Gomistation☆

一旦(小)休止

カテゴリ: カメラ・演出・カット


今回はアニメーションにおける桜の表現に関して、少しお話をしたいと思います。
[追記]コマ打ちに関して、訂正箇所があります。)


まず、「アニメで桜」といえば、これを思い浮かべる人がおそらく多いのではないのかなと。

・「秒速5センチメートル(2007/劇場)」
20150527233302

同スロー
20150528003216

新海誠の代表作。やはり桜といえば、コレですね。

この桜の花びらの散り方は、3コマ[訂正]2コマ打ちです。しかもキャラのタイミング(キャラも2コマ)と同調して流れていく。そのためシンクロ感があって、とても気持ちの良いシークエンスになっている。

また細かいことを言うと、画面右上の桜の花びらは影を考慮されたものになっています。奥側右にスーッと消えていく花びらは明度が下げられていて、少し暗めになっているんですね。細部のディテールへのこだわりがこの画で伺えます。


<1、死生観からの発展、別れ・迷いの表現>

桜の花びらというのは、死生観を示唆することが多いです。桜の刹那性は「秒速」によって示されている通りで、これは人の死生観にも通じる所があります。その死生観から分岐し、「別れ」「出会い」「迷い」など不安定・複雑な感情を表現するのにとても効果的で、よく使われます。

・「ちはやふる(2011/TV)」 05話
20150527233259

ちはやが新と再会する直前のシーン。太一がちはやに思いを寄せていながら、ちはやの心は新の方に傾いている。それぞれの思いが交錯している場面です。

ここでは桜はCGで1コマ。対してキャラは3コマで描かれおり、桜の方がこの画面では主役になっています。手前の桜は、ややボヤかされており、ちはやの曖昧な感情が表現されている。


20150527233258

桜の枝の密着マルチと、花びらの散り方が美しいシーン。ここの密着マルチは、風によって動く枝の微妙な動きを上手く再現していて素晴らしい。手前に大きく流れる1コマの桜の花びらも、画面の密度を程よく増していて良い。


20150527233257

ここはやや煽りのアングルですね。
桜は一つ目のgifと同じく1コマで、存在感を出しつつもキャラを邪魔しないように描かれている。名脇役みたいな感じ。



<2、新たな変化の前兆・予感・前ぶれ>

また桜といえば、新学期、進学、新生活など「心機一転」を思いを浮かべることが多く、「変化の前兆・予感」というシーンでも使われることが多いです。

・「CLANNAD(2007/TV)」 01話
20150527233254

岡崎と渚の出会いのシーン。
モノクロの画面から一気にカラフルになっていく。トラックアップによって奥行きある画面になっています。BGの動かし方もまた良い。後、この桜の花びらは一見1コマっぽいんですが、実は3コマ。キャラとの同調具合が、「秒速」と同じく心地良い。


・「四月は君の嘘(2014/TV)」 01話
20150528013401

20150528012811 

最近だと、やっぱりこれですね。「君嘘」です。河野作画。
2個のgifともに、桜、キャラとも3コマで描かれていますが、両者のタイミングは1コマ分ズレており、そのおかげで桜・キャラともに映えるシークエンスとなっています。

[訂正]1つ目2つ目のgifともに、桜は2コマ打ちです。キャラに関しては、1つ目が3コマ打ちで、2つ目は2コマ3コマ打ちが混在しています。画像見直して見ると、確かに桜は3コマ打ちではなかった…1コマ分ズレているという感覚は、「コマ打ちの違い」ということに起因していました。誤った情報を伝えて申し訳ないです。ご指摘ありがとうございます。



・「彼氏彼女の事情(1998/TV)」 08話
20150528020242

有馬が宮沢に対しての恋心にやっと気付くシーン。宮沢への恋心の知覚というのを、桜によってショック的に表現している。1カット目でぶわっとなりますよね。それがハッとした感じを出している。

