GOMISTATION

馬之翁塞

カテゴリ:原画マン > 増尾昭一


2016-01-12追記その1(元請け訂正、実質的な参加作品追加)

■スタジオ・グラビトン整理

概要:フリースタジオ(※家賃とか光熱費とかを各自が負担して場所を維持するもの)
創設年:1984~85年あたり
(※「マクロス後参加(庵野公式サイト)」とあるので、「1984年7月21日」以降)
(※「GAINAXだけじゃなくグラビトンにもいた(TIFFで言及)」「1984年12月24日」以降)

創設メンバー:庵野秀明、増尾昭一、伊藤浩二、西島克彦
(※伊藤浩二さんの言及より:https://twitter.com/manakare_i/status/481417707951099904より)

☆庵野秀明、増尾昭一
もともと作画の方向性が似ている両者であったが、1987年から88年くらいまでのエフェクト作画は特に酷似している。両者の作画がなぜ当時似ていたのかという問題が、「87-88年問題」である(※当時の立体写実のムーブメントもこの問題を通して考えたい)。

[現在の仮説]
1987年~88年の増尾に限っては本谷作画の影響よりも、「王立宇宙軍」における庵野作画からの影響が強かったのではないのか?

この問題を考える上で避けては通れないのが、おそらくスタジオ・グラビトンの存在である。このスタジオは1984.85年頃作られたフリースタジオであり、庵野増尾の他に伊藤浩二、西島克彦が創立時のメンバーにいる。


☆西島克彦
「プロジェクトA子(1986)」で初監督。「トップをねらえ!(1989)」以降は監督業をメインに活躍されている。

☆伊藤浩二
山下系メカアニメーター。(※調べます) 
(※参考資料:http://togetter.com/li/135728;新井淳さんによる作画談義)


後続参加メンバー:合田浩章、摩砂雪、窪岡俊之、平田智浩、高木弘樹

☆合田浩章
メカアニメーター。破片・エフェクトにやや特徴あり(※「イクサーACTⅡ」とか)。最近では「アマガミ」のキャラデで有名。

☆摩砂雪
金田系アニメーター(※厳密には少し違う。エフェクト作画は、テレコムからの影響が大きい)。「さすがの猿飛(1984)」のジャイアンツ回などで活躍。

☆窪岡俊之
「王立宇宙軍(作画監督)」。一般的には「アイドルマスター」のキャラデで有名。

☆平田智浩
キャラクターデザイナー。「無責任艦長タイラー」「メルティーランサー」などのキャラデが有名か。(増尾と同じ作品に多く参加しているのは、このグラビトンでの出会いが契機となったからかも)

☆高木弘樹:「機動警察パトレイバー(原画、作監)」など。
(※アニメーター金井誠さんの言及より:https://twitter.com/kanaman7/status/605490412699029504

 
<関連事項>
・スタジオMIN(スタジオ・ミン)
もりやまゆうじ、北久保弘之、田村英樹らで作ったフリーアニメーター集団(wikiより)

・「ドリームハンター麗夢(OVA/1985)」
制作協力に記載あり。原画としても、増尾昭一、伊藤浩二が参加(公式サイトより)

・「天地無用(PCエンジン/1995)」
ゲストメカデザインに伊藤浩二が参加(有志ゲームwikiより)
(※ソース確定ではないため、再確認します)

・APPP
アニメ制作会社。「プロジェクトA子」を元請けした後はグロス参加が多い。
増尾監督作品「紅狼」も元請け制作している。

・「星銃士ビスマルク(TV/1984-85)」
原画で伊藤浩二、合田浩章が参加(あんていなふあんていダイアリー様より)。
(※要確認)

・「ピチューとピカチュウ(劇場/2000)」
動画にグラビトンのクレジットあり
(※要確認)


■グラビトン年表(暫定、簡易的なもの)
()で囲ってあるのは、グラビトンに所属するアニメーターの参加作品。

1984-85年:グラビトン設立
(1984年:「超時空騎団サザンクロス」18話に増尾、伊藤)

1985年:「魔法の妖精ペルシャ」35話に参加(グラビトン名義での初仕事?)
(「うる星やつら(1985)」の156話に庵野、増尾)
(「メガゾーン23(1985)」に庵野、増尾、伊藤)
(「くりいむレモンPOPCHASER(1985)」に庵野、増尾、西島、伊藤はNC?)

