ヴィニエイラ様が可愛いだけのアニメだった。
世界征服~謀略のズヴィズダー~公式サイト

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まあそんな冗談は置いといて、岡村天斎TVシリーズ監督2作目。冬アニメはご存知の通り、自分のキャパでは2つ3つぐらいが限界なので、リアルタイムでは見れませんでした。自分のTwitterのタイムラインですんごい話題でして、最終話だけ少しのぞいてみると、何だこの幼女と思ったのが初見です。増尾さん関係も色々あって、これは1週間に1、2本くらいかな、それぐらいのペースで5月からゆっくりと見てました。


簡単にまとめると、キャラコメディアニメ。

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世界征服を目指す星宮ケイト率いる、ズヴィズダーとホワイトライト&東京都軍の戦いをアクの強いキャラを据えて、オムニバス形式で描いているという感じです。なので、各話のつながりが弱いのが欠点か。まあ、序盤の方は丁寧に前後でお話を続けようをしてるのが分かっていいんですが、中盤はちょっとキャラ・アニメに走りすぎた感がある。基地がぶっ壊れた後どうなったのかみたいな事が分からないまま温泉に行ったりと、ややストーリー構成がちぐはぐしてます。後半は、まさに東京都軍との決戦でちょっとシリアスな感じに(フリだけです)。

2クールやったら良かったんじゃないのという意見もよく見ますが、僕もそう思います。でも1クールに詰めようと思ったら、ストーリーに関係しない回を削るべきなんですが、そういう回がまた面白いというジレンマ。


特にすげえなあと思ったカットとかは、10話と5話だと思います。それ以外は、岡村コンテと安藤コンテはやっぱ上手いなあと。 テンポとかそういうのしっかり伝わってきますよね。


■OP(「Be mine!」坂本真綾)
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このタイトルの柔らかさは面白いですね。CGだと思います多分


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このカットは構図が上手くてカッコいい。こういう画面作りも上手いなあ。なんというか、揺れるヒモが画面を大きく、ケイトを大きく見せてますよね。

アバンの入りも毎回良かったです。OPがノリノリなので、坂本真綾の「ビー、マイン」 が入ってくると自然にズヴィズダー視聴モードになっていいですね。時折、象徴となりすぎるOPというものがアニメではよく見かけますが、これはバランス取れてまして、完成されたOPじゃないってとこもまたいいですね。本編を視聴したくなるようなOP。


■12話
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ガラクーチカ征服モード変身バンク。これ最初、この後がCGだからこっちもCGだと勘違いしてた。メタモルフォーゼみたいな感じで、上手いっすね。


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ヤスロボが突っ込むところの煙が気になったので。いい煙ですね。破片はそんななくて、若干写実的に。カゲの動かし方が上手いんですかね。画一的なフォルムだとどうしても固っ苦しいので、2話で明日太が階段降りたり、校庭走るとこの煙みたいなのはもっとあっても画面は楽しくなりますね。


■10話
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アクション。ここらへんは、もしかし濱口明かもしんない。一番下のカットは、煙もまたいい感じですよね。逸花のキックのタメもいいわけですけど。真ん中のロボ子のカットで気になるコマがあるんですが、まあ多分オバケみたいな残像効果の表現でしょう。



ではお話の方に行きましょう。

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主人公の明日太が家出をするところから始まるんですが、ここは良かった。つまるところ、中学生が親の仕事に嫌気が差すという何とも子供らしい理由で出て行くわけです。社会を学んだ後、「アメリカって悪い国だよね」と思うアレです。さらに明日太くんは、親への反抗心だけで出て行くだけではなく、「どういう風なところで親父が嫌いか。なんで親父の仕事が悪か」ということに関して、自分なりの考えを持ってるところもまた良かったです。中学生の反抗心って意外と、細かい所まで考えてる場合が多いんですよ。

またこの主人公がいいんです、そんな天才とかでもなくて。僕らはキャラに自己投影とか陶酔とかするときに、キャラが身近にいないとできないんです。「IS」とかが顕著だと思うんですけど、とにかく天才で無個性を重んじるキャラには没入しにくい。その点、この明日太っていう主人公は、屈折もしてるし、かといってすんげー才能とか力があるわけでもない、ただの凡人なんです。親の庇護の元では使えてたカードが使えなくなったのは、明日太が凡人になったことを示しています。その凡人が、都知事である父親なんかクソ食らえな、反体制的な感情を持ってるから魅力的なんでしょうね。まあこれはお話全体にも言えますが。