これだけ昔の桜作画です。2カット目は止め絵でスライドさせているのみ。この他にも、この08話では桜の表現が見られるのですが、技術的な問題(※CGが未発達なので、手書き作画しなければならない)があり、リピート作画などで描写していました。「桜の花びらが散る」というパーティクルな描写は、極端に言うと「王立庵野作画(参考)」と同値であり、とても負担が大きい。だから、CG未発達の時代ではさほど使われなかったものと推測しています。多分、(出来ることなら)桜を使いたい演出家は山ほどいた。


・「D.C.II 〜ダ・カーポII〜(2007/TV)」 01話
20150527233255

20150527233256

小愛が告白するシーン。告白の前ぶれ・フラグ的なものを演出すると同時に、小愛の緊張と不安が入り混じった複雑な心情を表現しているように感じます。

特に2個目の桜の花びらは美しい。キャラは3コマで描かれ、桜はCGで1コマ。これによって、キャラの動きは相対的にゆっくりとした印象になり、結果的に小愛の気持ちの大きさ、告白シーン全体の重さというのを上手く表現しています。



桜の花びらが散るというのは、二面性がある表現だと考えています。一つは「迷い」「別れ」「死」といったネガティブな表現であり、もう一方は「出会い」「変化」といったポジティブなものです。この二面性は、死生観から発展してきた点ではある意味当然なのかもしれません。また、桜のパーティクル(粒子的)な部分は複雑な心情を表現するのにも効果的です。よく使われるのも納得できる。

桜表現の発展は、技術革新が大きな要因です。1990年代では、『彼氏彼女の事情(1998)』のようにBOOKのスライドで表現するか、作画でリピートさせるかぐらいしか選択肢はありませんでしたが、今はCGの発達に表現方法がよりイージーになっています。コンピューターによりセル時代では制限があった色の数が無限大になったことが代表的ですが、技術の発展というのは演出や表現の幅を広げます。もちろん、そこにクリエイターの想像力や創意工夫が無ければ無意味、というのは言うまでもありません。どちらか片方では中々上手く行きません。技術と想像の相乗効果によって、表現は加速していきます。



<参考文献>

「銀魂」考 第3回鎮魂とカーニバル その3 「桜は死と再生の樹」と「国ほめ」-物語を物語る
「ちはやふる」舞台探訪004芦原温泉駅とその周辺(アニメ5話)-不定期人生作業日報(仮)
庵野秀明氏、エヴァに登場する声と線だけのアニメについて「最低限の情報量で作りたかった」 #ニコニコ超会議2015


・「日常(TV/2011)」 12話
20150116011420

安中さんが楽しげに射的する回。この鉄砲の弾がキャラメルの箱に当たって跳ね返るシーンは、スローモーションの演出になっています。つまり、高速度撮影の描写です。


<1、高速度撮影とは>
高速度撮影とは、一言で言うならば、スローモーション映像のことです。高速度撮影の時に押さえておきたいポイントは、撮影と再生のフレーム数が異なるということです。どういうことかと言うと、普通の映像は、30F/秒(1秒間に30フレーム)とか同じフレーム数で撮影・再生を行います。これが、高速度撮影だとどうなるかというと、60F/秒で撮影したものを30F/秒で再生したりするんですよ。この時、1秒で撮影したものを再生するのに2秒かかります(60F÷30F/秒=2秒)。つまり、1秒分を2秒に膨らませて映像を作るわけです。この感覚分かりますかね。

基本的に、再生時のフレーム数は固定的なので、通常の映像よりも多くのフレーム数で撮影したシーンは、結果的に再生するために多くの時間が必要になります。同じように600F/秒(1秒間に600フレーム)で撮影した動画を30F/秒(1秒間に30フレーム)で再生するためには、20秒かかります(20秒×30F/秒=600F)。ちょっとここで、実際の例を少し見てもらいたい。


・参照1:「アヒルの水遊び」 撮影:600フレーム/秒
20150116005242
(引用元:http://www.youtube.com/watch?v=3ZM9d3q81dc