1985年:「ドリームハンター麗夢」に制作協力、原画として参加

1986年:「プロジェクトA子」に、メカニックデザイン及び原画として参加

1987年:「夢幻戦士ヴァリス」PV制作(唯一の元請け?サンライズが元請け)


1995年:「天地無用」にグラビトン名義で参加(ここまでは存在していた?)

2000年:「ピチューとピカチュウ」に動画クレジットあり


私的メモであり不明瞭・不正確な点が多いので、留意されたい。ここは違うぞという点があったら、教えていただきたいです。


最初の頃は、排水溝での戦闘シーンだと思っていたんだけど、調べていくうちに木上作画と判明した。次に「橋のシーンではなかろうか」と知人と話していたので、ここなのかなあとぼんやり思っていたけど確信に至るほどでもなく、ずっと放置していた。

24]

それで、80年代の増尾作画をたくさん見てから、件の橋のシーンを見返すと、ここは増尾さんっぽくないなあと感じた部分があって。それは、煙の輪郭がギザギザになっている部分(※鴨川作画的なジャギー)で、こんな輪郭はどの時代においても増尾さんは描いてない。だとすると、「AKIRA」だけギザギザしてるのは変じゃねえかなあと思い始めた。


ここで排水溝のシーンを見てもらいたいんだけど、こんな煙が出てくる。

31]

「AKIRA」において、ギザギザ輪郭煙はこの排水溝と橋の崩壊シーンのみ(自分調べ、後は本谷シーケンス)。排水溝のシーンをぜんぶ木上さんがやったと仮定すると、橋のシーンもおそらく木上さんという事になる。木上さんじゃないかもしれないけど、とりあえず増尾さんでもない。


じゃあ増尾はどこなんだよ、ということなんだけど、これが殆ど分からん。むずい。


最初に確認しておきたいんですが、AKIRA前後の増尾参加作品はこんな感じです。

・プロジェクトA子(劇場/1986)
・大魔獣激闘 鋼の鬼(OVA/1987) 
・破邪大星ダンガイオー(OVA/1987) 01話
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・AKIRA(劇場/1988)
 
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・トップをねらえ! Gun Buster(OVA/1988-89)
・メタルスキンパニック MADOX-01(OVA/1988) 
・クラッシャージョウ 氷結監獄の罠(OVA/1989)
・クラッシャージョウ 最終兵器アッシュ(OVA/1989)

(  ^ω^)…チョットコマル


19]10]
04]35]

①のAKIRA以前では、まん丸の球形のフォルムで何個も重なってという感じの煙。簡単にいえば、増尾作画が板野系の時代である。「ポップチェイサー」とかも①に入るんだけど、まずシンプルな球形のフォルムがあって、縁取りをするようにブラシが入る。そんな作画をする。この時代は基本的にフォルムに無頓着。



53]57]
07][1]20][1]
(※静止画で申し訳ないが、大体伝わると思う)

②のAKIRA以降になると、フォルムがまったく変わる。それまでは、シンプルな球形を何個も使うことで全体を構成していたんだけれど、ここからは全体のフォルムを重視するようになる。全体のフォルムをボコボコした輪郭で描いた後で、爆発内部(表面)にディテールを入れていく。


①、②で共通しているのは、白コマくらい。タイミングも①では結構勢い重視のドカドカ系なんだけど、②ではもうちょっとタメを意識したしっかり系で、けっこう違う。そんで、何がチョットコマルかというと、まずどっちの区分に入るのかはっきりと断定できないこと。すなわち、「AKIRA」における増尾作画が、板野系の単純なフォルムなのか、全体のフォルムを重視したものなのかが断定できない。

