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積み重ね

カテゴリ:原画マン > 本谷利明


今回は、本谷利明の「AKIRA以前(1984~88)」の作画をもう少し分析していく。
多分、AKIRA以前の参加作品についての言及は、ひとまずこれが最後。

復習になりますが、「AKIRA以前」は違ったベクトルで作画しています。「AKIRA」が煙自体の綿密な1コマ作画であるのに対し、「AKIRA以前」では『メガゾーン23』が代表的で、周辺建造物の動き(破壊や飛ばされ)による爆風の表現、カゲのアトランダムなリピート、透過光の全面使用や尖った線での使い方で写実的なエフェクトを表現していました。

つまり、この頃の本谷さんは「周囲環境がどのような影響を受けるのか」を表現することによってエフェクト作画の写実性を発現させているのでは、という推測です。

詳しくは以下のリンクを参照に。
1、「AKIRA」以前の本谷利明の作画(1) 「オーガス」
2、「AKIRA」以前の本谷利明の作画(2) 「マチコ先生」とか


前回までは代表的な作品ばかりを見てきましたので、今回は少しマイナーな作品についての本谷利明作画を検証していく試み。パートは毎度のことながら推測です(※今回は特に絞り込めなかった。アクション分かんない・・・)。


・「ウォナビーズ(OVA/1986)」

「ウォナビーズ」についてはアホみたいに見たんですけど、結局あんまり分からず。この時代は本谷さんが、ちょうど板野主催スタジオの『D.A.S.T』に在籍していた頃です。原画には石田敦子、よしもときんじ、戸倉紀元さんがクレジットされていたり。


ドロップキック
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同スロー
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エレベーターボタン破壊
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本谷さんのアクションそこそこ見たんですけど、未だにあまり分かっていないです。アクション的な部分は、先ヅメで突然眼前に来るような動きを出したり、動きにタメがあるのかなあという程度。後、感覚的には動きが重たい感じがある。

「ドロップキック」のシーンでは先ヅメが効いてて、後からぐわっとキャラが倒れこんでくるので、画面に押し寄せてきてますよね。「エレベーターボタン破壊」については、この時代ショックコマを使っていた、というだけで判断しました。なんという。この前後のアクションもやってるかも。でも破片の散り方キレイですよね。



・「ミスター味っ子(TV/1987-89)」 33話

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33話についてはおそらくこの水しぶきだろうと。こういった決め方はあまり良くないかもなんですが、『オーガス』や『メガゾーン23』でエフェクトをあれだけの分量担当していると、こういった所を任されるんじゃないのかなあと。

2カット目の波とかめっちゃ上手いですよね。タタキもいい感じに入っているし、水しぶきの消え方もカッコイイ。



・「吸血姫 美夕(OVA/1988-1989)」 01話

畳に彫刻
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これはもう透過光のやり方だけで判断。これは「オーガス」の作画(透過光)とよく似ていて、太い線と細い線を混じらせて、カクカク折れ線グラフみたいにやってる。同作品には本橋、菊池、松尾さん始め、上手いアニメーター多し。じっさい作画めっさいいです、この作品。化け物が出てくるところとか、うにょうにょする動きがめっさ上手い。



・「世紀末救世主伝説 北斗の拳(TV/1985)」

板野作監。結城さんとの二人原画。結城さんがおそらく前半の美麗なトキやらキャラを描かれていて、本谷さんが後半のアクションメインではないかと。

雑魚を片付けてから、ラオウとの戦闘①
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ラオウとの戦闘②
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際立つのは破片の細かさ。この時代の本谷さん特有の「周囲環境の変化による写実性の発現」は、この破片の作画が一番わかりやすいです。表現すべき物体・事象そのものではなく、むしろ影響を受けた周囲環境の変化を作画で表現している。ここでは、地面とかケンシロウの血とか。


吹っ飛ぶ雑魚モブたち
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同スロー
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ここがまさしく、「AKIRA以前」の本谷利明作画です。爆発、煙というものを直接表現するのではなく、雑魚が吹っ飛ぶ、ガラスを突き破る、そのガラスが爆風で横に飛び散る、壁に埋まりこむなどの表現によって、エフェクトを間接的に表現している。



だから、この時代は「間接的な写実エフェクト」を目指していると総括しても良さそうです。「AKIRA」からは一転、直接的なエフェクト作画へと移行していきますが、この時代は特に周辺の環境・物体を動かしてあげることで、現象そのものを間接的に表現しています。

この方向性は後年のAKIRAにおいても重要な要素です。本谷作画の整理記事を増尾さんみたいにまた1つ書く予定なので、またそこで説明できたらと思ってます。 
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53]
ちょっとこれに言及するのを忘れていた。
いわゆる、「AKIRA」後の本谷プルプル煙で代表的な例。


意図的なアトランダム煙の表現

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この作画(AKIRAもそうですが)は、煙に対して、偶発性を持ち込んでいるように感じます。
王道的写実エフェクトの代表は、庵野秀明による「王立宇宙軍」(以下「王立庵野」)の作画だと思うんですが、あれとは写実の方向性が少し違うんですよ。「王立庵野」は、煙の見たまま(そのまま)をアニメに落としこんで描いてあります。だからこそ、煙は広がったら、そのまま広がっていくし、それに対応してカゲも付いていく。

でも「本谷ホンラン」は少し違う。この煙は、発生した時点から、そのまま広がっていってはないですよね。フォルムも大胆に変化しているわけではない。ただ、フォルムとカゲの微小な変化で、実際の煙(不安定な煙)を表現しようとしてるんです。これがいわゆる、「ぷるぷる煙」の本質と思います。

