GOMISTATION.OLD01

I LOVE U,I KILL U

2017年11月

「王立宇宙軍」には、シロツグの同僚たちがロケットの打ち上げ失敗ビデオ見ているシーンがあります。このシーンの爆発はとても見事なんですが、ある疑問があったので考えてみる。全部で3カット。



■「王立宇宙軍(劇場/1987)」/劇中ビデオ3カット

打ち上げ失敗その1:庵野作画(※推測)
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モノクロなので少し見にくいですね。じんわりと横に広がる煙、カゲ2色。当時の庵野作画とフォルムもタイミングも似ているし、まあこれは庵野秀明によるもの(作監修正の可能性も含む)と考えてよい。これは別に問題ない。作監の庵野がやっただろう。


打ち上げ失敗その2:増尾作画?(※推測)
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さっきのヤツとは、タイミングも煙の形もカゲも違っている。手前に進んでくる煙がめっちゃ良いんですが、増尾作画のように思います。助監督の増尾なら、これも問題ない。問題は次のカット。



★打ち上げ失敗その3:?作画
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これめちゃ上手いっすよね。劇中ビデオに使われているのがもったいないくらいに、爆発のタイミングといい、カゲの付け方といいキレイ。んで、疑問に思ったことなんだけど、なんでこんなキレイな爆発をここにもってきたのか。そういった点が引っかかったんですよ。こんなに上手い爆発を書ける人なら、ラストの戦闘シーンでもたくさん書いてもらった方が良いに決まっている。

でも、このようなフォルム・タイミングの爆発はラストのシーンでは見られないんです。当時、若手スタッフ主導で進めていた王立なら尚更書いてもらった方が助かるはずなのに。とすると、それができなかった理由があるのではないか。

その一つとして、これを書いたのは、作画から見て本谷利明さんではないかと思うんですよ僕は。


コントラスト調整版:本谷利明作画(※推測)
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そう、あの本谷利明です。この時期の彼の参加作品は、「AKIRA(1988)」「ヘル・ターゲット(1987)」という感じ。当時の本谷作画が緻密で写実的だったのは、言うまでもなく。カゲ2色で、ゆっくりとしたタイミングでタコ足煙が伸びていく。上の爆発と比較してみましょう。


ヘル・ターゲット(OVA/1987):本谷作画
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なんとなくわかりますかね。爆発のフォルムが大小入り乱れており、メインは大きな楕円となっている。煙と煙の間の濃いカゲの入れ方や、タコ足煙や滞留の感じが似ている。

王立ビデオパート検証

水色の円はトゲトゲの炎のディテールで、赤色は濃いカゲの部分ですね。トゲトゲディテールは意外と見過ごしていました、もしかしたら、この時期の本谷爆発の特徴かもしれない。

それで、この爆発が本谷さんだと思ったのは、もう1点あって。成人漫画家の森野うさぎさんによる本谷利明インタビューのこの部分を読んでもらいたい。

★お手数ですがいままでやられた作品を教えて下さい。
(中略)
森「アニメのほうは?」
本「これは多いから、じゃ、映画だけね。
「オネアミスの翼」原画。ちょっとだけしかやってない。プロデューサーとけんかしてすぐに辞めた。
パイロットフィルムの時の方が、カット数が多いくらいだ。ガイナックスと相性が悪いな、俺。
Gが頭文字の会社とはけんかばっかりしてるな。ガイナックスとかゲームアーツとか。」
http://www4.plala.or.jp/croh/gvdb/morino99dec26.html から引用
こういうソースを信用しすぎるのもあれなんですが、「鋼の鬼」「AKIRA」であれだけクオリティの高い煙や爆発を書いている本谷さんを、当時のアニメ演出家が使おうとしないわけないんですよ。これは間違いない。例外なく、ガイナックスも参加を打診したけれど、まあ途中でトラブルった。

