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馬之翁塞

カテゴリ: エフェクト作画


増尾爆発の最も天才的な部分、秀でた部分を上げるとするならば、それはタイミングである。増尾のタイミング、原画の流れといえば、白コマによって成り立っているように思う。


■「ふしぎの海のナディア」39話:増尾作画
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クロスフィルター(十字光)→爆発


白コマがダダダッと入り、爆発がそれに合わせて展開していく。じっさい、これで伝わっていると思っていたが、思いの外、増尾作画のタイミングは伝わっていないようだ。今回はいい機会と思い、丁寧に説明することにした。



同スロー
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まず、増尾の白コマには2種類ある。「閃光」の役割を果たす白コマと、「爆発の立体感」を出す白コマの2つである。

時代にもよるが、爆発した瞬間の白コマ(白コマAとする)は、おそらく「閃光」の役割として、2~3枚ほど入る。その後、爆発が広がっていく際にも、白コマ(白コマBとする)は見られる。この白コマBは爆発の間に入っていくが、これによって、あたかも一瞬で、目の前に迫りくるような爆発となる。つまり、白コマBは、「爆発の奥行・立体感」を示すためにあるのだ。




さて、ここからは、増尾作画の変遷の話になる。メンドウという人は、読み飛ばされたい。

「最初期の増尾爆発にあった金田系の要素は、ショックコマへと引き継がれた」という結論を2年ほど前に出した。この結論は変わらないままだが、もしかすると、金田系の中抜きによる爽快さを、ショックコマによって、増尾は発展させようと試みたのではないか。つまり、中抜きの発展(※つまり金田系の発展、今石作画みたいな)とは別系統で、ショックコマによる金田系の発展は増尾が行ったのではないか?今は、そのように考えている。


閑話休題。増尾氏が急逝してから、いろいろ見直した。中でもとりわけすごかったのは、「ふしぎの海のナディア」の39話である。この作品で増尾は”メカニック作画監督”というクレジットではあるが、増尾作画のエフェクトも多い。いや、ほぼ全てのエフェクト作画が増尾によるものであると言い切っても過言ではない。それくらい、ナディア39話は増尾密度の高いフィルムだった。

増尾作画に触れたいという人にとって、ナディアはうってつけの作品となるだろうと思う。


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(■僕のヒーローアカデミア[2017/TV/25話])

田中宏紀作画(※推測)

1カット目では立体的なフォルムで規模を伝える。2カット目はフィールドが高温になっていることを描写。だから、2カット目は(爆発そのものを誇張しすぎないように)、平面的になっている。


同一部スロー:赤味の変化
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んで、この爆発は、巻き込みも、タイミングもすげえ良いんだけど、それと同じくらい、赤色部分の処理もいいんですよ。だって、爆発表面の温度って様々ですから、単色で表すのは困難なのは明らか。赤色の中で、グラデつけることで、細かい温度が表現できる。その上、カゲの代わりにもなる(なんと、黄色の部分はカゲがない!なのに立体的に見える!やばい!)。これ考えたなーと思う。



田中宏紀って平面的な爆発・煙が多いじゃないですか、単色も多い。ただ、クソうまいから、立体的に書こうと思えば、1カット目みたいに書けるんですよ。だから、平面的な爆発が多いのは、意図的だということが分かる。なんで、田中宏紀って平面的に書くんだろう?と前から思ってた。

アニメの中で重要なのは、立体です。そうじゃなかったら、奥行を作るために、アホみたいにでかいマルチプレーンカメラなんか作らんだろうし、アニメなんて全てDLEで良いはず。平面的な単色煙が多い、田中宏紀もそれは同じと思う。たぶん、これで立体を表現したいんですよ。すげえ緻密に線を描き分けて、カゲつけて、ハイライトつけて、みたいなのも絶対できる。それだけの技量をもったアニメーターですから。

