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足が絡まっても、踊り続けて

カテゴリ:原画マン > 本谷利明


劇場作品「GREY」における、エフェクト作画を追っていこうと思います。


■GREY デジタル・ターゲット(劇場/1986)


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(本編エフェクトその1):前島作監(※推測)

モコモコとした山のようなディテールを作り、タコ足煙を伸ばす。透過光はほとんど使わず、ハイライトで爆発の高温を表現する。前島作画・作監はそんな感じだと思う。



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(本編エフェクトその2):鈴木作画・作監(※推測)

その一方で、爆発同士をひとつの塊とみなし、ブラシを使ったカゲのディテールが見られるのが鈴木作画・作監でしょうか。タコ足も爆発に直接つながっている(※前島作画のように、爆発本体から独立したものとはなっていない)。破片はさほど差がない。クレジットを記載しておく。

エフェクト作監:前島健一、鈴木伸一
原画(抜粋):荒木英樹、山根まさひろ、南伸一郎、本谷利明、古橋一浩

このように、本編のほとんどのエフェクト作画は、作監である前島・鈴木さんによるものでしょう。クオリティ高く統一感が出ている。裏を返せば、統一感がないところが本谷利明パートと言えなくもない。まあ、消去法的でちょっとアレなんですが。


以下全て、本谷作画。もちろん推測なので、参考までに。


★戦闘機ぐしゃどかーん
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強烈なショックコマ+緻密な戦闘機の破壊描写。「メガゾーン」における本谷作画の緻密さを思い出すほど、破片が細かい。フォルムはわりと球形で、ディテール少なめ。ここは少し本谷作画とは異なるような気もする。中野フラッシュのようなショックコマは、おそらくメガゾあたりで知り合った増尾さんから模倣したんじゃないかなあ。


★立ち昇る煙
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カゲ2色のリピート作画ですが、密度が本編のそれと違う。だいたい分かってもらえたら良い。


★爆発ダブルアクション
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前島・鈴木両名はほとんど透過光を使わないように思います。ですので、このシーンは異質に映った。タコ足煙もただ伸びていくだけではなく、しっかりと重力に従って落ちていく。あとは「AKIRA」のタイミングにめちゃ似てるんですよね。



★ミサイルドカーン
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じゃっかんですが、タイミングが違っている。透過光や黒いカゲの使い方が、前島作画のそれとは異なって見える。まあこれは、本谷作画の前島作監修正かもしれません。


んで、80年代前半のエフェクト作画は、絶賛「金田系」祭りです。田村英樹などが代表的ですかね。どこかしら、金田作画を基調にしたものが多い。ということは、板野系(球形を中心とした爆発作画)などは必然的に目立ってしまう。初期の本谷作画は、球形を集めたもの(※メガゾ2あたりになると、フォルムが固まってくる)ですので、今回のようになったのかと思います。にしても、初期の本谷利明作画はぶっちゃけ分からんところが多いなあ。


今回は、本谷利明の「AKIRA以前(1984~88)」の作画をもう少し分析していく。
多分、AKIRA以前の参加作品についての言及は、ひとまずこれが最後。

復習になりますが、「AKIRA以前」は違ったベクトルで作画しています。「AKIRA」が煙自体の綿密な1コマ作画であるのに対し、「AKIRA以前」では『メガゾーン23』が代表的で、周辺建造物の動き(破壊や飛ばされ)による爆風の表現、カゲのアトランダムなリピート、透過光の全面使用や尖った線での使い方で写実的なエフェクトを表現していました。

つまり、この頃の本谷さんは「周囲環境がどのような影響を受けるのか」を表現することによってエフェクト作画の写実性を発現させているのでは、という推測です。

詳しくは以下のリンクを参照に。
1、「AKIRA」以前の本谷利明の作画(1) 「オーガス」
2、「AKIRA」以前の本谷利明の作画(2) 「マチコ先生」とか


前回までは代表的な作品ばかりを見てきましたので、今回は少しマイナーな作品についての本谷利明作画を検証していく試み。パートは毎度のことながら推測です(※今回は特に絞り込めなかった。アクション分かんない・・・)。


・「ウォナビーズ(OVA/1986)」

「ウォナビーズ」についてはアホみたいに見たんですけど、結局あんまり分からず。この時代は本谷さんが、ちょうど板野主催スタジオの『D.A.S.T』に在籍していた頃です。原画には石田敦子、よしもときんじ、戸倉紀元さんがクレジットされていたり。


ドロップキック
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同スロー
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エレベーターボタン破壊
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本谷さんのアクションそこそこ見たんですけど、未だにあまり分かっていないです。アクション的な部分は、先ヅメで突然眼前に来るような動きを出したり、動きにタメがあるのかなあという程度。後、感覚的には動きが重たい感じがある。

