GOMISTATION.Re0325

本気でいく

カテゴリ: エフェクト作画

今回は、2016秋アニメの「フリップフラッパーズ」のエフェクトについて。8話はオマージュ満天の回でしたが、良エフェクトも多かった印象。


やや新し目のエフェクト(以下、新興エフェクト)が目立ったかなあ
例えば、これ↓


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どこが新し目かというと、色の使い方です。
これまでは、フォルムで主に煙の動きを示し、温度表現は色に任せてたんですが、
ご覧の通り、こっちは色主体で煙の動き+温度表現をするんですね。
そこら辺が新し目な感じ。効率重視。


以下、類似エフェクト群

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(中野昭慶フラッシュも見どころ)


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表面のディテールの動きによって、温度の移り変わり+爆発の動きを表す
こういった新興エフェクトでは、ディテールの形やフォルムよりも、動きやタイミングに重点が置かれている。なので、タイミングのセンスに、爆発のクオリティが依存するわけですね。



あとはなんだろう・・・こういった新興エフェクトを書いている人たちは、アニメ的なデフォルメされきった線やフォルムから脱却して、別方向のリアルを目指しているのかもしれない。これらのエフェクトの注目すべきポイントは、フォルムなしで爆発を表現している点。

定形をもたないので、フォルムはその場に応じて変化させられる。ディテールも同じで、「このような形」というものが存在しないので、どのようなシーンでも汎用性が高く柔軟に対応させられる…という辺りが新興エフェクトの強みだと思います。短所としては、やや平面的でのっぺりとした画面になりがちな所。(定形フォルムやディテールをもたないまま)立体的に描写できるかどうかが、鍵だと思う。

07話

飛行甲板の爆発
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画面外まで飛び出るほどの爆発で派手さを演出した後、ロングショットで広がる爆煙。爆煙の表面のディテールは、楕円を使って、温度表現や煙の広がり方を表現している。温度の移り変わりが、やや均一的なのが惜しい。


船ドッカン ★
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ここは真ん中あたりの黄色部分に注目。シャッターのように黄色部分が消えていくことによって、煙が画面右上方へと巻き込まれていく様子を描写。なるほど、こういうやり方もあるのか。



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スケールが大きい。あとは、破片の描き込み。



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下の方の煙が伸びていくのがめっちゃ上手いですねコレ。あまりカゲないんですけど、しっかりと立ち昇っていく様子が分かる。





09話

西洋文明シンメトリー庭園に着弾爆発
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普通に綺麗なんであまり言うことがない。時間が経つにつれて、左側の煙が伸びていくのも内部の線の動きで描いてますね。


宮殿爆発 ★
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とんがって放射状に広がった後、丸みを帯びて外へと伸びていく。これは上手い。カット尻、じんわりと丁寧に広がっていくことで、ちょっと余韻が生まれている気がする。ディテールは、橋本(敬史)作画のように楕円をちょいちょいと入れて温度を表現している感じ。




10話

奥からの爆発
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こういうダッチアングルで奥から手前に押し寄せてくる爆発は、もうぼくの大好物です。ここは特に衝撃波のダブラシがアクセントになってるかな。


塔の崩壊による破片の浮遊 ★★
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この破片はすごく頑張っている。浮遊する破片を立体的に動かしており、それによって、画面に奥行きが生じている。3つぐらいにレイヤーを分け、奥と手前で別々に破片を描いていると思う。いやあ、これは見事ですよ。表現したい画面と描写方法が一致している、素晴らしい。



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エンジンから発火しての煙かな。ちょっと炎の広がり方が良かったので。



森ドカン
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永田亜美作画(推測)。爆発表面に線のディテールを多く入れ、それを動して煙を表現する。そういった感じが永田作画の特徴な気もする。イゼッタ記事ではこういった爆発・煙を永田作画とほぼ断定していますが、違ってたら全面謝罪や。


今回は以上です。亜細亜堂に詳しい方がいたら、ツッコミを入れて欲しいところです。

「終末のイゼッタ」3話のエフェクト作画(爆発・煙)☆ 

この記事の中で最後に述べた、「ドラえもんのび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)」の似ている煙をキャプではあるけど、取り急ぎ載せておく。