――ここからはかなりの推測になりますが、ガイナが本谷へ参加を打診した。んで、王立で原画を何カットか書いている途中で、プロデューサーと揉めて辞退。本当はもっとガッツリやってもらう予定だった。こういう流れだったと推測。だとすると、この本谷原画ってガイナックスにとっては、「扱いにくいモノ」ではないですかね。本人は辞めちゃった、けど、すげえ上手い爆発の原画が残っている。辞退したからといって、これを処分するのはあまりにもったいない。活かしたい。そういうわけで、あの劇中ビデオシーンに使われたのではないかと思うのです。


まあ、とにかもくにも、こういったわけで、その3については本谷作画だと思います。王立宇宙軍の本谷パートがずっと気になっていたので、今回少し記事にしました。

「進撃の巨人」は、2010年代どころか、21世紀を代表する漫画になるだろうなと半ば確信している。




同系統、未知なる力・強大な力へと挑む「亜人」「モンキーピーク」「自殺島」なども十分に面白い作品である。しかし、これらは、ある種、キャラクターの行動が完璧すぎる。きちんとキャラクターがそつなく動き、そつなく失敗する。別にこれらの作品を貶める意図はないが、どこかしら、完璧さが際立つ。そこが、進撃との最も大きな違いである。

進撃の巨人は、どこか不安定さを含んでいる。エレンを想いすぎ、間接的にリヴァイを傷つけてしまうミカサ。アルミンを助けたいがばかりに、上官に刃を向けるエレン。不完全で不安定な感情や雰囲気を背負った、この作品は、そのおかげで、リアルなものとなっている。

感情によって揺り動かされ、時には成功し時には痛手を得る。こういったものは説得力を増す。ついぞ、エルヴィンは、自分の仮説を検証したがっていた。地下室への渇望があった。一度こそ揺らいだものの、リヴァイの説得により、戦場で死ぬ。

このような葛藤こそが、リアリティあふれる描写であり胸踊る要因ではないか。また、これが正しいと思われる選択がないのがいい。寄生獣も、正しい選択などない中で、選択を迫られ決断をする。失敗したり、後悔したり、嬉々と喜んだり、成功したり、人生そのものの本質が選択であると突きつけられているようだ。

不安定さ、未熟さ、不完全さ、こういったものを含んだ等身大のキャラクターの動きは、身近なものだ。身近なものはリアルさを醸し出し、そのリアルさが説得力を生み、説得力が没入のきっかけとなる。ああ、よく考えてみれば、エヴァなんて、その典型ではないだろうか。1ページで心踊る作品など、今しばらく見ていなかった。

「ナディア」~「帝都物語」あたりの、1990年代前後は増尾作画の過渡期です。この時期は、過渡期ということもあり、さまざまな工夫が見て取れて面白いんですよ。パートは全て推測。



■帝都物語(OVA/1991)01.03.04話


01話:崩れ行く建物1
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01話:崩れ行く建物2★★
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この時期の代表作は、「ナディア」「クラッシャージョウ」など。で、この頃の増尾作画の特徴といえば、『デコボコ平面フォルム』と、『クワガタ・ムーンライン』の2つです。なに分からないと。21世紀の義務教育ですよ、ご説明しましょう。



★増尾作画フォルム・ディテール比較図
増尾1990前後比較

特徴を要素別に分けると、
・輪郭と煙内部の色は異なっている(※輪郭と内部で色分けされている)
・煙内部のディテールに「クワガタ」のような模様がある
・煙内部の中心にカゲは、ほとんど付かない

この3点が、この時期の増尾作画(増尾煙)の特徴です。


さて、これらを踏まえて以下のgifを見てもらいましょう。今までより、ずっと深く、増尾作画を理解できると思います。


03話:家ぐしゃあ
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輪郭と内部は線で分けられており、煙内部にはカゲが付いていない。これでは平面的になってしまうはずなのに、立体感がある。なぜか。それは、これら平面的な煙を何層にも重ねているからです。オーガス以降、増尾作画の根幹をなしている部分です。



もう一つの主な特徴として、「爆発を2段階に分ける」というのがあります。

03話:大仏ドカン
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最初は遠方で爆発させておきながら、あるていど時間が経つと急に目の前で爆発する。カットの終わりで、5枚ほどでドカドカと爆発するんですが、これも大きな特徴です。「ガンスミスキャッツ」「トップをねらえ!」などでも散見される。



