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2025-1

カテゴリ:CG・3DCG > グラフィニカ

「ガルパン劇場版」は興収21億円も超え大ヒットしました。良いことです。先日ようやっと見ましたが、作品の内容は王道を往くものであり、なるほどこれは好評を得るのも当然と思った次第です。

さて、突然ですが「ガルパン」といえば何でしょうか?そうです、戦車です。戦車といえば、砲撃。砲撃といえば、そうエフェクトです。今回は、煙を中心に「エフェクトに含まれる意味」といったものを詳しく説明していきたいと思う。なに、たかが煙に意味なんてない?いえいえ、煙って意外と重要なんです。

戦車道には、エフェクトの大切な全てのことがつまっている。スナフキンおばさんの言葉を借りて、そう言っても過言ではありません。二部構成でエフェクトを紹介していく。(大洗女子優勝記念)エキシビションと、対大学選抜メンバー戦の2つ。特に素晴らしかったエフェクトをご紹介。まずはエキシビションから([追記]2016/09/12修正済み)。



・砲撃2発の地面への着弾
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CG+作画エフェクト(1発目がCG、2発目は作画)。
1発目の着弾は、時間が経つにつれ、煙が上昇しつつ下のほうはスーッと消えていくのが自然で上手いです。2発目は、着弾の勢いそのままに煙が発生した後、丸まって漂うのが良いですね。破片の散らばり方もグッド。



・うさぎさんチーム被弾
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ノンナによる無慈悲な砲撃。この前のシーンでギャグをやってることもあり、痛快にスパーンとぶっ飛んでいく。2カット目にぶわっと入る衝撃波が、またいい味出してますね。



・スイーッと開く店の入り口 ☆
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あんこうチームの砲撃で店のドアが開く。店の内外で煙のレイヤーが分けられていることで、煙の多層感が上手く出ています。めっちゃ上手いです。その後、砲撃により、広がっていたあんこうチームの砲煙は消え去り、代わりにプラウダ校の砲煙が店内に充満します。煙をかき消すほどの砲撃ですから、ここで「プラウダ校が優位に立っているんだ」ということが分かります。



・連続着弾
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ここは全部作画かな。注目してもらいたいのは、画面右下の煙。画面左で3つの煙が発生した後に、この煙が起こることで隅々まで攻撃しているのが伝わる。すなわち、プラウダ校は容赦無い攻撃をしているんですね。まさしく集中砲火です。



・戦車同士の衝突による爆発
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作画+波ガラス(撮影)、小澤作画(※推測)
透過光を全面に押し出しながらの大爆発。時間が経つにつれ、爆発は冷やされていきます。このカットでは、透過光の小さくなっていくスピードが上手いですね。ぶわっと広がる衝撃波や、画面の四隅が一瞬暗くなるパラフィンも良い。

(※「波ガラス」は、簡単に言うと、陽炎のような表現をするためのフィルターで、「パラフィン」は、画面の一部に影を落とすためのフィルターです)



・落石と煙
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これ地味に良かった。落石と一緒に煙が落ちていくわけですが、細かいところまで描写していると画面の写実性は増します。そして、物語にも納得しやすくなる。ここは後退命令が出ているわけですが、落石と煙がその理由になっているんですね。建物もヤバイし、まあここは退く場面だ、というのをエフェクトでも表している。知波単学園はそんなのお構いなしなんですが。




・爆発、3連続
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橋本作画[追記]。ドンドン、バーンみたいな感じで。こういうの大好き。3つ目の爆発の広がりと透過光が小さくなっていくスピードが同じなのがいいですね。こういう感じのスピードだと、爆発の後に余韻が出ます。後、1、2つ目の煙がわずかに上昇しながら漂っている感じも細かくて、写実的です。



・海の中からこんにちわ ☆
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橋本作画かも?(※推測)
吉本雅一さんのようです(情報をいただきました。ありがとうございます)

水作画ですが、素晴らしかったので紹介。海から上がる時、まず履帯周辺にあった海水が流れ落ちていき、その後戦車の上に乗っていた水が流れていく。それぞれ流れ落ちていく感じも良いですが、特にいいのが戦車前方の流水。ヨッコイショと持ち上がった水が、前方の装甲部に張り付きながら流れていく。いやあ、めちゃウマです。誰だろう。



