増尾作画いろいろ(1)/「ホンラン」「新海底軍艦」ほか
Q、次の増尾昭一作画は、何年代のものか。次から選べ

1、1990年台後半(1995~1999)
2、2000年代前半(2000~2004)
3、2000年代後半(2005~2009)
4、2010年代前半(2010~2013)
わかるかな?
まあこれ正解は、3番です。2009年に制作された「仏陀再誕」なので。

[仏陀再誕(2009/劇場)]
ポイントとしては、クルミ状(デコボコ)フォルムですよね。これは2000年代じゃないと確認されてないので、3、4までは絞れたと思います。あとはタイミングで3番と決まります。90年代は、もっとドカドカするタイミングなんで、こういった滲み出てくるようなタイミング、ゆったりとしたタイミングは、00年代にならないと出てきません。まあ、何度も言ってることなので耳タコだね。
あと、どうでもいいですけど、カルト団体が作ってる映画だから、みたいな偏見とかありませんよ。映像がすべてなんで。良いものは良いし、逆も然り。そこに根拠を求めたらダメです。カルトはカルト、映像は映像です。今掛さんの作画なんかが語られない理由はこの辺にありそうですけどね。
脱線しました。元の話に戻るお!
同時期の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」でも、似たようなエフェクトがあります。
[ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007/劇場)]

クルミ状の煙、手裏剣カゲディテール

見返してて思ったけど、手裏剣ディテールを重視して見ると、この辺も増尾さんっぽい
いやめっちゃ推測ですけどね、ここパート判明してましたっけ?
[セレビィ 時を超えた遭遇(2001/劇場)]

1997年頃~2000年初頭はおそらく増尾エフェクトは2種類あるのかなあと。
基本的にはクルミ状の煙をフォルム全体で動かしていく、手裏剣ディテールがある。

ただ、このカットの画面手前の煙のように、平面フォルムの煙もあるんですよね
「ガンスミスキャッツ」とか90年代後半な感じ(説明さぼり

セレヴィ増尾すげえなあ
増尾フォロワーって聞きませんが、ショックコマといい、タコ足煙といい、エフェクトアニメーターはけっこうな影響受けていると言っても間違いではないと思ってまう

このカットは、2000年代の増尾タイミングの基礎な感じするねえ!
(※ルギア、YAMATO2520でも似たようなカットがあった)
一発目の着弾は段階的にガッガッガと膨らむでしょう。これが特徴的な部分や
[バンパイアハンター The Animated Series(1998/OVA)4話]

フォルムはまったく違うんだけど、タイミングがばっちりだったので
タイミングは動画とか見て感覚で掴んでIKEA
(※この辺のフォルムは「AKIRA」Cパートの戦車爆発と似てる)
よくやるパターンは、真ん中爆発→(白コマ挟んで)画面外からドカーン

セレヴィと同じ時期なのに、平面的なフォルムでしょう。
これだから増尾の90年代ラスト~00年代初頭は難しいんだ
整理しときました

要するに、この時代は過渡期だった。
2006年くらい、「銀色の髪のアギト」までにフォルムが固まるまでに、おそらく2種類のエフェクトを使い分けて試行錯誤していただろう。そのへんが90年代末期の増尾作画の判断の困難さを生み出しているものである。「メルティーランサー」「ルギア爆誕」などでも見られるので、「この時代の増尾作画はこれしかない!」と断定するのがそもそも変。この時代には、2種類の増尾エフェクトがあった、ということなんだよねえ、多分。
Q、次の増尾昭一作画は、何年代のものか。次から選べ

1、1990年台後半(1995~1999)
2、2000年代前半(2000~2004)
3、2000年代後半(2005~2009)
4、2010年代前半(2010~2013)
わかるかな?
まあこれ正解は、3番です。2009年に制作された「仏陀再誕」なので。

[仏陀再誕(2009/劇場)]
ポイントとしては、クルミ状(デコボコ)フォルムですよね。これは2000年代じゃないと確認されてないので、3、4までは絞れたと思います。あとはタイミングで3番と決まります。90年代は、もっとドカドカするタイミングなんで、こういった滲み出てくるようなタイミング、ゆったりとしたタイミングは、00年代にならないと出てきません。まあ、何度も言ってることなので耳タコだね。
あと、どうでもいいですけど、カルト団体が作ってる映画だから、みたいな偏見とかありませんよ。映像がすべてなんで。良いものは良いし、逆も然り。そこに根拠を求めたらダメです。カルトはカルト、映像は映像です。今掛さんの作画なんかが語られない理由はこの辺にありそうですけどね。
脱線しました。元の話に戻るお!
同時期の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」でも、似たようなエフェクトがあります。
[ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007/劇場)]

クルミ状の煙、手裏剣カゲディテール

見返してて思ったけど、手裏剣ディテールを重視して見ると、この辺も増尾さんっぽい
いやめっちゃ推測ですけどね、ここパート判明してましたっけ?
[セレビィ 時を超えた遭遇(2001/劇場)]

1997年頃~2000年初頭はおそらく増尾エフェクトは2種類あるのかなあと。
基本的にはクルミ状の煙をフォルム全体で動かしていく、手裏剣ディテールがある。

ただ、このカットの画面手前の煙のように、平面フォルムの煙もあるんですよね
「ガンスミスキャッツ」とか90年代後半な感じ(説明さぼり

セレヴィ増尾すげえなあ
増尾フォロワーって聞きませんが、ショックコマといい、タコ足煙といい、エフェクトアニメーターはけっこうな影響受けていると言っても間違いではないと思ってまう

このカットは、2000年代の増尾タイミングの基礎な感じするねえ!
(※ルギア、YAMATO2520でも似たようなカットがあった)
一発目の着弾は段階的にガッガッガと膨らむでしょう。これが特徴的な部分や
[バンパイアハンター The Animated Series(1998/OVA)4話]

フォルムはまったく違うんだけど、タイミングがばっちりだったので
タイミングは動画とか見て感覚で掴んでIKEA
(※この辺のフォルムは「AKIRA」Cパートの戦車爆発と似てる)
よくやるパターンは、真ん中爆発→(白コマ挟んで)画面外からドカーン

セレヴィと同じ時期なのに、平面的なフォルムでしょう。
これだから増尾の90年代ラスト~00年代初頭は難しいんだ
整理しときました

要するに、この時代は過渡期だった。
2006年くらい、「銀色の髪のアギト」までにフォルムが固まるまでに、おそらく2種類のエフェクトを使い分けて試行錯誤していただろう。そのへんが90年代末期の増尾作画の判断の困難さを生み出しているものである。「メルティーランサー」「ルギア爆誕」などでも見られるので、「この時代の増尾作画はこれしかない!」と断定するのがそもそも変。この時代には、2種類の増尾エフェクトがあった、ということなんだよねえ、多分。
劇場版マクロスの増尾昭一作画
さて、今回は劇場版マクロス「愛・おぼえていますか」の増尾作画です。なお御礼記事も兼ねています。私信ですが、いろいろとありがとうございました。
増尾昭一はこの作品で、作画監督補として参加されました。「超時空世紀オーガス」のメカとエフェクトについては一人原画でした。ですので、「愛・おぼ」に関しても、同じような役職、すなわち、メカニック・エフェクト作画の修正補助だったろうと思います。だいたい飯田史雄さん(「王立宇宙軍」作監、「ヤダモン」漫画)と一緒にやったんじゃないかな。
ちょっと調べてみるとこんなツイートがありまして(辻壮一さんは、元アニメ雑誌編集者で現在はKADOKAWA勤務)
まあ全て劇マクのことかは分かんないですけど
今回もすべてパートは推測です。1984年といえば、増尾キャリアにおいては初期です。ですので、金田調のタイミングを残しつつ板野調のフォルムへと変換されていった時代と捉えてもらえれば、おおよそ問題ありません。白コマとディテールの少ないフォルムが特徴です。
前後作品は
「超時空世紀オーガス」「幻夢戦記レダ」「メガゾーン23」「POPCHASER」あたり
総攻撃の直前