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・塹壕戦その1(対空機関砲) ☆
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塹壕戦での1カット、すごく独特なタイミング

二個目の煙は特にそれが顕著で、ちょっと引っかかりを残しておきながら広がっていく。
ここまで増尾煙(金田系)ライクなタイミングの煙は久しぶりに見ました。大胆。
煙と煙の間に一枚入れる、ショックコマのように透過光を使うのも独特で面白い。



・塹壕戦その2 ☆☆
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滞留する煙、内側から湧き出るように広がる。
内部の線を動かして煙の膨張を表現するのは、僕らが思っているより相当難易度が高い。
煙の影には、少しボカシもかかってるかな。これ相当に苦労したと思う。



・塹壕戦その3
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奥からドカンドカンと二個の煙が立った後に、その勢いのまま、煙が押し寄せてくる。
途中でドカンと建物で爆発しますが、透過光は一瞬のみ。これは爆発の勢いを表しているんだと思う。
ラストは、画面右下から円状の爆発が広がり大きい破片が乱舞する。



あと、これらのシーンに共通しているのは、破片へのこだわり

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言わずもがなですが、立体的な破片は動かそうとすると、爆風によって、向きがコロコロ変わるので描くのは少し難しい。難しいというか、少々めんどうくさい。それをきちんと描写しているので、破片に対しての情熱があるように思う。あと、けっこう鋭角的な破片が多いですね。



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この一連のシーンは、同じ人が描かれたと思う。最初に見たときには、鴨川浩や黒田結花なんかが思い浮かびましたが、クレジットにはおらず。誰だろうか。まあ、2話見て判断ですね。すごい上手いと僕は思うんで、イゼッタちょいちょい見ます。

ドラ映画35周年記念作品。お話が残念極まりなかったが、画は素晴らしいので紹介。
(作画パートは全て推測)


・のび太ふっ飛ばされ後の煙
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桝田浩史作画。最近、ようやく桝田煙が分かってきました。桝田煙は、線の動かし方(「瓦」みたいな線のディテールを動かしたりするの)が特徴的かな。あとは、楕円を何個もくっつけた感じの影を動かして、煙の膨張や展開を表したりするのもよくやる。ただ、試行錯誤される方なので、影の入れ方とかは変わることが多い印象です。

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立方体の破片を大小さまざまに入れるのも特徴。この破片が重力を受けて落ちていくんのがめっちゃリアル。これほど良いと思った破片は、本当に久しぶりじゃないかなあ。村木以来と言っても過言ではない。良くも悪くも、「方形破片を描く」という文化はシルエットの流行と撮影(コンポジット)の発達で廃れてしまったので、描く人が少なくなった。ああ悲しい。



・しずかちゃんの水ビーム
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弾ける感じの水作画。ここはレイアウトがいいっすねえ。弾ける水が全方向に。



・のび太落下後の波★★
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桝田作画(※推測)。いやあ圧巻です。

落水した後、水の流れが2つに分けて描かれてますね。その場で打ち上がる水と、手前に押し寄せる波の2つ。波が伝わるスピードとか、遅れてついてくるのび太たちに合わせて動く波とか、すごく良く出来ている。のび太が水に落下してから、地下の秘密施設に辿り着くまでの一連は桝田さんかなーと思います。


[橋本作画との比較]
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(セシル04話:橋本敬史パート)

個人的には橋本作画と迷ったんですが、その迷ったポイントは

(1)持ち上がった水が再度落水する時のタイミング
(2)水内部のカゲの付け方

この2つが似ているので、大分悩みました。今でもよく分かってない。ただ、違うなあと感じた部分は、「落水するときのフォルム」ですね。橋本さんはまとまった塊で落下させるんですが、桝田さんは何個かの部分に分けて落下させていると思う。後は、桝田さんの方がややデフォルメ寄りなのもある。



・敵キャラドッスン
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割りかしハッキリとしたエフェクトが多いドラ映画では、珍しく粘土みたいな煙。破片の広がり方は空気の流れに合わせた感じで、意外と計算されている。青山浩行さんみたいな煙だなあ。


