GOMIstation

2025-1

カテゴリ:原画マン > 木上益治

作画は一段落ついたので演出の方を探っていこうと思う


氷菓(2012)5話
絵コンテ・演出:三好一郎(※木上益治の変名)

【全話までの流れ】
子供のころの叔父との会話が思い出せない千反田えるをきっかけに、45年前の学校そのものに何があったのかを奉太郎たちが推理していく。そして、見事に過去の出来事を暴き出した。しかし、えるたそ~は違和感が残っている様子。それが前話数までの流れ、つまり、5話は真の解決編です。




・姉から電話を受け取るシーン
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連続3カット

1カット目:受話器なめて後ろに奉太郎は小さく/広角気味/バストショット
2カット目:受話器を取る奉太郎
3カット目:姉からの電話とわかる/望遠/ロングショット

レンズの意識なんてのは木上益治の演出なら言うまでもなく、問題はそれをどう使っているかです。このシーンでは、1カット目に受話器を手前で大きく映し(「なめて」と言います)奉太郎を左後ろに配置させることで、受話器じたいがキーアイテムであることを主張している。

2カット目は普通のカット。奉太郎が電話に出る。目を引くのは3カット目ですねえ。姉からの電話とわかった途端に、このロングショット&望遠の画面。この異質さ。いつもと違った画面にするのにはなにか理由がある。ここは姉からの電話がめっちゃ重要やでっていうのを客観カメラで伝えるためですよね(主観・客観カメラはキャラ目線かそうでないかだけです、この区別が大事かな、と個人的に思っている)。客観カメラでやっている理由はぶっちゃけ分からん。奉太郎の主観を入れないようにするため?



・姉と談笑する奉太郎
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こういう分かりやすく誇張するレイアウトを木上さんは好きそうではある
家具とか家財の後ろから映すのが好みなのか、しかしキレイに収まっている



・姉から「カンヤ祭」が禁句であると聞いて考え込んだ後
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3カットAC(アクション)つなぎ

一連の行為をわざと切って、複数のカットに分ける技法をAC(アクション)つなぎと言ったりします。ここでは奉太郎が姉からの電話を受けて、自分の推理にはどこか不足しているところがあるのではないか、ないしは間違っている部分があるのではないか、ということで、追求すると決めたシーン。単純だけれど、奉太郎の覚悟が伝わってくる。



・序文を書いた本人は分かってからお前ら図書館いくどーのシーン
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連続4カット

1カット目は前述の通り、大きな棚の後ろから奉太郎たちを映す。画面をさらに絞って誇張する。んで2カット目ではいきなり、奉太郎の足へ。ここは奉太郎だけが序文を書いた本人をすでに知っている(さらにその本人が45年前の真相を知っているだろうことまで分かっている)、という部分が大事なので、他の無知な3人は目立ってはいけない。奉太郎だけ。「Just Hotaro.」

3カット目はその延長でやや引いた画面でパンアップしていく。後ろ姿を映すことでミステリアスな感じに。4カット目の目線なしも、そういう意図なんだろう。目線を消すことで、余計に彼の存在を目立たせる。


★関谷純の名前を聞いて、糸魚川(郡山)先生のリアクション
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ここバリ上手い
序文を奉太郎が渡して、糸魚川先生は書いた本人だと認める。んで、糸魚川先生は。奉太郎たちが聞きたいこと、それは45年前の運動についてという所まで察しがいった。ただ、予想外だったのは「関谷純」という名前が出てきたこと。それは予期していなかったんだろうと思う。2カット目、広角レンズで歪んでますよね。これは糸魚川先生の動揺を示したカットだと思う。糸魚川先生の声は明らかに動揺を隠そうとしている様子で、それが画面に滲み出てしまった。

NU61号 木上益治・追悼特集インタビュー補足記事
http://neo-utopia-net.blogspot.com/2019/12/nu61.html 

諸事情で同人では載せ切れなかった奈須川さんのインタビューが掲載されていますのでぜひ。厳密には質問を考えただけなので、インタビューといえるかと言われると微妙なところですが。まあ細かいことは良いでしょう。質問に快諾された奈須川さんに感謝です。

本編も同じくらい濃いですよ~。当日完売したとのことで良かったです!
【追記】29日委託分も完売したとの連絡を受けました。ありがとうございます。


ちなみに通販もありますので、欲しい方は諦めないで!