03話:龍内部での爆発(※推測)
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ディテール少なく、丸いフォルムのハイライトが入っている部分が重要。ぶっちゃけこれは微妙ですが、急速に伸びていくタイミングが増尾作画っぽい。


03話:ドッカン半球ドーム爆発 ★
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増尾作画では、半球ドームがときどき(「彼氏彼女の事情」「旧劇」「RE:キューティーハニー」など)見られます。ディテールが少ない半球ドーム爆発は、タイミングが大きなポイントとなる。膨らんでから目の前に迫るまで、そのタイミングのセンスが光る。



04話:墓ビーム
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04話は本当にさっぱり分からんかった。まあ、可能性があるとしたら、この辺でしょう。ナディアで見せたビームの膨らみ方/しぼみ方と似ている。あとはスミアのような、増尾(中野)フラッシュも判断材料ですが。ここでなかったら、瓦が浮きあがっていくところかもな~


「帝都物語」は豪華原画による作品ですので、やはり見極めるのが難しかった。特に、庵野合田松尾増尾が参加している話数は嬉しい一方で、判定のときには困ってしまうような。まあ、パート判定なんて正解することが目的ではありません。パート判定を通じて、その人の作画のどこに一体魅力があるのか、それを知ることが目的です。パートの正否はあまり重要ではないのです、間違っていたら直せばよいだけですから。「帝都物語」で増尾作画の別側面を知ることができた、それが作画のもつ楽しさの一つであります。

「ドラパン」「学校七不思議」あたりについて、述べておきたいとおもう。子どもの頃は、ドラ映画ばっかり見てたんですよ。これまた作画が良いんですよ。




■ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?(劇場/1996)


ドカンドカン ★★:佐々木政勝(※推測)
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反動を利用して脱出するドラ・ザ・キッド。空気砲の煙がいったん広がってから細く伸びることで、奥行を出す。ラストの方の煙のタイミングなんかと比較してもらえれば、いろいろ分かると思います。



自由の女神ドカン:佐々木政勝作画(※推測)★
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これなんかも面白い。急速に広がった煙なので、外側の煙が内部へと戻っている点に注目して見てもらいたい。あとは、まあ佐々木政勝作画に共通しているんですが、ワシ爪のようなカゲを多用します。これが彼の作画の最大の特徴。



手作りどら焼き ★★
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関係ないんですが、特に印象に残っていたので。膨らんだ後やや平べったくなり、その上に、あんこを注いで、上からもう一枚ぽんっと置く。湯気がいいんすよ、湯気が。






■ザ ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!(劇場/1997)



崩壊と中身の登場 ★★:佐々木政勝(※推測)
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上部で建物が破壊されて中身が剥き出しになる。良い煙ですね、カゲ2色で立体感マシマシ。瓦礫が落ちていくときの煙は、瓦礫に引きずられるように伸びていく。


ドラえもんズ復活:佐々木政勝(※推測)
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この辺もタイミングが気持ちいい。広がるときは瞬間で、それから少し時間をかけてドラえもんズが煙から現れる。


ようやっと、佐々木政勝も少し紹介できました。佐々木政勝といえば、「咲-Saki-」「らんま1/2」における美少女作画も有名ですが、エフェクトも素晴らしいものがあります。ほぼカゲは1色なんですが、面白いことに立体的でダイナミックな爆発を書く。

さて、今回は上妻晋作作画について(カミツマとは読みません、コウズマと読みます)。上妻作画、特にエフェクトは、ジャンル分けできないほど個性的である。とにかく、タイミングがとても独特である点が最大の魅力だ。その点に注目して読んでもらいたい。


★神撃のバハムート VIRGIN SOUL 01話(TV/2015)


辺りを伺う龍と煙
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ちょうど半分くらいの瞬間に注目。煙がいったん、その場で停滞している。ただ単純に、煙が一定の動きをするのではなく、空気を考慮した結果、こうなっていると思う。