・カモさんチームの被弾
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阿部作画かも(※推測)。被弾した後、カメラを追い越して飛んで行く。1カット目の爆発もタイミングが良くていいんですが、2カット目がもう最高ですね。戦車が飛んで行く時に煙も付随して伸びていく。そうして、止まった後には、煙はその上空で漂いながら消えていく。言うことなし。素晴らしい。



・テールランプの尾引き
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光エフェクト。尾っぽが目に見えるとやっぱりカッコイイですね。廃校を気にしていないように振る舞う自動車部の哀愁が、儚く消えていくテールランプから伝わってくるようです。





ちなみに、「ガルパン」のCGはTVシリーズからグラフィニカが担当しています。3DCGI監督は、柳野啓一郎さん。昨季ですと『楽園追放』だとか、印象的なエフェクトを作る会社です[追記修正]。エフェクト作監(作画)は阿部宗孝さん。


さて、次は対大学選抜メンバー戦を見ていきましょうか。
大きな見所は、やはりカール自走臼砲の周辺です。

・集中砲撃されるうさぎさんチーム
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集中砲撃。前後左右、全てに着弾しており逃げる場所がない。大学選抜メンバーの強さは、この森のシーン周辺で示されます。サンダース大付属の各車両は何とか戦況を把握しながらも、応戦することができません。なおさら熟練度が低い、うさぎさんチームや知波単学園なんかはレベルが違うことを思い知らされるわけです。



・カール自走臼砲その1:アブノーマルな状況
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ライティング(光の明暗)に注目。カール自走臼砲の砲弾が着弾した後、逆光になり、煙の中に覆われてしまうので戦車は暗くなってます。また、履帯や砲身にハイライトが入ることで、爆心地の状況を写実的に描写。このように異質なほどリアルにすることで、他のシーンと差異を出し「アブノーマルな状況」を演出をしている。



・カール自走臼砲その2:煙の中をすり抜ける ☆
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このカットもスゴイ。ここはプラウダ校の戦車がPOV(主観視点)で後退しているんですが、カール自走臼砲の砲撃によって生じた煙の中を通る様子をCGの煙で描写しているんですね。作画ではやや困難、可能ではあるけれどCGの戦車とは多分合わない。POVを存分に活かした、この臨場感は素晴らしいです。いやあ、このカットはグラフィニカの真骨頂ですね。



・追撃をかける大学選抜チーム ☆
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ニュッと出る砲身が何とも言えず不気味。プラウダ校(カチューシャ)に対して、大学選抜メンバーが追撃をかけるシーンです。砲身だけが煙の中から現れ、次のカットで戦車全体が煙から出てきます。煙だらけで見えづらい視野の中、臆することなく追ってくる。



・カール自走臼砲その3:砲撃
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カール自走臼砲のすさまじい砲撃。この煙の多層感(特に2カット目)は、何個かCGの煙を重ねたりしてるのかな。透かした煙を3個ほど配置して衝撃波とすることで、カールの規格外さを表現。



・マフラーの排煙 ☆
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このマフラーの排煙は、物語の「転」です。カール自走臼砲というのは、平たく言えば、チートです。プラウダ校や黒森峰といった手練でも苦しい戦いを余儀なくされている。そういった重苦しい空気を振り払うために、小気味良く振動しながらのマフラーの排煙があるわけです。再始動みたいな感じ。



・カール自走臼砲その4:マンガな動きとリアルな煙
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爆発が良いのは言わずもがな。ここはタイミングに注目。最初のカールの砲弾は少し溜めてから、向こう側に飛んで着弾しています(※これを作画で「先ヅメ」と言ったりします)。それから煙が2つあると思います、どーんと後ろに広がる煙と、前に押し寄せてくる煙。後ろの煙はじんわりですが、前の煙は素早いので、タイミングに差があるんですね。このギャップによって臨場感が増します。

このカット、背景以外は全てCGです。スゴイ。



・カール自走臼砲その5:カール討ち取ったり
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トリプルアクション。作画エフェクト。
とてつもない破壊力を持つ、カール自走臼砲を倒すということは、この試合で大きな意味を持ちます。それを強調するために、3回映してるんですね。じんわりと発生して漂う大きな衝撃波は、カメさんチームの砲撃の破壊力、ひいてはこの試合におけるファインプレーを表現しています。




・超重戦車T-28の登場 ☆
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T-28の初登場シーン。ただ煙の中を砲身が通っているだけなのに、まるでオーラのごとく煙が砲身を包む。この1カットだけで、「この戦車は強い・ヤバイ」というのが伝わってくる。



