スナップショット - 608

小黒 1話のガルドのミサイル避けですが、あれは手で描いてるんですか。
板野 手で描いてますよ。
小黒 別にCGとか3Dとかを使ったりは?
板野 いや、手ですよ。
小黒 あれ、前後のカットが3Dじゃないですか。
板野 だから手で描いてるんですよ。
小黒 まるで3Dでシミュレーションして描いたかのように見える、完璧な原画ですよね。
板野 ちゃんと、奥3コマ・真ん中2コマ・手前1コマと、タイミングを全部計算してやってますから。
これ前々から気にはなっていたんですが、放置していたので、ネタないし、いい機会だと思ってちょっと考えてみました。まずはgifで当該作画を確認してみよう。


■マクロスプラス 板野サーカス
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(*´∀`)…( ゚д゚)ハッ!
カッコイイけど、これじゃ何にも分からん!


同スロー 
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お(  ^ω^)何だか分かってきたような気がするぞ。
2コマ打ち、3コマ打ちという言葉があります。 1k作画とかは、作画に興味がない人でも聞いたことがあるのではないでしょうか。まあ要するにですね、同じ一枚の絵が24コマ中2コマ、3コマ流れてたら、2コマ、3コマ作画となるわけです。同じように、一枚の絵が1コマだけ流れていれば、1k作画となるわけです。

言葉で伝えるのは難しい。百聞は一見に如かず。1k作画の具体例をご紹介。


■「メトロポリス」 ティマの髪の作画
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DF(デュフュージョン)とともに、髪のなびく様子を作画することで、ティマの持つ神々しさや官能性、スピリチュアルな感じを表現しています。このシーンは、名倉靖博さんという方が作画されています。名倉さんは、枚数をふんだんに使うことを得意にしてるアニメーターで、このメトロポリスの総作監も務めています。

ぬるっと動くと思ったら、たいてい1k作画。 1k作画は、当然1コマにつき一枚の絵なので24コマ全部動く。ということで、ディズニーなんかのフルアニメーションは全部そういう作画なんですね。


■「ルパン走り」による2コマ、3コマ解説

特徴的な走りから魅力的な動きを学ぶ

これはよく出来ていますが、余計な混乱を招きそうです。結局どういうこっちゃ?となる人が多いと思う。2コマの方が動きが早くなるのはわかるし、テンポも生まれる。でも2コマと3コマの違いを知りたい人には、ちょっと良くないんじゃないんでしょうか。

まず大前提として、1秒間に24コマで今のアニメーションは描かれています。(30コマの時もあったそうですが…何だったかなあ) そして、この24コマの中で2コマ同じセルを映すか、3コマ同じセルを映すかということなのです。A、B、C、D、Eという5枚のセル(走りリピート作画)があったとします。3コマではAAABBBCCCDDDEEE(1)-AAABBBCCCという感じになります。1秒間の間に動きは1周半しか入りません。

次に、2コマの場合。AABBCCDDEE(1)-AABBCCDDEE(2)-AABBという感じになります。こちらは、1秒間の間に走る一連のシーンは、2周ちょっと入ります。つまり、2コマの方が情報量を多く感じるというわけです。別に、絵を増やしているわけでもないのに、1周半と2周半弱では大きな差を僕らは感じます。

これがリピートでない場合。つまり、EまでいってもAに戻らず、Fに進む場合。簡単にですが、3コマの方はAAABBBCCCDDDEEEFFFGGGHHH(A-H)で、2コマの方はAABBCCDDEEFFGGHHIIJJKKLLMM(A-M)まで一秒間に絵が流れます。リピートで無い方が、2コマの情報量の多さは分かりやすいかもしれません。


2コマ、3コマ作画の基本がわかったところで、マクロスプラスに戻りましょう。板野さんは、「ちゃんと、奥3コマ・真ん中2コマ・手前1コマと、タイミングを全部計算してやってますから。」という風に言っています。これはどういうことか。上記のgifを見ても、奥の方は同じ絵を3コマでやってるわけでもない。というかサーカスだから、基本的には24コマ全部動いてる。

ここでもう一度スローの方をよーく見てみましょう。

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そうなんです、奥の方も動いてはいるんですが、変化が小さいんです。つまり、奥の方はほとんど同じ絵ということ。 対して手前の方は、変化量が大きい。ミサイルは飛び出したら、もう向こうに行って見えなくなる。煙もすぐに流れていく。こういう事なんです。物体の移動する変化量の大小によって、3コマと1コマを使い分けていたということなんですね。スゴイ。


これらのタイミングやらを計算して、板野さんは「マクロスプラス」を作画したということに結論付きました。(※僕の出した結論なので、当然板野さんの主張してることとは違ってる可能性もあるよ!)というかサーカスの基礎でもあったりするんですかね…僕が知らないだけで。


これらの事を踏まえた上で、「マクロスプラス」のもう一個の方の板野サーカスを見てみましょう。

■マクロスプラス 板野サーカス2
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同スロー

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真ん中2コマの感覚も100回ぐらい見れば、理解できるようになるかもしれません。でも、1コマ、3コマはすごく分かりやすいですね。すごく頭使わないと、キレイなサーカスは描けないということが今回よくわかったのではないでしょうか。キャプアスの村木サーカスを載っけて終わりにします。


■キャプテンアース ED 村木サーカス
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