いOP。



■うる星やつら ED07「OPEN INVITATION」(1984-85)
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踊るラムちゃん。つり玉OPと構造は似ていて、やはりディテールの有無によって比較させる。これは点滅が特徴的かな。点滅を繰り返すことで、(色付きのラムちゃんが強調され)より可愛さが引き立つ。ちょっと見えない方がエロいみたいな、そんな感じ。


■東京アンダーグラウンド OP2「HEY YOU!!〜失ってはならないもの〜」(2002)
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(絵コンテ・演出:都留稔幸)

情念たっぷりの手の芝居が見所。ふんわりしてるスカートもいいですね。これを手掛けたのは、都留稔幸というアニメーターで、彼は『NARUTO』での活躍が有名でしょうか。この都留さん関連でもう一つ。


■GTO OP2「ヒトリノ夜」(2000)
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(絵コンテ・演出・作画:都留稔幸)

アクション作画に造詣が深くなくても分かる、キレッキレの芝居。シルエットによって確かに動きは強調されるけれども、それは芝居の細かさ・内容までを担保しない。鬼塚がパンチを避けて、一発ぶち込んで、キックしてというのが鮮明に伝わる。芝居が上手い。


このように、シルエットを採用することでキャラクターの動きが強調・誇張され、結果的にシルエットの使用はキャラクターが躍動的になるかどうかにも影響することが分かります。作画だけでも押しきれる場合はあるけれど、シルエットを採用すると、アクションがより際立ちキャラが躍動する。

このシルエットの効果を非常に洗練して使ったOPがありまして。日常系アニメOPの歴史において、このOPがエポックではないかなと。



<3、エポックメイキングな発明:「シルエット影」>


あずまんが大王 OP「空耳ケーキ」(2002) 
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(絵コンテ・演出:大畑清隆)

それが、「あずまんが大王のOP」です。これは後続作品に多大なる影響を与えたのではないかなと。特に、踊り跳ねる少女たちの後ろの影、このシルエット風の影(以下、シルエット影)がエポックな発明です。


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とてもシンプルな背景に、キャラクターと影のみという構成。この時点で度肝も抜かれる。シルエット影の使用の意図は、立体と躍動の演出でしょう。真ん中に光源があるかのような感じですよね。この影が凄まじい。


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さきほどまで散々見てましたが、シルエットでは動きが強調されます。ただ全部シルエットにしてしまうと、キャラクターのディテール的可愛さが消えてしまうのは言うまでもなく。キャラクターの可愛さと動きを両立させ、躍動感を出せているのは、このシルエット影のおかげ。


このシルエットの使い方は当時、画期的だったはず。というのも、今となって、これぐらいのシンプルな背景は「日常系アニメ」で散々に見られますが、当時は当然そんなジャンルは無く、4コマ萌え漫画も皆無に等しい状況でした。そうなると、シンプルな背景を使ったOPもほとんどないわけで、そもそもシルエット影自体を使う機会が無かった。「日常系アニメ」の黎明期たる2002年近辺で、このOPが画期的なのは必然とも言える。

そういう具合に考えると、4コマ萌え漫画の始祖たる「あずまんが大王」のアニメが後続作品(※特に日常系アニメ)に与えた影響は相当なものだろうと思うわけで。特にOPの影響は大きい。



<4、シルエット影の影響と一般化、その後の大畑OP>

そんで、ここからはその影響について見て行きたい。


特に分かりやすいのは、シャフトの演出家である大沼心さん。
彼は非常に影響を受けていて、手がけた作品に顕著に出ている。

■ひだまりスケッチ×365(第2期)「?でわっしょい」(2008)
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お手玉な感じでぽんぽんと女の子が飛ぶ。こりゃまあオマージュですよね。
オマージュだと思うけど、本家と見比べると落ちていく様子が足されているのが分かる。
新たな表現を追加して昇華しているのが良い。


■化物語 10話OP「恋愛サーキュレーション」(2009)
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有名な化物語のOP。シルエット影を効果的に使用することで、彼女の重層性を表している。
影も単調にならないように、カットによってスピードを変えてたり。
特に1カット目は、PAN方向に合わせて慣性が効いてる感じが出てて上手い。


■ef - a tale of memories「euphoric field」最終話ver(2007)
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全面シルエットの飛び込み。
2人の関係性について、想像が深まる。
最終話以外だと泡のように弾けていて、それも良かった。


後は、「夏のあらし」(※ED)ではシルエットオンリーで演出していたりする。こんな感じで、大沼さんはすごく影響受けてます。まあ大沼さんぐらい凄腕の演出家が影響を受けているのならば、その他諸々大勢の演出家にも同じように影響はあっただろうと。実際に、次のように日常系アニメでは散見される。



そんで、大畑OPのシルエット影の影響というのはもう沢山ありまして、少し探しただけでもこれだけ見つかる。「よく分からない所(背景)にキャラクターがいて、そこに影がつく」というのは凡そ大畑OPの影響と言っても良いのではないかと思う(※キャラの縁取りとかは4コマ漫画からの影響かもしれないから微妙な所だけど、まあ広義的に)。