ただまあ「AKIRA」はみなさんご存知の通り、コテッコテのリアル系作画。そんで、見直しても殆ど板野調の煙・爆発は出てこない。だから、まあおおよそ②だろうという推測でお話を進めていく。

何度も言うけど、②は全体のフォルムを重視したものであり、①のシンプルな球形の集合とは全く異なるエフェクトであることを留意されたい。



それで、この②の作画+白コマを原則として考えていった時に、僕が一番「増尾作画らしい」と思えたのは次のシーン(※完全なる推測なので注意)。

ヘリ落下爆発
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鉄雄の戦車破壊
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しかし、少し増尾っぽくないなあというところもある。例えば、ヘリが爆発してからベチャっとした原画があるんだけど、こういうのはあまり増尾作画では見ない。うーむ、難しい。やはり①で考えた方がいいのか?と思い直し①のリストを見直していると、驚くべき発見があった。



・「大魔獣激闘 鋼の鬼(OVA/1987)」 増尾パート
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「大魔獣激闘 鋼の鬼」における増尾作画は、シンプルな球形のフォルムの集合というよりは全体のフォルムを重視したものになっているのだ。なんという見落とし。これまで、AKIRAに影響されて、①→②になったという仮定の元やってきたので、これは大きな発見だ。


38]23]

となると、AKIRA以前、正確には「鋼の鬼」以前に何らかの影響がなくてはこういった作画にはならない。鋼の鬼は1987年発売(1987年12月公開発売)である。


1987年といえば、あっ…

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(はよ続編のパイロットフィルムだけでも作れや何やってんねん)

これじゃないですか!GAINAXの処女作「王立宇宙軍」。未だAKIRAとともに日本のジャパニメーションを象徴する作品。これに増尾は助監督で関わっている。この作品における、もっとも影響を与えたエフェクトといえばこれしかない。


・「王立宇宙軍(劇場/1987)」 庵野パート
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そうだ、庵野パートだ。そう、この部分の考慮を忘れている。増尾が助監督としてどこまで踏み込んだかは定かでないけども、あの緻密な作画と写実への執念を間近で1年くらい見ていたのは間違いない。灯台下暗しとは、まさしくこのこと。もしかすると、あの時期の増尾は、王立の庵野作画からすごく影響を受けたのではないか。


05]31]

その結果、「AKIRA」において(王立庵野のような)密度が高い作画になったのではなかろうか。ヘリ落下や戦車の爆発は、全体のフォルムを重視しており、その上写実性を高めるためのディテールの密度も濃い。


そういう風な考えを前提とすると、なんでその高密度な作画がAKIRAだけだったのかという疑問が生じる。王立の庵野作画にあこがれて、AKIRAで存分に発揮したとするならば、その後も継続してやろうと思うのが普通だ。なんで、増尾はいったん憧れた庵野系作画を捨てるに至ったのか。


ここからはすごく強引な推測になるんだけれど、

増尾は、たぶんAKIRAで庵野作画の完全な模倣は無理だと悟った。「いやこんなん普段もやれって言われても無理やし」みたいな。それで、テレビアニメからOVAに至るまで大活躍の当時においては、たくさん爆発やらメカやら描かなきゃいけないから、量産向きではないと増尾が判断した。だけど、やはり庵野系の模倣・発展というのをやりたいと思った結果、増尾作画の中に残ったのがあの全体的なフォルムではないのかなと。

・「クラッシャージョウ 氷結監獄の罠(OVA/1989)」 増尾パート
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53]24]

せめてこれだけでもリアルに描きたいと思って残したのがこの全体的なボコボコフォルムであり、これが1988年以降(「クラッシャージョウ」「トップをねらえ!」「ふしぎの海のナディア」)の増尾作画の基礎となった、と思います。