球形フォルムと、ショックコマ。ただ破片とディテールが少し増尾昭一っぽくない。
この時期は、まあキャリア初期なので、破片が多目ではありますが。
ややディテール多いので、微妙ですね。
ラスト付近ミンメイと1

この形状、白コマの入り、ディテールの入り方。増尾作画っぽい。
爆発表面上にほぼ模様なく、ブラシを輪郭に沿って使う。
で、下記のような(赤部分)、こういうディテールが多いです。

爆発と爆発の間、おそらくそれが重なった際に発生するカゲを表現したものかな
あとはこの辺も気になる
![09]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/d/6/d629e5f3-s.jpg)
ちょうどオーガスのときにも、「独立した球形で作る煙」「球形が合わさって結果的にデコボコに見える煙」の2つがありました。まあ黎明期なんで、試行錯誤されていたことは間違いないですが。
ラスト付近ミンメイと2

これも同様に。爆発表面は、透過光がほとんどですよね。
ちなみに序盤でもこのカットはありますが、その際は白コマが入っている
ミンメイデート

白コマ入ってないのが微妙ですが、タイミングはこの時期の増尾昭一
オーガスの時と広がる速度が同じですねえ
しかし微妙です。修正がかかったのかも
以上です。作監補なので、あまり原画パートを断定するほどの材料はないのですが気になっていたので取り上げました。この時期はキャリア初期なので難しいですねえ。
増尾昭一はこの作品で、作画監督補として参加されました。「超時空世紀オーガス」のメカとエフェクトについては一人原画でした。ですので、「愛・おぼ」に関しても、同じような役職、すなわち、メカニック・エフェクト作画の修正補助だったろうと思います。だいたい飯田史雄さん(「王立宇宙軍」作監、「ヤダモン」漫画)と一緒にやったんじゃないかな。
ちょっと調べてみるとこんなツイートがありまして(辻壮一さんは、元アニメ雑誌編集者で現在はKADOKAWA勤務)
辻 壮一 Souichi TSUJI@g2studio
増尾さん、初めて会ったのは劇マクを制作していたアニメフレンドのスタジオ。取材で週に2〜3回は行ってたけど、増尾さんはいつのまにかいて、気さくに話をしてくるので、すぐ仲良くなった。原画、動画から仕上げ、最後は特殊効果までやっていて、最初は職種がよくわからない人だったw。
2017/07/26 18:24:15
まあ全て劇マクのことかは分かんないですけど
今回もすべてパートは推測です。1984年といえば、増尾キャリアにおいては初期です。ですので、金田調のタイミングを残しつつ板野調のフォルムへと変換されていった時代と捉えてもらえれば、おおよそ問題ありません。白コマとディテールの少ないフォルムが特徴です。
前後作品は
「超時空世紀オーガス」「幻夢戦記レダ」「メガゾーン23」「POPCHASER」あたり
総攻撃の直前

球形フォルムと、ショックコマ。ただ破片とディテールが少し増尾昭一っぽくない。
この時期は、まあキャリア初期なので、破片が多目ではありますが。
ややディテール多いので、微妙ですね。
ラスト付近ミンメイと1

この形状、白コマの入り、ディテールの入り方。増尾作画っぽい。
爆発表面上にほぼ模様なく、ブラシを輪郭に沿って使う。
で、下記のような(赤部分)、こういうディテールが多いです。

爆発と爆発の間、おそらくそれが重なった際に発生するカゲを表現したものかな
あとはこの辺も気になる
![09]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/d/6/d629e5f3-s.jpg)
ちょうどオーガスのときにも、「独立した球形で作る煙」「球形が合わさって結果的にデコボコに見える煙」の2つがありました。まあ黎明期なんで、試行錯誤されていたことは間違いないですが。
ラスト付近ミンメイと2

これも同様に。爆発表面は、透過光がほとんどですよね。
ちなみに序盤でもこのカットはありますが、その際は白コマが入っている
ミンメイデート

白コマ入ってないのが微妙ですが、タイミングはこの時期の増尾昭一
オーガスの時と広がる速度が同じですねえ
しかし微妙です。修正がかかったのかも
以上です。作監補なので、あまり原画パートを断定するほどの材料はないのですが気になっていたので取り上げました。この時期はキャリア初期なので難しいですねえ。
「宝石の国」のCGエフェクトの凄さ/面白さ
なんか異様に前記事バズって驚き。僕の主張を丁寧に理解してくれる/汲んでくれる方もたくさんいて、ありがたい限りです。
まあ今回は、ふだんどおりエフェクトについて述べていこう。プリヴィズばかりが話題になりましたが、そもそも、「宝石の国」はあれよりも良いカットが多いんですよエフェクトも。
(※gif多いので、読み込み重し/負荷かかるかも注意)
1話:フォスを守るシンシャ ★

スロモの中で、毒液CGが球状に広がる。水銀みたいなエフェクトでレイアウトが上手い。その後、毒液地面に落ちて(ここは作画かも)、草花を枯れさせるカットを入れることで、生死を対比させている。
1話:小笠原ダイヤ
これはええバッティングフォームや…サンキューダイヤ
冗談は置いといて、「宝石の国」においては、こういう感じにエフェクトはけっこう控えめ。派手な爆発・煙なく、脇役に徹している。まあ、キャラクター/世界観が重要な作品なので、どっかんどっかん派手にしたらまずいという判断でしょう。たぶん。
OP:あわあわフォス

全面の泡作画でフォスは消えていく。泡がワイプも兼ねていて、映像がシームレスに。わりとディテール少なめだけど、泡の流れに違和感なし。
3話:フォスの再生

このフォス再生シーンはモーフィング(※ある形から別の形へと変わっていくこと;メタモルフォーゼともいう)ですね。生命の再生というのはやはり極端な変化なので、メタモルフォーゼは本来の意味として、ここにピッタリはまる。
6話:疾走ダイヤ

オレンジCGエフェクトといえば、こういう感じのエフェクトが僕の中でのイメージ。エフェクトの形はV字状が基本形。あと、ここは、ジャンプした後に残る、残像みたいな煙がスピード感出してる。
亡国のアキト(劇場/2013)第2章PV
![42]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/7/5/75ecfbe4-s.jpg)
![53]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/d/b/db83d120-s.jpg)
「亡国のアキト」だと、メカが走って着地して同じような砂煙が立つ。KFの足元に注目されたい、基本形はこんな感じ。年々フォルムやタイミングが良くなっている気がする。
7話:氷河割りアンタークチサイト ★★

宝石全体の中では、異質なタイミングのカット。波の発生とか、大胆なタイミングだ。パッキリしてますよね、いきなり氷山が割れて波が噴出してくる。見てるこちらに間を与えないというか。
4話:王ポイ捨て ★

異色のエフェクトその2。カートゥーンアニメみたいなエフェクト。CGって基本は写実的ですけど、ここではコミカルにデフォルメされている。それがカートゥーンっぽさ、2Dアニメっぽさを出しているのかなあ。ここはおふざけシーンなので、そういった感じが合っていてベリーグッド。
5話:波打ち際 ★★

オレンジCGに水のイメージはあまりなかったんですが、これはめっちゃ上手いですね。細かい波粒や、ちょっとした渦巻き、それぞれの波のぶつかりなんかもよく出来ている。フォスの身体にぶつかった後に形を変えるとこなど、この辺はCGの得意分野でしょうけど、それでもすごくよく出来ている。
4話:引き上げられるフォス

その一方で、こういった「密着する物体作画」みたいなものは、CGにとっては苦手なんだと思う。何とかしようとしてるのは伝わるけれど、龍角散のCMみたいになっている。これはまあ、オレンジだけじゃなくて、CG業界全体で苦労しているところだとおもいます。
たとえば、これもそう
3話:海から上がるボルツ

陸に上がるとき、ボルツに付いた海水はあまり流れ落ちない。もうちょい、地面にびちゃびちゃ落ちてもいいもんだけど。宝石だから、そんなに海水は身体に付かないという演出かもしれん。
3話:ダイヤ疾走ふたたび

