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fight and fight

カテゴリ: エフェクト作画

五周忌、間に合わず。




──イクサー1act3の増尾昭一といえば、FJ-Ⅲ(富士3号)の爆発シーンが有名ですが、それ以外にもあるので掲載していこうかなと。(※Act.Ⅲの増尾昭一さんは、「ぬるちひるこ」名義)



・イクサー2(手前、赤髪)とのバトルシーン
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増尾昭一作画(推測)

約8コマに渡る、怒涛の白黒入り交じるショックコマ
そこから広がる爆煙と昇っていく炎、後者はちょっとめずらしい感じのタッチ
破片の飛び方は言うまでもなく、美しい…特に三角破片の飛ばし方に注目


重ね白コマ、白コマについての参照記事



・サー・バイオレットとの最終決戦
戦えイクサー1 Act III_1080p.mp4_snapshot_34.48.254戦えイクサー1 Act III_1080p.mp4_snapshot_34.48.670
戦えイクサー1 Act III_1080p.mp4_snapshot_34.56.740戦えイクサー1 Act III_1080p.mp4_snapshot_34.57.470

この辺も増尾さんっぽいかな~
重ね白コマと画面をはみ出すような放電の描き方
エフェクトのフォルムは言うまでもなく、復習としてですが、この時期の増尾エフェクトのディテールとしてカゲが三日月になりやすい


カゲ三日月についてはこちらを参照
→庵野爆発・増尾爆発の続きと「うる星サーカス」の話
http://royal2627.ldblog.jp/archives/38191471.html




以上。ここだけじゃなくて、もうちょっとやってはいると思うけれど、自分の持ってるフィルムの状態が悪いのでここまで。まあでも、後半部分ですね、増尾さんは。



↓ブログ継続のために、よろしくお願いします
★欲しいものリスト★

エフェクトはもちろん、ここまでよくできたアニメーションは久々に見ました。驚きしかない。


さて、このアニメは、FPSゲーム「valorant」の世界大会の宣伝も兼ねた、公式のMVです。

*Die For You // 公式ミュージックビデオ // VALORANT Champions 2021



[valorantの前提知識]
*かんたんに説明すると、「valorant」は5vs5の爆発ゲームというものです。テロリスト/攻撃側はボム(爆弾/スパイク/C4;なんでもいいです、陣地を吹き飛ばすもの)を設置し起爆させれば勝ち。防御側は、それを解除すれば勝ち。そういったものです。このアニメーションでは、じっさいのゲームに出てくるマップ(スプリット)を用いて描かれています。

*それぞれのキャラクターは”レディアント”と呼ばれ、彼らは固有の能力(アビリティ)を持ちます。



グレネードからの広がる煙 ★
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白黒ショックコマ→ダブラシ煙(爆風)+押し寄せる煙

ショックの発生タイミングも美しい。密閉された通路に広がった煙が、押し出されるように出てくる。抑えきれずに下から伸びてくるのが良い。



煙から抜け出る2人 ★★
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ここが凄まじい(いや全編ヤバイんですけど)
右の女キャラ(セージ)はさっと抜けて、次に入った陣地のクリアリングを行う。よって、動きが速い。一方で、左の軍人(ブリムストーン)は煙の中から出ているので、後ろを警戒しながら、ゆっくりと入っていく。この”速度”の対比がすごい。

とくに、セージが抜けていくスピードが上手い。上手く言えないんだけど、勢いを増して画面外に消えていく感じが良い。




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スコープで覗かれた後、


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俯瞰アングルで、死角に逃げ込んだことを状況説明する





さらに遅れてやってくる男
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褐色男(フェニックス)はジャンピングをしながら、陣地へと侵入する。
海外勢による制作ですが、日本的なリミテッドのタイミングを発揮している。受け身をとってからの着地が上手い。付けPAN(※キャラクターを追うようなカメラワークのこと)も非常に丁寧。