煙/爆発のディテール
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煙のディテールは、たいていカゲ1色。煙表面において、大きくしたり小さくしたり、また煙本体と連動させながら動かすことで、煙の動きを表す。炎/爆発時は、カゲとハイライトをそれぞれ使うが、ハイライトに重きを置いている。



龍の立ち上がりと建物の崩壊 ★★
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上妻作画は、どうにも言葉にしにくいんですが、やはり時々「止まる/停滞する」。このカットにおいてもそれは顕著に現れていて、建物が崩れた瞬間、龍が口を開けた瞬間に少し止まって/滞留している。とにかく、タイミングがとても独特と思ってもらえれば良い。建物が崩れた後の微妙な間も、地に足が着かない感じの不安定さがある。これで、単純な絵にならないようにしている。




伸びる炎ブレス ★
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炎の発生と消滅のタイミングに注目。色は2色+透過光ですかね。上妻作画は、主に球形のフォルムを多用する傾向にある。球形フォルムによって、炎を形どった後、色を白→黄→赤へと変化させる。その変化もパターン化されておらず、「どの瞬間に最も高温であるか」を念頭に作画されている。



炎ブレス2
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こちらも同じく。球形を2層に分けて、エフェクトを展開している。前方に透過光で、オレンジの方が後方ですね。消滅するのは、透過光の方が速くて理に適っている。しかし、このタイミング、どう説明したものか…。これだけスッパリと消滅する炎って中々ないのだ、というのも、たいがいは違和感が生じたり、ぎこちなく見えてしまうため。それを違和感なく、やり遂げている。




空中炎ぶわあ ★★
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あとは、こういった風にロール状に色を変化させつつ、炎を表現する場合もある。それぞれ違う速度で落下していくのが分かると思う。やっぱり上手いなあ。



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スミアを映してから右PAN。これも同様に。右PANしてからの外炎のフォルムも柔らかい。上妻作画というのは、球形の持つ「柔らかさ」と「瞬間さ」を上手く利用しているのかも?



とにもかくにも、独特なタイミングが上妻作画の最大の魅力だ。これは誰にも、模倣することができないと言い切っていい。そういうレベルのタイミングのセンスが上妻作画にはある。

黒田、野中が原画参加とあれば、記事にしないわけにはいきません。黒田結花は作画監督も兼任、他には三木達也、北川隆之などもクレジット。



たまちゃん攻略戦:三木作画(※推測)
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中央部に膨らんだ煙を集める。カゲは基本的に上下に分けて描き、それを動かすことで立体感を出す。この辺が三木煙の特徴かなあと思っている。


たまちゃん攻略戦、具体的に言うと、たまちゃんと組み合ってからは三木さんが多くやってると思う。この辺ですね。

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水滴とタイミングが上手かったので。



野中はどこだろうと見直しましたが、ぶっちゃけさっぱり分からん。北川さんもいるし、まあ野中っぽいというよりは上手いところで探しました。


ナナチてくてく:野中作画(※推測)
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おしりフリフリ/耳フリフリに注目。これで重心の移動を示す。野中なら、ナナチがのけぞった時にもうちょっとハッチャケそうな感じがする。


ご飯をよそうナナチ:?
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これバリ上手い。よそう前にちょっと垂れるのを切ってるじゃないですか。こういう細かい芝居はやっぱいいっすね。



あとは完全に趣味ですが、このワイヤーも良かった。

ワイヤーばしゅーん
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いやあ、これはレイアウトが上手いですねえ。画面に空間を感じるように設計されている。




さて本題の黒田結花ですが、原画はほぼやっていないかも。作監修正がメインかもしれない。やっているならば、たまちゃん攻略戦が終わった後の水蒸気あたりかな。

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この辺は黒田煙っぽいです。フォルムも、内部線を重視するカゲ付けも黒田作画の特徴。僕は彼女は素晴らしいエフェクトアーティストだと確信しているので、もっとエフェクトを書いて欲しいですねえ。

「密着マルチ」の技法については、よく説明されますが、効果や魅力はあまり語られない。そして、言葉が何となくわかりにくい。よって、密着マルチの面白さが伝わりにくい。つうか、俺もよく分かってなかった。