オレンジCGは、こういった「カメラぐるぐるカット」が以前から多い。以前は、ぐるぐるした結果、「このぐるぐる必要だった?」っていうカットが存在してたんですが、これバッチリですよね。未知の生物と戦っていて、滑りながらも必死に応戦。最後は、虚を突いて、上空からの突撃かかと落としで破壊。ぐるぐるした意味あった。
6話:金剛先生ビーム ★★

ビームが着弾した瞬間、後ろに広がっていく煙+カメラのQTB(※急激なカメラの引き)で、迫力ある画面に。金剛先生は最強っぽいので、エフェクトにもいろんな色が入っている。青・紫と寒色系中心な感じ。3カット目はわかりにくいんですが、ダブラシを重ねて多層さを出している。
6話:呆然フォス+切り裂きボルツ ★

これはカット/カメラワークも良かったんで長めに。カメラがフォスに迫ってきて、真俯瞰(※真上)のアングルになる。ボルツの髪ワイプによって、いきなり入ってきたボルツの勢いは止めずに繋げる。
![00]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/7/5/75009bef-s.jpg)
![01]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/4/d/4d12faec-s.jpg)
エフェクトは、切り裂く瞬間の火花を見てもらいたい。意外とド派手ですよね。流線形のフォルムで放射状に広がる。直前に、双子アメシストがやられているのでカタルシスがあります。
2話:孤独なシンシャ ★★

いやあ、これすげえんだわ。わかるかなあ。
「彼には居場所がない」っていう金剛先生の後に続くカットだから、ここでは存分に孤独になってもらわないとならない。シンシャは画面の中央に座っているけれど、他にあるのは自分を孤独にしている毒液だけ。そんな毒液のCGが、嫌気が指すほどじんわりと、にじみ出ることによって、彼の抱えている孤独の長さや深さを表現する。素晴らしい1カット。
3話:危険察知シンシャ ★

毒液を糸にして、怪しい光の元へと向かわせる。板野サーカスのようなカメラワークが、画面にスピード感をもたらす。2カット目、いきなりカメラが動くので、見ている人はそれに釘付けになり没入する。
8話:ポイ捨て爆発 ★★★

宝石でいちばん好きな爆発カット。担当したCGアニメーターを知りたいレベル。
最初に爆発して、その後すぐにもう一回爆発する。真っ白な透過光が放射状に広がった後に、ピンクの爆煙へと変化していく。ここのタイミングが上手いんですよ。一回ちょっとタメてるんで、爆発の威力が増すように映る。ピンクの爆煙はカゲ2色で立体感を醸し出し、画面奥へと大きく広がる。
「宝石の国」において、エフェクトCGは、前述したとおり、脇役に徹しています。顕著だったのは、3話のフォス再生シーンくらいですから。んで、もうこれはとうぜん、この宝石の世界観を崩さないために、しっかりとコントロールされている。その中でも、なにか寄与できないかと常に模索している。
それが素晴らしい。特に2話のシンシャのカットなんかは、光のゆらぎも含めて、細かいことやっているんですよ。3話の疾走するダイヤも、つるつると滑って水が跳ねていますよね。つまり、こいつらは未知なる生物で宝石の国にとっては異常事態なんだぞ、というのをエフェクトでそっと示しているんですよ。
この「宝石の国」にとって、エフェクトCG・作画は名脇役であります。一部の優れたカットだけでは、アニメや映像は成立しません。細かいところまで熟慮されたカット、すべてを含めて、映像は初めて完成します。なんか、宝石の国と似ているとは思いませんか。ボルツだけいても、宝石の国は守れません。フォス、シンシャ、みんながいて、はじめて守れて楽しんで生活ができる。同じように、一部のプリヴィズだけで映像なんて完成しないわけです。なんて当たり前のことを言ってるんだ。いや、とにもかくにも、最後まで楽しませてもらいたい。
まあ今回は、ふだんどおりエフェクトについて述べていこう。プリヴィズばかりが話題になりましたが、そもそも、「宝石の国」はあれよりも良いカットが多いんですよエフェクトも。
(※gif多いので、読み込み重し/負荷かかるかも注意)
1話:フォスを守るシンシャ ★

スロモの中で、毒液CGが球状に広がる。水銀みたいなエフェクトでレイアウトが上手い。その後、毒液地面に落ちて(ここは作画かも)、草花を枯れさせるカットを入れることで、生死を対比させている。
1話:小笠原ダイヤ

これはええバッティングフォームや…サンキューダイヤ
冗談は置いといて、「宝石の国」においては、こういう感じにエフェクトはけっこう控えめ。派手な爆発・煙なく、脇役に徹している。まあ、キャラクター/世界観が重要な作品なので、どっかんどっかん派手にしたらまずいという判断でしょう。たぶん。
OP:あわあわフォス

全面の泡作画でフォスは消えていく。泡がワイプも兼ねていて、映像がシームレスに。わりとディテール少なめだけど、泡の流れに違和感なし。
3話:フォスの再生

このフォス再生シーンはモーフィング(※ある形から別の形へと変わっていくこと;メタモルフォーゼともいう)ですね。生命の再生というのはやはり極端な変化なので、メタモルフォーゼは本来の意味として、ここにピッタリはまる。
6話:疾走ダイヤ

オレンジCGエフェクトといえば、こういう感じのエフェクトが僕の中でのイメージ。エフェクトの形はV字状が基本形。あと、ここは、ジャンプした後に残る、残像みたいな煙がスピード感出してる。
亡国のアキト(劇場/2013)第2章PV
![42]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/7/5/75ecfbe4-s.jpg)
![53]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/d/b/db83d120-s.jpg)
「亡国のアキト」だと、メカが走って着地して同じような砂煙が立つ。KFの足元に注目されたい、基本形はこんな感じ。年々フォルムやタイミングが良くなっている気がする。
7話:氷河割りアンタークチサイト ★★

宝石全体の中では、異質なタイミングのカット。波の発生とか、大胆なタイミングだ。パッキリしてますよね、いきなり氷山が割れて波が噴出してくる。見てるこちらに間を与えないというか。
4話:王ポイ捨て ★

異色のエフェクトその2。カートゥーンアニメみたいなエフェクト。CGって基本は写実的ですけど、ここではコミカルにデフォルメされている。それがカートゥーンっぽさ、2Dアニメっぽさを出しているのかなあ。ここはおふざけシーンなので、そういった感じが合っていてベリーグッド。
5話:波打ち際 ★★

オレンジCGに水のイメージはあまりなかったんですが、これはめっちゃ上手いですね。細かい波粒や、ちょっとした渦巻き、それぞれの波のぶつかりなんかもよく出来ている。フォスの身体にぶつかった後に形を変えるとこなど、この辺はCGの得意分野でしょうけど、それでもすごくよく出来ている。
4話:引き上げられるフォス

その一方で、こういった「密着する物体作画」みたいなものは、CGにとっては苦手なんだと思う。何とかしようとしてるのは伝わるけれど、龍角散のCMみたいになっている。これはまあ、オレンジだけじゃなくて、CG業界全体で苦労しているところだとおもいます。
たとえば、これもそう
3話:海から上がるボルツ

陸に上がるとき、ボルツに付いた海水はあまり流れ落ちない。もうちょい、地面にびちゃびちゃ落ちてもいいもんだけど。宝石だから、そんなに海水は身体に付かないという演出かもしれん。
3話:ダイヤ疾走ふたたび

オレンジCGは、こういった「カメラぐるぐるカット」が以前から多い。以前は、ぐるぐるした結果、「このぐるぐる必要だった?」っていうカットが存在してたんですが、これバッチリですよね。未知の生物と戦っていて、滑りながらも必死に応戦。最後は、虚を突いて、上空からの突撃かかと落としで破壊。ぐるぐるした意味あった。
6話:金剛先生ビーム ★★

ビームが着弾した瞬間、後ろに広がっていく煙+カメラのQTB(※急激なカメラの引き)で、迫力ある画面に。金剛先生は最強っぽいので、エフェクトにもいろんな色が入っている。青・紫と寒色系中心な感じ。3カット目はわかりにくいんですが、ダブラシを重ねて多層さを出している。
6話:呆然フォス+切り裂きボルツ ★