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(とらドラ! OP1「プレパレード」(2008))


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(上から順に「僕は友達が少ない」、「GJ部」、「SHIROBAKO」、「がっこうぐらし!」OP)

日常系アニメの乱発と、それによるシルエット影の一般化により、まあ珍しいもんではなくなってしまった。その結果、今大畑OPを見てもさほど驚きがない。特殊な物が一般化したことで、良くも悪くもオリジナルの特殊性が喪失してしまった。



さてその後の大畑OPはというと、更に洗練されたものになっている。


■WORKING!!(第1期)「SOMEONE ELSE」(2010)
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本家のシルエット影は一味違う。他のと比べるとちょっと遠目に付けてますね。影自体は、「あずまんが大王」と比べるとシンプルなものに。動き重視で、影とキャラの連動で立体を生み出す。さらに、クレジットや背景に被さる時に影が屈折してることで、キャラクターの存在・立体感がより増している。

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驚くのは、影が付いてる場所。「あずまんが大王」のシルエット影も(ビジュアル重視だったので)さほど厳密ではなかったけれども、これだけずらしているのに違和感ないどころか立体を感じられるのはまあスゴイ。


■WORKING!!'(第2期)「COOLISH WALK」(2011)
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2期も同じく、やはりこの影の屈折・曲がり方が上手い。
「キャラ→クレジット→BG」と段差が設けられているので、奥行きが出ている。


■WORKING!!!(第3期)「NOW!!!GAMBLE」(2015)
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山田ァ!うざ可愛いじゃねえか!
アクションつなぎからの着地のキレ、そして髪の毛のリアクションが良い。
こういうところで、シルエット影は大活躍する。


シルエットという部分に絞って、大畑清隆という演出家について少し見てきました。遅筆だとか色々言われますが、それを補って余りあるくらいには才がある。各話演出もいいんだけど、個人的にはOPですね。OPのコントロールは抜群にずば抜けている。最近は、「魔法少女リリカルなのはViVid」「WORKING!!!」で久々に各話演出を担当しているので、これから各話演出・コンテを多くやってくれるかもということで期待。

何か上手くまとまらないが、こんな感じで…
大畑清隆と言えば、「シスプリ」のEDも必見です。岸田隆宏との名ED。



<参考文献>
原作のラストまで描ききる! TVアニメ「WORKING!!!」鎌倉由実監督インタビュー
大畑清隆 OP・ED集


フリッカーの追加参照例です。
(※俺しか興味ない感少しあるな!)

前記事では、フリッカー・ブレ作画って希少価値が高いかなあと思っていたけれど、よくよく考えればコマ数操作なので、頻出してますね。よく見るのはやはり鍔迫り合いとか、悶えるシーンだったり、怒りを堪えるシーンだったりなので、「拮抗」って言葉がフリッカーにとっては重要な気もする。笑いブレなんかはちょっとまた違いますけどね。あれは多分(他のブレに比べると)レア度高い。



■「HELLSING」 13話 (2001/TV) 
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セラスが攻撃された後のところ。アーカードに弾丸を渡そうと必死に手を伸ばしている。
ここのフリッカーなんかはすごく上手い使い方だと思う。腕がピクピクと震えるところは、画としては3枚だけなんだけど、これだけで画面にすごい緊張感が走る。


■「それが声優!」 OP (2015/TV)
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佐々木政勝作監OP。これは上手い笑いブレ。
こういったブレ作画の一番のいいところは、肩の動きが小気味よくなるんですよね。「ハッハッハッ」と強く笑うと、肺が膨らんで胸が押し出されて、結果的に肩が動く。そういった部分がすごくリアルで、笑いブレのベストなところと思う。


■「幽玄会社」 02話 (1994-95/OVA) 
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妖魔が暴走して、クククッとした怖い動きで少女(奈々美ちゃん)を襲おうとしている所。
何かクモみたいで気味悪く、ホラーチックな動きになってますよね。不気味さという点でもフリッカーが効果的なのは、前回述べた通り。滑らかにあえてしないことで、不気味になる。


■「サマーウォーズ」 (2009/劇場)
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栄おばあちゃんに斬ってかかられるシーン。ユパさま並に痛そう。
グググッと、両者が拮抗してますよね。ここの拮抗は力というよりは、思い。侘助はこの前のシーンでギャグみたいにすっ転んでるわけですが、このシーンを堺に一挙にシリアスになる。一番大切に思ってる人に、自分のして来た行いが認められないことの苦痛な思いのぶつかりみたいな。そんなものが表されているように感じる。


後はTwitterでぼちぼち見かけたのが、キャラが驚いてる時に起こる瞳孔の動きとかがフリッカー(ブレ)の一種かもなあということで。言われてみれば確かに…という感じで。このサマヲとかが分かりやすいと思うんですけど、これはいろんなとこで見かけますね。