だけど、そういった方向とは違う、エフェクトを目指している。平面的な爆発の中でも、立体感は出せる。影やハイライトを極力使わない方向で、具体的にいうと、少ないディテールで立体的なエフェクトを描きたいと考えているのではないかと思う。だから、こういった処理になったと思うんですよね。赤色単色だと流石に浮いてしまうけど、線も入れたくない。じゃあ、撮影処理でグラデかけようと思ったのではないか。線の描き込みや色トレス以外の方法で、カゲを描いて温度を描き、立体を表現しようとしている。そう感じる。


「なびき」というのは、アニメーションの作画工程において、最も基本的なものの一つです。なびくものって、例えば、髪の毛だったり、服だったり、いろいろあります。アニメにおいて、風の動き/方向/強さは間接的に表現します。そのため、基本的な作画練習の題材として出されます。


直近の例として一つ


◆「3月のライオン(2017/TV)ED」
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髪の毛、マフラー、コートと、すべて違う動き方ですね。髪の毛は上下にじんわりと動きますが、マフラーはバタバタと激しめに動き、コートの首元は小刻みに動く。これは素材を考慮している意図があるために、タイミングや動きの大きさがそれぞれ異なっているんだと思う。

これは、「天使のたまご」なんかで有名な、名倉靖博による作画なんですが、やっぱ上手いなあ。三月のライオンのEDは、TV付けて適当に目に入ったんですけど、画面の前で釘付けになった。さて、そんな名倉さん繋がりでもう一つ。



◆「メトロポリス(2001/劇場)」
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(名倉靖博はキャラデ・総作監)

ティマの白衣は薄くボロボロなために、小刻みに激しく動く。一方、シンイチのジャケットはボロボロではないし、ジャケットなのでそこそこ頑丈な作り。だから、ティマの白衣ほどは、なびかない。素材の違い、損傷の程度によって、なびき方を変えている。




◆「コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜(2015/TV)21話」
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中村豊作画

2カット目のなびきに注目。瞬間移動した後なので、最初はその移動の影響によって激しくなびくけれど、その後は段々と静まっていく。マントのなびきが大胆でカッコイイ、画面左でマントが大きく揺れて、手前では、首元や肩~腕が僅かになびく。



そうなんですよ、「なびき」作画といえば、マントとか丈の長いパーカーとかが多い。マントって布の面積が広いんで、画面映えしやすい。上手い人が書けば、それ相応のかっこよさは担保されると思う。それでも、なびきって基本中の基本ですから、これ見ると、基本の大事さが身に染みて分かりますね。閑話休題、特にスゴイんが、次のヤツなんですよ。




★「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST(2009/TV)OP1」
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いやあ、このカットはヤバイ。外側のなびきもそうですけど、エドのパーカーの内側から空気が入って、フードが右によれて暴れる。そんで、一瞬だけ、左に大きくバウンドして風のアトランダムさも描写する。繰り返しますが、内側から空気が入ってパーカーが暴れているのが自然と伝わる。それがすげえなあと。後、ここは質感の表現もいいんですよ。エドのパーカーの厚さと柔らかさを表現している。特に、フード部分が柔らかそうだなあ、と感じられるほどに描写しきっている。

ちなみに、これは川元利浩による作画。「カウボーイビバップ」とか、直近だと「血界戦線」のキャラデをやった人ですね。川元さんはキャラクターデザイン方面で有名ですかね、僕は最近知りました。




基本的に、なびきとは、風や気流を表現するためにある。どのように風が吹き、どのくらいの強さで、どういった風なのか、そういったものを表現します。表面的には、ただ、なびいているだけですが、根本には様々な意図があります。

例えば、革のジャケットと、薄いカーディガンがあったとして、それらが同じ風でなびくだけでも、その様相は異なる。つまり、異なっている時は、素材や質感を考慮して描写している。素材も違えば、質感も違うし、柔らかさや硬さ、長さも異なる。それらの根本の原理を考慮しているかどうかによって、なびき一つとっても画面に差が出る。唸るような/釘付けになるような作画は、原理が堅固であることが多いので、その部分が重要だと僕は思う。これはよく練られていると思い膝を叩くわけです。

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