さて、「うる星サーカス」から大分経ちましたが、ようやくあのパートの結論が出せそうです。ホロホロさんコメントで色々と教えてもらって、本当にありがたかったです。A子とかイクサーとかナンジャラホイって感じだったので。この場を借りてお礼を。
まあ、もう本当に大分経ってしまって申し訳ないですが…
リンクも一応貼っておきます。
1、「うる星」庵野サーカス
2、増尾爆発と庵野爆発について
3、増尾パートを色々探検してきた 80年代編
まずは、「A子」の増尾パートを見ていくとします。
■「A子」増尾サーカス
増尾爆発。まん丸球形の爆発+破片の細かさが際立っています。ペプシが飛んでたりしますが、今回は、関係ないので置いとく。ここでまずは、「POP」「イクサー」と比較して、増尾さんの特徴を画像で簡単に紹介。
増尾爆発の作画特徴集

破片は細かく少なめ、独立した球体を描かない。これら2つは、前回の記事でも触れましたね。前回は、こっちの言葉足らずで、増尾爆発のフォルムの特徴の一つ「カエルの水かき」というのが分からなかったと思う。今回はバッチシ画像も用意したので、きちんと説明します。
増尾爆発の外のラインの描き方

こういう感じです。なんとなく分かるかなあ。
爆発の外のラインを1色で繋げたがるのが、増尾爆発(85-87)の特徴だと僕は感じる。外のラインを一色でつなぐエフェクトを全く描かないアニメーターはいないだろうけど、この時期の増尾さんは、この手法を頻繁に使ってるので特徴になります。
今回新しく発見したのは、爆発の球体の内側に、三日月状のカールしてる線(※以下、ムーンライン)があるということです。庵野さんも時々その線を描く時があるんですが、ちょっと違う。ホロホロさんのコメントの太さ細さもそうですけど、もっと根本的な違いがあります。
ムーンライン(増尾さんの場合)




上下で連動してるので、見比べてみてね。
ムーンラインを描く時は、三日月ドーナツ(参照:図2)か、細長い三日月カール(参照:図3)を入れる。(※もしくは、その両方を使って描く)
ムーンラインの具体例




増尾さんは、こんな感じに描きます。
ムーンライン(庵野さんの場合)


庵野さんは、さほど爆発にムーンラインみたいなディテールを加える人ではない、というのがまず最初にあります。描くとしても三日月ドーナツ(図2)の方であり、細長いムーンライン(図3)の方に関しては、ほとんど爆発の中に入れません。
もう一つの大きな違いとして、庵野さんが、ドーナツ三日月(図2)でムーンラインを描くときに、時々短くクワガタ状になるというものです。要するに、爆発の球体の中で、一部分だけにムーンラインを描くということです。(参照:図4)
庵野特有のムーンライン


■「メガゾーン」庵野爆発
また、このクワガタ三日月は、増尾さんのムーンラインと違い、爆発の中で動き回ります。
逆に言うと、こんな作画を増尾さんは絶対しません。ムーンラインを描くなら描くで、きちんと細長いヤツ(図3)を入れてきます。
■「A子」戦闘機の増尾爆発
上のgifから抜き出した金田調のエフェクトカット


そんでイクサーを調べている時は微妙だった、金田調のエフェクトカットについて。「POP」「イクサー」「A子」と3つの増尾さん初期参加作品で、ここまで多く見られると、この時期(85-87)増尾さんが金田系のカットインをエフェクトに使っていたことは確定のようです。
増尾爆発の金田調エフェクトカット集


(「イクサーⅠ」より)


(「イクサーⅢ」より)


(「POP」より)
増尾、庵野爆発の個数比較

また、この時期の増尾さんは、比較的爆発を描いても、球形の個数が少ないのも特徴です。
庵野さんが6、7個平気で描くのに対し、増尾さんは3個が一番多い印象があります。
以上の事を踏まえて、もう一度問題となった作画を見てみましょう。
■「うる星156話」サーカスと連続爆発


問題の作画です。結局このパートは誰が描いたのか?
結論から言うと、庵野秀明だと思います。
当時、庵野さんは板野一郎の影響を受けて、リアルに傾倒していた時期です。とにかくリアルに、写実的な作画を目指していました。目指す途中で、細長いムーンライン(図2)みたいなものは、描きたくなかったのではと思います。その証拠に、「超時空要塞マクロス」「メガゾーン23」や「風の谷のナウシカ」の中で、庵野さんは爆発にディテール(ムーンライン等)を殆ど加えていません。
庵野作画 爆発集