ネオ・ユートピア|通販
http://neo-utopia-net.blogspot.com/2015/08/blog-post.html

イアキの木上作画語りが読めるのは、ネオユートピアだけ!(※そのうちブログに載せるやろ・・・とお思いの方、載せる予定は現状ないので気をつけるように)、他にも素晴らしい寄稿文章やインタビューなどがたくさんありますのでぜひぜひ。



後々、同人参加レポみたいなの上げますので、それはまあ適当に流し読みしてください。

ネオ・ユートピア http://www.neoutopia.net/
(※現在、プロバイダーの都合で停止中[2020/01/15]現在)



ネオ・ユートピア http://neo-utopia-net.blogspot.com/


【追記;重要なお知らせ】2020/01/15 現在
重要なお知らせが2つございますので、追記いたします。

(1)
[公式サイト停止中のため繋がりません→公式ブログで情報を!

☆ネオ・ユートピア(公式ブログ) http://neo-utopia-net.blogspot.com/

プロバイダーの都合で、公式サイトにつながらない状況です。
ですので、今現在はネオ・ユートピア公式ブログ(http://neo-utopia-net.blogspot.com/)から、通販についてなどの情報を得てください。またTwitterを利用されている方は、公式アカウント(こちら)をフォローしていただけると最新情報が得られると思いますので、ご活用ください。


(2)
[公式メールアドレスの一時利用不可→下の赤いメールアドレスを使って!


同じ問題のためにメールアドレスも利用できません。ですので、なにかご不明点がある方、お問い合わせをご希望の方、通販をご利用したい方などは、下記の赤い文字のメールアドレスまでご連絡ください。

メールアドレス:neoutopia●outlook.jp
(●を@に変えてください)


以上2点が重要なお伝えとなります。下記でも追記しておりますので、ご注意ください。


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☆新刊61号「特集=大長編ドラえもん」
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https://twitter.com/FujikoFC_NU/status/1208474777897144320 より画像引用)

上記の同人サークル、ネオ・ユートピア様からお声がけいただき、新刊61号「特集=大長編ドラえもん」に参加しました。当初は「ミニドラSOS」の自分の記事を載せる、という感じだったのですが、「この機会に木上益治の作画はもっと扱いたい」と提案したところ快諾いただき、他のドラえもん劇場版についても触れさせてもらいました。

木上益治特集では他に、藤子作品に詳しく演出的な見地から書かれた、おおはたさん、そしてアニメーターの奈須川充さんも寄稿されており、とても充実した内容となっております。


NU61

自分の担当した部分は、「1980年代に木上益治はどのような作画をしたのか?」という内容です。基本的には、ドラ映画の木上作画を分析しました。読めば、「ドラ映画」~「AKIRA」「火垂るの墓」あたりの木上益治作画が線で繋がる、ああなるほどと思わず膝を打ってしまう内容にしたつもりです。

今のところ、同内容をブログに載せる予定はありませんので、ぜひともコミケ会場に足を運んだ際はお求めください(もしくは公式通販で)。いやあ3週間ほど木上益治の画面にべったりでして、ぶっちゃけすごい大変でした。なんで他の劇場ドラえもんもやりたい!とか言い出したんだろうとか途中で涙目になってました。木上パートの選定は大変だった。そんなことは置いといて、何よりも編集さんや他寄稿者と同じ気持ちを共有できて良かった。その熱が反映されていると思う。


日付;28日
場所;西3ホールN-33b(4階です)
C97_告知1

また当日予定が入っている方、遠方でコミケに参加できない方、そういった方々のために通販も対応しております。これで地方勢の方々などにも安心してもらえると思います。

ネオ・ユートピア/通販方法
http://neo-utopia-net.blogspot.com/2015/08/blog-post.html

上記公式ブログにあるとおり、

■申込先
件名に下記を記載し、下記メールアドレスまでお申し込みください。
折り返し、通販案内をおくり致します。
案内は長文ですので、携帯電話からの問い合わせの際はご注意ください。

件名:【NU通販】お名前
メールアドレス:orderdesk●neoutopia.net(●は@です)
(※現在プロバイダーの都合により停止中ですので、下記メールアドレスにお送りください[2020/01/15]現在)



件名:【NU通販】お名前
メールアドレス:neoutopia●outlook.jp


http://neo-utopia-net.blogspot.com/2015/08/blog-post.html より引用
赤い太字部分をコピペしてメール1通でおk
(※サークル様に確認したところ、年明けから順次対応予定とのことです)

【追記】2020/01/15
記事トップと同じ情報ですが、ご一読を。NU61号も含めた通販や、その他のお問い合わせにつきましては上記の赤い太字のメールアドレスまでご連絡ください。メールアドレス以外には、通販方法に変更点はございません。



よろしくね!