煙や爆発というものの映像は実際は安定していますが、それは表面的な映像における話です。エフェクトとは、見かけは安定してても、その実は不安定という存在なのです。爆発の勢いによって煙のスピードや広がり方は変わってくるだろうし、どれだけの粒子を含んでるかで、その色彩や動きも変わってくる。最近でいうと、御嶽山での噴火の煙がありましたが、全くもって自分の想像を超える部分がありました。コンピュータである程度予測は付けられるかもしれないけど、粒子を含んだ空気の集合体である煙は、場合によって予想できない動きを見せます。

そういった、不安定さ・偶発性を持ち込んでいるように今回感じました。いつ、どっちの方向に、どれくらいのスピードで向かうか予測が付かない、そんな煙を表現しようと試みたのではないかなあと。



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これまでは単純に、「写実的な煙」というカテゴリに整理していましたが、見返してみると、真っ直ぐな写実性とは違う部分を感じたので、今回少しまとまった雑感を書きました。やはりエフェクトは奥が深いです。

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調べ尽くしたい所存です。
(※念入りに調べましたが、各パートは推測です。)



■『まいっちんぐマチコ先生(1984)』 

おそらく本谷さんの初原画。(※初動画は『さすがの猿飛(1984)』)


75話

ガス爆発
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(※多少ショックの表現が目に悪いと思ったので、消しているコマがあります。ご了承してね。実際に見たい方は、本編で確認して下さい。)

爆発・煙のアニメーター、という認識が『メガゾーン』等で出来上がってしまっているので、爆発シーンがあるときは無条件で本谷さんだと思ってしまう。推測ですが、おそらくこのガス(おなら)爆発周辺が本谷さんではないかなあと。他には、煙のカットとかもありましたね。


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これは上記の一部切り抜きです。
これだけの物量。女の子も机も、破片もしっかり描いて動かしているのが分かります。
めっさ上手い。


突き破りドーン
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ここだけ見ると、「なんぞこれ」という感じですが。
まあ、おならで加速して壁を突き破ってます。
破片の細かさがポイントですね。散らせ方が丁寧です。



79話

メガネ泣いてるところ
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6枚リピート。
増尾さんもそうですが、エフェクト描かれる方は涙の作画もまた上手い気がします。
(※この辺りは、上野さんかもしれません。)


Bパート玄関
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ちょっとショック表現については、知人から情報を得まして。
『北斗の拳』でも使っているかもということを参考に、ここ辺りかなあと。


…と色々推測立てて見ましたが、
「まいっちんぐマチコ先生」は、正直全然分かんないです。
特に79話は全然ですね。



■『メガゾーン23(1985)』

これは、『メガゾーン』の1作目です。パート2(秘密ください)の方は本谷パートがとても有名ですが、こちらはどちらかと言えば庵野・山下パートが有名な作品ですね。

クレジット
(※緑はパート判明してる人、赤はそうでない、かつエフェクトを描く人)

正直増尾パートもよく分かってないんですが、警察署前の戦闘あたりかなあと増尾配信のときにありまして。福島さんに限っては、全然分かってない。となると本谷さんパートは、2作目や『オーガス』と比べながら調べる他なく。これに絞り込んだんですが、正直微妙なところです。 


タンクローリー爆発、メカ落下
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一面の透過光や、ショック表現が特定箇所。全体的なメカの重力感や、煙のじんわりとした感じで判断しました。そうそう忘れちゃいけない、後は破片ですね。コンクリ破片の崩れ方と落下の仕方が、すごくゆっくりで写実的になってる所も大きい。本谷パートは、この後に起き上がるとこのダブラシ煙ぐらいまでじゃないかと。

ここじゃなかったら、後はパトカー潰す所かなあ。あそこのガラス破片はよく似ている気がしますが…福島さんのような気もします。



■『大魔獣激闘 鋼の鬼(1987)』 


ケーブル暴れ
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突如巻き上がるケーブル。無理やり引っこ抜かれたような格好で、周囲にはその破片が広がる。ケーブルの先に重そうな機械類がくっついているのは、その「無理やりさ」を演出するため。その機械類が崩壊していく様も、また作画密度の高さに圧巻される。一瞬ピンと張るケーブルは、伸長の限界を示していて、それを超えた後の開放感にも似たケーブルの暴れ方が素晴らしい。



ケーブルの落下と煙
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立ち上がる化け物に引きずられる形で、ケーブルは穴へと吸い込まれる。重量感ある立ち上がりと同時に、煙も発生しているため、中の部分が削れて粉塵となっているという表現なのだろう。2コマの煙の上には、破片(ガラス+石)と電気のエフェクトが走り、情報量を増す。ここでは、ちっちゃい破片(ガラス)と大きな破片(削られた石の一部)を使い、画一的な画面にならないように設計されていると感じる。


本谷作画は、この辺りかなあと推測しました。ハルカが取り込まれて、ケーブル引っこ抜く辺りとか、ガラスが割れるところとかですね。ケーブルの挙動っていうのは、『王立宇宙軍』でも『AKIRA』でもあったけど、これだけ上手く描くにはやっぱ上手な人でないと描けないと思います。

また共通事項として、これらのgifで見られる破片は、『メガゾーン23』などで見られた破片とよく似ています。それも推測の根拠の一つですが…AKIRA以前は、「破片などで情報量を増やし、写実的にする」と前も述べましたが、それは変わらず、この「鋼の鬼」でも発揮されているように感じます。


今回は以上です。
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