ものすごく簡単にいえば、高速度撮影とは、瞬間の映像をびよーんと伸ばしている映像です。現実における一瞬の出来事、例えばバットにボールが当たる瞬間とか、拳銃が鉄板を撃ちぬく瞬間とか、風船が割れる瞬間とか、そういった刹那の間に何が起こっているかは通常の人間には分かりません。だから、そのような瞬間に何が起こっているか、どんな現象が発生しているのかを分析するために、こういった撮影方法が使われるわけです。


・参照2:「割れるコップ」 撮影:7000フレーム/秒
20150329003216
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=vF1ucCKVsEo

実写における高速度撮影では、撮影時に通常より多くのコマが使用されるのが基本と前述しました。これをアニメに置き換えるとなると、現在では3コマ作画(8F/秒)が主流ですので、原則的には1コマ作画(24F/秒)、ないしは3コマ中7など、中割り多めの作画が高速度撮影(スローモーションの表現)に向いていると言えます。

(※[訂正]「3コマ作画」とは、1秒間に使われる原動画(原画+動画)の枚数が8枚の作画のこと。「中割り」「中◯」とは、原画と原画の間の動画の枚数のこと。原画の後に描かれる追加の絵、という解釈でもいい。「3コマ中7」の時、原画1枚と動画7枚を足して、8枚が1秒間あたりに使用されます。)


そして、今回の本題である「バレットタイム」という技法は、この高速度撮影の表現を下地にしています。大分前に書いたバレットタイムの記事の中では、「高速度撮影」をさほど重視していなかったので、バレットタイムそのものについて理解が上手くいってなかっと思っていまして。もう一度、原点に帰ってみたいと思います。「バレットタイム」という技法を大いに広げたのは、やはり「マトリックス(2000)」です。この作品の映像をしっかり考えていく。

19]18]
(引用元:https://www.youtube.com/watch?v=bKEcElcTUMk

300近い個数のスチルカメラを使って、スチル(静止画)を取り、それをコマ撮りで(1コマ2コマで)つなげていき、スローモーションの中を高速のカメラワークが突き抜けることにより、瞬間的なシーンに快感をもたらす。これが本来のバレットタイムのはずです。下地には、やはり高速度撮影があります。



<2、バレットタイムの概要・定義>

「バレットタイム」は、Wikipediaでは次のように定義されています。

被写体の周囲にカメラをたくさん並べて、アングルを動かしたい方向にそれぞれのカメラを順番に連続撮影していき、被写体の動きはスローモーションで見えるが、カメラワークは高速で移動する映像を撮影する技術、またはその効果を指す。引用元:バレットタイム-Wikipedia

「バレットタイム」の定義は、このようにさほどカッチリしていません。そのため、自分でも「これってバレットタイムっぽいけど、バレットタイムと呼んでいいのか微妙やな」というカットはとても多く、非常に困っていたので、簡易的ですが、シンプルな定義を作りました。これさえクリアしていれば、バレットタイムと呼んでもおk。
バレットタイム [簡易的な定義]
1、細かい角度別の絵(スチル)がたくさんある
2、時間の膨らみ・伸びを感じられる

前回はスローモーションやカメラワークにこだわりすぎていましたが、シーンに現れるそれらはあくまでも現象であり、本質は「連続した大量のスチル」と「時間の膨らみ・伸びの感覚」です。以上のことを踏まえて、実際にアニメでの例を見ると理解しやすいと思う。

・「みなみけ(TV/2007)」 01話
20150328170008

ラブレターをもらったカナが家に帰ってくるシーン。細かい角度別に、順番に作画されていて、なおかつ時間が伸びていますよね。驚きを隠せないカナと、それとは対照的に冷ややかな視線を送る千秋と、少し怒ってるハルカの対比が上手い。仰角(水平から見上げるアングル)から俯角(水平から見下ろすアングル)へと変化していく、立体的なカメラワークがまた良い。