ダッシュ、そしてボムの解除へ ★★
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(※防御側は設置されたボムを解除しなければ負け)

ダッチアングル+アオリ気味の広角レイアウト+付けPANカメラワーク

ここでアオリ+広角気味になっているのは、ボムとの距離が遠いことを表現するため。にしても、この歪めた広角レイアウトは美しい。階段を上がっていくところが区切られた感じになっているから、のように思う。




攻撃側の布陣:最強のライフル
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1発でも当たると即死のライフルを持ちながら、待っている男(チェンバー)
マズル(銃口)が強調されていいですね~。チェンバーの顔が見切れてもいいんですよ。なにを強調すべきかよく分かっている。「これに撃たれたらヤバイ」、そういう明確な意図を感じる。



排莢された薬莢
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なんだろうな、これセンスいいんですよ
排莢された薬莢が右奥に飛んでいくのは分かるけれど、ゆっくりと時間をかけて流れていくのがセンスいい。薬莢っていっつも早く消えちゃうんで、印象に残りますよね。




画面に収まらないエフェクト ★
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ここまでは上品に画面内に収まっていた。かと思えば、画面に収まりきらない、炎を描く。あまりこういうことは言いたくないんですが、金田伊功・金田系作画のような感じがする。金田系作画というのは、「画面に収める」ということをしないんです。画面に収められない、そのことによって、エフェクトの大きさ・規模を表現する。それを海外勢がやってのけている。すごい。



氷に包まれていくセージ
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手(部分からスタート)→クイック気味のTB(トラックバック)?

あっという間に、氷に侵食されていき顔が仰け反るセージ。氷の侵食タイミングが珍しい感じ。こう、全身を伝っていく感じではない。一挙に、考える暇も与えずに来る感じ。まあ後は、このアングルでやるのは単純に難しいとおもう。顔の立体を正確に拾わないといけないですから。





迫りくる炎と、ライフル ★★
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画面左から広がる、フェニックスの炎は柱に到達した瞬間に爆発して大きく燃え上がる。この炎によって、視認がむずかしくなり相手(チェンバー)のライフルは外れます。

ライフルの弾はセージの左後方に着弾します。着弾して爆煙が発生してますよね。この爆煙の存在によって、画面/レイアウトがすごく美しくなっているんですよ。これは意図して設計されている。

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そう、この画面はもともとダッチアングルで傾いている。柱と爆煙によって、セージを囲むように新しい「枠」ができているんです。これ、すごくないですか?スゴイんですよ。


ぼくが感じたのは、フルアニメーションで育った海外勢が、日本的なリミテッドのタイミングをことさらうまく使い、金田伊功のような発想でエフェクトを描き、面白いタイミングで煙の動きをCGでコントロールしたことの凄さ。そこに合理的な画面作り・レイアウト設計が加わると、もはや閉口するしかありません。多様な画面が、けっして猿真似ではない、画面が次々と展開されていく。

久々に、素晴らしいアニメーションを見ました。あまりうまく言葉になりません。

もしエウレカセブンを全部見れないなら48話『バレエメカニック』だけでも観て欲しい。
当時視聴していた10代の私はストーリーが全く理解出来ずただ何となく流し見していただけでしたがこの話数だけは強烈に覚えているほど良い話です。
ベタなストーリーなのでここだけ観ても多分理解出来ます。

と言っても1*社会人ともなればたった一話見るだけでも気が重いのが現状でしょうし、劇場版のアクションシーンがほぼ全部入ってるお得な公式PV(約3分)も貼ります。
https://www.youtube.com/watch?v=TEV85faqXYk

2*エフェクト見分けるの苦手なので個人的にいろいろ解説して欲しいです。


稲作変身9/4クールは罪づくり+板野サーカスすこし
http://royal2627.ldblog.jp/archives/58172896.html
※旧題;エフェクト解説夏期ゼミ/5つのポイントで楽しく見れる
(※代ゼミ風に仕上げたのに誰もシェアしなくて悲しくなって変えました)

1*
( ^ω^)まあ1話ぐらいなら見れるでしょ→_(:3」∠)_)→いろいろ→_(´ཀ`」 ∠::)_
先見の明があるネ!