まあ、ちょっと具体例を見ましょう。


★神撃のバハムート GENESIS/ED(TV/2014)
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山本沙代コンテ。多くの植物を通り抜けた先に、横たわることで神秘さを出す。植物の動きに注目されたい。それぞれ微妙に速度が異なって、多層感を出してますよね。


こういった画を見て多くの人が思う/抱くのは、「(密着マルチを使うことで)どこらへんが画期的で面白いのか?」ということだと思うんですよ。



<密着マルチの3段階>

1、目的:「運動視差」を利用して、奥行きを表現するため

2、技法:それぞれ異なった速度で、それぞれの素材を引く

3、効果:平面なはずのアニメに奥行が感じられる

現時点では「ほーん」ぐらいの気持ちでいてください。まず、運動視差ですが、これは映像を見てもらった方が速いと思う。


・新幹線からの車窓映像(引用元
 

カメラに近い物体はヒュンヒュンと速いスピードで動き、遠くなればなるほど、ゆっくりと動く。これが「運動視差」です。新幹線とか電車乗ると、よくわかりますよね。あのビルあんま動かないけど、線路内の柵はめっちゃ速く動くわ~みたいな。



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現実では、ごくごく当たり前の事ですが、アニメーションの世界では、これを表現するのが大変に困難だった。なぜかというと、近くと遠くで、素材(ミッ◯ーや、木、柵など)を引く速度をそれぞれ変える必要があったため。アニメーション黎明期は、図1のような撮影台でアニメを作っていました。


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(図1:撮影台の一例)

この撮影台にも、素材を引く速度を調整する装置(スライド装置)はありました。しかし、この撮影台は一つの速度しか作れない。これでは、遠近で異なった速度から生まれる、運動視差が描写できない。結果として、画面の奥行きを表現することは非常に困難なままでした。

だけど、アニメーションに奥行が欲しい。なんとかして、立体を感じる元である、運動視差をアニメに持ち込みたい。そう思った先人は、マルチプレーン・カメラというものを発明します。このマルチプレーン・カメラの変わったところは、撮影台の多さです。素材を載せる台が、一つではなく、複数あったんですね。基本は4台でしたが、「ファンタジア」では、最大なんと9台も使われた。スライド装置も各台にあったので、それぞれ異なる速度で、複数の素材を引くことが可能になった。


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これは練馬の博物館に飾ってある、マルチプレーン・カメラです。複数の撮影台のおかげで、「近くの木は速く動かして、遠くのお城はゆっくり動かそう」という事が可能になった。マルチプレーン・カメラぱねえ、最強すぎる。これを使って、描かれた名シーンがこちら。



★白雪姫(劇場/1937)
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手前の樹木は速く動き、奥の木や霧の背景はゆっくり動いていますよね。で、平面であるはずのアニメに、なんと奥行が感じられる。こりゃすげえや、となって、こぞってどこの会社も使い始めます。しかし、そう長くはマルチプレーン・カメラの覇権は続かない。

「改良型が出たのかな?」と思われる方もいるかもしれない。いや違うんです。まず、こいつクソでかいからスタジオ内で場所を取ってしまう。そして、こいつ自体に高い金がかかる上に、樹木や家などの背景素材をこいつ専用にアレンジしなきゃいけない。つまり、コストが半端なくかかる。んで、こいつ全然、最強じゃねえや金食い虫が!ということで、使う会社はだんだんと減少していく。マルチプレーン・カメラくんかわいそう。


でも、やっぱり、アニメに奥行/立体感は欲しいわけです。贅沢だな。

どのような経路を通ったか不明ですが、ついに、一つの撮影台で、マルチプレーン・カメラの効果を再現することに成功しました。はい、そうです。これが「密着マルチ」です。大事なことなので、もう一度言います。マルチプレーン・カメラ効果の再現が、密着マルチです(被写界深度の件は割愛)。ちなみに、この呼び方は日本でのみ。

※撮影台については、こちらのサイト様がビジュアル的に分かりやすいので、参考にしてもらいたい。
★撮影台 http://www.da-tools.com/junk/cn25/camStand.html