京アニは、OPアニメの演出でしばしばカメラをぐるっと回す演出をします。


■『中二病でも恋がしたい!戀(2014/TV)』 OP
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(モリサマーえろい)

さて、回転させることで、まずぼくらが感じられるのは”キャラクターの立体感”です。キャラクターの周りをぐるっと回ることで、様々な角度から見ることができる。平面的な画面よりも、リアルさが増す。
 
まずは、こういったキャラクター・状況を立体的にする効果があります。キャラクターを立体の空間に置くことで、キャラクターにもその状況じたいにも存在感や肉感が出てきます。


このような回転演出が、近年の京アニOPでは多く見られます。


今回は、「この回転演出を、京アニが多用する理由」をについて少し考えていきたい。

 

まずは、この回転演出なるものを京アニに持ち込んだキーパーソンについて。
おそらくそのキーパーソンは、木上益治(きがみよしじ)さんです。

木上益治さんはシンエイ動画出身で、現在は京アニの重鎮のアニメーターです。最近はコンテ・演出中心で関わっていますが、初期は原画マンとしての活躍が目立ちました。「AKIRA」に参加した人、というイメージを持ってる人も多いんじゃないのかな。

さて、原画キャリア初期にあたる「さすがの猿飛」では、破天荒な作画を披露しました。背景動画をよく使います。直近だと「中二病でも恋がしたい!戀」OPとかですかね、まあ相当に上手いです。

■『さすがの猿飛(1983/TV)』 16話
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小気味よいタイミングの追っかけ作画。爺さんが着地するときは意外とタメており、緩急がある。

■同15話
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(※パートは推測)

背動もめっちゃやります。左はメタモルですね。一瞬のタメが良い。
右は回り込みながらのQTBで、眼鏡っ子と肉丸の敵対感を描写。眼鏡っこ強そう。


このように、彼は金田系として、けっこうハチャメチャな作画をしていました。その後は落ち着いた感じで芝居メイン。「中二病」みたく、今でもド派手なアクションとかやる印象ですが。


それで、この木上さんが回転演出を持ち込んだと思うのは、演出を始めてまもない頃の「パワプロOP」に、その演出が垣間見えるからです。「パワプロOP(8~10)」は京アニが担当したことで有名ですが、木上さんも深く関わっています。

■『実況パワフルプロ野球9(2002/PS2)』と『同10(2003/PS2)』OP
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カメラはパワプロくんの周囲を回りながら、TB。パワプロくんが立っている球場の広大さ、プロ野球じたいの壮大さ、はたまた試合前の緊張感がよく出てますね。


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12]26]

ちなみに、「各球団の選手同士が順繰りに登場する」という、今のパワプロOPのお決まりは『9』の時に既に木上と京アニが作っています。このお決まりが使われるようになったのは、2011ごろからかな。本題ではないので詳しくは書きませんが、目パチとか場面転換の手法がオマージュされてる。


特に2012はうまく昇華されていて、めっちゃカッコイイ。お気に入り。

■『実況パワフルプロ野球2012(2013/PS3)』OP

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疾走感溢れるカメラワークからのマッチカット。このOPはテーマもめっちゃ良いです。ゲーム本体はあれだけど。2012はすごく「8~10」とよく似てます、これで参考にしてなかったら嘘だぜ。
 


さて、本題に戻ります。パワプロOPの仕事をどういう経緯・内容で受けたかは定かではありませんが、とにかく木上さんはここに「回転」を持ち込みました。これには、どういう意図があったのか。

僕は、「野球というスポーツの爽快感や壮大さ」を表現するためだと思う。

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相手に強打されても、ダイビングキャッチで取ることができる。打ち損じでも、ヘッスラすればセーフになりうる。サヨナラがかかった場面ともなれば、応援にも熱が入り、球場全体は異様な雰囲気になる。


54]02]

要するに、野球の魅力の一つには、異様な熱気がある。そこには、試合にかける選手の思いや、観客の興奮が入り混じって、球場全体は異様な雰囲気に包まれる。この部分を表現するために、木上さんは回転演出を使ったと考えています。