<3、2つのバレットタイムの概要>

そしてここからは、アニメにおけるバレットタイムをさらに2つに区分したいと思います。今回は少し、感覚的な部分も追求しました。以前は感覚的なものはあまり重視していなかったんですが、最後はこれだろうと。まあとにかく、バレットタイムは2つに分けるべきです。たぶん。


一つ目は、「連続型・バレットタイム」というもの。

「マトリックス」でネオが体を捻って弾丸を避けるこのシーンが、代表例です。
20150328170006


2つ目は、「同時型・バレットタイム」というものです。

この代表例は、モーフィアスが救出されるときに走るシーンです。
20150328170007

両者ともスローモーションであり、バレットタイムです。では何が違うのか。それは撮影方法の違いです。上記の「連続的」においては、スチルカメラを被写体の周りにたくさん並べ、角度別に連続して順番に撮影されています。しかし、「同時的」に関しては、スチルカメラが周囲に並べられるところまでは同じですが、撮影されるタイミングが「1、2、3」という風に連続ではなく、全く同じタイミングで撮影されます。ここが異なっている点です。連続してパシャパシャ静止画が撮られるか、一斉にパシャっと撮られるかが異なる点です。(参照:図1)

バレットタイム2つの異なる点

「連続型」も「同時型」も、被写体の周りをぐるっと撮影します。「連続型」が一連のアクションを角度別に連続して撮影するのに対し、「同時型」はどの角度においても同時に撮影します。こんな撮影方法だから、「同時型」は静止しているシーンが多くて、少し地味目になっちゃう。とにかく、この「同時型」の存在が、「これってバレットタイムなのか?分かんねえよ!間違ってたら許してヒヤシンス」となっている原因だと思います。百聞は一見に如かず、具体例を少し見て行きましょうかね。



<4、「同時型」の具体例>

・「ソードアート・オンライン(TV/2012)」 01話 
20141127030517

キリトが最初に戦闘するシーン。正面から横顔に至る時、アクションはほとんど止まっている。これは、アングル変更のためと、ダブルアクション的(拳銃の引き金を弾く)な勢いを次カットにもたらすため。


・「咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A(TV/2012)」 16話
20150111163040

大将戦オーラス。チーした後に、横顔から正面へのアングル変更。そして、配牌の表示を見せることによって、竜華の深い洞察を示しているところがまた良い。


・「ご注文はうさぎですか?(TV/2014)」 08話
20140616142058

リゼちゃんの妄想シーン。アングルの90度変更と、シームレスにメイドを登場させるための「固定型」の使用。角度別の作画が、本当に細かくて丁寧なんですよ。カクカクしないように、角度別に枚数を多めに使っているし、BGが動くタイミングも同調させていてキレイ。


・「名探偵コナン」」(TV/2014) ED48「無敵なハート
20150111163042

横顔から正面へ。作画はとても丁寧でいいんだけど、BGの動かすタイミングとちょっと噛み合わない感じがあって惜しい。でも、髪のなびきは見事ですよね。アングルが変わっても、風の流れは変わらず、しっかりとなびきで表現されている。


・「未確認で進行形(TV/2014)」 ぜんたい的にセンセーション(MV)
20140917105022

紅緒様の回転作画シーン。いきなり回転するので、コメディ的なショック感がありとても良い。こう何というか、びくっとする感じですね。画面前方を大きく横切る手の作画もまた丁寧でカワイイ。このMVは、「カワイイ女の子を詰めました」的な感じなので、それがこういうよく分からないシーンでも表現されているのは見事。

アニメにおいての「同時型」は、横顔から正面へ、もしくはその逆のシーンが多いです。これはまあ、カワイイ女の子の正面絵を見せようという考えと、アングル変更するためにオーバラップ等でカットをつなぐ演出よりも、もっとシームレス(カットとカットの間に、継ぎ目がない滑らかな感じ)を求めているためかもしれない。横顔から正面へのアングル変更なので、90度以内でカメラワークの角度別に作画されています。

これらのカットでは、カメラはギュイッという感じで急速的に動くことが多いですね。「マトリックス」のネオみたいに高速移動ではなく、短い時間に急速移動する感じ。スライダーというよりも、手元で曲がるカットボールみたいな。カットだけに。次からは、「連続型」のバレットタイムを見ていきます。