~まとめ~

増尾昭一が作画スタイルを変えるほどに影響を受けたのはAKIRAの本谷作画と考えてきたけども、それは違っていて、実はその前の王立庵野に多大なる影響を受けていた。その結果、それまでの勢い系(板野調+アニメ的デフォルメ重視)よりも写実性(すなわち、庵野系)を重んじる作画に変化した。AKIRAでその庵野系を試してみたはいいものの、これは量産には向いてねーわってことで、フォルムだけの模倣に留まった。

「AKIRAの増尾作画が特殊な件」に関しては、こういうことではなかろうかなと。 



2015年は、増尾に始まって増尾に終わった年でした。
来年はどうなることやら…よいお年を。


口を開けば、増尾増尾なブログもそうそう無いと我ながら思う。


さて、今回はアルペジオの増尾パートについて少し。

gifで注目してもらいたいのは、白コマ・黒コマ、いわゆるショックコマの入れ方。
これは多分一生変わらない増尾さんの普遍的な特徴と言えます。


■蒼き鋼のアルペジオ(TV/2013) 04話

臨海突破
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10]11]

増尾作画(※推測)。
Bパート終盤、ハルナが「縮退臨海」と言ってから「発射シークエンス停止、不能…」あたりまで(ミカサの下りを除いて)は増尾さんかなと。この辺は他のシーンとはすごくタイミングが異なっていて、すごく目立つ(※増尾さんは原画クレジットなわけですが、全編CG映像であるアルペジオにおいて原画マンの意図が最も反映されるのがおそらくタイミングだろうと、レイアウト+シート出しで後はCG処理かと思います)。

一度、大きく光った後に、パッパと白コマが入ってくるの分かりますかね。この一連のシークエンスにおける白コマの常在が、増尾タイミングの最大の特徴です。


侵食魚雷の突入
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これなんかも、黒コマ(全面黒の絵)の使用が印象的だよね。
2箇所に2コマずつ入れてる。


侵食魚雷の炸裂
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11]51]
55]31]

中野(昭慶)フラッシュ+黒コマからのミニブラックホール画→十字クロス光。
親倍直撃で、「御無礼(ニヤ」と言いたくなるような増尾パート。
このタイミングで増尾さんじゃなかったら、逆にサンジゲン内部の増尾愛は半端ないです。


合体艦隊の爆発
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この辺も、白コマがすごく顕著ですね。2回入ってるのが分かると思う。
後は、連続爆発のタイミング。
後半にかけての加速感、押し寄せる感じがすごく増尾さんっぽい。


こんな感じで、ショックについてはgifで見てもらうとそこそこ分かると思う。これは感覚的なものなので説明が難しいんだけど、増尾さんのショックの入れ方はタン・タンタターンみたいな感じ。パターンがあるように見えるんだけど、あんまり単調というか、パターン化されていないというか。




さて、お話変わりますが、増尾MAD2お待たせしまして。
先日までは疲れ果てていたので、匙屋さんに告知してもらいました。どうもどうも。小心者の心臓には大きすぎる賞賛もいただきまして動悸が止まらないです、はい。増尾タイミングに関しては、こっちを参考にしてもらうと凡そは分かるかなと思います。



割りかし時間がかかってしまったのは、色々あったから。それにしても半年はかかりすぎですね。この半年で、もう一生分の増尾作画見たと思うけど、『レインボーマン』とか『誘惑COUNTDOWN』とか見てないからまだまだ半人前と思う(※『レインボーマン』で、増尾さんが凄まじいパフォーマンスを発揮していたと北久保さんが発言されていたので、気になりますね。しかしwikiを見る限りではソフト化されていないらしく、非常に残念)。

もう少し色々見て入れたかったんだけど、言い出したらキリない(※アルペジオもこんだけハッキリしてるとは思わなかったんで、MADではスルーしてしまったし)。その辺はブログで補完していくつもり。

とりあえず言いたいことは、『銀色の髪のアギト』の増尾パートはこの上なく良いです。エフェクト作画の中で、最高の評価をしている『AKIRA』の本谷煙と並ぶくらいのエフェクトだったので是非見てもらいたい。

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