2*
エフェクト作画は、基本的に5つ*の要素に分けることによって処理しています。

0:そもそも、爆発か煙か?
1:フォルム(全体)はどんな感じか
2:ディテール/特にカゲ、ハイライト、透過光はどのように入るか
3:タイミングはどんな感じか
4:破片など(その他のディテール)はどれくらい大きさと量か

*増えに増えて5つになりました、最も大事なのは0、1、2です

ぼくはまあ正直にいえば、このエフェクトすごいなああ?ってなってから調べるので多くを見分けられることに意味は感じません。ですが、見分けるのであれば、この記号的な処理でおそらくできるようになると思います。


映画『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』 KAGAMI「Tiger Track」 PV


( ^ω^)このアネモネって娘かわいい


良いPVですね!テンションも上がる

煙1
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普段どのように見ているかヴィジュアル的に説明していきますね~


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まずは煙のカゲの付け方/付き方を見ます。
ディテールはもっとも個人の特徴が出やすい部分であり、そういった面ではキャラクターよりも記号的なパターンで分類しやすいです。あとこういうミサイルの後ろの排煙っぽいものは、煙の伸び方にも注目して見ています。どれくらいの速さ(タイミング)、どんな風に形(フォルム)が変化するのか。



煙2
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次はこれ( ^ω^)
考えていこう




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ここは煙の大きな塊が2つくらいあるな程度でおk
右端にも一つあるけど、そういうのはイラストでいじった後にもよく見つかるのでキリがない

形(フォルム)がでこぼこしてるな~くらいには捉えましょう
ここは感覚的にでいいような気がする、そこまでカッチリとフォルムで追えるアニメーターは板野系の人々か金田系の人々のみ。要するに、けっこう極端じゃないと無理なので。それなりにボコボコしてるなっていう感じ。




ビームっぽいもの1
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ここはもう2点しかない



kai004
はい( ^ω^)

ここはビームの形とタイミングが特徴的でした
こういう金田系な感じでやる人はそんなに多くないので、けっこうこの段階で絞れますね。
形→タイミングと、「これを連続でやるのはこの人しかいねえ!」で絞れる場合はけっこうある


煙と爆炎1
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ここ普通にすごかった
(※まあエウレカで良くないエフェクトカットを探すほうが困難でしょうたぶん)


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青はフォルム、緑が表面のディテール(カゲ)、赤は表現的に良かったところ
けっこう青で区分していますが、これぐらいで分けて見ているときもある。あったりなかったりしろ。緑は基本的に十字みたいなディテールを囲んでいます。このひとはこういうの多用するのね、みたいな、そういうふんわり感

表現的にすごいのは、真ん中の爆炎が上昇してくる際に、サイドの煙が影響を受けて光ることですね。これはお見事。つまり、まあこういうめんどうくさいカット/表現まで一切手を抜かない、妥協をしないっていう姿勢も特徴として同時に掴むことができると思います(適当)



煙とビーム
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なんかすごい( ^ω^)



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ビームの反射光が煙に映ってますね、ピンクのやつ
あとはなんだろう…もこもこした煙がちょっと階層的になっている感じが少しありますよね。そこはちょっと特徴っぽい。ぼくならこの段階で、この煙には「もこもこクリームパン」って名前をつけます。自分なりに分かりやすい特徴名をつけておくと、他の映像を見た時に思い出しやすい。

青色で斜線入れてる部分は、全体カゲを入れているからですね。
特徴かも!みたいな仮定を立てることも大事


もこもこクリームパンをバカにしたキミ、先生怒らないから前に出なさい( ^ω^)