これはカット/カメラワークも良かったんで長めに。カメラがフォスに迫ってきて、真俯瞰(※真上)のアングルになる。ボルツの髪ワイプによって、いきなり入ってきたボルツの勢いは止めずに繋げる。
![00]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/7/5/75009bef-s.jpg)
![01]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/4/d/4d12faec-s.jpg)
エフェクトは、切り裂く瞬間の火花を見てもらいたい。意外とド派手ですよね。流線形のフォルムで放射状に広がる。直前に、双子アメシストがやられているのでカタルシスがあります。
2話:孤独なシンシャ ★★

いやあ、これすげえんだわ。わかるかなあ。
「彼には居場所がない」っていう金剛先生の後に続くカットだから、ここでは存分に孤独になってもらわないとならない。シンシャは画面の中央に座っているけれど、他にあるのは自分を孤独にしている毒液だけ。そんな毒液のCGが、嫌気が指すほどじんわりと、にじみ出ることによって、彼の抱えている孤独の長さや深さを表現する。素晴らしい1カット。
3話:危険察知シンシャ ★

毒液を糸にして、怪しい光の元へと向かわせる。板野サーカスのようなカメラワークが、画面にスピード感をもたらす。2カット目、いきなりカメラが動くので、見ている人はそれに釘付けになり没入する。
8話:ポイ捨て爆発 ★★★

宝石でいちばん好きな爆発カット。担当したCGアニメーターを知りたいレベル。
最初に爆発して、その後すぐにもう一回爆発する。真っ白な透過光が放射状に広がった後に、ピンクの爆煙へと変化していく。ここのタイミングが上手いんですよ。一回ちょっとタメてるんで、爆発の威力が増すように映る。ピンクの爆煙はカゲ2色で立体感を醸し出し、画面奥へと大きく広がる。
「宝石の国」において、エフェクトCGは、前述したとおり、脇役に徹しています。顕著だったのは、3話のフォス再生シーンくらいですから。んで、もうこれはとうぜん、この宝石の世界観を崩さないために、しっかりとコントロールされている。その中でも、なにか寄与できないかと常に模索している。
それが素晴らしい。特に2話のシンシャのカットなんかは、光のゆらぎも含めて、細かいことやっているんですよ。3話の疾走するダイヤも、つるつると滑って水が跳ねていますよね。つまり、こいつらは未知なる生物で宝石の国にとっては異常事態なんだぞ、というのをエフェクトでそっと示しているんですよ。
この「宝石の国」にとって、エフェクトCG・作画は名脇役であります。一部の優れたカットだけでは、アニメや映像は成立しません。細かいところまで熟慮されたカット、すべてを含めて、映像は初めて完成します。なんか、宝石の国と似ているとは思いませんか。ボルツだけいても、宝石の国は守れません。フォス、シンシャ、みんながいて、はじめて守れて楽しんで生活ができる。同じように、一部のプリヴィズだけで映像なんて完成しないわけです。なんて当たり前のことを言ってるんだ。いや、とにもかくにも、最後まで楽しませてもらいたい。
「文豪ストレイドッグス」のエフェクト作画&CG
情報提供いただきました
■文豪ストレイドッグス(TV/2016)
10話:CG黒煙ゆらゆら

透過光の入れ方に注目されたい。黒煙は、内部で熱を循環させながら、巻き上がっていく。それを表現するために透過光を黒煙表面に入れて、時間が経つと消えていく。ガヤのパーティクルも良い。あとは、煙が塊ごと(中心部と外側部分)では微妙にタイミングが異なっていてフォトリアル。
ちなみに、CGディレクターは太田光希さん。2009年頃からボンズ作品でCGを統括されているみたい。
15話:車ドカン ★

富岡隆司作画(※推測)
爆発した瞬間から、ショックコマを挟んで一挙に広がる爆煙。それに伴って、衝撃波が手前へとやってくる。臨場感が出る。爆発中心はやはり高温度ということで、透過光に。破片は放射状ですね、衝撃が球形な感じなのかな。
![32]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/b/2/b2b5f129-s.jpg)
![35]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/5/f/5f6e8e90-s.jpg)
いろいろ言ったけど、いちばんは、広がる瞬間の大胆さが良い。フォルムがいきなり変わるけど、まったく違和なく繋がる。そこが気持ちいい。
富岡隆司AMV
富岡隆司さんは今回初めて知ったのですが、べらぼうに上手い人のようで。このMADだと、CANAANのシーンとか痺れた。ヘリが上昇しパースが刻々と変化しながら上がっていく中で、不安定な体勢から銃撃するカナンの描き方が良い。あと、アップになるとタイミングが大胆になる。
23話:床バウンド

注目したいのは、それぞれの煙が、ぶつかったところで発生して広がっていくところ。床で発生した煙がまず広がり、壁で発生した煙とぶつかって勢いが和らぐ。これはラストの天井の煙まで続く。天井から落ちてきた破片とキャラによって、煙の形は変わる。キャラのときは包み込むようになってる。
■文豪ストレイドッグス(TV/2016)
10話:CG黒煙ゆらゆら

透過光の入れ方に注目されたい。黒煙は、内部で熱を循環させながら、巻き上がっていく。それを表現するために透過光を黒煙表面に入れて、時間が経つと消えていく。ガヤのパーティクルも良い。あとは、煙が塊ごと(中心部と外側部分)では微妙にタイミングが異なっていてフォトリアル。
ちなみに、CGディレクターは太田光希さん。2009年頃からボンズ作品でCGを統括されているみたい。
15話:車ドカン ★

富岡隆司作画(※推測)
爆発した瞬間から、ショックコマを挟んで一挙に広がる爆煙。それに伴って、衝撃波が手前へとやってくる。臨場感が出る。爆発中心はやはり高温度ということで、透過光に。破片は放射状ですね、衝撃が球形な感じなのかな。
![32]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/b/2/b2b5f129-s.jpg)
![35]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/5/f/5f6e8e90-s.jpg)
いろいろ言ったけど、いちばんは、広がる瞬間の大胆さが良い。フォルムがいきなり変わるけど、まったく違和なく繋がる。そこが気持ちいい。
富岡隆司AMV
富岡隆司さんは今回初めて知ったのですが、べらぼうに上手い人のようで。このMADだと、CANAANのシーンとか痺れた。ヘリが上昇しパースが刻々と変化しながら上がっていく中で、不安定な体勢から銃撃するカナンの描き方が良い。あと、アップになるとタイミングが大胆になる。
23話:床バウンド

注目したいのは、それぞれの煙が、ぶつかったところで発生して広がっていくところ。床で発生した煙がまず広がり、壁で発生した煙とぶつかって勢いが和らぐ。これはラストの天井の煙まで続く。天井から落ちてきた破片とキャラによって、煙の形は変わる。キャラのときは包み込むようになってる。
「GREY」における本谷作画と、当時のエフェクト流行
劇場作品「GREY」における、エフェクト作画を追っていこうと思います。
■GREY デジタル・ターゲット(劇場/1986)
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(本編エフェクトその1):前島作監(※推測)
モコモコとした山のようなディテールを作り、タコ足煙を伸ばす。透過光はほとんど使わず、ハイライトで爆発の高温を表現する。前島作画・作監はそんな感じだと思う。
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(本編エフェクトその2):鈴木作画・作監(※推測)
その一方で、爆発同士をひとつの塊とみなし、ブラシを使ったカゲのディテールが見られるのが鈴木作画・作監でしょうか。タコ足も爆発に直接つながっている(※前島作画のように、爆発本体から独立したものとはなっていない)。破片はさほど差がない。クレジットを記載しておく。
エフェクト作監:前島健一、鈴木伸一
原画(抜粋):荒木英樹、山根まさひろ、南伸一郎、本谷利明、古橋一浩
このように、本編のほとんどのエフェクト作画は、作監である前島・鈴木さんによるものでしょう。クオリティ高く統一感が出ている。裏を返せば、統一感がないところが本谷利明パートと言えなくもない。まあ、消去法的でちょっとアレなんですが。
以下全て、本谷作画。もちろん推測なので、参考までに。
★戦闘機ぐしゃどかーん