なんで、「密着マルチ」と呼ぶのか?これは2つの説がある。

■1:「マルチ」プレーン・カメラ時代には、台ごとを「密着」させる必要があったから
■2:今は素材を「密着」させて、「マルチ」プレーン・カメラの効果を再現しているから

どっちかは不明。用語なんてそんなもんなんで、深く考えないでください。「土用の丑の日」だって、平賀源内がホラ吹いたようなもんでしょう。思ってるよりテキトーなんですよ、世の中って。





さて、目的と技法については分かってもらえたと思います。残るは魅力ですね。実際の作品で使われたものを通して、見ていきましょう。



★COPPELION 04話(TV/2013)★★
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雲book密着SL+建物Follow

以前紹介しましたが再度。やはりこれ素晴らしいんですよ。密着マルチによって、雲の大きさ/多層感を先に見せておいて、地上の主人公までカメラを引っ張ってくる。空や雲と主人公、戦闘機を一つのカットに収めている上に、最後には戦闘機と主人公を対比して見せる。



★神さまのいない日曜日 03話(TV/2013)
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泣いている少女の周りを墓標が回り込んでいく。少女の眼前を通過する墓標は、彼女の気持ちにお構いなしに世界が回っているということ。


★★
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墓標book5個ほどSL+逆方向にBGをSL

ロングショットから速くbookを引くことで、少女の孤独さを強調する。ここでも、遠い墓標と近い墓標では、速度に差があることに注目しながら見て欲しい。ボカシもいい。


密着マルチの基本は、奥行/立体感です。ただ、それから派生して、「神さまのいない日曜日」の情景描写や「COPPELION」のような大きさの対比表現もできる。使う人のセンスによって、表現の幅が広がっていく。それが面白いところです。ただ単に「奥行」だけという、単一な描写に留まらない。複数の素材を異なったスピードで引くだけで、少女の切ない感情が表現できるって素晴らしいと思うんですよ。


<参考文献>
アニメーション撮影台-練馬区
立体撮影2
撮影台

「きい」さんは漫画家で、主に成人向けに書いている方です。僕の世代だと、北乃きいを思い浮かべる人が多いと思うんですが、そっちではない。最近、個人単行本の2本目が出たそうです。「群青ノイズ」というらしい。

んで、今回の記事では、きいさんのキャラクターの描写がやべえな/これはすげえなってことを紹介したい。なにがすごいかというと、一言で言うならば「萌え絵とリアルのバランス」です。

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キャラ絵からものっそいんですよ。この辺までは「現実にあり得そう」なラインで、14~16才の中高生を萌え絵にデフォルメしてエロく描いている。萌え絵として記号化しているわけでもなく、かといってビシバシ写実的にデッサンされているわけでもない。成人向けってどうしても、リアルかデフォルメかの二極化になりやすいんですが、その中で、難しい(と思われるところ)を良く描いている。



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お話は、女の子主導ですね。よく「同年代の女の子は進んでる」っていうじゃないですか。あれをですね、エロ漫画に取り込んでいる。表面上は普通の落ち着いている女の子が、じっさいそういう場面になったときに、知識も積極性も段違いでエッチを進める。この女の子の方が進んでいる感、普通に見える女の子もエロイこと考えている。この前提がリアルでエロくていいなと思うわけです。わかりますかね、わかって欲しい。

フィクションにおいて、「まったくありえないこと」の中に読者は入っていけない。たとえば、ペットボトルがいきなり爆発して美少女が現れたりすると、その世界にはなかなか入れないですよね。でも、自分たちの現実に「あり得そうだな」と思うことがスタート地点にあると、そこから凄まじいフィクションになっていっても、没入することができるんですよ。この辺のフィクションと現実のライン、「あり得そうな」ラインを描くのことが極めて上手い。それが、きいさんに対する僕の印象です。


あと、この辺も自然だけど上手い
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いいカットですよね




<参考文献>
かぎばんごう023+
作品「コンティニュー」「布団の中の宇宙」(※画像引用はこちらから)
2016年12月 近況 

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