・避けて、当たって、もう片足走行さ
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危険を察知したダージリンの警告で、すぐさま引き返すローズヒップ車両。T-28の砲撃を寸前のところで交わしたが、衝撃波を受け壁に叩きつけられる。地面を這うように起きる衝撃波の煙が上手い。砲弾に追随するような衝撃波の起き方で、マッハの描写みたい。



・T-28、再登場
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T-28は超重戦車で、スペックが高い戦車です。装甲も厚く、中々普通の攻撃では倒せない…というようなことを逐一言葉で説明していてはダサくなる。そこで、このように砲撃後に大きな煙の中から出て来させるんですね。「T-28はとんでもない戦車」というのを言葉ではなく、画で語っているわけです。



・観覧車の崩壊 ☆
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観覧車と土台を繋ぐ部分の破片が良いです。あと、観覧車のフレームが地面に落っこちた後、その反動でゴンドラのガラスが割れてキラキラと光っているのも細かくて素晴らしい。フレームが落ちた後、煙が発生してますが、これは観覧車のスケールを表すのに効果的ですね。滞留する煙も上手い。

CG破片はこのシーンに限らずよく出てきますが、作画のエフェクトと合わせても違和感がなくて驚きました。多分すごく試行錯誤してますよ、あの破片は。





・アリスとのラストバトルその1:アトラクション破壊
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爆煙と破壊。煙の中に入り込んでいく破片が良いです。アリス(大学選抜メンバー隊長)とのラストバトルでは、このように大きな爆発が散見されました。たった一手でも間違えれば、即座に白旗が上がってしまう。そんなレベルの高い攻防が繰り広げられていることが、エフェクトから伺えます。



・アリスとのラストバトルその2:アトラクションへの砲撃と揺れ
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CG+作画エフェクト。よく見ると、二度爆発してますね。アトラクションに着弾した後に一度爆発し、それを押して動かす時にもう一回爆発した、という感じでしょうか。



・アリスとのラストバトルその3:大スケールの爆発 ☆
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作画エフェクト+CG破片。
遮蔽物を挟んでの大爆発。大スケール。2色の影により、まるでティラミスのように多層的で立体的な煙になっている。各方向へ伸びていく煙も見事です。後は、アトラクションの一部がラストで手前に寄ってくることで臨場感がさらに出てますね。はらりと落ちていくCG破片も良い。





いかがでしたでしょうか。他にも良いエフェクトがあったんですが、これぐらいで…。エフェクトも意外と奥深いことが分かると思います。何より楽しいものです。エフェクトとは、いわば、ガルパン劇場版における遊園地のような存在です。どのようにでも楽しめる。また、ガルパンのように爆発や煙がたくさん出てくるアニメでは、エフェクトが持つ意味はさらに大きなものとなります。

ガルパン劇場版は大変楽しかったです。ガルパンを通じて、エフェクトの楽しさも伝われば、これ以上のことはありません。

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ヤマデロイド-日本アニメ(ーター)見本市 第10話

「ヤマデロイド」とは、「日本アニメ(ーター)見本市」における第10話の作品です。制作はグラフィニカ。堀内、江本さんの共同監督で制作されました。今はこの「ヤマデロイド」が大変に好きでして、多分一番繰り返し見ています。今回は、その「ヤマデロイド」のどこから魅力が発生しているのかについて推測を展開していきたいと思います。

おおよその魅力は、おそらくシーンの構成方法から発生していると思う。この作品では、仮想現実の世界、おそらくアーティストとしての”ヤマデロイド”が存在している世界と、人々が普通にアミューズメントとしてライブを楽しんでいる現実世界の2つの世界があります。


序盤は、ライブシーンから始まる。導入部分として、現実世界と仮想現実(劇中劇的な映像)を分けている。具体的には、画面のサイズで差異を出している。

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(現実世界におけるライブシーン)

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(仮想現実の世界の映像によるシーン)



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だんだんと黒帯がなくなっていくことで、ライブが始まったことを感じさせる。こういった2つの場面(現実と劇中劇)を往来する映像技法は、いわゆるクロスカッティング(並行モンタージュ)と言います。クロスカッティング自体は珍しくもなんともないですが、実に洗練されて使用されているのが分かる。僕が初見で今敏っぽく感じたのは、このクロスカッティングによる所もありますが(今敏作品では、この上マッチカットも多用するから、とんでもない)、やはりシーン繋がりのシームレスさ(滑らかさ)が一番でしょうか。


