GOMISTATION

足が絡まっても、踊り続けて

カテゴリ: 原画マン


本谷さんがまさかまさかのTwitter開始ということで、少し紹介。

板野、庵野、増尾、村木などが、写実系エフェクターであるのはご存知だろう。このブログでも再三にわたって取り上げてきた。本谷さんも、そのカテゴリーに入る。しかも、煙に関しては、最も写実的で他の追随を許さない綿密、緻密なエフェクトアニメーションをするのが、本谷利明である。あくまで持論ですけど。

「AKIRA(劇場/1988)」の煙を見た時の驚きといったら、もう言葉では言い表せないぐらい。ゆったりとわずかながら動きつづける煙、煙の圧力で外れたパイプが暴れる様は、この上なく感動した。写実を極めたアニメーターだと思っている。しかし、「AKIRA」以降は、「グランディア(1997)」 など、ゲーム業界で活躍することが多くなり、アニメにはほとんど参加しなくなっていた。AKIRA組には、こういった人が多く、本谷さんも例に漏れず参加作品は少ない。しかし、「ゼクスイグニッション(TV/2014)」で、久々にTVアニメで原画を4話も担当し、往年のファンを驚かせた。主な代表作は、「AKIRA」「王立宇宙軍」「真魔神伝」。


クリエーターズファイル第123回 野田弘一
http://web.archive.org/web/20080102163818/http://www.gpara.com/contents/creator/bn_123.htm

これは本谷さんのインタビューではなく、 「グランディア」の設定デザイン等を務めた野田弘一さんのインタビュー記事。数年前には、本谷さんの記事も見れていたが、今はすでに消されてる様子。せめてキャッシュが残っていればなあ…

<ついき 2014/04/21>(大匙屋さん提供。アリガトウ。)
クリエーターズファイル第122回 本谷利明
http://web.archive.org/web/20040304051934/http://www.gpara.com/contents/creator/bn_122.htm

というわけで、本谷さんのインタビュー記事。
プログラムに興味があるというのは、凄く意外な印象を受ける。


さて、本題の本谷作画を時系列で見ていこう。


■「メガゾーン23 PART II 秘密く・だ・さ・い(OVA/1985)」

爆発とぶわっと煙
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ここはタイミングも優れているばかりでなく、その後の煙の動かし方もいい。
爆風の流れに沿って、動いている。
また、爆風によって散らかる紙片、破壊される看板の細かさ、飛び散るガラスの破片。
これらのディテールによって、画面の写実性はますます高まる。


爆風からの建物破壊
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街路樹と手前の自転車の動きで、爆風を描写し、後から煙がついてくる。
「さくらや」の看板の崩れ方も、ぐしゃあと崩れていき非常にリアル。
倒れる信号機もまた、ここでは爆風の表現に効果的だ。


■「ヘル・ターゲット(OVA/1987)」

衛星ビームからの本谷爆発1
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透過光が少し主張しすぎて、肝心の爆発が見えづらい。
爆発のリアルな回転が、上手い。
爆発本体のディテールは少なめ。ギザギザの影のようなものを入れることが多い。


本谷爆発2
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画面が右に動きながらの爆発。難しいカット。
動画は、なめらかな感じ。そこまでタイミングは誇張してない。
要所要所に透過光を入れて、リアリティを高めている。


本谷爆発3&煙
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ゆっくりと爆発している様子。核爆発を望遠で眺めた感じ。
やっぱ、「ナウシカ庵野爆発」を思い出してしまう。
当時、本谷さんと庵野さんの交流はあったんでしょうか。


消え行く衛星描写
20140418035012

ここは確定ではないけど、多分本谷さんだと思う。
これが、また核爆発っぽい。
煙を出しつつ、壊れていくのが核爆発の現象として見られます。


参考資料(リファレンス):核実験の映像集




■「AKIRA(劇場/1988)」

ドーム出現の煙
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本谷煙の基本は、2色で煙はゆっくりと滑らかに広がる。
この場合は、少し尖りつつ広がっているのが分かる。


