映画大好きポンポさん
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大手映画会社の代表・ポンポさんは「死んだ目をした(=社会不適合)」ところに才を見出した、新人・ジーンくんに大きな映画作品の監督を任せる。主演女優も新人。脇を固めるはベテラン俳優陣だが、果たしてこの映画はどうなるのか。完成するのか。ポンポさんを満足させることはできるのか。
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そういった物語でした。えーと、もともとの原作はPixivで漫画として発表されており好評を博し、映画化へという流れなのかな。

比較的、好評ですが、この映画のストーリー・構成上の問題点が1点だけです、その1点ですべてこの映画は台無しになっている。こんな映画を持ち上げないで欲しい。それなりに名が売れているアニメ評論家すら、この点には触れないで持ち上げる。それでいいのかジャパニーズアニメーション。




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ジーンくん率いる、撮影部隊はすべてのカットを撮影し終わり、クランクアップ。残るはジーンくんがする編集作業だけ(※編集作業のシーンは映像としては、とても小気味よかった後で)。何十時間もある映像から、90分尺に収まるように編集をしていく。どんどんカットしていく。



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行き詰まったときもあったけれど、編集作業も終わりにつれ、ジーンくんはある思いを感じ始めます。なにか足りない。そして、「この映画には必要なカットがあり、それがないと完成しない」、と言い出すのです。つまり、新規カットを撮ることを要求します。クランクアップした後はその作品のチームはいったん解散します。それぞれ別の仕事に戻る。だから、もういちどチームを集めるとなると、お金がかかってしまう。カメラマンから照明、メイク、俳優。だから、追加の予算要求など、スポンサーが降りかねない。



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ポンポさんはジーンくんに問います。「それは本当に、絶対に、もういちどチームを集めてまで、必要なカットなのか?」と。ジーンくんは長考した後、これは必ず必要なカットです。と答える。じゃあ、スポンサーが降りようが何とかしよう。それでまとまりました。

案の定、スポンサーからこの映画から”降りる”と通知を送られてしまう、ポンポさんの映画制作会社。このままではヤバイとなって、ポンポさんは融資先を探します。しかし、大手銀行はとうぜん、新人監督が務める大作はリスクが大きすぎるとリスクヘッジを取り、融資を断ります。


作品内の時間は少し巻き戻ります。最初の撮影現場に戻ります。

ジーンくんは、アランという高校生時代の”クラスメート”に再会します。アランくんはイケイケですね、慶應とか出てそう。陽キャ。クラスメートという表現をするのは、ジーンくんとアランの間に友情関係などいっさいなく、廊下ですれ違う程度の関係だっただからです。それで、映画の撮影(※クランクアップ前、最初の撮影)をしているときに、偶然に出会う。お、ジーンじゃねえか?よう、最近どうよ?と。

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撮影をいったんぬけて、2人はカフェで話します。いやー銀行も大変でさあ、この前もミスしちまってさあみたいな感じ。それに比べて、ジーンおまえすげえな、映画監督なんて。おれお前が輝いて見えるよ、みたいなことを話す。そんなことないよとジーン。2人の時間はそんなに濃密ではない。だって、知人ですらないんだから。


さて、融資を大手銀行会社が蹴った後のお話に戻ります。

上層部がポンポさんの映画会社への融資を断った話をアランは聞き、アランくん自ら「融資を通す」と言い出すのです。関係がクソ悪かった上司とも、友情タッグトレーニングをして、最高のプレゼンでなんやかんや融資は大成功!映画も超成功!ジーンくんはアカデミー賞監督賞!ちゃんちゃん。



あのねえ、こんなけったいな解決あります?

これがたとえばね、アランくんとジーンくんの間で、昔は仲が良かったけれど、疎遠になってました。友人が困っているなら助けるか。という筋書きなら分かる。もう一度言いますよ、ジーンくんとアランくんは、「廊下ですれ違うていどの関係性」しかなく、スクールカーストもまったく異なっていた。そして、再会して彼らがカフェで話したのはたったの5、6分ていど。

なんでアランくん、ジーンのために「融資を通して助けてあげよう!」っていう話になるんですか。かれがやる理由なんでどこにもないですよ。ジーンを陰キャ扱いして、大人になったら、あいつの方が輝いている。それだけでやるのか。納得できない。



いや、分かった

じゃあ、50000歩ゆずって、そのモチベーションを認めます。ジーンくんが融資を通そうとしたことは認める。それでも作品としては、ぜっっっいにダメ。思い出してください。この追加予算は、ジーンくん、かれが「ぜったいに必要なカットなんです!」と言い出して、たった1カットのためだけに2回目の撮影を懇願したんですよ。



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なんでかれがケツを拭かないんですか。大手銀行会社に頭を下げにいかないんですか。自分でパイロットフィルムなり映画のいちぶで説明してポンポさんといっしょでもいい、かれが頭を下げて、お金を取りにいかないといけない。かれが別の銀行をだましても良い。借金をしてもいい。要するに、どんな方法でもいいけれど、これはジーンくんが背負うべき事柄なんです。

だってこれは、かれが言い出したことなんだから。かれの大きな味方であるポンポさんが解決するならまだしも、ぽっとでのうぃーすみたいな金髪陽キャが、あいつ輝いてンな…つって、盛り上がるのはまったく映画として最低。それで解決しちゃのも最低。ちっちゃなシネマで見ましたけど、このへんで出ようかと思ったぐらいですよ。


「ドラえもんのポケット理論」なんですよ。これは。

なにご存知ない?


ドラえもんのポケットを使えば、たいていのことは解決できますよね。だからこそ、藤子・F・不二雄は劇場版において、いかにドラえもんのポケットを使えなくするか?に重きを置いたわけです。緊急時にすべてが解決できるポケットがなくなり、お互いに助け合わないといけない。そのような状況でこそ、人としての本来が出る。ジャイアンやスネ夫、しずかちゃんのそれぞれの特性を活かして、もちろんのび太くんも含めて、最後には勇気をもって戦う。だから、面白いんじゃないですか、ドラえもんの昔の劇場版は。

いわば、アランくんはポケットなんですよ。なんでも解決できてしまう。融資が断られた。だけど、他に頼れる人もいない。はい、フエール銀行(テレレレッテッテッテー)1*~。ポケットで解決できたら、べつにさいしょから苦労する必要なんてないでしょう。クソみたいな労力がかかった編集作業も、べつにだれかにやってもらっても成立してしまう、そういう理屈を許してしまう。だから、ぜったいにダメなんです。

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映像面は良かっただけに残念としか言いようがない。編集作業のあたりは画面分割とリピートで、編集作業の大変さ(と同時に面白さ、編集作業によるクオリティアップのすごさ)をヴィジュアル的に描写しきってましたので。他にも、映像面は言うことがありません。竹内哲也も良かった。撮影も良かった。反射光の色トレスも良かった。でも、物語としては最低。

映像だけはいいので、映像は見たほうがいいですね。

1*…1時間で1割利子がついてくるチート銀行(ドラえもんのひみつ道具の一つ)