知らない方のために補足としてカッコイイMADを。

・青山浩行 爆発作画集


有名ドコロでは、「時をかける少女」「サマーウォーズ」なんかの作監をしています。アクションも上手いらしい、そこはよく知らん。日本でリアルな炎と煙を書かせたら、この人の右に出る人はいない、そういう私見がある。



・ビーム発射
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バシュンとビーム。広がる輪っかのタイミングも上手いなあ。タイミングと内部のディテールは政勝さんっぽい、後は全セルの中での、流線のディテールとか。うまく言えねー、もうちょい具体的に言えると思う。




新ドラになってから必ずと言っていいほどエフェクトの見せ場があったんだけど、今回は爆発や煙が少なく個人的には残念。政勝爆発や橋本煙が好きなんだけどなあ、あまり見れなかった。まあ、そんなとこです。そろそろ、「新・日本誕生」もレンタルできるので、そっちも見たいと思う。

■ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012/劇場)★
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カラーデジタル部によるCG。
十字架の棺にアンカーフックを打ち付けた後に、残った部分のワイヤーが画面手前でたるむのが魅力的。そこから、一気に引っ張られることでワイヤーもピンと張り、すさまじい速度を感じる。「遠心力」というワードがこれほど似合うシーンも中々ない。


これって何のためにワイヤーを射出して打ち付けたかといえば、目標物へ「移動するため」です。この「移動するためにワイヤーを使う」という表現は、CGが発達してから多く見られるようになった印象ですが、昔からボチボチあります。



<1、移動するためのワイヤー表現>

■宇宙戦艦ヤマト(1974)09話 『回転防禦!!アステロイド・ベルト!!』
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ブレーキが壊れ、冥王星の引力に引っ張られるシーン。これじゃあ冥王星に落下しちまうヤベエということで、沖田艦長が「ロケットアンカーを打て」との名采配。冥王星の裏側に位置する衛星に打ち付け、ヤマトはなんとか墜落を防ぎます。



■NARUTO(2003/TV)30話『蘇れ写輪眼!必殺・火遁龍火の術!』
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枝にキュイキュイと紐を食い込ませながらのターザン。奥から手前に自然にスッと入って、カメラを追い越していく。タイミングが上手いです。



■「ルパン三世 (2015/TV)」第四期-01話『ルパン三世の結婚』
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3DCG背動+キャラ作画

ワイヤーが光を受けるときは、ハイライトを入れるか、もしくは線を切って描く事が多いです。線が途切れているのに、僕らがそれを気にしないのは、「太陽の光を受けて白光したために透明に見える」という風に認識するためです。



最近で流行ったアニメだと、「移動するためのワイヤー使用」はやっぱりこれですかね。


■進撃の巨人(2013/TV)
(※ぜんぜん最近じゃなかった)

進撃の立体機動装置はどれもカッコイイんですが、特に印象に残ったのは11話と24話。

《11話》
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江原康之作画+CG背景動画(MADBOX)

立体機動シークエンス。重力で体が下に落りるのをの建物へとワイヤーをくっつけることで、再浮上し前へと急スピードで前進していく。そのため画面がガクンガクンとなる。ややPOVにも似た快感がありますね。ミカサのシーンは、低空飛行でよりスリリングに。


《24話》★★
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今井有文作画

女型の巨人にワイヤーを射出した後、不安定な体勢を保ちつつ斬撃。焦点をミカサに当てたアングルが、横から縦へと移り変わることで臨場感を出す。あと、バタバタするマフラーと髪のリアクションからは向かい風の強さを伝えていますね。このミカサ、劇中内で一番好きです可愛い。



■DARKER THAN BLACK(2007/TV)15話『裏切りの記憶は、琥珀色の微笑み… (前編)』★
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柱にワイヤーを引っ掛けて、一気に地上へ急降下。柱に引っ掛けた後に、ワイヤーを巻き取るので体はぐわっと引っ張られる格好に。縦の構図(煽りの構図)も合わせて「性急さ」を表す、ここは黒が追う場面なんで。それにしても、最後の煽りアングルいいなあ。



■アルドノア・ゼロ(2015/TV)18話『深い森を抜けて-The Rose and the Ring-』
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メカ、ワイヤーともにCG作画