ドーム出現時の崩壊シーン
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地面の崩壊スピードと破片がリアル。
画面右側の装甲車の動きが、崩れる地面と合わさってすごい。


AKIRAドーム出現前のパイプ煙1
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AKIRA本谷といえば、やはりパイプが外せない。
押し出された煙によって暴れるパイプの挙動が、自然でリアル。
また手前のチューブや、土台が崩れるのも細かく描かれる。

ちなみに、AKIRA本谷パート全般に言えることがある。
後ろに描かれる煙はbookではなく、わずかながら形を変え動いている。


パイプ煙2
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煙の圧力に耐え切れず、外れるパイプ。
この煙の密度は、どう表現していいものか分からない。
とにかく緻密、綿密なほぼ1k作画である。


ドームからのビームによる誘発連続爆発
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透過光を使いながら、上手く連続爆発を描写。
ここでは、タイミングのセンスが光る。
また、触手がいっぱい伸びたりするのも本谷爆発の特徴の一つ。



本谷さんは、大体こんな感じ。
言い方がアレですけど、煙に関しては基地外レベルでうまい。
リアル系の極地!青山さんが若干似ているかなあ。

あの本谷さんが、テレビアニメに帰ってくるとは思っていませんでした。
これから、撮りためてある「ゼクスイグニッション」早く観たいと思います。 


さて、「うる星サーカス」から大分経ちましたが、ようやくあのパートの結論が出せそうです。ホロホロさんコメントで色々と教えてもらって、本当にありがたかったです。A子とかイクサーとかナンジャラホイって感じだったので。この場を借りてお礼を。

まあ、もう本当に大分経ってしまって申し訳ないですが…
リンクも一応貼っておきます。

1、「うる星」庵野サーカス
2、増尾爆発と庵野爆発について
3、増尾パートを色々探検してきた 80年代編


まずは、「A子」の増尾パートを見ていくとします。

■「A子」増尾サーカス
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増尾爆発。まん丸球形の爆発+破片の細かさが際立っています。ペプシが飛んでたりしますが、今回は、関係ないので置いとく。ここでまずは、「POP」「イクサー」と比較して、増尾さんの特徴を画像で簡単に紹介。


増尾爆発の作画特徴集
増尾アウトライン比較

破片は細かく少なめ、独立した球体を描かない。これら2つは、前回の記事でも触れましたね。前回は、こっちの言葉足らずで、増尾爆発のフォルムの特徴の一つ「カエルの水かき」というのが分からなかったと思う。今回はバッチシ画像も用意したので、きちんと説明します。

増尾爆発の外のラインの描き方
アウトライン説明 増尾

こういう感じです。なんとなく分かるかなあ。
爆発の外のラインを1色で繋げたがるのが、増尾爆発(85-87)の特徴だと僕は感じる。外のラインを一色でつなぐエフェクトを全く描かないアニメーターはいないだろうけど、この時期の増尾さんは、この手法を頻繁に使ってるので特徴になります。


今回新しく発見したのは、爆発の球体の内側に、三日月状のカールしてる線(※以下、ムーンライン)があるということです。庵野さんも時々その線を描く時があるんですが、ちょっと違う。ホロホロさんのコメントの太さ細さもそうですけど、もっと根本的な違いがあります。

ムーンライン(増尾さんの場合)
スナップショット - 247スナップショット - 288
図2図3

上下で連動してるので、見比べてみてね。
ムーンラインを描く時は、三日月ドーナツ(参照:図2)か、細長い三日月カール(参照:図3)を入れる。(※もしくは、その両方を使って描く)