<5、「連続型」の具体例と、その定義>

・「フリクリ(OVA/2000)」 01話
20150328170005

ハルコがナオタにチューするところ。BGとの同調具合、仰角(水平から見上げるアングル)から俯角(水平から見下ろすアングル)へと移り変わるカメラワークが見事。最後のクロスフィルターもいい味出してる。「キス」という一瞬のシーンを、誇張して大げさに表現している。


・「黒塚 KUROZUKA(TV/2008)」 01話
20150328170009

首切りアクションシーン。カメラが回ってから一周した後ぐらい(背景の家が再度現れる辺り)に、少しアングルが仰角になることで刃物が突きつけられる首元に視線が誘導される。


・「Fate/zero」(TV/2011) 24話
20150328170004

サーヴァントなにそれおいしいの状態のラストバトル。カメラアングルは、切嗣に寄る際に仰角から入り、切嗣の後ろを抜けて、言峰へと寄っていく際に俯角へと移行していく。これはお互いの心情を通過している描写。そしてラストは両者の力が拮抗していることを示すために、真上からのアングルになっていく。


・「ソードアート・オンライン(TV/2012)」 01話
20141127030518

剣で一撃するシーン。これは被写体であるキリトくんではなく、フィールド上を細かく角度別に映すことによって、結果的にキリトくんの圧倒的な強さを示している。これからの戦いでも強いんだろうな、といった感じの示唆もされている。


・「黒執事 Book of Circus(TV/2014)」 01話
20150325222132

シャンパングラスタワーが崩れてしまう一瞬のシーン。背景の3DCGと作画のタイミングがズレてなくていいですね。これすごく丁寧で細かいです。ラスト俯角になってから、キャラの顔に寄っていくんですが、そこの作画もツメが効いてていいです。口の動きも細かく描いている。

・「アイドルマスター シンデレラガールズ(TV2015)」 04話
20150326220419

あめ玉で杏を釣るところ。あめ玉がキラキラと画面内に散らばっていて、綺麗なシーン。ただ贅沢をいうと、カット尻はもう少しフェアリング(慣性的なタメツメの表現)、スローモーションさせて欲しかった。あめ玉がちょっと空中でゆっくりと落ちていくみたいな。



まあ、ぶっちゃますと「連続型」の方が本来のバレットタイムだと僕は思うんですよ。立体的なカメラワークから、角度別のスチル、膨らんだ時間を含めて「マトリックス」のあのシーンに極めて近いと感じています。そのため、「連続型」の定義というのは、バレットタイムの定義とほぼ同じでいいんじゃないのかと。

連続型バレットタイム [定義] 
1:理想は原則として1コマ作画。3コマ作画でも可能
2:画面内の物体のアクションは、静止もしくはスローモーションに近い状態
3:高速カメラワーク 

上記のgif群では、これらが基本的には守られています。 1は、前述した通り。高速度撮影表現が下地にあるため。2も同じく、一瞬のアクション、状況を事細かに描くことで魅力を発現させるバレットタイムには必須。3は、アクションはゆっくりなのに、カメラワークは速いという爽快感あるギャップを生み出すために必要です。 俯角、仰角などのアングルを使う、立体的なカメラワークについてですが、これは微妙です。一瞬の出来事を描写するためには、立体的なカメラワークが必要な感じもしますが、「黒塚」等で無くても成立しているので何とも微妙。あれば、よりシーンが良くなるという感じですかね。 



技術的な要件も当然あるんですが、これらに終始してしまうと、前回のようにワケワカメになってしまうので、感覚的に図っていくのも大事です。感覚的には、「映像が引き伸ばされている感覚を抱く動画・シーン」という感じです。最初の簡易的な定義を見たした上で、「あっ何かマトリックスっぽいな」とかかっこ良く感じられれば、それはバレットタイムと呼んでいいと思う。ここは微妙なとこですが、やっぱダサい映像って技法そのものが成功していないと思うんですよ。成功しているからこそ、マトリックスのあのシーンは魅力的なわけで。見たらみんながマトリックスごっこするわけで。