これは僕の推測ですが、写実性を目指す中で一体どんな風に描けばいいのだろうかと、試行錯誤の時期だったように感じます。副産物として、大量の破片の描き込み、タイミングのセンス等が磨かれました。
■「メガゾーン23」庵野爆発

■「風の谷のナウシカ」庵野爆発
「王立」の時期になると、庵野爆発の写実は黄金期を迎え、爆発は細かくリアルに描かれています。 余計なディテールは、爆発をむしろデフォルメにしてしまうので、それを避けたかったのではないのかなあと。
つまり、「うる星サーカス」が描かれた1983.4年当時は、庵野爆発はまだ未完成であり、しかも写実にこだわったので、爆発を細かく描けなかった(※爆発に余計なディテールを足すことが出来なかった)時期だと思うんです。そういう理由で、このサーカスと連続爆発は、庵野秀明の作画だと思います。

増尾さんだったら、この爆発内部にムーンラインを少なくとも一本は入れるだろうし、それをしないのならばドーナツ三日月をすると思う。こんだけ、中身スカスカにして描かない。

後は、やはり破片の大きさですね。
こんなに大きな破片を、増尾さんが描くとは思えない。
Q、あの「金田っぽい」カットインは何だったのか?


完全なる推測で申し訳ないんですが、これって作監とか演出の人が足したんじゃないのかなあと思います。(そういうことは、ありえるんですかね?)前回の記事で、この2枚を抜いても違和感無くみれることは明らかでしたね。80年代後半~90年代は、やっぱり金田作画イケイケの時代だったと思うんですよ。だから、演出の人が「この爆発は、金田さん(もしくは山下)みたいなカットにしろ」 とか言って、ああなったんじゃないのかなあと。全部推測ですよ!
今回ほぼゼロから増尾作画を調べて、スゴい苦労しました。(※gif作っちゃ見て確認、お仕事他に無いか確認、スクショしたのをWFVで見て確認とか…動研の人はすげえなあと改めて思ったよ…)けど、「お!なんだかこの人の作画の特徴が分かってきた!」 みたいな快感を得られるのが楽しくてですね、やってよかったなあと(*´∀`) 庵野爆発についても、分かりきってる感じだったんですが、全然知らないことばっかりで、むしろ覚えた方の事が多いですね。
こんな過疎作画ブログですけど、30人くらいは見てくれてるということで、この「うる星サーカス」一連記事については、お疲れ様でした。途中で、gifのサイズ変更とかで見難い箇所もあったかと思いますけど、そこは勘弁を。いろいろと試してるので…まあ本当にお疲れ様でした。
まあ、もう本当に大分経ってしまって申し訳ないですが…
リンクも一応貼っておきます。
1、「うる星」庵野サーカス
2、増尾爆発と庵野爆発について
3、増尾パートを色々探検してきた 80年代編
まずは、「A子」の増尾パートを見ていくとします。
■「A子」増尾サーカス

増尾爆発。まん丸球形の爆発+破片の細かさが際立っています。ペプシが飛んでたりしますが、今回は、関係ないので置いとく。ここでまずは、「POP」「イクサー」と比較して、増尾さんの特徴を画像で簡単に紹介。
増尾爆発の作画特徴集

破片は細かく少なめ、独立した球体を描かない。これら2つは、前回の記事でも触れましたね。前回は、こっちの言葉足らずで、増尾爆発のフォルムの特徴の一つ「カエルの水かき」というのが分からなかったと思う。今回はバッチシ画像も用意したので、きちんと説明します。
増尾爆発の外のラインの描き方

こういう感じです。なんとなく分かるかなあ。
爆発の外のラインを1色で繋げたがるのが、増尾爆発(85-87)の特徴だと僕は感じる。外のラインを一色でつなぐエフェクトを全く描かないアニメーターはいないだろうけど、この時期の増尾さんは、この手法を頻繁に使ってるので特徴になります。
今回新しく発見したのは、爆発の球体の内側に、三日月状のカールしてる線(※以下、ムーンライン)があるということです。庵野さんも時々その線を描く時があるんですが、ちょっと違う。ホロホロさんのコメントの太さ細さもそうですけど、もっと根本的な違いがあります。
ムーンライン(増尾さんの場合)




上下で連動してるので、見比べてみてね。
ムーンラインを描く時は、三日月ドーナツ(参照:図2)か、細長い三日月カール(参照:図3)を入れる。(※もしくは、その両方を使って描く)
ムーンラインの具体例




増尾さんは、こんな感じに描きます。
ムーンライン(庵野さんの場合)