ムーンラインの具体例
スナップショット - 750スナップショット - 1157
スナップショット - 259スナップショット - 181

増尾さんは、こんな感じに描きます。


ムーンライン(庵野さんの場合)
スナップショット - 660スナップショット - 402

庵野さんは、さほど爆発にムーンラインみたいなディテールを加える人ではない、というのがまず最初にあります。描くとしても三日月ドーナツ(図2)の方であり、細長いムーンライン(図3)の方に関しては、ほとんど爆発の中に入れません。

もう一つの大きな違いとして、庵野さんが、ドーナツ三日月(図2)でムーンラインを描くときに、時々短くクワガタ状になるというものです。要するに、爆発の球体の中で、一部分だけにムーンラインを描くということです。(参照:図4)

庵野特有のムーンライン
スナップショット - 393図4



■「メガゾーン」庵野爆発
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また、このクワガタ三日月は、増尾さんのムーンラインと違い、爆発の中で動き回ります。
逆に言うと、こんな作画を増尾さんは絶対しません。ムーンラインを描くなら描くで、きちんと細長いヤツ(図3)を入れてきます。


■「A子」戦闘機の増尾爆発
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上のgifから抜き出した金田調のエフェクトカット
スナップショット - 28スナップショット - 29

そんでイクサーを調べている時は微妙だった、金田調のエフェクトカットについて。「POP」「イクサー」「A子」と3つの増尾さん初期参加作品で、ここまで多く見られると、この時期(85-87)増尾さんが金田系のカットインをエフェクトに使っていたことは確定のようです。


増尾爆発の金田調エフェクトカット集
スナップショット - 177スナップショット - 179
(「イクサーⅠ」より)

スナップショット - 1387スナップショット - 1389
(「イクサーⅢ」より)

スナップショット - 826スナップショット - 828
(「POP」より)


増尾、庵野爆発の個数比較
爆発球形個数 比較

また、この時期の増尾さんは、比較的爆発を描いても、球形の個数が少ないのも特徴です。
庵野さんが6、7個平気で描くのに対し、増尾さんは3個が一番多い印象があります。



以上の事を踏まえて、もう一度問題となった作画を見てみましょう。

■「うる星156話」サーカスと連続爆発
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スナップショット - 448スナップショット - 466


問題の作画です。結局このパートは誰が描いたのか?


結論から言うと、庵野秀明だと思います。

当時、庵野さんは板野一郎の影響を受けて、リアルに傾倒していた時期です。とにかくリアルに、写実的な作画を目指していました。目指す途中で、細長いムーンライン(図2)みたいなものは、描きたくなかったのではと思います。その証拠に、「超時空要塞マクロス」「メガゾーン23」や「風の谷のナウシカ」の中で、庵野さんは爆発にディテール(ムーンライン等)を殆ど加えていません。

庵野作画 爆発集
スナップショット - 358スナップショット - 402
スナップショット - 37スナップショット - 663

これは僕の推測ですが、写実性を目指す中で一体どんな風に描けばいいのだろうかと、試行錯誤の時期だったように感じます。副産物として、大量の破片の描き込み、タイミングのセンス等が磨かれました。


■「メガゾーン23」庵野爆発
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■「風の谷のナウシカ」庵野爆発
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「王立」の時期になると、庵野爆発の写実は黄金期を迎え、爆発は細かくリアルに描かれています。 余計なディテールは、爆発をむしろデフォルメにしてしまうので、それを避けたかったのではないのかなあと。


つまり、「うる星サーカス」が描かれた1983.4年当時は、庵野爆発はまだ未完成であり、しかも写実にこだわったので、爆発を細かく描けなかった(※爆発に余計なディテールを足すことが出来なかった)時期だと思うんです。そういう理由で、このサーカスと連続爆発は、庵野秀明の作画だと思います。

スナップショット - 465

増尾さんだったら、この爆発内部にムーンラインを少なくとも一本は入れるだろうし、それをしないのならばドーナツ三日月をすると思う。こんだけ、中身スカスカにして描かない。


