■魔法使いの嫁(2014/ヤマザキコレ)
★★★:1話
(1話限定で傑作、2話以降?まあ雰囲気が好きなら…)

世の中でもっともよく出来ている1話の一つといっていいほどのレベルです。ここまで完成度たかいのは見たことない。「読まされた」という感想が的確か。公開されている1話の構成は至上の一言。これ以上ない。なんだろう、すべて完璧なんですよ。コマの中の配置とか、キャラクターの向きとか。


たとえばコレ
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見開き右ページでこのコマ割り!
骨(エリアス)が逆方向を向き(そっぽを向く感じ/相手にされてない感じ)、ツノがコマを突き破ることで、圧迫感・威圧感を出す。エリアスは顔を布で覆ったまま。布の下はどうなっているのか?と疑問をもたせる。


で、次ページで

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その疑問を途端に、間髪入れずに解決させる。こんなに唐突に!
主人公のチセとの身長差で、コマの中の配置においてエリス(骨)は圧倒的に上部のポジションとなります。この描写だけで、エリアス(骨)はチセと読者に対して恐怖・圧の印象を与えるわけです。


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この後に、チセは自分が高額で買われたことに疑問を抱くわけですが、


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ここで、別の方向から、エリアスについての新たな情報を出すことでさらにチセと読者にを考えさせる。落ち着く暇を与えない。怒涛の情報量。しかし、多すぎてついていけないほどではない。情報のコントロールが的確。

漫画を読んできて、いままでこんな体験をしたことがなかった。圧倒的すぎて、読まされた、という感想をもったのは初めて。いやあ、すごかった。




■レイチェルダイアル(全2巻)(2014/皿池篤志)
いい作品でネタバレをしたくないので、かいつまんで

二人のアンドロイドと一人のお嬢様の冒険活劇。これはアンドロイドの設定がすげえ良いです。すっとこの世界に入っていけた。ああ、これは良い。この世界に溶け込める。バランスがとてもいいんですよ、男2人のアンドロイドが。お嬢様が野心家で、それに二人が振り回される展開も良かった。

もう少し続いても良かったかなあ、とは思います。2巻完結なら、読み切りで良いと思ってしまう。まあでも、ぶっちゃけ出落ち巻は拭えないので、2巻完結なのかな。もっと続きを読みたかった。





■ガンツ(大阪編~ラスト;26巻~37巻まで/奥浩哉)

いまさらか!( ^ω^)という感じの選択

絵の連続性(動画的?)、みたいなものがないけれど、間の作り方がうまいのがガンツの特徴ですね。あとは構成がうまい。すなわち、絵やコマ割りはそんなにうまくは行っていないけれど、脚本・構成と間のとり方(※あッ!と思った瞬間を描写するのがうまい)で面白くなっているマンガですね。

CG使用はあまり活きていない感じ。刺さっている部分が少ない。これが全編カラーならまた評価も変わるんでしょうけど、白黒ですから。もう画面が黒すぎて、CGの良さが活きてない印象。見開きコマは多かったですね、同ポジ→見開きでドン!みたいなパターンがとても多く見られた。

匿名掲示板については、あそこまでヘイトましましで描くとリアリティを失う、というか、ニュートラル・フラットじゃないんでなんかイヤだった。匿名掲示板の描写がうまくいっているのは、いちばんは「シュタインズゲート」でしょうかね。






■雨と君と(2021/二階堂幸)

拾った犬と独身OLの日常物語。

主人公の感情とセリフが少なく、描写でコントロールしていると。

一貫しているのは、ネガティブな要素を、見方によってポジティブに変えているところ。雨が降って電気を消してお風呂に一緒に入る、エピソードなんかがまさにそうですね。どこかしら、不運なことも二人なら笑えることになる。そういう感じ。

主人公の感情が顔に現れることが少ないので、その分、空白多めなコマとセリフ・独白で表現をしている。なんともいえないシュールさが実は肝心なのかも?競馬などで負けて癒やされたいときにオススメ。

割とキャラデはパッと見、古臭い感じがするんですが、本編を読むといっさいそんなことはなく。自分の浅い偏見に恥じ入るところです。いいデザインです。ディテールがいちいち上手い。



■対ありでした3巻(2020/江島絵理)

★★
近年、最注目作品の最新巻。


格ゲー漫画はいままで大きな筐体ありきで、舞台もゲーセンばかりでした。つまり、おじさんの懐古作品のようなものが多かったのですが、これは一線を画しています。はい、断言します。なぜか。アケコンを舞台に持ち込んだこと、これが他作品とはもっとも異なる点ですね。

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筐体ありきだった今までの格ゲー漫画とは異なり、「自由に持ち運びができる」アケコンを持ち込むことにより、舞台を自由に設定できるようになった。舞台はお嬢様学校。ダブル主人公体制。

大好きな格ゲーを捨て、お嬢様学校に入った主人公(綾)の「なにか今後の人生で夢中になれるものはあるのか?」という葛藤からの流れも良い。綾はどちらかというと秀才タイプ、努力と研究で強くなってきた。

一方で、ただ好きだからやっている、狂気すら感じる主人公(美緒)は直感やひらめきで相手を倒すような天才タイプ。まったくクソみたいな敗戦をやることもあるけれど、ありえないスーパープレイを見せるような、"魅せる"タイプのような格ゲーマー。この2人を主軸に話は回っていきます。

勝者がいるということは、敗者が確実に存在する。そういうのを隠さずに、むしろ強調して描いている。敗者の存在、敗北の存在をきちんと示す。あくまでも、対戦ゲームでは、"相手"がいないと成立しない、ということをすごく丁寧に描いている。ここが良いですね。

下支えしているのは、”ネットゲーマー"やオフライン大会のディテール描写ですね

*discord/コミュニケーションアプリ
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一般の作品だとコミュニケーションツールはLINEですが、ネットゲーマーだと通話しながらゲームができる「discord」というアプリを使うので、それを描写しているのが芸コマ。


*配信サイト/プロゲーミングチーム
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ミ◯ダムですね。配信サイト。これもしっかりと史実どおりというか。最初にウメハラがミル◯ムに進出してから、プロ格ゲーマー、ストリーマーは後を追うように◯ルダムに参入したので。ちなみにFPS勢は基本的にTwitchで配信しています。


*オフライン大会
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EVOの地域予選ですかね~たぶん
オンラインではラグなどが発生する以上、平等な戦いが保証されない。ですので、大規模な大会などはラグやping差のないオフラインで対戦するわけですね。


*ダブルエリミネーション/オフ大会の説明
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ダブルエリミネーションについての説明まであるとは!
これには正直びっくりしました。あとは、ダブルエリミって説明に困るんですよ。だいたいは、1回負けたらlower/loser(※敗者復活戦)に進むっていう言い方をするんですけど、「2負けしたら終わり」っていうのは最高に簡潔。こういう細かいところがしっかりとしているんで、すごく読みやすい。

あとは…
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美緒(※直感型のほう)が可愛い。左目周辺のほくろがソーベリーベリーキュートです。3つあるんですよ。眉毛の上に一つ、涙袋あたりに2つ。いいですねえこのデザインは。



今回は以上です。