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2025-1

カテゴリ:その他のアニメーション > CMアニメーション・PVアニメ

さて、以前「取り留めのない雑記(19)」において、ほっけさんから意見を頂き、「話数単位で選ぶこと」に対する意義をとても深く理解することができた。確かにCMやNHKアニメ短編はその映像の短さゆえに、語られることも話題になることも、今日の情報過多社会ではあまり見られない。それを年のまとめとして、機会を設け、語る、というのは非常に大事なことと共感できる。

既に年は明けてしまったが、去年を中心にアニメーションによるCM、アニメーションが使われているCMを整理した。コマーシャル・アニメーションに潜む魅力が伝わり、何かの参考になれば幸いである。


■「南アルプスの天然水/サントリー(2013-14)」


アクリル絵具のような質感のアニメーション。「動き続ける絵画」と言えなくもない。これは「Wild Life(2011)」からのキャラクター引用で、新しく制作されたものだと思われます。「Wild Life」とは、カナダのアマンダ・フォービスとウェンディ・ティルビーによって制作された短編アニメーション。2012年のアカデミー賞において短編アニメ賞に輝いています。ちなみにオスカーもノミネート。

ここがやはり素晴らしい。

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水流表現。多分12枚リピート。ペットボトルがカチャカチャなってるのもいいよね。とにかく、ここは川の透明度と流れの表現が巧すぎる。「水の透明度」っておそらく表現が一番難しい部類だと思うんですけど、これ見事ですよね。ある一つの水の流れでは、石があって、それを乗り越えていっているのが分かる。障壁がないところは、スムーズに通っている。



■「東京ディズニーリゾート/ディズニー(2012)」


ディズニーランドを舞台に、人の一生を描く。カット割りのテンポ、明暗が特に良かった。最後の方は、お母さんになって、おばあちゃんになるんですが、画面のレイアウトが反転しているのがいいんですよね。時間の移ろいを感じる。未だに制作会社が明かされていないようですが、どうにもIGっぽいですよね。撮影的な意味で、少なくともマッドハウスとかこういうのはしなさそうです。同時期には、LED電球による東芝のCMでも「人の一生」を表現していたりと、伝播するものがあったんでしょうか。



■「ムーヴ カクカクシカジカ/ダイハツ(2008-2014)」


カクカクシカジカ自体は、記憶に新しい人も多いと思うが、この滑り込んだ後の作画について、特にエフェクト(煙・粉塵・砂埃)が素晴らしい。


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粉塵・砂埃が現れ消え行く、そのプロセスやタイミングが時間軸を表している。滑り込んだ直後は、スローモーション的な時間の流れ方だけど、セーフの後にスッと消えることにより、時間が現実に戻ったことをまさしく見事に表現している。



■「20代の部屋編/マイナビ賃貸(2015)」


これこの前見て、びっくりした。サラリーマンの男の子がカバンを引きずっていくところとか、自転車の挙動とかいいですよね。最後のカメラのじわ回りも(ちょっと手前の方が早過ぎる気もしますが)いい。

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「浅野先生が原画を担当!」と公式サイトに記載してあるんだけど、これ全部原画描いたのは流石に嘘やろ、と思う(※浅野先生全カット原画ならそれはそれで凄まじいですが)。どこが作って誰が描いてんやろね。



■「頭は使いよう。/クレディセゾン(2014)」

(みんな大好き)らっパル/山下清悟作画。

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衝撃波がなんとも絶妙な感じでいいですよね、こうぶわあっと。大地が割れて、石がずわあっと。やっぱり、らっパルさんとかってタイミングがこう上手いんですよねえ。女の子も可愛い。後は漫符が地味にアニメーションしているのがいい。



■「クロスロード/Z会(2014)」


新海誠作品。通信教育のZ会のCM。離島に住んでいる少女と、母子家庭と思われる少年の受験を描く。これが上手かった。一般的に、学校以外の教育と言えば、「塾」「予備校」でありますが、この作品に出てくる2人はそれが利用できない。少女は塾が近くないという距離的な問題で、少年は塾の費用が払えないという経済面の問題が原因です。それを解消するための通信教育ということで見事なコマーシャルになっている。さらに言うと、少年はその費用を捻出するためにアルバイトまでしているのが凄まじい描写で。また、家族や親戚に囲まれる少女に対し、最後まで少年側の親が映らないのは、やはり母子家庭の暗示だと思います。