スナップショット - 475

後は、やはり破片の大きさですね。
こんなに大きな破片を、増尾さんが描くとは思えない。


Q、あの「金田っぽい」カットインは何だったのか?
スナップショット - 458スナップショット - 472

完全なる推測で申し訳ないんですが、これって作監とか演出の人が足したんじゃないのかなあと思います。(そういうことは、ありえるんですかね?)前回の記事で、この2枚を抜いても違和感無くみれることは明らかでしたね。80年代後半~90年代は、やっぱり金田作画イケイケの時代だったと思うんですよ。だから、演出の人が「この爆発は、金田さん(もしくは山下)みたいなカットにしろ」 とか言って、ああなったんじゃないのかなあと。全部推測ですよ!



今回ほぼゼロから増尾作画を調べて、スゴい苦労しました。(※gif作っちゃ見て確認、お仕事他に無いか確認、スクショしたのをWFVで見て確認とか…動研の人はすげえなあと改めて思ったよ…)けど、「お!なんだかこの人の作画の特徴が分かってきた!」 みたいな快感を得られるのが楽しくてですね、やってよかったなあと(*´∀`) 庵野爆発についても、分かりきってる感じだったんですが、全然知らないことばっかりで、むしろ覚えた方の事が多いですね。

こんな過疎作画ブログですけど、30人くらいは見てくれてるということで、この「うる星サーカス」一連記事については、お疲れ様でした。途中で、gifのサイズ変更とかで見難い箇所もあったかと思いますけど、そこは勘弁を。いろいろと試してるので…まあ本当にお疲れ様でした。


もうすぐ、「うる星サーカス」に関係する記事を出します。
その前に改めて、増尾さんについて少し整理をしたいと思ったのがこの記事です。

まずは、80年代後半(85~87)の増尾・庵野両者のワークスを再確認。

★両方とも参加
・「POPCHASER(OVA/1985) 原画」 
・「メガゾード23(OVA/1985) 原画」 
・「うる星やつら(TV/156話) 原画」
・「王立宇宙軍(劇場/1987)」
→庵野は、スペシャルエフェクトアーチスト、作画監督(共同)、原画
→増尾は、助監督、原画

★増尾昭一のみ参加
・「戦え!!イクサー1 Act.Ⅰ、Ⅲ(OVA/1985)」 
・「プロジェクトA子(劇場/1986)」 

★庵野秀明のみ参加
・「バース(OVA/1984)」(※ナウシカ、愛・おぼと同じ年) 
・ 「風の谷のナウシカ(劇場/1984)」
・「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか(劇場/1984)」

という感じ。
増尾さんは、スタジオジャイアンツ出身。
このスタジオには、摩砂雪や鈴木俊二も同じく在籍していました。

増尾昭一は、庵野とくらべて、キャリアのスタートは少し早いです。庵野が、大阪芸大で自主制作をしている頃には、「六神合体ゴッドマーズ(TV/1981)」などに、既に参加してたりします。 
写実系のエフェクト・メカの作画を得意としている印象ですが、初期には金田調のカットインも目にすることもできます。

「愛・おぼ(劇場/1984)」で、庵野秀明と出会います。そして、大きな転機となったのは、おそらく「グラビトン」設立のとき。このスタジオの設立参加に、庵野を誘いました。同じ時期に庵野は、摩砂雪・大月P・樋口真嗣らと出会っているので、後の作品への影響を考えると、「グラビトン」は重要なスタジオなわけです。

ガイナックスの前身はよく、「DAICON FILM」と言われますが、実際には、グラビトンも大きく関与してると思います。アマチュアからの流れが、「DAICON FILM」だとすると、「グラビトン」は、プロ側の流れではないのかなあと。
(※とすると、スタジオジャイアンツはもっと重要なわけですが、キリがないので)

2000年以降は、デジタル・エフェクトの第一人者として、庵野監督を支えています。
というか、増尾昭一がいないと「新劇」はできていません。
それぐらい、重要な人物です。 

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