強烈なショックコマ+緻密な戦闘機の破壊描写。「メガゾーン」における本谷作画の緻密さを思い出すほど、破片が細かい。フォルムはわりと球形で、ディテール少なめ。ここは少し本谷作画とは異なるような気もする。中野フラッシュのようなショックコマは、おそらくメガゾあたりで知り合った増尾さんから模倣したんじゃないかなあ。
★立ち昇る煙

カゲ2色のリピート作画ですが、密度が本編のそれと違う。だいたい分かってもらえたら良い。
★爆発ダブルアクション

前島・鈴木両名はほとんど透過光を使わないように思います。ですので、このシーンは異質に映った。タコ足煙もただ伸びていくだけではなく、しっかりと重力に従って落ちていく。あとは「AKIRA」のタイミングにめちゃ似てるんですよね。
★ミサイルドカーン

じゃっかんですが、タイミングが違っている。透過光や黒いカゲの使い方が、前島作画のそれとは異なって見える。まあこれは、本谷作画の前島作監修正かもしれません。
んで、80年代前半のエフェクト作画は、絶賛「金田系」祭りです。田村英樹などが代表的ですかね。どこかしら、金田作画を基調にしたものが多い。ということは、板野系(球形を中心とした爆発作画)などは必然的に目立ってしまう。初期の本谷作画は、球形を集めたもの(※メガゾ2あたりになると、フォルムが固まってくる)ですので、今回のようになったのかと思います。にしても、初期の本谷利明作画はぶっちゃけ分からんところが多いなあ。
■GREY デジタル・ターゲット(劇場/1986)
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(本編エフェクトその1):前島作監(※推測)
モコモコとした山のようなディテールを作り、タコ足煙を伸ばす。透過光はほとんど使わず、ハイライトで爆発の高温を表現する。前島作画・作監はそんな感じだと思う。
![33]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/0/b/0badd173-s.jpg)
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(本編エフェクトその2):鈴木作画・作監(※推測)
その一方で、爆発同士をひとつの塊とみなし、ブラシを使ったカゲのディテールが見られるのが鈴木作画・作監でしょうか。タコ足も爆発に直接つながっている(※前島作画のように、爆発本体から独立したものとはなっていない)。破片はさほど差がない。クレジットを記載しておく。
エフェクト作監:前島健一、鈴木伸一
原画(抜粋):荒木英樹、山根まさひろ、南伸一郎、本谷利明、古橋一浩
このように、本編のほとんどのエフェクト作画は、作監である前島・鈴木さんによるものでしょう。クオリティ高く統一感が出ている。裏を返せば、統一感がないところが本谷利明パートと言えなくもない。まあ、消去法的でちょっとアレなんですが。
以下全て、本谷作画。もちろん推測なので、参考までに。
★戦闘機ぐしゃどかーん

強烈なショックコマ+緻密な戦闘機の破壊描写。「メガゾーン」における本谷作画の緻密さを思い出すほど、破片が細かい。フォルムはわりと球形で、ディテール少なめ。ここは少し本谷作画とは異なるような気もする。中野フラッシュのようなショックコマは、おそらくメガゾあたりで知り合った増尾さんから模倣したんじゃないかなあ。
★立ち昇る煙

カゲ2色のリピート作画ですが、密度が本編のそれと違う。だいたい分かってもらえたら良い。
★爆発ダブルアクション

前島・鈴木両名はほとんど透過光を使わないように思います。ですので、このシーンは異質に映った。タコ足煙もただ伸びていくだけではなく、しっかりと重力に従って落ちていく。あとは「AKIRA」のタイミングにめちゃ似てるんですよね。
★ミサイルドカーン

じゃっかんですが、タイミングが違っている。透過光や黒いカゲの使い方が、前島作画のそれとは異なって見える。まあこれは、本谷作画の前島作監修正かもしれません。
んで、80年代前半のエフェクト作画は、絶賛「金田系」祭りです。田村英樹などが代表的ですかね。どこかしら、金田作画を基調にしたものが多い。ということは、板野系(球形を中心とした爆発作画)などは必然的に目立ってしまう。初期の本谷作画は、球形を集めたもの(※メガゾ2あたりになると、フォルムが固まってくる)ですので、今回のようになったのかと思います。にしても、初期の本谷利明作画はぶっちゃけ分からんところが多いなあ。
「王立宇宙軍」の劇中ビデオ爆発について考える
「王立宇宙軍」には、シロツグの同僚たちがロケットの打ち上げ失敗ビデオ見ているシーンがあります。このシーンの爆発はとても見事なんですが、ある疑問があったので考えてみる。全部で3カット。
■「王立宇宙軍(劇場/1987)」/劇中ビデオ3カット
打ち上げ失敗その1:庵野作画(※推測)

モノクロなので少し見にくいですね。じんわりと横に広がる煙、カゲ2色。当時の庵野作画とフォルムもタイミングも似ているし、まあこれは庵野秀明によるもの(作監修正の可能性も含む)と考えてよい。これは別に問題ない。作監の庵野がやっただろう。
打ち上げ失敗その2:増尾作画?(※推測)

さっきのヤツとは、タイミングも煙の形もカゲも違っている。手前に進んでくる煙がめっちゃ良いんですが、増尾作画のように思います。助監督の増尾なら、これも問題ない。問題は次のカット。
★打ち上げ失敗その3:?作画

これめちゃ上手いっすよね。劇中ビデオに使われているのがもったいないくらいに、爆発のタイミングといい、カゲの付け方といいキレイ。んで、疑問に思ったことなんだけど、なんでこんなキレイな爆発をここにもってきたのか。そういった点が引っかかったんですよ。こんなに上手い爆発を書ける人なら、ラストの戦闘シーンでもたくさん書いてもらった方が良いに決まっている。
でも、このようなフォルム・タイミングの爆発はラストのシーンでは見られないんです。当時、若手スタッフ主導で進めていた王立なら尚更書いてもらった方が助かるはずなのに。とすると、それができなかった理由があるのではないか。
その一つとして、これを書いたのは、作画から見て本谷利明さんではないかと思うんですよ僕は。
コントラスト調整版:本谷利明作画(※推測)

そう、あの本谷利明です。この時期の彼の参加作品は、「AKIRA(1988)」「ヘル・ターゲット(1987)」という感じ。当時の本谷作画が緻密で写実的だったのは、言うまでもなく。カゲ2色で、ゆっくりとしたタイミングでタコ足煙が伸びていく。上の爆発と比較してみましょう。
ヘル・ターゲット(OVA/1987):本谷作画

なんとなくわかりますかね。爆発のフォルムが大小入り乱れており、メインは大きな楕円となっている。煙と煙の間の濃いカゲの入れ方や、タコ足煙や滞留の感じが似ている。

水色の円はトゲトゲの炎のディテールで、赤色は濃いカゲの部分ですね。トゲトゲディテールは意外と見過ごしていました、もしかしたら、この時期の本谷爆発の特徴かもしれない。
それで、この爆発が本谷さんだと思ったのは、もう1点あって。成人漫画家の森野うさぎさんによる本谷利明インタビューのこの部分を読んでもらいたい。
まあ、とにかもくにも、こういったわけで、その3については本谷作画だと思います。王立宇宙軍の本谷パートがずっと気になっていたので、今回少し記事にしました。
■「王立宇宙軍(劇場/1987)」/劇中ビデオ3カット
打ち上げ失敗その1:庵野作画(※推測)

モノクロなので少し見にくいですね。じんわりと横に広がる煙、カゲ2色。当時の庵野作画とフォルムもタイミングも似ているし、まあこれは庵野秀明によるもの(作監修正の可能性も含む)と考えてよい。これは別に問題ない。作監の庵野がやっただろう。
打ち上げ失敗その2:増尾作画?(※推測)

さっきのヤツとは、タイミングも煙の形もカゲも違っている。手前に進んでくる煙がめっちゃ良いんですが、増尾作画のように思います。助監督の増尾なら、これも問題ない。問題は次のカット。
★打ち上げ失敗その3:?作画