バレットタイムの魅力や意義は、その根本である高速度撮影の技術的な利用と似ているところが多くあります。一瞬の現象を引き伸ばすことによって、何が起こっているのかを分析する高速度撮影(ハイスピード撮影)と同じように、アニメのバレットタイムでも一瞬に含まれるカッコ良さ、緊張感、そして感情を表現することが目的です。普通のスピードでは、目前に広がる光景で何が起こっているかわからないけど、それがゆっくりと映されることによって、視聴者にスゴさが伝わる。2009年WBC決勝でのイチローの勝ち越しタイムリーも一瞬なんですけど、すごく長い時間のように感じるじゃないですか。現実でも時間って膨らみますよね。ああいう感じとは言いませんけど、似た感じのインパクトあるシーンを作るために、(手間もかかるのに)バレットタイムを使用すると思います。たぶん。


<参考文献>


なんのことやら分からん人は、下記の記事を読んで頂けるとわかると思います。まあ簡単にいえば、カメラがぐるぐるしてる作画のリファレンス。

<バレットタイム・回り込み関連の記事>
擬似的な回り込み表現のいろいろ
「ごちうさ」のバレットタイム表現と、その類似例
回り込みにおける主観的な時間の流れ方
ゴーハンズ回り込み 



■「四月は君の嘘(2014)」 8話
20150111163041

相座兄の演奏終盤。カメラがじんわりと回り込んでいる。時間は静止していないが、この刹那的なシークエンスは有馬に対する感情を示したものになっていることはおそらく間違いない。



■「名探偵コナン」 ED48(2014/11/1~)
20150111163042

コナンED48における完全バレットタイム。「未確認で進行形 MV」のように、カメラは90度回転。髪のなびきが画面に合わせ、右から左に転換しているのが、細かいが良いところ。アングルが変わっても、勢いで押し切っている。ここに理屈ではない。



■「ソードアート・オンラインⅡ」 8話 
20150111163039

GGOの決勝戦中盤、ダインがペイルライダーによって倒されるシーン。これは単純な回り込みではなく、バレットタイム。高速度撮影+被写体の状況は静止に近いものだからです。一瞬の出来事を長回しで膨らますことができるのは映像の良いところですね、時間軸を操作できるからタメが作れる。



■「咲-Saki- 阿知賀編」 16話
20150111163040

準決勝大将戦の終盤、竜華の覚醒シーン。これも同じく、一瞬の内に竜華にどれだけの変化が生じたかを示している。つまり、これは竜華の「変貌・変身」を表現するためのバレットタイム。


今回はこんなところです。


レイアウトと構図の違いがあやふやな感じなので、2つの言葉の意味の基本的な違いを考え、整理しました。まずは、アニメーター本谷利明さんのレイアウトと構図の捉え方に関してTwitterから引用したいと思います。というか、おそらくこれが一番的確で分かりやすい。

レイアウト(Layout)を日本語で言うと「配置する」という意味。 そして構図を意味する英語は「コンポジション(Composition)」。 全然別の意味の言葉だよ。「構図が悪い」と言われたら、カメラアングルやフレーミングをもう一度考え直す。 「レイアウトが悪い」と言われたら画面内でのキャラや物品の配置を見直します。 本来はこのように使い分けます。



(A)レイアウトと構図という2つの言葉の違い

本谷さんの仰る通り、「レイアウト(layout)」というのは日本語に直すと「配置する」という意味があります(※参照→レイアウト)。「構図」も同様で、英語に直すときには、コンポジション(composition)という単語を使用し、その用語には「構成する」という原義的な意味があります(※参照→構図)。