船と爆発と破片と
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ここは2つほど
煙以外で




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はいそうです

尾っぽ煙(ピンクのヤツ、※一時期、触手煙って呼んでた…( ^ω^))
あとは、中央の破片ですね

破片は3番目くらいに特徴が出やすいかも?
破片でめっちゃわかるひともいるし、そこまでじゃない人もいる。けど、やっぱり破片は個性の出どころの一つだと考えています。だから、個人的には要素の一つとして独立させてますね

破片は、
:どんな形か
:どれくらいの大きさか
(できれば):その場に留まるか留まらないか、落下するならどれくらいか

程度で大丈夫かと

( ^ω^)細かく見るのは良いことだけれど、細かく見すぎるとノイローゼになる
( ^ω^)いちばんはたのしくたのしく





破片2
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( ^ω^)だんだん分かってきたんじゃないかあ!?






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( ^ω^)これもこもこクリームパンじゃない?
感触としてけっこう似てる
※感触・感覚はすごく大事にしよう、それを言語化するのは大変なときもあるから「イメージの感触」のようなものを持とう。

あと破片でかい、めっちゃでかい
「棒状+まあまあでかい」破片、これで絞れる。けっこう絞れる



エフェクト^実践編
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まあこれは経験値でわかるひとがいる爆発





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村木靖作画

どこで見分けたかというと
フォルム=球形・円形
ディテール=ジャギってる周りの尾っぽ煙

ここで99%村木判定になります( ^ω^)





エフェクト^実践編2
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なんか練習問題みたいになってる…( ^ω^)




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はい、最初のがうまくいかなかった人も今度はたぶん大丈夫
村木靖作画

村木靖の爆発は、球形・円形を重ねて、こう、全体のフォルムが「ぶどう」みたいな形になることが多いですね。ちなみに村木靖は煙もいいから、暇さえあれば見たほうが良い。見て欲しい。見てくださいなんでもしますから。

村木はサーカスばかり注目されますが、エフェクトが本当にええのよ…( ^ω^)
90年代から今にわたって、最前線で活躍してるの普通にバケモノじゃない????



エフェクト^実践編3
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フォルムでだいたい分かる、けどこれは慣れやな
これはタイミングも大事(動画では1m50sあたり)





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泡のようなフォルムが迫りくる
ビームが船を突き破って、円形に穴が空き、溶けた部分がいちぶ空へと舞う
この連続パターンが重要なんじゃ~
(ダブラシのジャギってる煙にも注目です)

( ^ω^)ちなみに先生は経験値で特定しました
( ^ω^)これは卑怯




※なんと13年前の投稿動画

あっ!これ見たことある( ^ω^)
ってやつですね、溶け方も溶けた部分の散り方も似てる!!
庵野秀明をこよなく愛するアニメーター、柿田英樹作画でした
柿田英樹は一時期、気が狂うほど見てましてね。もう柿田作画特定においては、ぼくに敵う人間はいないのではないかとおも…


あれ??( ^ω^)

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この緑色で囲った「ジャギってるダブラシ」をぼくは柿田の特徴として捉えたことがない。
というか、知らないわよこんなの

「ジャギってるダブラシ」…( ^ω^)あっ…!




このカットめっちゃいいな~と気になっていたんだけど、もしかして柿田作画じゃない??
でも、煙が柿田作画のそれじゃないんだよな。他にジャギってるダブラシを使う人が思い浮かばない( ^ω^)田中宏紀とか?15年くらい経てば、また使う人も現れるのかな。

ぜんぜん柿田特定において最強じゃなくてワロタァ!( ^ω^)

…という感じに何年経っても新しい発見があり、なにかと繋がるときあるのが、エフェクト作画、ひいては作画の楽しみ方の一つだったりもします。調べれば調べるほどに、見れば見るほどに、アニメの世界は広く感じ、すべての作画を見分けることなど到底できないだろうけれど、新しい発見が一つでもあってこういう風につながると、やっぱり楽しいなあという気持ちにさせてくれます。エフェクト作画はとても楽しい。


ざっと書いたので、わからないところがあればコメントで

爆発のリハビリをする



・追告 B『シン・エヴァンゲリオン劇場版』


上記動画より




火花・ガヤ
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このあたりのシーンはショックコマ入れすぎていて、画面がピカピカしすぎていた 惜しい



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ここは、発光表現と白コマのタイミング
すばらでした 本当に
(※13号機のこういうぼかし発光ってなんていうんでしたっけ…?)