これめちゃ上手いっすよね。劇中ビデオに使われているのがもったいないくらいに、爆発のタイミングといい、カゲの付け方といいキレイ。んで、疑問に思ったことなんだけど、なんでこんなキレイな爆発をここにもってきたのか。そういった点が引っかかったんですよ。こんなに上手い爆発を書ける人なら、ラストの戦闘シーンでもたくさん書いてもらった方が良いに決まっている。
でも、このようなフォルム・タイミングの爆発はラストのシーンでは見られないんです。当時、若手スタッフ主導で進めていた王立なら尚更書いてもらった方が助かるはずなのに。とすると、それができなかった理由があるのではないか。
その一つとして、これを書いたのは、作画から見て本谷利明さんではないかと思うんですよ僕は。
コントラスト調整版:本谷利明作画(※推測)

そう、あの本谷利明です。この時期の彼の参加作品は、「AKIRA(1988)」「ヘル・ターゲット(1987)」という感じ。当時の本谷作画が緻密で写実的だったのは、言うまでもなく。カゲ2色で、ゆっくりとしたタイミングでタコ足煙が伸びていく。上の爆発と比較してみましょう。
ヘル・ターゲット(OVA/1987):本谷作画

なんとなくわかりますかね。爆発のフォルムが大小入り乱れており、メインは大きな楕円となっている。煙と煙の間の濃いカゲの入れ方や、タコ足煙や滞留の感じが似ている。

水色の円はトゲトゲの炎のディテールで、赤色は濃いカゲの部分ですね。トゲトゲディテールは意外と見過ごしていました、もしかしたら、この時期の本谷爆発の特徴かもしれない。
それで、この爆発が本谷さんだと思ったのは、もう1点あって。成人漫画家の森野うさぎさんによる本谷利明インタビューのこの部分を読んでもらいたい。
★お手数ですがいままでやられた作品を教えて下さい。(中略)森「アニメのほうは?」本「これは多いから、じゃ、映画だけね。「オネアミスの翼」原画。ちょっとだけしかやってない。プロデューサーとけんかしてすぐに辞めた。パイロットフィルムの時の方が、カット数が多いくらいだ。ガイナックスと相性が悪いな、俺。Gが頭文字の会社とはけんかばっかりしてるな。ガイナックスとかゲームアーツとか。」
http://www4.plala.or.jp/croh/gvdb/morino99dec26.html から引用
こういうソースを信用しすぎるのもあれなんですが、「鋼の鬼」「AKIRA」であれだけクオリティの高い煙や爆発を書いている本谷さんを、当時のアニメ演出家が使おうとしないわけないんですよ。これは間違いない。例外なく、ガイナックスも参加を打診したけれど、まあ途中でトラブルった。
――ここからはかなりの推測になりますが、ガイナが本谷へ参加を打診した。んで、王立で原画を何カットか書いている途中で、プロデューサーと揉めて辞退。本当はもっとガッツリやってもらう予定だった。こういう流れだったと推測。だとすると、この本谷原画ってガイナックスにとっては、「扱いにくいモノ」ではないですかね。本人は辞めちゃった、けど、すげえ上手い爆発の原画が残っている。辞退したからといって、これを処分するのはあまりにもったいない。活かしたい。そういうわけで、あの劇中ビデオシーンに使われたのではないかと思うのです。
――ここからはかなりの推測になりますが、ガイナが本谷へ参加を打診した。んで、王立で原画を何カットか書いている途中で、プロデューサーと揉めて辞退。本当はもっとガッツリやってもらう予定だった。こういう流れだったと推測。だとすると、この本谷原画ってガイナックスにとっては、「扱いにくいモノ」ではないですかね。本人は辞めちゃった、けど、すげえ上手い爆発の原画が残っている。辞退したからといって、これを処分するのはあまりにもったいない。活かしたい。そういうわけで、あの劇中ビデオシーンに使われたのではないかと思うのです。
まあ、とにかもくにも、こういったわけで、その3については本谷作画だと思います。王立宇宙軍の本谷パートがずっと気になっていたので、今回少し記事にしました。
「帝都物語」から見る、1990年前後の増尾作画の特徴
「ナディア」~「帝都物語」あたりの、1990年代前後は増尾作画の過渡期です。この時期は、過渡期ということもあり、さまざまな工夫が見て取れて面白いんですよ。パートは全て推測。
■帝都物語(OVA/1991)01.03.04話
01話:崩れ行く建物1
01話:崩れ行く建物2★★
この時期の代表作は、「ナディア」「クラッシャージョウ」など。で、この頃の増尾作画の特徴といえば、『デコボコ平面フォルム』と、『クワガタ・ムーンライン』の2つです。なに分からないと。21世紀の義務教育ですよ、ご説明しましょう。
★増尾作画フォルム・ディテール比較図
特徴を要素別に分けると、
・輪郭と煙内部の色は異なっている(※輪郭と内部で色分けされている)
・煙内部のディテールに「クワガタ」のような模様がある
・煙内部の中心にカゲは、ほとんど付かない
この3点が、この時期の増尾作画(増尾煙)の特徴です。
さて、これらを踏まえて以下のgifを見てもらいましょう。今までより、ずっと深く、増尾作画を理解できると思います。
03話:家ぐしゃあ
輪郭と内部は線で分けられており、煙内部にはカゲが付いていない。これでは平面的になってしまうはずなのに、立体感がある。なぜか。それは、これら平面的な煙を何層にも重ねているからです。オーガス以降、増尾作画の根幹をなしている部分です。
もう一つの主な特徴として、「爆発を2段階に分ける」というのがあります。
03話:大仏ドカン
最初は遠方で爆発させておきながら、あるていど時間が経つと急に目の前で爆発する。カットの終わりで、5枚ほどでドカドカと爆発するんですが、これも大きな特徴です。「ガンスミスキャッツ」「トップをねらえ!」などでも散見される。
03話:龍内部での爆発(※推測)
ディテール少なく、丸いフォルムのハイライトが入っている部分が重要。ぶっちゃけこれは微妙ですが、急速に伸びていくタイミングが増尾作画っぽい。
03話:ドッカン半球ドーム爆発 ★

増尾作画では、半球ドームがときどき(「彼氏彼女の事情」「旧劇」「RE:キューティーハニー」など)見られます。ディテールが少ない半球ドーム爆発は、タイミングが大きなポイントとなる。膨らんでから目の前に迫るまで、そのタイミングのセンスが光る。
04話:墓ビーム
04話は本当にさっぱり分からんかった。まあ、可能性があるとしたら、この辺でしょう。ナディアで見せたビームの膨らみ方/しぼみ方と似ている。あとはスミアのような、増尾(中野)フラッシュも判断材料ですが。ここでなかったら、瓦が浮きあがっていくところかもな~
「帝都物語」は豪華原画による作品ですので、やはり見極めるのが難しかった。特に、庵野合田松尾増尾が参加している話数は嬉しい一方で、判定のときには困ってしまうような。まあ、パート判定なんて正解することが目的ではありません。パート判定を通じて、その人の作画のどこに一体魅力があるのか、それを知ることが目的です。パートの正否はあまり重要ではないのです、間違っていたら直せばよいだけですから。「帝都物語」で増尾作画の別側面を知ることができた、それが作画のもつ楽しさの一つであります。
■帝都物語(OVA/1991)01.03.04話
01話:崩れ行く建物1

01話:崩れ行く建物2★★

この時期の代表作は、「ナディア」「クラッシャージョウ」など。で、この頃の増尾作画の特徴といえば、『デコボコ平面フォルム』と、『クワガタ・ムーンライン』の2つです。なに分からないと。21世紀の義務教育ですよ、ご説明しましょう。
★増尾作画フォルム・ディテール比較図

特徴を要素別に分けると、
・輪郭と煙内部の色は異なっている(※輪郭と内部で色分けされている)
・煙内部のディテールに「クワガタ」のような模様がある
・煙内部の中心にカゲは、ほとんど付かない
この3点が、この時期の増尾作画(増尾煙)の特徴です。
さて、これらを踏まえて以下のgifを見てもらいましょう。今までより、ずっと深く、増尾作画を理解できると思います。
03話:家ぐしゃあ

