強かった。いや、ぼくが思ったよりもはるかに強かった。
それがレース映像を見たときの率直な感想だ。

2022 菊花賞(阪神・芝3000m)


前半1000mは57.8、一瞬、耳を疑うようなペースに先行馬はすべて潰れた。ただ一頭を除いて。番手で競馬を進めた、アスクビクターモア(父ディープインパクト / 田辺裕信 騎手)は、4コーナーで早めに先頭立つと、ボルドグフーシュの猛追をしのぎ切り、菊花賞を制覇。田辺裕信 騎手は2016年のロゴタイプでの安田記念以来、6年ぶりの芝G1勝利である。

アスクビクターモアの血統構成を見ていこう
asuku

母父 Rainbow Questは米国生産、欧州で走った。クラシックはいずれも惜敗、英2000ギニー(1600m)は4着、仏ダービーは3着、愛ダービーは2着。負けた相手は同じ、El Gran Senorだった。3歳で凱旋門賞に出走するも、Sagaceの18着に破れる(※同期にSadler's Wells)。

4歳になってから、コロネーションCでG1初勝利を収めると、勢いそのままに前年敗れたSagaceを破り、見事に凱旋門賞を制覇した。父としては、日本ではサクラローレルを輩出。サイアーラインはつながらなかった。それは、サクラローレルの産駒がいまいち振るわなかったのと、サクラセンチュリーが予後不良してしまったためだ。そのため、血統としては、母系での活躍が多い。

血統がすこぶるいいんダロウナ~と思う諸君、Night Shift(ナイトシフト/1980年生まれ)という馬に注目していただきたい。左から3番目、下から2番目の馬だ(母母父)。実はこの馬、いっさい活躍していない。なんとダート1200mの未勝利戦しか勝っていない

(言い方は悪いが)どうして、こんな馬が種牡馬になれたのか?それは全姉である、Fanfreluche(ファンフルルーシュ/ノーザンダンサーの2世代目)の影響が大きい。マニトバダービー(準重賞/ダ1800m)、アラバマステークス(ダ2000m/※1973年からG1へ)などを勝ち、1970年のカナダ年度代表馬、エクリプス賞最優秀3歳牝馬を獲得した。

このつよつよお姉ちゃんの結果、Night Shiftの種牡馬入りが決まったのだ。そして、種牡馬としては秀でた活躍を見せる。2005年にバゴを破り、キングジョージ6世を制したAzamour(アザムール)などを輩出。ただし、強い馬は(アザムールも同様に)牝馬が多かったため、父系・サイアーとしてはつなぐことが難しかった。そのため、血統表には母系に残ることとなる。


似たような例はさいきんでも多くある。

リアルスティール、ラヴズオンリーユーなどを輩出した一大牝系、ラヴズオンリーミーの牝系だ。ラブリオンリーミーは競争未出走、その母Monevassia(モネンバシア/1994年生まれ)も未勝利で引退。牝馬の繁殖入りは牡馬のそれに比べると多いが、流石に理由が気になる。それは、世界的名種牡馬、kingmambo(キングマンボ)の全妹であったからだ。

まったく走らなかった馬であっても、血統的な根拠を元に、繁殖に上げたり、種牡馬にしたりする。逆によく走った名牝、たとえばウマ娘でも人気である、スイープトウショウの子どもはぜんぜん走ってなかったり(OP馬1頭のみ)するのは、また有名な話。これが競馬の奥深さであるとも思う。



チカレタ…( ^ω^)
さて、話は長くなったが2部構成、ディープ産駒のクラシック成績について。



ディープインパクトは2019年に亡くなってしまった。そのため、現2歳(2020年生産)がラストクロップ(※最後の産駒/わずか12頭であり、6頭が海外)である。そのラストクロップである、オーギュストロビン(Auguste Rodin)が欧州で全13世代G1勝利(※生産した全ての世代で、子どもがG1を取った)を収めた次の日には、12世代連続で牡牝クラシックを果たした。

日本競馬を変えた、サンデーサイレンスの異常とも言える記録を次々と塗り替えていく、こんな種牡馬はもう出ないだろう、と思う。


ディープインパクト産駒のこれまでのクラシック成績を振り返ってみよう。


2011 マルセリーナ(桜花賞 )(a*/b/,F a*...連続記録,b...通算記録,F...初達成)

2012 ジェンティルドンナ(桜花賞 2*/2、オークスF、秋華賞F)、ディープブリランテ(日本ダービーF)

2013 アユサン(桜花賞 3*/3)、キズナ(日本ダービー 2*/2)

2014 ハープスター(桜花賞 4*/4)、ショウナンパンドラ(秋華賞 /2)

2015 ミッキークイーン(オークス /2)

2016 ディーマジェスティ(皐月賞F)、マカヒキ(日本ダービー /3)、シンハライト(オークス 2*/3)
         ヴィブロス(秋華賞 2*/3)、サトノダイヤモンド(菊花賞F)

2017 アルアイン(皐月賞 2*/2)

2018 ワグネリアン(日本ダービー /4)、フィエールマン(菊花賞 /2)

2019 グランアレグリア(桜花賞 /5)、ラヴズオンリーユー(オークス /4)ロジャーバローズ(日本ダービー 2*/5)、ワールドプレミア(菊花賞 2*/3)

2020 コントレイル(皐月賞 /3、日本ダービー 3*/6、菊花賞 3*/4)

2021 シャフリヤール(日本ダービー 4*/7)、アカイトリノムスメ(秋華賞 /3)

2022 アスクビクターモア(菊花賞 /5)


★記録室★
・桜花賞 5
・オークス 4
・秋華賞 3

・皐月賞 3
・日本ダービー 7(連続は4連勝)
・菊花賞 5(連続は4連勝)

牡牝クラシック 27勝

もはや、言うまでもなく、アンタッチャブルな記録である。そんな、ディープが亡き今、サンデー孫(特にディープ仔)の種牡馬競争は熾烈だ。キズナ、サトノクラウン、リアルスティール、ダノンプレミアム、そしてコントレイルか。

まあ、僕の愛する、ダノンキングリー産駒がそれらすべてを颯爽と交わしていく姿は想像に難くないのだが。かれは牝系もすこぶる良いし、なにより最もディープに似ている。その凄まじい切れ味で、生産者は驚くだろう。予言しておこう





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