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ちょっと火花を過剰に入れすぎな印象もある
高速回転する歯車で切っているので、けっこう入れても良さげなのかも?



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ここの一連の火花、お見事でした
中央の重要箇所は大きく火花が発生しており、部分によって明らかな差が見られた
これこそまさにディテール表現だなと




さて爆発にいきましょう



敵艦隊からの攻撃1
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庵野秀明作画(※推測)

この爆発は、割と特殊かなあと思います
手前で一旦小さい爆発が起き、その後に2回ほどにわけて大きな振動ともに広がっていく。ここはとうぜん大きな衝撃・ダメージを表現しているわけだけど、どちらかというと爆発本体よりもヴンダー艦隊が揺れることを強調しているので、相手(冬月副司令)の攻撃力を表現したいのではないか。

あと、庵野秀明って球形にこだわるので、爆発が球形スタートなところが作画の推測点です。



敵艦隊からのからの攻撃2
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庵野秀明作画・全原画(※推測)

初弾の爆発からの白コマが入っていく流れが良い。故・増尾昭一さんと勘違いさせるほどの、白コマのタイミングが素晴らしい。これは1コマ単位で撮影スタッフも奮闘したことだろうとおもう。ガヤ・破片などのタタキもいい感じ。




シン弐号機の後ろで起こる爆発
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村木靖作画(※推測)

ヒトデのような爆発(※尖った煙の足が何本も伸びていますよね)が一挙に広がっていき、カメラの前面にまで押し寄せてくる。弐号機を囲い込むように広がるので、割と平面的なエフェクトにもかかわらず立体感が出る。

これだけ球面に対してディテールが少ない爆発が見れるのはレアな感じですね。白コマは庵野秀明の項と同じく。ここまで良いタイミングは中々ない。これには増尾さんも喜んでいることだろう、いや、もっと厳しく1コマずつやるかもしれないけれど。



シン・エヴァ本編のエフェクト作画も良かったです。庵野/村木/金子/橋本と、少数精鋭で綿密なエフェクトがあった印象。CGエフェクトはどうだろう、あまり記憶がない。

もうはや3年、御命日には間に合わず



今年は、増尾さんの白コマのタイミングについて

増尾さんの白コマ、重ねた白コマの処理などの巧さについて、アニメーター・上妻晋作さんが呟いておられた。感覚的なものっぽかったので、以前ぼくは動画に説明を託しましたが、あまり理解されていない感じ。自分の中でも消化不良だった。



なので、今度は図解を交えて説明する


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ジャイアント・ロボ[1992/OVA]01話

これなんてことないポリゴンショックに見えるよね。いやあこれがね、すごいんだわ。この白コマを理解すると、増尾作画はもっと深く理解できる。なぜかというと、増尾さんの白コマは、他アニメーターの使い方とハッキリと異なっているので、増尾作画のカットを理解する”手がかり”であり、増尾作画における”技巧”の一つでもあるから。

ショックコマは多岐に渡り、全てについて説明しようとすると煩雑になりそうだなと思った。ですので、今回は白コマに限って説明します。


まずは、「白コマ」そのものについて軽く。
大きく分ければ、白コマには2種類あります。



・白コマ
画面全部が白になっている。これを閃光や衝撃の表現として作画の途中にインサートする。
白コマ2




・重ね白コマ
もう一つは白コマを重ねて(特殊効果のエフェクト特殊効果として)使ったもの。
元となる絵があり、そこに特殊効果として白コマを重ねる。今風に言えば、レイヤーを元絵と白コマ、2枚重ねている感覚に近いと思う。
白コマ1