輪郭と内部は線で分けられており、煙内部にはカゲが付いていない。これでは平面的になってしまうはずなのに、立体感がある。なぜか。それは、これら平面的な煙を何層にも重ねているからです。オーガス以降、増尾作画の根幹をなしている部分です。
もう一つの主な特徴として、「爆発を2段階に分ける」というのがあります。
03話:大仏ドカン

最初は遠方で爆発させておきながら、あるていど時間が経つと急に目の前で爆発する。カットの終わりで、5枚ほどでドカドカと爆発するんですが、これも大きな特徴です。「ガンスミスキャッツ」「トップをねらえ!」などでも散見される。
03話:龍内部での爆発(※推測)

ディテール少なく、丸いフォルムのハイライトが入っている部分が重要。ぶっちゃけこれは微妙ですが、急速に伸びていくタイミングが増尾作画っぽい。
03話:ドッカン半球ドーム爆発 ★

増尾作画では、半球ドームがときどき(「彼氏彼女の事情」「旧劇」「RE:キューティーハニー」など)見られます。ディテールが少ない半球ドーム爆発は、タイミングが大きなポイントとなる。膨らんでから目の前に迫るまで、そのタイミングのセンスが光る。
04話:墓ビーム

04話は本当にさっぱり分からんかった。まあ、可能性があるとしたら、この辺でしょう。ナディアで見せたビームの膨らみ方/しぼみ方と似ている。あとはスミアのような、増尾(中野)フラッシュも判断材料ですが。ここでなかったら、瓦が浮きあがっていくところかもな~
「帝都物語」は豪華原画による作品ですので、やはり見極めるのが難しかった。特に、庵野合田松尾増尾が参加している話数は嬉しい一方で、判定のときには困ってしまうような。まあ、パート判定なんて正解することが目的ではありません。パート判定を通じて、その人の作画のどこに一体魅力があるのか、それを知ることが目的です。パートの正否はあまり重要ではないのです、間違っていたら直せばよいだけですから。「帝都物語」で増尾作画の別側面を知ることができた、それが作画のもつ楽しさの一つであります。
ロボット学校七不思議!/怪盗ドラパン謎の挑戦状!の佐々木政勝作画
「ドラパン」「学校七不思議」あたりについて、述べておきたいとおもう。子どもの頃は、ドラ映画ばっかり見てたんですよ。これまた作画が良いんですよ。
■ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?(劇場/1996)
ドカンドカン ★★:佐々木政勝(※推測)

反動を利用して脱出するドラ・ザ・キッド。空気砲の煙がいったん広がってから細く伸びることで、奥行を出す。ラストの方の煙のタイミングなんかと比較してもらえれば、いろいろ分かると思います。
自由の女神ドカン:佐々木政勝作画(※推測)★

これなんかも面白い。急速に広がった煙なので、外側の煙が内部へと戻っている点に注目して見てもらいたい。あとは、まあ佐々木政勝作画に共通しているんですが、ワシ爪のようなカゲを多用します。これが彼の作画の最大の特徴。
手作りどら焼き ★★

関係ないんですが、特に印象に残っていたので。膨らんだ後やや平べったくなり、その上に、あんこを注いで、上からもう一枚ぽんっと置く。湯気がいいんすよ、湯気が。
■ザ ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!(劇場/1997)
崩壊と中身の登場 ★★:佐々木政勝(※推測)

上部で建物が破壊されて中身が剥き出しになる。良い煙ですね、カゲ2色で立体感マシマシ。瓦礫が落ちていくときの煙は、瓦礫に引きずられるように伸びていく。
ドラえもんズ復活:佐々木政勝(※推測)

この辺もタイミングが気持ちいい。広がるときは瞬間で、それから少し時間をかけてドラえもんズが煙から現れる。
ようやっと、佐々木政勝も少し紹介できました。佐々木政勝といえば、「咲-Saki-」「らんま1/2」における美少女作画も有名ですが、エフェクトも素晴らしいものがあります。ほぼカゲは1色なんですが、面白いことに立体的でダイナミックな爆発を書く。
■ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?(劇場/1996)
ドカンドカン ★★:佐々木政勝(※推測)

反動を利用して脱出するドラ・ザ・キッド。空気砲の煙がいったん広がってから細く伸びることで、奥行を出す。ラストの方の煙のタイミングなんかと比較してもらえれば、いろいろ分かると思います。
自由の女神ドカン:佐々木政勝作画(※推測)★

これなんかも面白い。急速に広がった煙なので、外側の煙が内部へと戻っている点に注目して見てもらいたい。あとは、まあ佐々木政勝作画に共通しているんですが、ワシ爪のようなカゲを多用します。これが彼の作画の最大の特徴。
手作りどら焼き ★★

関係ないんですが、特に印象に残っていたので。膨らんだ後やや平べったくなり、その上に、あんこを注いで、上からもう一枚ぽんっと置く。湯気がいいんすよ、湯気が。
■ザ ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!(劇場/1997)
崩壊と中身の登場 ★★:佐々木政勝(※推測)

上部で建物が破壊されて中身が剥き出しになる。良い煙ですね、カゲ2色で立体感マシマシ。瓦礫が落ちていくときの煙は、瓦礫に引きずられるように伸びていく。
ドラえもんズ復活:佐々木政勝(※推測)

この辺もタイミングが気持ちいい。広がるときは瞬間で、それから少し時間をかけてドラえもんズが煙から現れる。
ようやっと、佐々木政勝も少し紹介できました。佐々木政勝といえば、「咲-Saki-」「らんま1/2」における美少女作画も有名ですが、エフェクトも素晴らしいものがあります。ほぼカゲは1色なんですが、面白いことに立体的でダイナミックな爆発を書く。
「神撃のバハムート」01話の上妻晋作作画/独特な上妻タイミング
さて、今回は上妻晋作作画について(カミツマとは読みません、コウズマと読みます)。上妻作画、特にエフェクトは、ジャンル分けできないほど個性的である。とにかく、タイミングがとても独特である点が最大の魅力だ。その点に注目して読んでもらいたい。
★神撃のバハムート VIRGIN SOUL 01話(TV/2015)
辺りを伺う龍と煙
ちょうど半分くらいの瞬間に注目。煙がいったん、その場で停滞している。ただ単純に、煙が一定の動きをするのではなく、空気を考慮した結果、こうなっていると思う。
煙/爆発のディテール
煙のディテールは、たいていカゲ1色。煙表面において、大きくしたり小さくしたり、また煙本体と連動させながら動かすことで、煙の動きを表す。炎/爆発時は、カゲとハイライトをそれぞれ使うが、ハイライトに重きを置いている。
龍の立ち上がりと建物の崩壊 ★★
上妻作画は、どうにも言葉にしにくいんですが、やはり時々「止まる/停滞する」。このカットにおいてもそれは顕著に現れていて、建物が崩れた瞬間、龍が口を開けた瞬間に少し止まって/滞留している。とにかく、タイミングがとても独特と思ってもらえれば良い。建物が崩れた後の微妙な間も、地に足が着かない感じの不安定さがある。これで、単純な絵にならないようにしている。
伸びる炎ブレス ★
炎の発生と消滅のタイミングに注目。色は2色+透過光ですかね。上妻作画は、主に球形のフォルムを多用する傾向にある。球形フォルムによって、炎を形どった後、色を白→黄→赤へと変化させる。その変化もパターン化されておらず、「どの瞬間に最も高温であるか」を念頭に作画されている。
炎ブレス2
こちらも同じく。球形を2層に分けて、エフェクトを展開している。前方に透過光で、オレンジの方が後方ですね。消滅するのは、透過光の方が速くて理に適っている。しかし、このタイミング、どう説明したものか…。これだけスッパリと消滅する炎って中々ないのだ、というのも、たいがいは違和感が生じたり、ぎこちなく見えてしまうため。それを違和感なく、やり遂げている。
空中炎ぶわあ ★★
あとは、こういった風にロール状に色を変化させつつ、炎を表現する場合もある。それぞれ違う速度で落下していくのが分かると思う。やっぱり上手いなあ。
スミアを映してから右PAN。これも同様に。右PANしてからの外炎のフォルムも柔らかい。上妻作画というのは、球形の持つ「柔らかさ」と「瞬間さ」を上手く利用しているのかも?
とにもかくにも、独特なタイミングが上妻作画の最大の魅力だ。これは誰にも、模倣することができないと言い切っていい。そういうレベルのタイミングのセンスが上妻作画にはある。
★神撃のバハムート VIRGIN SOUL 01話(TV/2015)
辺りを伺う龍と煙