(B)構図

殆ど本谷さんのツイート内容の繰り返しですが、「構図」は、基本的にフレーミング(画面にするとき、どこを切り取るか、どれぐらいの大きさにするかを決定すること)とカメラアングル(=アイレベル)の2つで成立します。「構図」は、画面の全体構成であり、一番最初に決定されると言っていいでしょう。それでは、「ソードアート・オンライン」1話のあるシーンを参考に「構図」の実際を見て行きます。


1)最初の画面(どこをフレームにするか決めていない段階)
テスト1

敵モンスターを切り裂くキリトくん。これは元々決まった画面ですが、ここでは決定していない画面とします。どこをフレーミングするか、どんなアングルかも決まってないものとします。これからどんな風に「構図」が決まっていくのかを見ていく。


2)フレーミング(どこを描写するか決めている段階)した画面
7ce5738b78ecb07ac098b13bbfb151bd

ちょっとキリトくんの顔を寄って画面にしたいな~と思うと、こういうフレーム選択になります。カゲになっている部分はここでは切り取られてます。つまり、選択された部分が表現したい画面です。

これにカメラアングル(アイレベル)の要素が加わることもあります。カメラアングルには、大まかに①アオリ②正面(平行)③俯瞰の3つの画面があります。カメラアングル(アイレベル)について、正方形のモデルで確認しておきましょう。

アイレベル
(参照:アオリ、正面、俯瞰の図)



3)決定した画面(表現したい画面)
7de7861698b586c0b7e0cdce22d13bf1

これが新たに起こした(再度、構図を考えた)画面です。バストアップ(胸より上の画面)的で、少し迫力が増したことが分かります。その代わり、元の画面では存在していた奥行きや、剣先の通った跡のカッコ良さは失われています。このように、どこに重点を置いて「構図」するかによって、画面というのは大変な変化を遂げるわけです。




(C)レイアウト

「レイアウト(layout)」というのは、画面内の物体をどこに(where)どう(how)配置するか、ということです。人をここに配置して、木はこっちへ…みたいな感じで、全体に影響を及ぼす部分的な画面の設計と言えます。ここでは、少しサンプル画像を作ったので、そちらを参考にしながら解説していきます。


1)最初の画面(まだ物体の配置状況を決定してない段階)
レイアウト2

簡単にサンプル画像を作りました。画面内には、直方体Bと正四面体Aが存在しています。一本線は、地平線や台を表してると思って下さい。まず最初の画面では、こういった風な配置状況です。これを表現したい画面へと変更していく。


2)配置を変更した画面(より自分の表現したい画面に変更している段階)
レイアウト3
ん~ちょっとAとBの間が空き過ぎてるかなあと思うと、正四面体Aを図のように左上方に少し移動させることになります。移動前が正四面体Aで、移動後が正四面体A’(Aダッシュ)。これが「レイアウトを修正している」という状況です。修正によって変わるのは、配置だけでなく、その物体の向きや大きさなども変わります。


3)変更した画面(表現したい画面)
レイアウト4

レイアウト変更した画面がこれです。最初の画面よりも、AとBの距離が縮まり、さらにはAを奥にやったことでBとAどっちが手前なのかということが分かるようになりました。レイアウトと構図の修正で共通するのは、どちらも「自分の表現・描写したい画面を目指す」ということです。頭の中で思い描いている画面を、どんどん現実の画面に具現化していくことが目的です。

これほど極端ではありませんが、実際のレイアウト修正で良くなった(全く変わった)と庵野秀明が語ったカットがこちら。


20141221121903
(「風の谷のナウシカ」庵野秀明作画パート)
ここのレイアウトも宮さんがパパっと直して、すっごい良くなってて。やっぱすげえと。この後ろの塔の角度一本で、微妙な角度でね。
 
引用:「風の谷のナウシカ」 オーディオコメンタリー



また、原則として、画面は「構図→レイアウト」の順番で設計されることが自然と分かるはずです。元になる画面がフレーミングやアングルなどで「構図(コンポジション)」されていなければ、画面内の物体を配置することを指す「レイアウト」という行為は困難だからです。これは実写映像で考えたほうが分かりやすいかもしれません。まず風景のどこを画面として使用するかを決めてからでないと、役者の配置や動きの指示は難しくなります。