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序盤は、原曲を歌われてている坂本冬美さんの「アジアの海賊」PVのオマージュだと思う。堀内さんが同トレスで「『アジアの海賊』は印象的な曲だった」と語っていたように、曲もさることながら、映像もまた印象的です。


■「アジアの海賊」 坂本冬美

 
おそらく敬意を払ってのことだと思います。序盤はこの日本画以外にも、回転するシーンや桜吹雪など、色々なところでリスペクトが見られる。同トレスで氷川さんが触れていた、「GLITTER(グリッター)」もこの映像のイメージが強いと思う。




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そうして劇中劇は、各地を放浪する男と村娘の出会いへ。


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そうそう、この布のたわみ方が良かった。重力に従いながら、空気も含みつつ降りて行っていると分かるのがとてもグッジョブでした。上手いです、誰だろう。



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このシーンは、「ロボットの鉄の冷たさに、ヤマデロイドが自虐してる」とずっと思い込んでたんですけど、全然違いますね。機械であろうヤマデロイドが恋の感情を感じたということで、スターゲイトみたいなもん通って感情に到達してる。



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再びライブシーン(現実世界)へ。花びらが舞いながら、カメラは回転しヤマデロイドを映す。桜吹雪の加減とBGの引き方で回り込みを表現してます。後は手前のbookもですね。



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ここの桜吹雪が、パーティクルでは一番良かった。画面の情報量を上手くコントロールしていたと思う。多分、人間が「気持ちいい」と処理できる桜の分量な気がします。



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そんで劇中劇へ。村人が2人のデートを垣間見たり、動物が喜んだりと楽しいシーンです。こういった少しオカシナシーンがあるのは、徹底的にアミューズメントを貫く劇中劇を描写するためだと思います。


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そら仕事にも熱が入る。ちなみにここの作画の箕輪さんから、クワ振るのは体正面の方がいいですか、どうですか」と言われて、江本さんが「どっちでもいいから早くしてくれ」と言ったと、同トレスでもお話に上がっていましたね。


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再びライブシーン。日本画を基調とした、和風っぽい感じを存分に出している。どうでもいいですが、桜吹雪を静止画で見ると、タタキっぽく見えますね。



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このシーンは漫画っぽくて良かった。まず敵の描写(1枚目)。そして、ポン引きした画面(2枚目)では、刀に透過光入れてるのがいいですよね。これだけで、画面に緊張感が走る。そして、武器の描写(3枚目)とそれに怯える村娘(4枚目)と。全体的に、漫画のコマ割りっぽいんですよね。江本さんは、劇画が好きということで意識的にやったのかも。いやあ村娘のカットは画像下部の撮影も含めて、いいですね。上手い。


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ここ上手かったんだよなあ。泣きじゃくる子どもと、じっと見つめるヤマデロイド。子どものカットでは下部にパラフィンで黒く影を落として、地面への高低差による暗さの違いを表現してる。よく見ないと分からんですが、こんな細部まで、こだわっているのが映像への没入を誘います。



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ここの煙良かったです。確かSeo Kyung Rockさんが描かれたと、同トレスで言ってたような。上手い。煙の発生もいいんですが、その後に留まる煙のじんわり感がいいです。ちょっとした後ヅメが効果的なんでしょうかね、すごく目に残る。


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このシーンは音楽との同調がとても良く、同時に悲劇としてのカタルシスを上手く描写している。音楽は一旦終わりかけるわけですが、そこへの持って行き方が上手い。


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村娘はすでに死んでしまっているので、明かりに顔の色が変化するのはヤマデロイドのみ。こういう地味なトコも漏れずにやってる、良いですね。



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徹底的なアミューズメント化というのは、老若男女どんな人でも楽しめないと多分ダメなんですよ。茶の間が楽しめないとダメな劇中劇を、真摯に描こうとしてる。だから、決して血は出さないし、敵がやられる描写すら殆どない。1枚目の黒ひげは踏んづけて終わりだし、2枚目の女はホワイトアウト、3枚目の男は刀が突き刺さったような感じで倒れて終わり(ここは少し不明瞭にしてる)、4枚目の絶妙な刀の刺し方!初見でも勘の良い人は分かりますよね、「あっこれ芝居なんだ」と。しかも、それが明確に分かるようにやってる。