ちょうど半分くらいの瞬間に注目。煙がいったん、その場で停滞している。ただ単純に、煙が一定の動きをするのではなく、空気を考慮した結果、こうなっていると思う。
煙/爆発のディテール
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![52]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/2/8/28d429f0-s.jpg)
![06]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/d/6/d69c78f0-s.jpg)
![17]](https://livedoor.blogimg.jp/ouritu_dora/imgs/9/f/9fe14da5-s.jpg)
煙のディテールは、たいていカゲ1色。煙表面において、大きくしたり小さくしたり、また煙本体と連動させながら動かすことで、煙の動きを表す。炎/爆発時は、カゲとハイライトをそれぞれ使うが、ハイライトに重きを置いている。
龍の立ち上がりと建物の崩壊 ★★

上妻作画は、どうにも言葉にしにくいんですが、やはり時々「止まる/停滞する」。このカットにおいてもそれは顕著に現れていて、建物が崩れた瞬間、龍が口を開けた瞬間に少し止まって/滞留している。とにかく、タイミングがとても独特と思ってもらえれば良い。建物が崩れた後の微妙な間も、地に足が着かない感じの不安定さがある。これで、単純な絵にならないようにしている。
伸びる炎ブレス ★

炎の発生と消滅のタイミングに注目。色は2色+透過光ですかね。上妻作画は、主に球形のフォルムを多用する傾向にある。球形フォルムによって、炎を形どった後、色を白→黄→赤へと変化させる。その変化もパターン化されておらず、「どの瞬間に最も高温であるか」を念頭に作画されている。
炎ブレス2

こちらも同じく。球形を2層に分けて、エフェクトを展開している。前方に透過光で、オレンジの方が後方ですね。消滅するのは、透過光の方が速くて理に適っている。しかし、このタイミング、どう説明したものか…。これだけスッパリと消滅する炎って中々ないのだ、というのも、たいがいは違和感が生じたり、ぎこちなく見えてしまうため。それを違和感なく、やり遂げている。
空中炎ぶわあ ★★

あとは、こういった風にロール状に色を変化させつつ、炎を表現する場合もある。それぞれ違う速度で落下していくのが分かると思う。やっぱり上手いなあ。

スミアを映してから右PAN。これも同様に。右PANしてからの外炎のフォルムも柔らかい。上妻作画というのは、球形の持つ「柔らかさ」と「瞬間さ」を上手く利用しているのかも?
とにもかくにも、独特なタイミングが上妻作画の最大の魅力だ。これは誰にも、模倣することができないと言い切っていい。そういうレベルのタイミングのセンスが上妻作画にはある。
増尾作画いろいろ(1)/「ホンラン」「新海底軍艦」ほか
とりあえず、最近判明した増尾作画を
■「月光のピアス ユメミと銀のバラ騎士団(1991/劇場)」

燃えるときの炎と白コマがかっこいい。電撃もめっさ上手いですねえ。
(※そのうち、プラズマ・電撃系作画も整理したいNE)
■「新海底軍艦(1995/OVA)01話」※推測

「新海底軍艦」の増尾作画はまったく分からんわけですが、自分の見立てだと、ここしかないんですよね。2回目の爆発の後、煙の表面ディテールが少なくなっていることが分かると思う。この特徴は、「ダンガイオー」以降「アギト」まで続きますので。
■「紅狼(ホンラン/1993/劇場)」★★

この紅狼における爆発は、たぶん90年代で一番ではないかなあ。広がっていく際にカゲが2色あるのって珍しいんですよ、この時期では。
追加(2017/10/22)
■「スケバン刑事(1991/OVA)02話」

大匙屋さん提供。ディテール少なめの平面煙を重ねていくことで、奥行や立体感を出している。
■真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝(2008/OVA)

横からの爆発では透過光を全面に出し、タタキも入れている。爆発の臨場感/カタルシスを描写。
■銀色の髪のアギト(2006/OVA)

これMADに入れ忘れた分。レイアウトが上手いから、遠近がよく出る。

90~00年代はこんな感じのタイミング。一旦爆発する時に白コマがあり、画面手前に押し寄せてくる時に再度白コマを入れる。
あと、下の記事における、「AKIRA」の増尾作画もほぼ確定しました。
(※→仲さんのツイート)
AKIRAにおける増尾作画の推測と、王立庵野の影響について
http://royal2627.ldblog.jp/archives/47360550.html
戦車のとこですね、ヘリのカットは不明。
この時期は、やはり難しい。AKIRA・王立以降の90年台は増尾作画の過渡期で、まあ3種類ぐらい使い分けてると思うんですよね。すごく遠くの爆発は半球ドーム型で、近いとこだとお団子型/立体フォルム型になる。で、眼前ぐらいの距離だと、平面の煙を重ねる感じ。ディテールだけでも相当の試行錯誤が見られる。
「距離別にエフェクトを変えたい意志」が明確に伝わってくるのは、だいたいトップぐらいから。起因するのは、以前言ったとおり、王立とAKIRAだと思いますが。平面エフェクトは、どういった意図があるのか。それが気になる。焦点が合ってない感じとかを表現したいのかもしれない。
■「月光のピアス ユメミと銀のバラ騎士団(1991/劇場)」

燃えるときの炎と白コマがかっこいい。電撃もめっさ上手いですねえ。
(※そのうち、プラズマ・電撃系作画も整理したいNE)
■「新海底軍艦(1995/OVA)01話」※推測

「新海底軍艦」の増尾作画はまったく分からんわけですが、自分の見立てだと、ここしかないんですよね。2回目の爆発の後、煙の表面ディテールが少なくなっていることが分かると思う。この特徴は、「ダンガイオー」以降「アギト」まで続きますので。
■「紅狼(ホンラン/1993/劇場)」★★

この紅狼における爆発は、たぶん90年代で一番ではないかなあ。広がっていく際にカゲが2色あるのって珍しいんですよ、この時期では。
追加(2017/10/22)
■「スケバン刑事(1991/OVA)02話」

大匙屋さん提供。ディテール少なめの平面煙を重ねていくことで、奥行や立体感を出している。
■真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝(2008/OVA)

横からの爆発では透過光を全面に出し、タタキも入れている。爆発の臨場感/カタルシスを描写。
■銀色の髪のアギト(2006/OVA)

これMADに入れ忘れた分。レイアウトが上手いから、遠近がよく出る。

90~00年代はこんな感じのタイミング。一旦爆発する時に白コマがあり、画面手前に押し寄せてくる時に再度白コマを入れる。
あと、下の記事における、「AKIRA」の増尾作画もほぼ確定しました。
(※→仲さんのツイート)
AKIRAにおける増尾作画の推測と、王立庵野の影響について
http://royal2627.ldblog.jp/archives/47360550.html
戦車のとこですね、ヘリのカットは不明。
この時期は、やはり難しい。AKIRA・王立以降の90年台は増尾作画の過渡期で、まあ3種類ぐらい使い分けてると思うんですよね。すごく遠くの爆発は半球ドーム型で、近いとこだとお団子型/立体フォルム型になる。で、眼前ぐらいの距離だと、平面の煙を重ねる感じ。ディテールだけでも相当の試行錯誤が見られる。
「距離別にエフェクトを変えたい意志」が明確に伝わってくるのは、だいたいトップぐらいから。起因するのは、以前言ったとおり、王立とAKIRAだと思いますが。平面エフェクトは、どういった意図があるのか。それが気になる。焦点が合ってない感じとかを表現したいのかもしれない。
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