今回はこの2つを同じものとして扱います( ^ω^)
というか、自分はふだんからこの2つをあまり分けていません。さて、じっさいの例を見ていこうぞよ。



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エヴァンゲリオン新劇場版:序[2006/劇場]

結論から言うと、増尾白コマでは「どこかのタイミングで、大きく一拍置く」。けっして、ランダムに、適当に白コマを入れ続けているわけではない。パターンがあるんです。これがもっとも大きな増尾ショックの特徴です・・・と以前言ったけれど、うまく説明できなかった。


はい( ^ω^)
ここまでが、今までの「考えるな、感じろ」のおさらいです。
今回はもっと踏み込んで、分かりやすい図表を用意しました。ただ、理屈的になりすぎてもアレなので、感覚も大事に一緒に見ていってね。


例1)一発入れて、「一拍」置いての白コマ
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一つ目の白コマ(閃光)の後、じゃっかん間があるのが分かるだろうか。リズムで言えば、ドン(一拍おいて)ドドドン、みたいな感じだ。ここでは一拍の感覚を掴んで欲しい。


( ^ω^)図表じゃぞ
増尾昭一ショックコマ_04

※便宜上、2秒間を48コマに分けています。
水色・・・白コマ
青色・・・黒コマ、白コマ、混合
パープル色(枠)・・・ショックコマの1セット
黄色・・・一拍の区間

参考表を見ながら、GIFを見てクレイー

12~16コマ(だいたいでいい)に注目。白コマによる閃光表現が何回も入る中で、増尾白コマでは、こういう大きな間(つまり、一拍!)がある。カメラのシャッターが切られる瞬間が白コマとすれば、切られてない時間が一拍置いてる感じ。

ここで分からなくても大丈夫、ワシの増尾白コマGIFはたくさんあるぞよ




例2)連続する白コマの中で
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ジャイアント・ロボ[1992/OVA]01話-02

増尾昭一ショックコマ_02

黄色の区間のコマとGIFをよく見て欲しい。これ分かりやすい。
一見、白コマが連続して入っているように見えるけれど、じっさいはそうじゃないというのが明確に伝わると思う。これは分類としては白コマが連射される中で「一拍」置くやつ。


例3)「一拍」を2回入れる
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ふしぎの海のナディア[1991/TV]39話

増尾昭一ショックコマ_03

これは34~41コマの方が「一拍」としては分かりやすいかな。
一拍を2回入れているのが注目ポイント。このパターン、けっこう増尾さんやります。


例4)デジタル表現での白コマ・閃光表現
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エヴァンゲリオン新劇場版:Q[2012/劇場]

増尾昭一ショックコマ_05

白コマを挟んだ2回の一拍に注目
ここまで来ると「一拍」もだいぶ分かってきたと思う( ^ω^)後半31-32、39-41の白コマがタイミング的には特徴的ですね。たぶん増尾さんの仕事だと思うけど、カラーデジタル部、CG部だけでやってたら逆に驚く。


CGになると、白コマというよりは、部分的な発光になってますね。
エヴァQ.mp4_snapshot_00.13.07_[2020.07.24_09.14.47]エヴァQ.mp4_snapshot_00.13.08_[2020.07.24_09.15.04]

周りの物体や空間に陰影を付けることができるので、立体的な白コマとも呼べそう。これが増尾さんにとっての、デジタルとの融合を含めた閃光表現だと思う。上妻さんがおっしゃるとおり、増尾さんの1コマのタイミングの面白さとか凄さとかあるんだけれど、今回は白コマの説明でいっぱいになってしまった。まあ今回は、増尾ショックのタイミングをわかってもらえたら、これ以上はない。

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