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で、ズヴィズダーへと参加。ズヴィズダーメンバーもそうですけど、この作品はキャラデザいいですよね。すごくいい。アニメな感じなのにシンプルで描きやすそうな上、キャラにしっかり特徴がある。こればっかりは感服しました。僕の脳みそで快適に物語が楽しめる基準として、メイン・キャラは約10人以下(※もっと言うと、ドラえもんの5人が一番いいキャラの構成人数)というのがあるんですが、これがまたドンピシャ。これぐらいの人数の方がしっかりと見れます、ダブルオーとか咲-Saki-全国編とかになるともう訳わかりません。あらたそ可愛いで終わります。

先ほども出ましたが、中盤は一話完結の体裁で進みます。大体、3話~9話ぐらいですね。(6、7話に関しては前編後編)ここは面白いんだけど、ストーリー的には進まない。2クールあったら、ダレ場みたいなものも必要だと思うんですけど、1クールなんですよね。そこが問題。面白いんだけど、こんなにあっても仕方ないだろうと。逆に、こういう風にするなら、あんな決着の仕方はボロクソに言われてもしょうがないと。


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10話で締めにかかります。都知事である明日太の父親が、ズヴィズダーへの軍事を拡大させます。ホワイトライトにとって、自衛隊や東京都軍は単なる制圧協力でしかないわけですが、UDO濃度が一定値を超えてしまうと、作戦実行中であっても都軍に全権を委ねないといけないという何ともホワイトライとしてはぐぬぬな相手。最終回は流石に詰め込みすぎてる感があります。明日太の父親が人外だとか、ここで甘党ヤクザとホワイト・ファルコン(カオリ)の確執を描くとか、もうすんごいハチャメチャ。

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でもですね、これらは全部ギャグだと思うんです。(※コメディにおいて、シリアスを描くバランスがいいのかもしれない。つまり深刻になりすぎてない。)一見シリアスやっている風に見えるんですが、全部ひっくるめてギャグなんです。ヤクザの過去話も「こんな風に彼らは衝突してる様子を演じてます」という感じに映るんです。言えば、吉本新喜劇みたいなもんです。店主と奥さんがケンカしたりもするけど、その中にギャグを挟むことで全体をコメディにするという感じですね。ズヴィズダーもこの構造は同じで、局所的に見ると一見シリアスに映るんですが少し怪しい感じが既に出ていて、1話全体で俯瞰すると、後味悪くないコメディになります。

だから、当然都条例とかも全部風刺ギャグ。だけど、風刺の段階にはありません。いちごショートケーキのクリームだけ舐めただけのアッサリな風刺です。その問題の名前に触れるだけで、風刺としてる。これがなかなか面白いのかもしれない。80年代に多く見られた、”モブに違う作品のキャラを置く”みたいな感じに似てるんだと思います。気付く人だけ気づくみたいな。



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でも、新喜劇にも当然終わりはありまして、おおよそ感動系で締めるのか、お笑いで締めるのか、演者全員ズッコケで終わるのかのどれかです。優劣の差などは、ここにはありません。方法論の違いだけなので、どれを選択しても正解だと思います。しかし、ズヴィズダーに関しては選択してなかった、つまり、締め方を考えてなかったと思わざるを得ません。最終回で、とりあえず都知事はフルパワーヴィニエイラ様が倒したけど、さてどうなると思っていたら、色んなもんほっぽり出して直EDでしたからね。まあ牛乳とか逆上がりを見る限り、そういうもんなのかなあと。

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でもどうしてこんなにこの作品に魅力があるのかというと、それはアクの強いキャラたちの力だと思います。久野さんの声もやばいっすね。どんな声してんだよと。ゆかな以来のショックです。1クールだけのキャラのお付き合いで、ここまで魅力を出せるのはスゴイです。これは本当に。甘党ヤクザにしろ、眼帯S女にしろ、ヤスにしろ、もっとこいつらを見たいし、こいつらの隠れてる魅力とかも知りたいと感じてしまう。元々存在する魅力から、そういった潜在的な魅力を想像してしまうんですね。 この魅力がいったいどこから発生してるんだろうと疑問で仕方ありません。でも、ここは天斎すげーなあと思います。