このように、京アニにおける回転演出の土台は木上益治が作りました。しかし、当然ながら京アニは野球のアニメばっかり作っているわけではない。萌えやコメディからシリアスまで、幅広く扱っている。そして、すべての作品が熱気に溢れているわけでもありません。そのような中でも、回転演出は顕著に見られる。これはいったいどうしてか。どうして京アニの演出家は、回転演出を使うのか。


それは回転演出の根底・本質に、「背景動画の持つ気持ちよさ」があるからです。



さきほど少し触れましたが、木上さんはアニメーターとして背動を多用します。
ここから、背動の気持ちよさを紐解いていきたい。

■『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望(1995/劇場)』
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終盤。吹雪丸としんのすけは敵の銃撃をかわしつつ、馬で駆けていく。
2カット目はしんのすけたちのPOVですね、疾走感が見事。馬の浮遊スロモも上手いなあ。


■『ドラえもん のび太と翼の勇者たち(2001/劇場)』
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ええと、これは確かラストの大会だったかな。狭い空路を低空飛行で突っ走っていて、迫力満点。ゴツゴツした岩が迫ってくるのが怖いんですよねえ、すごい臨場感です。


■『中二病でも恋がしたい!戀(2014/TV)』 OP
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迫力ある回り込みカメラワークから、キャラクターへの寄り。
走っている六花のガクガクする感じ(一歩進んで少し戻る)が、戦闘の緊張感を醸し出す。


木上さんの背動作画はこんな感じ(もちろん背動以外も上手いけど、ここでは割愛)。背動の持つ、気持ちよさみたいなものは分かってもらえたと思います。なんか爽快感ありますよね。


ですが、汎用性の低い背動を演出に持ち込むことは、作画リソースの面を考えても難しい。それに、ちゃんとした背動って誰でも書けるものじゃない。パースは刻々と変化するし、それに伴って背景とキャラのバランスも取らなきゃいけない。一言でいうと、「ちょームズイ」わけです。だけど、木上さんは、背動を何とか演出に持ち込めないかと試行錯誤したと思うんです。

「ちょームズイ」背動がもつ爽快さ・壮大さを、もっと多くの場面で使いたい。すなわち、一つの演出手法に落とし込みたいのであれば、木上さん以外の人でも使えるように、難易度を「ふつう」くらいに下げる必要があります。そこで、木上さんは、背景動画の一番の特徴であるパースの変化を抑えるために、画面が動く方向を一つに絞った。その結果、「回す」という手法に繋がったと思うんですよ。CG技術も発達してきて、昔より回転させるカメラワークを描くのが楽になったというのもあると思う。


その結果として、京アニOPで多用されるようになったのではないのかな。
背動の根源的な気持ちよさを、リーズナブルに演出できるので。


■『けいおん!(2009/TV)』 OP02
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和気あいあいと演奏、光の差し込みも良い。バンドの楽しさや一体感が伝わってくる。


■『フルメタル・パニック ふもっふ(2003/TV)』 OP
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3D背景での回転から、俯瞰方向にTB。くつろいでる軍曹がかっこいい。
逆光もいい味出してますね。


■『中二病でも恋がしたい!戀(2014/TV)』 OP
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タイトルぐるぐる円運動の疾走感。慣性で少し左に反動を受ける六花の描写も丁寧です。
速い回転の分、てくてく歩きはゆっくりに見えてかわいさ増してる。


■『響け!ユーフォニアム(2015/TV)』 OP
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俯瞰からの大胆な回り込みカメラワーク、ティルトアップ+TU。
オーケストラの熱気・壮大さを表現。見事の一言。



背動でしか出せない壮大さ・疾走感を、それ以外の方法で出す。
それが木上と京アニが生み出した、回転演出だと思うのです。


<参考文献リスト>
京都アニメーション制作「実況パワフルプロ野球OP」のスタッフリストをちゃんと調べてみた-ぬるヲタが斬る
2015春アニメのカメラワークいくつか -大匙屋