映像としては(去年の最初にも触れたんですが)、やはりこの2カットが素晴らしい。


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おおっとなりますよね。試験をそれぞれのやり方で(深呼吸をする、すぐに取り掛かる、緊張から肩に力が入っているなど)、過ごしているのがいいですね。試験用紙のめくるタイミングもめくり方もみんな違う。こういった細部のディテールは画面の、ひいては映像全体の写実性をやっぱり増します。後は、差し込む光とパーティクルの効果がいい。現象としては空気中の埃が日光で照らされていて教室っぽいなあと。



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ここは年間エフェクトでも触れました。いいですよね、何度見てもいい。消え行く吐息(ダブラシ煙)はセクシーです。細かく髪とメガネを直しているのがまた(女の子らしい)仕草で良かった。



■「ワゴンR エネチャージ篇/スズキ(2012-14)」
 

これは一つ、CG部門として。渡辺謙さんが何か電気の超エネルギーみたいなもんを使ってますよね(笑)。これが当時見てて面白かった。放電エフェクトを作ったのが、「ガティット」というCG・アニメ制作会社。この会社は、アーティストのコンサート・ライブ映像であったり、コマーシャルのC.Iカットなんかも担当されています。



■「コニャラの歌/日清製粉グループ(2010-)」 


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近藤勝也さんによる作画。ジブリと矢野顕子タッグの有名なコマーシャル。やはり、アニメCMで馴染み深いものといったらこれだろうか。何と言っても最後に子猫が母猫寄って、毛並みがふわっとなるところが良い。「柔らかさ・安心・母性」といったものをこれだけの線で描写しているので凄いなあと。 




以上7選+αでした。

コマーシャルのようなショートフィルムには、物語性を持たせることが難しいです。その上、元々の商品の宣伝もしなければならないのですから、負担は単純に考えても2倍増です。それでもなお、これらのCMのように「作品」になり得ている映像が作られるのは、クリエイターの「手加減なし」を感じます。そこには、「コマーシャルだから、物語性の欠如を許そう」とかいう合理化もないんですよね。「あくまでCMであるけども、一つの作品を作ろう」としていることが、制限付きのショートフィルムにおける、瞬間的な魅力と拘束的な妙技だと思います。

これからは、アニメーションCM、CGが含まれるCMはより増加すると思います。個人的には、煙とかを中心に注目していきたいです。


<参考文献>
CM情報-サントリー天然水
コニャラ-日清製粉グループ
カナダのアニメーションデュオ、ウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービスのデザイン-17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード  
Wild Life by Amanda Forbis & Wendy Tilby, 
・CGWorld 180号特別付録
らっぱるさんのツイート  
マイナビ賃貸TOP / お部屋探しキャンペーン 

ちょっと他のカットも
(※ページが重い人は、タイトルクリックでこの記事のみ表示したらマシかも)

自転車で坂を登る
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同スロー
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ハンドルを握る手にギュッと力を感じますね
ペダルを踏み込む時に、右半身を後ろに引っ張るのも細かい
後は、ペダルを踏み終わって、一息つく頭の下がり方がすげえ





背伸びとジャンプ
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右見て、左見て、みんなが集まってて見えないのでジャンプ
男の子の方は若干気を使った感じの仕草
というかジャンプをしても見えないと思うので、少しは待ったらどうなのか
差し込む光の特効が綺麗で、ちょっとボカシを入れたりも



髪バタバタ
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なんとなく印象に残ったので
見る限りリピートではなくて、手が込んでるなあと
何気に制服のシワもいい感じ



新海誠作品最新。
ちょこちょこっといいカットがあったのでgifにしました。


試験場でのモブシーン
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同スロー
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ゆったりと変わる立体的なカメラワーク。CG背景かな
一人一人の動きが違ってて、細部までのこだわりを感じる。
「エヴァQ」のピアノシーンだったり、「かぐや姫」の宮中から出て行く時のシーンだったり、こういうわずかに動かしながらの立体的なカメラワークはすごく魅力的でいいっすね




ぶつかりイチャイチャ
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同スロー
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吐息がセクシー。
ぶつかった際の細かな仕草も上手い
メガネかけ直したり、髪直したり
わずかに上下動するカメラワークは、二人の身長差に合わせてんのかなあ


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