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変身シーン。ここは凄まじかった。劇画調からCGへの転換なんですが、激情の感じが上手く描写されていたと思う。キャラの顔はもう作画大変だったろうと思います。こんなに一杯線があると。


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はいはいグラフィニカグラフィニカ。と冗談は置いといて、板野サーカス・アクション&タメてCG爆発。良かった。望遠でビームがガチャガチャやりあってるのもいいんですけど、2枚目みたいに接近すると臨場感が増すんですよね。この接近描写がちゃんと描けると、グッとサーカスって良くなるんですよね。


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ここが最高でした。劇中劇であった仮想世界での映像とライブシーンがここで初めてリンクするわけなんですよ。しかもほぼ完璧に。ここに対して違和感なんて全くないんですよ、だからシームレス(滑らかさ)が光ってるんだと感じた。左右のPANもいい味出してるんですよね、「これからリンクするぞ」っていうふうに、現象の予兆になってる。


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後は、この手ワイプが良かった。憶測ですけど、これって場面はライブステージなわけじゃないですか。だから現実にいる俳優さんが、ヤマデロイドという仮想映像をテクスチャみたく貼り付けて、それから元の姿に戻っているシーンだと思うんですよ。後述しますが、この近未来的にありえそうと思わせるのが上手かったです。


まあとにもかくにも、「ヤマデロイド」が大好きです。(アニメ、漫画)オタクくさくないのがとても良い。現実世界でも、初音ミク(ボーカロイドの代表例)のライブにおいても往々にして、こういう(映像をホログラムとかで立体的に映し出す)のは存在しているんですが、そういった形態のライブの未来といいますか、「ああ5年後にはありえるのかもなあ」といった要素を感じられるのがとても良かったです。

[図版はhttp://animatorexpo.com/yamadeloid/ から引用] 

「楽園追放」とはグラフィニカによって制作された、SF作品です(劇場公開)。キャラから爆発まで、ほぼすべてCG。いやあグラフィニカの絵作りって凄いですね。公開されてから、ずっと色んなところで絶賛の嵐だったので、そんなにすごいのかという感じで猜疑的だったんですが、百聞は一見に如かずという感じで。実際に見てみると、確かにこれは一定の評価はされるなあと。

そんで、本題は、劇中に出てくる「エフェクト」です。ええ、ここからはアンジェラちゃんがどうのこうのとかそういう話は一切しません。お尻にも触れません。徹頭徹尾、「エフェクト」のお話しかしません。煙、爆煙、砂埃、爆発。CG、作画を問わずにまとめて紹介したいと思う。

(「楽園追放」において、演出を務められた京田さんから色々と指摘をいただいたので、一部訂正しました。雑でごめんなさいね。そーす→。京田さん、ありがとうございます。)


さて大きな見どころとしては、やはり終盤。フロンティアセッターによって解放されたアンジェラがド派手に暴れまくるところから、ラストの打ち上げまで。カットごとに、少しずつ見て行きましょう。


・最新アーハンとサポートシステムを奪取するところ
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姿勢制御スラスターを使い、回頭しているシーン。ここのスラスターが細かく描くことにより、この映像が実際に存在するかのように感じられる。つまりリアルさがある。



・保安局防空隊(赤メカ)の攻撃を交わしているシーン
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ここはフルCG。戦闘機や板野サーカスの動きというのは、実に数学的でCGでもやりやすいと思うんだけど、ここでは爆発も素晴らしい。コマ送りしないとCGと分からないし、実際はもっと映像のスピードは速く、それに合った爆発とその煙の残し方(画面からフェードしていく感じ)が良い。



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雪の結晶のように展開される爆発がグラフィニカではメインのような気がします。これって「宇宙戦艦ヤマト」であったり、結構古めな爆発なフォルムの気もする。CGにどういうのが適当なのかがイマイチ分からないけど、結構ハマってますよね、コレ見ると。



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ここではCGと作画の両方で、爆発シークエンスを楽しむことができる。画面奥では、CGによる爆発があり、手前では中鶴さんの作画(※訂正)による手書き爆発が見て取れる。CGは基本的に画の粒子(ピクセルみたいな)が細かいことが、CG爆発に違和感が発生する原因だと思うんだけど、今回は意図的に粒子数を減らしているような気がする。