整理すると以下のことが言えます。

【構図とレイアウトの意味の違いと、両者の目的・意義】

1、「構図」≠「レイアウト」
2、「構図」は、画面全体の構成を指す。構図の要素としては、「フレーミング」「カメラアングル(アイレベル)」が含まれる。
3、「レイアウト」は、画面内における物体の配置を指す。物体をどこに(where)、どんな風に(how)配置するかを決める。
4、画面設計の原則としては、「構図」→「レイアウト」の順番で行われる。
5、どちらも「自分の表現したい画面」を目指して設計される。 



【その他参考文献】

・配置と構図の違い
http://www.jttk.zaq.ne.jp/t-yoshida/hitoridemanaberu/newpage4-10.htm


ちょっと物議を醸しているようなので。

問題の中心となってるのは、「椿が打った打球がガラスを破り、有馬の頭にぶつかり、血を出しながら倒れている」という一連のシーン。とりあえず、カットで追っていきましょうか。(公平性を期すために、全カット拾ってる)

君嘘問題シーン


おそらく、問題となっているのは、3・4~13カット目の頭からの出血描写であり、また14~22カットまでのガラスに触れて怪我する危険がある(とそれを心配する椿)描写でしょうね。前者をAとし、後者をBとします。


この問題の本質というのは、「デフォルメ演出」です。

09]21]
17]50]

Aの描写は言うまでもなく、大げさなデフォルメ・ギャグ描写であり、それを裏付ける根拠として、6、7、8、12(13)カットがあります。「流血した」という事象に対して、あくまでもコミカルなデフォルメで対応し、椿の「死体だ―!」というセリフからも冗談(コメディ的な暴力)であることが大いに分かります。


対して、このように、Bの(ガラスで手を怪我する可能性がある)描写では一切デフォルメ描写がありません。つまり、Aの描写は冗談めいていて、Bの描写はシリアス・真剣であるということが言えます。 

52]26]
28]30]

またB描写では、ガラスの尖っていて危ない感じ、有馬の手はそれとは対照的に脆そうな感じが存分に演出されています。椿が心配して、ホウキが倒れるカットもそれを表しています。


これらのことから言えることは、ただひとつしかありません。

Aというコミカル・コメディな描写は、B描写のために用意された「比較装置」であるということです。頭からの出血、というものを大げさに描いたのは、B描写、すなわち「有馬公生の手指の貴重性」を表現するためです。

つまり、有馬公生、ひいては「四月は君の嘘」内においては、「頭部からの出血」 よりも「有馬公生が手指をケガする」方が、「物語の死」に近づく恐れがあるということです。現実世界で考えれば、当然、頭部からの出血の方が一大事のように見えますが、この世界においては、それが逆転しているということです。(※まあ、頭をケガしたことがある人ならわかると思うんですが、ふとした衝撃でドバドバ血が出ますけど。) 

結局は、「有馬公生の手指の貴重性」というものを示すために、この一連のシークエンスが存在しています。有馬公生の脳みそなんてのは二の次であり、その貴重な手指だけは死んでも守らねばならない、ということをここでは伝えているように感じます。 じっさい、有馬公生の手指は貴重なものであり、ピアノクラシックという題材の下では、至ってシンプルな演出だと思います。


何故、問題になった(物議を醸した)のかは、おそらく、若干A描写にコミカルさが不足していたからでしょう。その微妙な不足さを持ってしても、一連を見渡せば、べつだん難しい演出とは僕は思えませんが。アニメ読解というのは、制作側の意図がまず前提として存在していて、それを視聴者が解釈するものであるので、あの流血シーンだけを抜き出してどうこう言うのは、ちょっとおかしいな、と思っています。

その観点では、バイアス、偏見というものはゴミでしかありません。視聴・読解という点において、一番やってはいけないことであると思っています。

↑このページのトップヘ

©GOMISTATION 2012-2019 All rights reversed