旋回のためのケーブル射出。不穏な空気を感じ取った伊奈帆は、小惑星群の一つへと突き刺さして、移動する。スッとカメラ前を通り過ぎるメカが場面転換の役割も兼ねてカッコイイですね。




ざっと、「移動するため」のワイヤー利用を見てきましたが、「攻撃」の手段として使われるケースも多々あります。というか、ワイヤーと聞くと「こっちだろ!」思う人が多いとも思う。


<2、ワイヤーによる攻撃・戦闘の表現>

■DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 外伝 04話(2009/OVA)
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煙幕から飛び出し、画面手前へと投擲。切り替わった瞬間に、額の中心に突き刺さる。これによって、投擲の精度の高さ、ひいてはレベルの違いを魅せつける。



■コードギアス 反逆のルルーシュR2(2008/TV)25話「Re;」★
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メカ作画(ACつなぎ)

ランスロット(スザク)と紅蓮(カレン)の最終決戦。上へと登った後、紅蓮はランスロットの後ろに回り込み、ワイヤーを射出して自分の方へと引き寄せる。ランスロットはそれを左で跳ね除けつつ、右腕で紅蓮へと殴りかかるが、紅蓮は左腕で防御する。お互い一歩も譲らない、拮抗/緊迫した攻防。

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ここは、地味にACつなぎをしていて2カットになっているんですが、その慌ただしいカット割りが、手練れのパイロット2人だけにしか認識・共有できない世界をうまく表現していると思う。



■銀河烈風バクシンガー(1982/TV)OP
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TBしながらのフックショット+貫通からの大爆発。自由自在に曲がるワイヤーが多い中、これは直線で相手を貫いてますね。正義のロボっぽくて良いです。



■HELLSING V(OVA/2008)※追加
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最強の執事、ウォルターおじいちゃん。黒BGで流れるようなワイヤーの斬撃を描写する。唐突な暗闇からの攻撃となり、恐ろしさが増す。



■機動警察パトレイバー the Movie(1989/劇場)※追加kastさんどうも)
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ラストシーン。アルの細やかな動きに注目。まるで、曲芸のように雁字搦めにする。4カット目のワイヤーの動きはたるみも兼ね備えており、気持ちいい。



これらはワイヤー自体を使ってのダイレクトな「攻撃」。つまり、ワイヤーの鋭さや重さを利用して、相手をぶっ倒してやるという表現例です。また、最初に紹介したのは「移動」のワイヤー表現でした。

そうなると、「移動」+「攻撃」のワイヤー表現はないのかと思いませんか?
あるんですよ、これがまた。
カッコイイんですよ、これがまた。



<3、「移動」+「攻撃」のワイヤー表現>

■キルラキル(2013/TV)10話『あなたを・もっと・知りたくて 』★★
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まずは鮮血をヒモにします。
片太刀バサミにヒモをくっつけて、カウボーイの投げ縄みたくします。
思い切るぶん投げて、ハート型のメカに突き刺します。

ついでに自分の体を固定するために、スカートからジャッと地面にアンカーフックを打ち付ける。意外とここは合理的ですよね。鮮血が賢いのか、流子ちゃんが脳筋ではなかったのか。おそらく前者。



■機動戦士ガンダム 第08MS小隊(1999/OVA)10話『震える山(前編)』★
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グフ・カスタム操る、おっさんの俊敏な動き・判断がヤバイ。
シロウが覚醒したと気付いた瞬間に、危機を察知。こいつはヤベエとなって離れたところにあるヒートサーベルをワイヤーを使って、まるで吸盤でくっつけるかのように、一瞬のうちに自分の手元にたぐり寄せる。隙を見せないのは、まさにスペシャリスト。この後の事はなかったことにしよう。



■機動戦士ガンダムUC(2014/劇場)EP.07『虹の彼方に』
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いつも強い人間ばかりがワイヤー使うと思ったら大間違い。
バナージがユニコーンに乗るまでの時間稼ぎに、敵わないと分かっているフル・フロンタルに捨て身の攻撃をしかける。この捨て身の攻撃、自己を犠牲にしても守るという描写があってこそ、共鳴するユニコーンのカッコよさやバナージの強さが引き立つんですわ。



