GOMIstation

2025-1

カテゴリ: テンポ

リコリス・リコイル、話題ですね
話題には乗っていけ精神で見ましたが、すごかった…( ^ω^)

これを超える1話はマアそうそう出ないでしょう
それぐらいのレベルじゃねえかなあ、とおもう




*タキナがDA(組織)から追放処分されるまで
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追放処分とその理由を3カットで終わらせ、



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DA組織トップの処分理由のグダグダした話はそのまま続きながら、
タキナはDAの寮から新しい配属先へ移動する

この流れるようなカット割り!


極めつけは7カット目で、タキナへのそれぞれのDA隊員?の思いを1カットで描写
うんまい!( ^ω^)



──さて、改めて振り返って欲しいのですが、1話ではとんでもない数の端役が出てきます
・DAのトップ
・DAの同僚
・刑事
・センセイ(ミカ)、ミズキ
・アラン機関のボスっぽい人
・ウォールナット
・依頼者の女の人
・拉致する下っ端

…とこれだけの人物が登場するのですが、ぼくらはほとんど混乱しません。

なぜなのか?
それは、「画面内の人数」をコントロールしているからです。


例1
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初対面のタキナとセンセイ、ミズキのシーン


例2
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刑事をタキナに紹介するチサト

はい、察しの良い方はもう分かりますね( ^ω^)
そうなんですよ。どれも初登場時は「3人以下」に整理されている。
画面内のキャラクターは極力3~4人以下にしている、リコリス・リコイル1話



例3、4
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ヤクザへの訪問 / 依頼者との話し合い


この画面内の(情報量)コントロールにより、登場人物多くても、物語が追える
つまり、テンポよく(物語が追えないことがなく)楽しめる、ということです。




*チサトのいつもの風景に付き合うタキナ
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タキナ(幼稚園→日本語教室) / マッチカット
(※マッチカットとは、似たようなモノから似たようなモノを使って、画面をシームレスに切り替える技法のことです。満月→月見バーガー、みたいな)

ここではタキナの顔から、タキナの顔へジャンプ。しかし、シーン・状況はめっちゃ変化してる。そう、場所じたいが変わってる。この状況の変化からは、とつぜんな・唐突な印象を受けますよね。それがマッチカットという技法の面白いところ。




マッチカットといえば、映像のテンポを支える重要な技法の一つ
テンポといえば…このシークエンスも良い( ^ω^)


*タキナの勘違いを制止するチサト ★
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ここのカット割り・作画は上手かったですねえ


タキナ、怪しい匂いをヤクザから感じる

カバンから拳銃を取り出そうとする

左手で軽く制止するチサト

なぜ止めるんだと言わんばかりのタキナの顔(付けPAN)

このシーンでは、チサトが左手だけでタキナを制止しているので、チサトの底知れない強さが示されます。いいシークエンス。


同スロー
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左手はパーで、サッと押しただけ、というのもチサトの自然な強さが出ていて良い。
目線はヤクザの組長と合ったまま。つよそう(小並感)




◆テンポで分かる、チサトとタキナの強さの違い


*タキナの装填(リロード)シーン
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いっさいの無駄なく、マガジンをカバンから取り出しリロード
小気味よく4カットに分けて、正確さと早急さが強く映る

いっけん誰よりも強そうですが、


*アバンのDA
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そう!これはDAにとっては当たり前のこと
手際がとても良く、スムーズに制圧する
いっさいの無駄のなさが、逆にすごく不気味さを煽る

これを序盤から繰り返し映していた




それでは一方、チサトはというと、

*チサトの装填(リロード)シーン
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DAに比べると圧倒的に、ゆっくり・ゆったりと
(細切れなカットにはならない、これは完全にDAやタキナと差別化してる)

この戦闘シークエンス全体を見ると、タキナにとっては軽いお散歩のような感じ
チサトはDAとはまったく違う」、そういう風に映る


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佐藤もそう言っとる( ^ω^)
(ファブル7巻123頁)





*身体を動けなくしてからのワイヤー弾 ★★
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付けPAN(チサト)→(ワイヤー?)
チサトが近寄りながら非殺傷弾でザコの動きを「ゆっくりと」止めた後、ワイヤーガンで拘束をする


なんてことはないようなカットだけど、
これはふつうカット分けて2つのカットでやるんじゃないのかな~と
途中から、カメラがチサトのPOVに変化してるんですよ


うむ?なに?ムズカシそう?
ここからじっくりと解説するから安心シタマエ( ^ω^)