32]
まあ知ってる人がいるか分かんない作品ですが、これは僕の昔からのお気に入りでして、今回改めて観直してみると、そのすさまじい映像は変わらずでした。

ドラミちゃん ミニドラSOS!!! Wikipedia



まずはあらすじから。

時は2011年。子どもの頃の、のび太が勝手に未来デパートに注文した「ミニドラ」が間違って、のび太の子どもの「のびスケ」に届く。それからミニドラとのびスケたちは遊ぶが、ドラミちゃんに返還を求められる。パパ(のび太)がよく話す「冒険」をしたい3人はドラミちゃんから逃げて、ミニドラの力を使おうとするが…


そうなんです、2011年なんですね。ドラえもんが誕生する100年前。だから、ドラえもんがいる時代の便利な道具というのはまだできていないわけですが、確実に未来は進歩しているわけです。今作では、その未来感が的確かつ程よい感じに、随所に盛り込まれていて、とてもいいSFアニメになっています。いやあ完璧です。これは原作漫画がないオリジナル作品なわけですが、本当にすごい。

監督は、「おねがいマイメロディ」などで知られる、森脇真琴さん。最近だと、「ミルキィホームズ」で知っている方が一杯いるのではないでしょうか。ちなみに、2014秋アニメでも「デンキ街の本屋さん」で監修を務めます。久しぶりのシンエイ関連のお仕事ですかね。

原画は木上さんの他にも、林・東海林・藤田さんなど、シンエイ実力者揃いの作品です。




木上作画として有名なのは、のびスケのビー玉シーン。
(※これはソースなんでしょうか。当時のアニメ雑誌とかですかね)

ビー玉
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で、まああんだけ上手い木上さんが他に描いてないわけもなく。
ここらへんが木上作画じゃないかなあと。



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ラスト2個は純粋に良いと思ったので、違う可能性大ですが。上から2つは、エフェクトのあのスッと消える感じとかが根拠っぽい根拠です。木上作画(エフェクト)はまだまだ少ししか見てませんが、破片の多さが目に留まりました。なので、この辺もかなあと。



ガラス破壊
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破片だけでなく、割れた本体のガラス部分の描き方も非常に上手い。重力には沿っていない(と思う)が、のびスケたちから見た「重さ・怖さ」を上手く表現してる。おもたい動きはそのため。後は水のエフェクトが、地味にこれまた上手い。この水エフェクトは、水圧で耐え切れなくなってきての水なんですが、シャシャっとした感じが木上さんっぽいですよね。

木上さんといえば、芝居メーターの感じが非常に強いのではないでしょうか。「けいおん」「涼宮ハルヒの憂鬱」「Canon」とかそういう感じですもんね。特に、手の芝居がすげえ上手い。グッと押し出す手のひらの表現とか、手首の動きとかいいですね。





その他、ちょっと回りこみにも関係するお話を少し。

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ここでは、「迷宮プラネタリウム」という道具を使っているので、スーパーが迷路のように巨大になっています。 原作コミックで言うと、「ホームメイロ」と同じ(※ただしホームメイロの場合は、その迷路内部で道具が使用できません)。まあ、とてつもなく広くなっちゃってるわけですよ。広大に。それを描写するための、180度回転回り込み背景動画の使用だと思います。

これによって、のびスケたちの目線で、僕らも、スーパーの変貌ぶりを感じることができる。これが、のびスケたちが困っている様子を俯瞰でTBをやるだけでは、多分僕らは彼らを可哀想としか思えない。子どもは、もっとダイレクトに映像を享受するので、これはすごくいい表現手法だと思います。



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この180度回り込み前面背景動画はこれもありますが、それは上と同じような使い方です。のびスケたちが理解できる範疇を超えた、未知なるものに大しての驚きとか呆然とした感じを表現してる。 



後、面白かったのは、これ。

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1カット目では、「のびスケに見つかった」という部分を強調するために、スネ樹がのびスケに付けた「ミニ雷雲」に焦点が行ってるわけですが、2カット目では、瞬く間にのびスケに対するジャイチビ・スネ樹の恐怖心を演出するために、少し俯瞰のアングルになってるんですね(のびスケを大きくみせるため)。しかも、TBしながら、カットを割ってるので面白い。



これぐらいかなあ。後は、ドラえもん作品だけど、絶対ドラえもんが出てこないとか、そこは分かってる。今だと、「ドラ泣き(笑)」だから、こんな作品だと最後にドラえもん出しちゃいますよ多分。出てこないで、「想像に任せる」、ということの重要性は分かっている人は少ないので。


まあ総合すると、とても面白い作品なので、未見の方は是非に視聴してみてください。

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