「ドロップキック」のシーンでは先ヅメが効いてて、後からぐわっとキャラが倒れこんでくるので、画面に押し寄せてきてますよね。「エレベーターボタン破壊」については、この時代ショックコマを使っていた、というだけで判断しました。なんという。この前後のアクションもやってるかも。でも破片の散り方キレイですよね。



・「ミスター味っ子(TV/1987-89)」 33話

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33話についてはおそらくこの水しぶきだろうと。こういった決め方はあまり良くないかもなんですが、『オーガス』や『メガゾーン23』でエフェクトをあれだけの分量担当していると、こういった所を任されるんじゃないのかなあと。

2カット目の波とかめっちゃ上手いですよね。タタキもいい感じに入っているし、水しぶきの消え方もカッコイイ。



・「吸血姫 美夕(OVA/1988-1989)」 01話

畳に彫刻
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これはもう透過光のやり方だけで判断。これは「オーガス」の作画(透過光)とよく似ていて、太い線と細い線を混じらせて、カクカク折れ線グラフみたいにやってる。同作品には本橋、菊池、松尾さん始め、上手いアニメーター多し。じっさい作画めっさいいです、この作品。化け物が出てくるところとか、うにょうにょする動きがめっさ上手い。



・「世紀末救世主伝説 北斗の拳(TV/1985)」

板野作監。結城さんとの二人原画。結城さんがおそらく前半の美麗なトキやらキャラを描かれていて、本谷さんが後半のアクションメインではないかと。

雑魚を片付けてから、ラオウとの戦闘①
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ラオウとの戦闘②
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際立つのは破片の細かさ。この時代の本谷さん特有の「周囲環境の変化による写実性の発現」は、この破片の作画が一番わかりやすいです。表現すべき物体・事象そのものではなく、むしろ影響を受けた周囲環境の変化を作画で表現している。ここでは、地面とかケンシロウの血とか。


吹っ飛ぶ雑魚モブたち
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同スロー
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ここがまさしく、「AKIRA以前」の本谷利明作画です。爆発、煙というものを直接表現するのではなく、雑魚が吹っ飛ぶ、ガラスを突き破る、そのガラスが爆風で横に飛び散る、壁に埋まりこむなどの表現によって、エフェクトを間接的に表現している。



だから、この時代は「間接的な写実エフェクト」を目指していると総括しても良さそうです。「AKIRA」からは一転、直接的なエフェクト作画へと移行していきますが、この時代は特に周辺の環境・物体を動かしてあげることで、現象そのものを間接的に表現しています。

この方向性は後年のAKIRAにおいても重要な要素です。本谷作画の整理記事を増尾さんみたいにまた1つ書く予定なので、またそこで説明できたらと思ってます。 


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ちょっとこれに言及するのを忘れていた。
いわゆる、「AKIRA」後の本谷プルプル煙で代表的な例。


意図的なアトランダム煙の表現

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この作画(AKIRAもそうですが)は、煙に対して、偶発性を持ち込んでいるように感じます。
王道的写実エフェクトの代表は、庵野秀明による「王立宇宙軍」(以下「王立庵野」)の作画だと思うんですが、あれとは写実の方向性が少し違うんですよ。「王立庵野」は、煙の見たまま(そのまま)をアニメに落としこんで描いてあります。だからこそ、煙は広がったら、そのまま広がっていくし、それに対応してカゲも付いていく。

でも「本谷ホンラン」は少し違う。この煙は、発生した時点から、そのまま広がっていってはないですよね。フォルムも大胆に変化しているわけではない。ただ、フォルムとカゲの微小な変化で、実際の煙(不安定な煙)を表現しようとしてるんです。これがいわゆる、「ぷるぷる煙」の本質と思います。

煙や爆発というものの映像は実際は安定していますが、それは表面的な映像における話です。エフェクトとは、見かけは安定してても、その実は不安定という存在なのです。爆発の勢いによって煙のスピードや広がり方は変わってくるだろうし、どれだけの粒子を含んでるかで、その色彩や動きも変わってくる。最近でいうと、御嶽山での噴火の煙がありましたが、全くもって自分の想像を超える部分がありました。コンピュータである程度予測は付けられるかもしれないけど、粒子を含んだ空気の集合体である煙は、場合によって予想できない動きを見せます。

そういった、不安定さ・偶発性を持ち込んでいるように今回感じました。いつ、どっちの方向に、どれくらいのスピードで向かうか予測が付かない、そんな煙を表現しようと試みたのではないかなあと。



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これまでは単純に、「写実的な煙」というカテゴリに整理していましたが、見返してみると、真っ直ぐな写実性とは違う部分を感じたので、今回少しまとまった雑感を書きました。やはりエフェクトは奥が深いです。

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