瞳孔ブレ
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これは物語ラストの方で、OZの暗号を暗算で解いてるところ。
まあこれはフリッカーというよりは、単純なブレ作画なのかなあと。瞳孔の他には、影とかでブレさせるヤツもありますけど、あれも多分フリッカーよりはもっと単純。フリッカーっていうと、もっとこうグググッとした感じで、ジグザグに中割り(そこそこ複雑なシート操作を)してる気がする。広義だと、こういうブレも全部含むのかもしれないけれど。


他にフリッカーねえかなあと思って探してた意外と見つかったのでちょっと。
(※それにしても、相変わらず守備範囲が狭すぎるNE)

・「世界征服~謀略のズヴィズダー~(2014/TV)」 02話

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ヴィニエイラ様のお食事タイム。かわいい。
逸花お手製のマズメシを恐る恐る食べようとしている、ケイトの腕の動きに注目。
恐る恐るなので、手が行ったり来たりしてるのが分かると思う。

これもガクガクして、ぎくしゃくした映像になっているから、フリッカーと呼んでええと思う。
間違ってたらゴメンチ。


・「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012/劇場)」

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アスカがメットを引っかかりながら外すカット。
やや、顎の部分の画が往復していて、ガクガクとなっている。
ちょっとこれは微妙かなあ。それっぽいんですけどね。



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アスカ食いしばりカット。これはフリッカーを素晴らしく上手く使ってる。
「歯の食いしばり」を表現するために、歯茎(右下)をわざとチラッチラッと見せてて。食いしばる時は、歯よりも口周辺の筋肉が動くんだよね。原画枚数は増やさずに、その順番をズラして歪にリピートさせることで、その表現を達成している。



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ここも同じく。弐号機コード777(トリプルセブン)状態のシーン。
アスカがカメラに迫ってくるカットなんだけど、その迫り方がぎこちない。映像が滑らかに進まないことで、力の拮抗感を出している。

同スロー
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次の画に進んだと思ったら、前の画にひゅっと戻るのがこれで分かると思う。
歯の食いしばり方がまた良いですね。



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ここはCGだけど、ガタツキ方が似ていたので。
まあこれはブレとかガタツキの表現だけど、根底にはフリッカー作画に対しての意識というか参考というか、そういうのがあるかもしれないということで。ガタツキ方も一定じゃないんですよね、全部バラバラで歪にリピートしてる。




・「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 AIR/まごころを、君に(1997/劇場)」

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量産型が弐号機に刺されて、少し硬直した後にやんわりと力が抜けていくカット。
手が伸び切る前の場面での動きに注目。
3回ぐらいブレて痙攣している様子を表現してる。



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吉成作画。弐号機が量産型を2体ぶち抜いて、血しぶきブシャーのカット。
弐号機の腕と、量産型のもだえ苦しむ姿がフリッカーによって作画されている。
これめっちゃ良いフリッカー作画だと思う。素晴らしい。
舌出してる量産型の顔が、中央→下→中央→左とぎこちなく移動するのが特に上手い。



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上記のカットを受けての、アスカの描写。
ここでは弐号機とシンクロしてるので、同様にフリッカーさせている。
自分の全体重をかけて、弐号機の腕に伝えていて、見ているこっちにも力が入りますね。
肩にも力が入っていて、肩全体が前面にグッと出てきてるとこがまた上手い。

 
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弐号機が無理やり起き上がろうとしているカット。
口全体のガクガク感が良いですね、
限界でありつつも無茶に起動しようとしているのを画で描写している。




大体こんなとこかなあ


自分がフリッカー作画から感じていることは、次の3点。

1、エンジンの駆動・始動っぽい(ドルルンって感じ)
2、カットにおいて原画・動画が往復することによる、もどかしい感じ
3、目に引っかかり、印象に残りやすい

これらは、ジグザクな中割りっていう点で当たり前かもしんないんですが。
とても印象に残りやすい要因は、これが普通の映像じゃないから。普通のアニメーションって滑らかじゃないですか。今の商業アニメでは、原画をまず書いて動画をその間に(基本的には滑らかにするために)入れていきます。そのポーズトゥポーズにおいては、(カクカクしないで)滑らかになるというのはやはり必然であって。その中に、ある種「引っかかり」のような違和があるカットというのを入れてくると、やっぱりいい意味で浮いてきます。

となると、やはり見所で使おうと誰しも考えると思うんですよ。「ここを見て欲しい」と思うんなら、違和のある画(普段とは違う画)というのをぶち込んでくると俺は思う。じっさい前回や上で見た例も「ここぞ!」って場面で使われてるケースが多い。そんで、これだけ多用されているのは、何よりも負担はさほど増えず(少なくとも原画枚数は変わらないので)に見せ場の演出ができる、というのが大きい、と思う。

ちょっとこういう部分に注目して見ると、またアニメが面白くなるかもしれません。 

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