■∀ガンダム(1999/TV) 34話『飛べ! 成層圏』
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ここは対角線の一貫性に注目。対角線いっぱいにハンマーを振り回すと、画面を突き抜けた格好になり、敵の足に引っ掛かった後は一気に左下へと落下させる。


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ここのレイアウト(とカット割り)は上手いですねえ。



■化物語(2009/TV)08話『するがモンキー 其ノ參』★
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神原による腸ジャイアントスイング。奥行きあるレイアウトがいいですね。椅子や机が障害物となることで、ジャイアントスイングの威力を間接的に描写。パステルカラーでグロさ半減。



■IS<インフィニット・ストラトス> 07話『ブルー・デイズ / レッド・スイッチ』★
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オレンジCG。ラウラが酢豚の足にワイヤーを引っ掛けた後、セシリアの方向へとぶつける。流背っぽい線を入れることで、勢いと加速度を演出する。遠心力も重なり、地面へと叩き落とされる2人。すごい煙幕立ってるなあ、えげつない威力だ。



■蒼天航路(2009/TV)22話『呂布伝説』※追加
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一旦は捕らえられた呂布が人ごと鎖を振り回す。手前と奥を上手く使った画面だなあ。血の津波が凄まじい。呂布の圧倒的な強さが、語るまでもなく伝わってくる。



ふう…疲れた ひと休憩ひと休憩

さて、ここまでは「人間がある目的のために使う」ワイヤーの表現を見てきました。それは、敵の攻撃を避けるために使ったり、武器を拾うために使ったり、ワイヤー自体の鋭さ/切れ味を利用して相手を倒したりと様々でした。


ここからは、逆に「目的をもたない」ワイヤーやケーブルの表現を見ていこうと思います。目的をもたないというのは、「人間が意志をもって扱わない」ってことですね。なので、そういったシーンはより純度の高い物理現象として作画され、場面は人工構造物が中心になります。



<3、人工構造物のワイヤー表現>


■王立宇宙軍 オネアミスの翼(1987/劇場)

「シン・ゴジラ」総監督、庵野秀明作画。王立のラストシーンといえば、やはり氷の細かな描写が話題になることが多いんですが、実は連結しているケーブルの挙動もスゴイんですよ。

《発射台ケーブル1》
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発射台の挙動に合わせて、ケーブルやパイプがウニョウニョと動く。ロケットとの連結部分が動くと、結合部のケーブルは縮まって外へと膨らみ、後方や下方のケーブルは動いたエネルギーがそのまま伝わって波打つように動く。美しい。


《発射台ケーブル2》
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ケーブルは発射台に繋がっているので、ピンと張っています。そこから外れた瞬間、それまでの張力を失って空中に放り投げられる。この放り投げられて、たわんでいく様子がすごくフォトリアル。



■AKIRA(1987/劇場)★
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本谷利明作画。太いのでケーブルというよりはパイプになってしまうかな、まあ細けえことはいいや。内部の圧力に耐え切れず、縦横無尽に暴れまわるパイプが見所。



■コードギアス反逆のルルーシュ(2007/TV)25話『ゼ ロ』
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ゼロに対するニーナの鬱屈・憎悪が伝わってくるような、刺々しいケーブルの外れ方。これで不穏な空気が流れるわけですが、それがフレイヤの存在に繋がるんですね。



■大魔獣激闘 鋼の鬼(1987/OVA)
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怪獣の挙動に合わせて、無理に引っこ抜かれるケーブル。一瞬ピンと張るのは、ケーブルがこれ以上伸びない、限界の伸長であるということです。その限界を超えると、今度はケーブルに繋がった機械群が上へと持ち上げられる。つまり、「この怪獣はヤベえ」ってことなんですね。



■エヴァンゲリオン新劇場版:序(2006/劇場)
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サキエルさんの散歩による振動で、電柱のケーブルがばたばたと揺れるシーン。この電線のたるみと揺れ、いいですよね。赤信号の明滅も一緒になって「これから何かが起きる」という予兆になっている。



