今日はアニメーター増尾昭一さんの御命日です。亡くなってもう2年経つのか。三回忌。とりあえず、こういう機会になるべく増尾さんの作画・デザインの素晴らしさを紹介できたらいいなと。
まずは、メカ関係について少し


エヴァ弐号機については、コピック仕上げ(※セルの上から蛍光ペンのように塗るハイライト加工技術)で触れているていど、これはTVシリーズ通しての傾向。戦艦は大部分やっているのでは、と思う。Aパート前半の戦艦群、甲板の戦闘機ほかは少し?ごめん、これは識者を求ム。

増尾作画、仕上げ(※推測)
継ぎ目でコピックが十字に膨らんでいるのが増尾メカ作画の特徴の一つ。右はBOOK背景にディテールアップしたものと考えている。

白コマショック
この戦艦二隻カチコミ爆発は、このカットのみ増尾作画(※推測)。発射の時の砲塔ビームもいいですね。これだけ近くで光ると、ゼロ距離砲撃が見事に分かるよね。
今回取り上げるのは、ついにあの「誘惑 COUNTDOWN(1995)」です。ちょうどTV版エヴァと同時期、実はですね、エヴァの頃の増尾さんの作画って僕もよく分かってないんです。「新海底軍艦」とか。TV版のウェザリング(※メカニック機体の汚し作業)の話や、今回のコピック仕上げ見てもそうだけど、画面全体のディテールアップを務めていたように思う。
だから、割とエフェクトを書く機会がなかったんじゃないかなあと。「YAMATO2520」はガッツリやってますけど。遍歴を見ると、このくらいなんですよね。つまり、TV版エヴァ、劇場版エヴァでは(思いもよらず)多忙だったはず。
そんな多忙な状況において同じ時期に、関わった、というか監督したのが「誘惑 COUNTDOWN」です。18禁OVAで本谷利明さんなども参加されています。オムニバス形式で全6話(全3巻)。再編集時には、DVD2つに3話ずつ再整理された。
いかんなく増尾作画が発揮されていたのは、「SEEK」と「暴れん坊少年(※改題後「からくり評判記」)」です。
「SEEK」(原画NC;ノンクレジット)

黒系ショックコマを入れてから半球ドーム状の爆発が広がり、同時にその周囲に爆煙が広がっていく。ちらほら見える透過光が効果的でいいアクセントになっている。高温な表現も伝わってきますね。

丸と直線を浸かった融合系のショックコマ
ショックコマの時間がだいぶ長い。
ショックコマから変化するように、爆発と煙になっていく。面白いポイントは、ショックでいろんな色が透過光として使われている点ですね。これは試したんだろうなあ。
「暴れん坊少年(からくり評判記)」

致しているところに上から猫型ロボットが降ってきたシーンです、深くは考えなくていい
ああ、この煙の流れ方ですよ。カゲ色2つ使って、ボコボコなフォルムで、それぞれ違うスピードで波のように流れていく。2000年代で増尾さん、こういうのをたくさんやります。だから、そういう煙の基礎をこの辺で作っていたんだなあと今分かってしみじみとなる。

城塞都市と化した江戸城が砲撃しているシーンです、深くは考えなくていい
いや、やっぱね、このビームの描き方、すごいですよ。膨らんでから鋭くなるまでのタイミングめちゃくちゃ良いですもん。先日、シン・エヴァ冒頭10分絡みで橋本敬史さんがおっしゃっていたことは、こういうことです。まあ、もっというと「ナディア」のビームを参考にしたのではと考えている。
☆☆☆

ニトロが詰まっている容器をこぼして爆発させてしまうシーン、深くは(ry
ひさびさにマイ・増尾ベストワークきたなあ、これすごいわ
バリアの球面にプラズマが走り、それをなぞるようにニトロがこぼれていく。そして着火、爆発、一瞬にして爆煙に。ここすごいのが衝撃波を透過光で表現しているところですね、あんまり見られない。というか、僕は初めて見た。しかも、衝撃波は2回あって、時間差がある。これはニトロと、ロボ自体の爆発の時間差ってことなんでしょうね。だから、衝撃波の高さも違う。すげえや。
こうして見てみると、エフェクトもけっこうバラバラですよね。実験的なこともたくさんしている。「なにか新しいものはないか」というのを探している。そういった点で、常に新しいものを描きたいと発言し、作ってきた、庵野秀明とは作品づくりの面でも素晴らしいパートナーであった。だからこそ、一緒に「エヴァ序」を作った。シン・エヴァは一緒に作れません。一緒には作れませんが、スタジオカラーの方々がその思いを、増尾イズムを継いでくれると心より願い期待しています。
<参考資料>