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橋本作画。ワンカット目のクロス光の多用も印象的で、爆発自体のディテールも細かい。これはそこそこ時間かけたと思う。2カット目も透過光の広がりと消滅、そして触手煙を中心とした消え行く煙(画面左から中央)が上手い。まるで、演技を終えた役者が舞台から自然と去っていく感じ。



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電撃エフェクト。刺々しい電撃の合間にタタキのような小さいパーティクルも存在していることが分かりますね。実際の電撃というものをあまり見たことがないからアレですけど、このタタキはディテールアップのためだと思う。ただリアルを写しとってアニメに落としこむだけではなくて、こういった変換的な追加も必要なんだと思います。




・サーカスからの爆煙
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全面CG煙。ここがCGの煙では一番良かったように思う。粒子数を減らしセルに色合いを近づけながら、タイミングもしっかりとこだわっているのがわかる。カット終盤の覆いかぶさってくるような、ダブラシ煙がいい味出してるんですよねえ。




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ここは誰か分かんないけど、上手かった。吉岡さんによる作画(※訂正)。ジャミングスモークがその場に留まっている状態から、ミサイルがそれを突き破るという状況なんだけど、煙が破られるタイミングが特に良かった。多くの場合は早いタイミング(ミサイルがまだ来ていない状態)で空いてしまうんだけど、ここではミサイルが通った後に、そのミサイルの動きに合わせるかのようなタイミングで煙を突き破っている。戦闘機における、マッハの描写みたいな感じ。ちゃんと考えてアニメートしていることが分かる。



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ここは、レイアウトとタイミングの勝利。奥行きのある画面を用意し、そして奥から連続爆発。しかも爆発が手前側になるにつれ、徐々に速くなってきているのがわかる。これによって、ことさら爆発の臨場感は増すし、同時にリアルさも増す。また連続爆発なんだけど、爆発と爆発の間のテンポは一定ではなく、ゆらぎがあるのがまたいい。多分タイミングは相当凝ったはず。これは考えてやってる。それもとんでもなく。



・市街地における爆発集
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グラフィニカらしいフォトリアルな爆発。ズドドンと植物が生えるように展開されるフォルムは美しい。そして、画面手前(左)の爆発と画面奥(右)の爆発とでタイミングが異なっているのがとてもいいなあと感じた。せっかくレイヤーを分けているのに、タイミングは何故か全て同じということがCG爆発では多いので、こういったCG爆発に(セル時代の)知恵や感性を持ち込んでいるのが良かった。



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PANしながらの連続爆発3つ。これもまた透過光も上手いし、触手煙も上手い。瞬間的な広がり方から、じんわりとしたその場での留まる煙の感じ、そうして動くべきところ(触手煙)は動かしてる、これが良いです。



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透過光は前述した通り、発生と消滅も素晴らしいんだけど、ここでは触手煙の飛び方がいい。触手煙のタイミング、そのまま残っている煙との対比でぴょーんと飛んで行く感じがすごい良いですね。



・倒壊シーンと高架橋の崩壊
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おそらく橋本作画。CGではないと思う多分。ここまでくると、レイヤーの氾濫ですよね。何層にも重なって、臨場感と立体感を出そうとしてる。いいなあ。破片もまた別セルでしょうけど、細かく描かれていて、ディテールアップに貢献してる。

【追記 2015/02/14】
Twitterで情報を頂きました(ありがとうございます)。
ビイ @wuokb  20時間前
@iqyu2627 監督の生コメンタリーで作画素材をCGアニメーターが組み合わせてコンポジットしてると言ってましたね
やや違和感(CGっぽいけど手書きにも見える)があったのは、これが理由かもしれないですね。



・ロケット打ち上げシーン
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ラスト打ち上げ。小澤さんによる作画(※訂正)。もこもこした煙と、そのしっかりとした動かし方は見事。2カット目で少し留まる大気・煙がここでは一番良くて、写実性を高めている。これにはフロンティアセッターも唖然とするしかない。



少し雑かもですが、「楽園追放」のエフェクト、CG・手書き問わずに紹介しました。CGによる爆発作画も進化を遂げていて、まさしくグラフィニカすげえなって感じです。今までのアニメ作品では必ずと言っていいほど、見所となるシーンには手書きでの爆発作画だったんですが、「楽園追放」では違っています。見せ場にCGを持ってくることも多々あるし、普通のシーンに作画を使う場合もある。それぞれの長所を活かして採用している印象を受けました。とにもかくにも、エフェクト好きとしては大変楽しめました。いやあ、CG爆発もいいもんですね。

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