庵野さんは、さほど爆発にムーンラインみたいなディテールを加える人ではない、というのがまず最初にあります。描くとしても三日月ドーナツ(図2)の方であり、細長いムーンライン(図3)の方に関しては、ほとんど爆発の中に入れません。
もう一つの大きな違いとして、庵野さんが、ドーナツ三日月(図2)でムーンラインを描くときに、時々短くクワガタ状になるというものです。要するに、爆発の球体の中で、一部分だけにムーンラインを描くということです。(参照:図4)
庵野特有のムーンライン


■「メガゾーン」庵野爆発

また、このクワガタ三日月は、増尾さんのムーンラインと違い、爆発の中で動き回ります。
逆に言うと、こんな作画を増尾さんは絶対しません。ムーンラインを描くなら描くで、きちんと細長いヤツ(図3)を入れてきます。
■「A子」戦闘機の増尾爆発

上のgifから抜き出した金田調のエフェクトカット


そんでイクサーを調べている時は微妙だった、金田調のエフェクトカットについて。「POP」「イクサー」「A子」と3つの増尾さん初期参加作品で、ここまで多く見られると、この時期(85-87)増尾さんが金田系のカットインをエフェクトに使っていたことは確定のようです。
増尾爆発の金田調エフェクトカット集


(「イクサーⅠ」より)


(「イクサーⅢ」より)


(「POP」より)
増尾、庵野爆発の個数比較

また、この時期の増尾さんは、比較的爆発を描いても、球形の個数が少ないのも特徴です。
庵野さんが6、7個平気で描くのに対し、増尾さんは3個が一番多い印象があります。
以上の事を踏まえて、もう一度問題となった作画を見てみましょう。
■「うる星156話」サーカスと連続爆発



問題の作画です。結局このパートは誰が描いたのか?
結論から言うと、庵野秀明だと思います。
当時、庵野さんは板野一郎の影響を受けて、リアルに傾倒していた時期です。とにかくリアルに、写実的な作画を目指していました。目指す途中で、細長いムーンライン(図2)みたいなものは、描きたくなかったのではと思います。その証拠に、「超時空要塞マクロス」「メガゾーン23」や「風の谷のナウシカ」の中で、庵野さんは爆発にディテール(ムーンライン等)を殆ど加えていません。
庵野作画 爆発集




これは僕の推測ですが、写実性を目指す中で一体どんな風に描けばいいのだろうかと、試行錯誤の時期だったように感じます。副産物として、大量の破片の描き込み、タイミングのセンス等が磨かれました。
■「メガゾーン23」庵野爆発

■「風の谷のナウシカ」庵野爆発

「王立」の時期になると、庵野爆発の写実は黄金期を迎え、爆発は細かくリアルに描かれています。 余計なディテールは、爆発をむしろデフォルメにしてしまうので、それを避けたかったのではないのかなあと。
つまり、「うる星サーカス」が描かれた1983.4年当時は、庵野爆発はまだ未完成であり、しかも写実にこだわったので、爆発を細かく描けなかった(※爆発に余計なディテールを足すことが出来なかった)時期だと思うんです。そういう理由で、このサーカスと連続爆発は、庵野秀明の作画だと思います。

増尾さんだったら、この爆発内部にムーンラインを少なくとも一本は入れるだろうし、それをしないのならばドーナツ三日月をすると思う。こんだけ、中身スカスカにして描かない。

後は、やはり破片の大きさですね。
こんなに大きな破片を、増尾さんが描くとは思えない。
Q、あの「金田っぽい」カットインは何だったのか?


完全なる推測で申し訳ないんですが、これって作監とか演出の人が足したんじゃないのかなあと思います。(そういうことは、ありえるんですかね?)前回の記事で、この2枚を抜いても違和感無くみれることは明らかでしたね。80年代後半~90年代は、やっぱり金田作画イケイケの時代だったと思うんですよ。だから、演出の人が「この爆発は、金田さん(もしくは山下)みたいなカットにしろ」 とか言って、ああなったんじゃないのかなあと。全部推測ですよ!
今回ほぼゼロから増尾作画を調べて、スゴい苦労しました。(※gif作っちゃ見て確認、お仕事他に無いか確認、スクショしたのをWFVで見て確認とか…動研の人はすげえなあと改めて思ったよ…)けど、「お!なんだかこの人の作画の特徴が分かってきた!」 みたいな快感を得られるのが楽しくてですね、やってよかったなあと(*´∀`) 庵野爆発についても、分かりきってる感じだったんですが、全然知らないことばっかりで、むしろ覚えた方の事が多いですね。
こんな過疎作画ブログですけど、30人くらいは見てくれてるということで、この「うる星サーカス」一連記事については、お疲れ様でした。途中で、gifのサイズ変更とかで見難い箇所もあったかと思いますけど、そこは勘弁を。いろいろと試してるので…まあ本当にお疲れ様でした。