年の瀬ラストに

「しらたまくん」とは週刊ヤングジャンプで掲載されているコメディ漫画です。このふんわりとした雰囲気が好みで楽しく読んでいます。そんで、今週も楽しく読んでいたんですが、今週話(116話)はとんでもない傑作だったので記事を作りました(知らない方のために、ところどころで注釈つけてますが、面倒な人は読み飛ばしてください)。



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進路の話になる、来栖と白玉くん。
(※1:白玉くんは「人と猫の魂が入れ替わった」とかいう類のものではなく、人間と同じ知能を持ってる。)
(※2:来栖は白玉くんのもともと大ファンであり、縁あって友達となる)

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そんで、白玉くんは野鳥が好きなので、進路は自然保護官であり理系。来栖は卓球用品メーカーに入りたいので、理系大学に進学希望。ということで、来年も同じクラスになれるかもねと。


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深夜、みんなが寝静まった後に、露天風呂を堪能する白玉くん。


ここからインパクトがどっこんどっこん起こります。
エヴァだったら、世界が5回くらい滅んでしまうレベル。

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普段はぺったんこで気にもしない葵ちゃんが、白玉くんの前で色気を出している。葵ちゃんなんだお前そのタオルの掛け方は!なんだお前、本当にお前なんなんだよ。お前そんなキャラじゃねえだろ。
(※3:鈴川葵は白玉くんの高校での初めての友達)


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で、来栖と同じく来年も同じクラスになれるかどうかの話へ
そこから進路の話にいくんですが、


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おまっ…鈴川おまっ… (ここのコマ割り良い)
白玉君博士」これすごい良いセリフですよ(これについては最後に書く)。
進路は決まってないけど、なりたいものはあります。で、それは「白玉君博士」です。
こんなん言うたら、ほっぺに斜線も入るわ。で、すっとぼけをかます白玉くん。


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(・∀・)・・・

さて聞きましょう、鈴川葵で「伴侶宣言」



もうこんなんさあ…さあ…葵ちゃんめっちゃ繊細やん。
最大限の勇気を振り絞っても、直接は言えない(これも十分直接的だとは思うけど)。
「いつも」ってのが良いですね。


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”なりたいもの”を伝えたのに、「そんな”仕事”はないから…」とさらに誤魔化す白玉くん。
ここで誤魔化されたままだと、せっかく出した勇気が無駄になってしまう!
なので、追撃をかけようとする葵ちゃんだったが、


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全部見られてました(そしてバレた)と綺麗にオチがついて終了
白玉くんはここで待ってたと思うんだよなあ。
三度おなじような事を言われれば、流石にそこでちゃんと返事をしたはず。


何度読んでも、116話は傑作であり異質です。
「しらたまくん」にとって、分岐点となると思う。いやあ、本当すごいです。



それで、「白玉君博士」という言葉がなんで良いセリフかについてですが、

葵ちゃんって素直な女の子なので、本質としては、しらたまくんが猫だろうが、人間だろうがどっちでもいいんですよ。肉球ちょっと触ってみたいとか、撫でてみたいっていうのは、「しらたまくんが猫だから」というよりも、「しらたまくんが好きだから」です。好きな人の頭は撫でたいし、顔もつねってみたい、耳たぶも触ってみたい、それと同じ。

要するに、葵ちゃんは猫と人間のいっさい区別なく、白玉くんに対して純粋に接してきた。「猫だから~」といったような、他人がやるような気遣いは一切せずに、ダイレクトに接した。「下半身丸出しだけどいいの?」みたいな、猫と人間の中間にいる白玉くんには掛けづらい言葉をすんなりとかける。猫の特性(昼寝しないと体がもたない、ペンがもてない)もわかった上で、真に平等に接しているんですね。

そんな葵ちゃんが、今回言った「白玉君博士」というセリフは、まぎれもなく白玉くんへの告白です。ただ普通の人が「白玉君博士」というと、「猫と人間の中間」にいる白玉くんの特性を調べつくそうみたいなニュアンスになるじゃないですか。でも、葵ちゃんの場合はならない。なぜか。それは、上記で言ったように、区別なく平等に接しているからです。

でも、ちょっと変じゃないですか?白玉くんを区別なく見ている葵ちゃんが、「白玉君博士」と研究者のような言葉で告白するのは、なにか少し矛盾を感じる。みなさん、思い出してください。葵ちゃんも女の子なんです。とうぜん、「恋心を伝える」というのは勇気のいる行為です。 

葵ちゃんは「恋心を伝えることの気恥ずかしさ」を隠すために、はじめて白玉くんを猫と区別して、「白玉君博士」になりたいと言った、と思うんです。あの葵ちゃんをして、「猫という建前」を使わないと言えないほどに、彼女の恋心は大きく、それを伝える勇気もたくさん必要だった。葵ちゃんの繊細が伝わってくる、いいセリフです。

今までの表面的にあっけらかんとした葵ちゃんは、116話の「葵ちゃんの繊細さ」を出すためにあったと言っても過言ではないと思います。さいきんは「しらたまくん」をぼんやりと眺めていましたが、一発で目が覚めました。やはり素晴らしい作品です。