■新世紀エヴァンゲリオン03話(1995/TV)+劇場版「Air」(1998/劇場)
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どちらもアンビリカルケーブルの断線。03話では、画面いっぱいに断線したケーブルが暴れまわるのに対し、劇場版は右下でひっそりと切れている。この違いは何か。


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イカ戦はシンジの心情が不安定なので、ケーブルの断線というのは相当にまずいことだと示しているんですね。逆に、劇場版ではアスカが「この一万二千枚の特殊装k(ry」っていう風に、最強覚醒モードなので、ケーブルが切れたぐらいではアスカと弐号機は止めらんねえっていうことなんですわ。




ここまで見てくると、「ワイヤーとかケーブルっておっかないわあ…」と思われた方も多いと思います。こんだけ戦闘シーンばかりだと、ワイヤー自体が恐ろしいものに見えてくる。いやいや、それではワイヤーに失礼だ。恐ろしいワイヤーがあるのだから、その逆に「人を助ける」ようなワイヤーがあってもおかしくはないだろう。ということで、そういう表現を見ていきたいと思います。



<4、「人を助ける」ワイヤー表現>

■ルパン三世 カリオストロの城(1979/劇場)★
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気を失ったクラリスを抱きかかえながら、落下中のルパンが枝にワイヤーを引っ掛ける。この前のカットまで漫画みたいにふざけてたのに、一気に真面目になるルパンがカッコいい。ちょっと余った感じに、たるむワイヤーもいいなあ。

この部分は、2015年放映の第四期でオマージュされてたりもする。出来はあんま良くない



■コードギアス 反逆のルルーシュR2 13話『過去からの刺客』
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記憶が戻り錯乱したシャーリーを助けるスザクとルルーシュ。なんだワイヤーもケーブルも別に存在しないじゃないかと言われそうですが、ここではその代わりとして、

ギアス簡略図13-01

ルルーシュをケーブルとみなしてください。ケーブル(ルル)を掴んでいるシャーリーをスザクが引き上げる、という構図。ケーブル(ルル)を介して、シャーリーをスザクが引っ張り上げる。運動神経ゼロのルルはケーブルにでもなっていた方がいい。この順序が逆になったらマズイですよね。全員お陀仏になっていた可能性が高い。だから、ここのルルはケーブルになるのが正解なんです。何言ってんだか分からなくなってきた。



■ビアンカの大冒険(1977/劇場)
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ネズミのバーナードたちは、女の子を救うために、悪党メデューサを転ばせる作戦に出ます。投げ縄からパイプに引っ掛かけた後、紐がキュッと縛られる。引っかかった時にはネズミたちも少し浮く。小さいスケールがこそこそ感を上手く出しているシークエンス。



■機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-(1998/劇場) 
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ブラックサレナとの通信。心を閉ざしたアキトに、ルリルリが問いかけようと回線を直接繋ぐ。飛んでくる通信用ワイヤーに一瞥も向けないブラックサレナが、アキトの性格の変容を物語る。


今回は資料が多くて大変だと思いますが、もうひと踏ん張りしていただきたい。
ここまでの内容を踏まえた上で見てもらいたい作品があります。





メトロポリス(2001/劇場)★★

りんたろう監督、大友克洋脚本の名作映画。知らない方のために、これから紹介する終盤をかいつまんで説明すると次のような感じになります。


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感情を制御する部分が壊れてしまった人造人間の”ティマ”は、暴走してしまい人工知能をフルパワーで稼働させます。情報やエネルギーを効率的に取り入れるために、どんどんケーブルが繋がれていき、ティマの姿見からは人間味が失われていく。ティマをなんとか機械から引っぺがす友人の”ケンイチ”。


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引っぺがしたのはいいけども、ティマはまだ暴走状態のまま。「人間=悪」と認識しているので、旧友のケンイチの事も忘れており、暴走した思考のまま殺害しようとします。無機物なワイヤーは「彼女は今機械である」ということを強調している。


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やっとティマの暴走は止まったけども、体を支えることができずケンイチに倒れかかり、ジグラットから2人とも落下してしまう。ケンイチは何とか自力で這い上がるわけですが、ティマは機械の基盤のおかげでなんとか助かっている状況。そのティマを見て、急いで助けに行くケンイチ。