よく分かるカイセツ!
<カメラワーク>
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(※手前の青いのはカメラです)
最初はチサトが非殺傷弾でザコの動きを止めるところ、
つまり、2人を客観カメラで映していますが、



チサトが画面外に行くと、
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こういう風になりますよね。
だからこれって、途中からチサトはザコと対面する立ち位置に回った。で、そこから、ワイヤーガンを打ったと考えるのが自然。前後のカットを見てもそう。

すごいのは、途中から、カメラがチサト(もしくはチサトの銃)の主観視点(POV)になっているところ。1つのカット内で、カメラの視点が変わるのは珍しい気がする。あんまり見ないなあって、こういうカット。ふつうは2つのカットに分ける気がする。



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んで、こんなめんどくさいカットにした理由を考えたい

こんなの必須ではないですから。

このシークエンス全体を通して、チサトはDAとはいっさい違うアクションを見せます。それを踏まえて考えると、ガンアクション特有の爽快感は持たせつつ、チサトの「ゆっくり・ゆったりとした感じ」をキープするために、こういうカメラワークにしたのかな、と。そう感じる。

今回の主人公
ゴルシOP

まて競馬だからといって逃げるな、とりあえず下の映像だけでも見ていけ。


競馬ワープ

(※最後方の14番、白い馬に注目)

こんなん最下位やがな…と思うような最後方から、内田騎手の見事なイン付きによって、全馬ごぼう抜きで勝利を収める。名馬ゴールドシップの皐月賞です。競馬実況も「あっその内からゴールドシップ上がってきた!」と、予期せぬ展開によってリアクションが遅れている。競馬ではこういう映像がときどきあります。

競馬に詳しくない人はこの「ワープ」がよく分からないと思うので少し説明する。なんでこんなことが起きるのか?というのは、つまりは「カメラが追えていない・拾えてない」というだけですから。



<ゴールドシップとレースの状況>

・2000mのレース
・ゴールドシップはレース序盤から最後方で最終コーナーを迎える
・先頭とは30~35馬身差(約120m!
・人気どころの馬(ワールドエースらは外にいた)ので、内側に目線がいかなかった

全体図
ゴルシ皐月加工
(※水色が人気馬、赤色がゴルシ)




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※ちなみにウマ娘OPのゴルシはこの皐月賞がモデルレース


<使われているカメラ>
・馬群を映すロングショット用(ロングショット・カメラ)
・コーナーを映す固定カメラ(固定PANカメラ)の2つ

★18頭もいるので、レース終盤は人気の馬に絞ってカメラは追う

・基本的にロングショット・カメラで撮っている
・最後のコーナーでいったん固定PANカメラに切り替わってから、ゴール前の直線でまたロングショット・カメラに戻る。

要するに、2つのカメラ切り替え・カメラスイッチの間に、映せない場面が発生してしまう。映せない場面で起きたことが分からないまま、次のシーンへと移動して、そこでやっと起きたことが変わる。これがワープの原因です。

(※最近では、2018年の「チャンピオンズカップ」のウェスタールンドの例あり、これもすごかった)





で、この競馬ワープと似た現象は漫画やアニメでも時々起きるんですよ
このワープによって、テンポがいきなり変わる


五頭分の花嫁(5巻144-148頁)
※五月(右下アホ毛)に注目
ワープ-五頭分の花嫁01

ここはフータローの作ったテスト問題をみんなに渡していたら、ニノだけキレているシーンです。構造はゴルシ皐月賞とまったく同じです。ニノのひどい口ぶりや行動に、三玖は苛立ちを募らせていく。そして、ついにと思ったら、実は五月だった。そこに読者はインパクトを覚えるわけです。



ロングショット=全体カメラ
PANカメラ=寄りカメラと置き換えたら、わかりやすい。さっきのレースと構造は同じです。

さっきと同じく色で囲ってみると一目瞭然


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この2つのカメラの切り替えの間には、どうしても物理的なスキが生まれてしまう。カメラが捉えきれない部分ができてしまう。その部分から、キャラクターが現れることによって、唐突さを感じる。すると、虚をつかれて理解が遅れる。ここだと、三玖が叩いたかと思ったら、という感じですよね。最終コマの五月のインパクトで決めゴマになっている。テンポ記事では何度も書きましたが、やはり「ものごとの理解が遅れる」ことは、テンポに大きく影響します。

今回の新しい発見は、カメラの切り替えの際に生じる、物理的なスキを利用したテンポ演出技術です・・・と、ここまで書いてみたはいいものの、これアニメ、ドラマ、漫画問わずにめっちゃ見ますね!もう演出技巧として確立されているんでしょう。なんかあれな感じになってしまった。

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