脆くなってしまったケーブルを懸命にケンイチは引っ張り上げますが、無情にもだんだんと切れていく。しかし、ケンイチは諦めません。引っ張り続けます。そして――


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ケーブルが切れる間一髪のところで、ようやくケンイチはティマの手を掴めます。

このシークエンスは本当によく出来ていて、

(1)頼みの綱であったケーブルが切れる(希望その1)
(2)引っかかっていた基盤が空中へと放り投げられる(希望その2)
(3)それらの代わりとして、ンイチがティマの手を握る
(4)ケンイチが新たな希望となる

こういう流れなんです。「ティマを救う」という希望が、ケーブルからケンイチという人の手に受け継がれた、ということなんですね。この流れが上手いので、後のシーンもすごく説得力があるのですが、それはこのようなサイトではなく是非本編で見て楽しんでいただきたいと思います。




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「メトロポリス」におけるワイヤー表現のすごさというのは、「変化」にあります。ティマに取り付いていくケーブルは、最初は無機質で恐ろしいものでした。それが、次の場面では、ケーブルの基盤が引っかかり、純粋な物理現象として描かれる。ここでは、まだ人間の意志は関与していません。そこに、ケンイチの意志が入ってくると、今度は「助けるため」のケーブルになる。

全て同じケーブルであるにもかかわらず、状況やキャラクターの心情が変わっていくと、その意味がたちまち変わっていく。これがすごいと思うんです。最初はあんなに無機質で恐ろしく見えたケーブルが最後には、ケンイチが懸命に引っ張ることで、無機質な”モノ”ではなくなってしまう。無機質であるはずのケーブルが、まるで意志をもったかのごとく映る。これが素晴らしいと思うんです。

たまにはな。新しい感じのも取り上げていかないとな。


ビームからの着弾
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マップ爆発が均一に広がってるんで、Flashによる作画かな。多分、CGではないとおもう。ビームはサーカスな感じで、流れと左右に分かれる電撃のタイミングがカッコイイ。ビームはこれなんで途中で途切れてんだろう、着弾地点が思ったより近いのかも。後はできることなら、突き破った後のダブラシの風は動かしたかったんじゃないのかなー



斬撃1
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3つほど電撃フォルムが入ってますね(一つは斬撃の軌跡かな)。十字クロス光がいい味出していて面白い。電撃・衝撃のフォルムというと鋭角的なものを思い浮かべるので、丸っぽいフォルムは意外な印象を受ける。やり過ぎ感はあるけど、これはこれで。爆煙は内部に巻き込んでいく感じで上手い。



斬撃2
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お見事。十字クロス+ショック→爆発。最初の方は素早く冷めていくんだけど、後半はじっくりと変わっていくので、温度表現に緩急がついてて良い。あと、爆発の黄色部分はぐるっと回転させてるかな、細かいですね。爆発を見るという点では、非常に女の子が邪魔w

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あと、ここの輪っか(ベイパーコーンかな)はめっさ上手いですね。輪っかが現れて消えてのタイミングと、レイアウトがいいです。



キックでどかーん
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奥でいったん爆発させて、次に手前の方で爆発させるので画面に奥行きや臨場感が出る。爆発のタイミングもいいですね。

39]03]

1カット目は親しみ深い、鋭角的な電撃フォルムですね。2カット目の、電撃・衝撃ディテールは「斬撃1」と同じく、斬新なフォルム。この辺は理屈抜きでかっこよけりゃ良し!みたいな。田中宏紀のクロス光と同じかな。「ナデシコ」のカットインとかそういう美学を感じる。

今回は火花と破片について。ややニッチ。


・ノンナVSうさぎさんチーム
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この場面では「火花があること」は安心材料(押し合っていると撃たれない)なので、離れて火花が無くなってしまうと一気に危機感が増す。



・着弾、地面をえぐり飛ぶ破片
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CG破片+CGエフェクト
地面を抉った後、空中に飛んで行くCG破片は、TV版も良くできてた(01、03話あたり)。画面奥で舞い上がった破片が、手前に落下するタイミングが上手い。



・突っ込むノンナ ☆
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首振りPAN。画面を覆ってしまうほどの激しい火花。ここで「ああ高度な戦いをしていたんだなあ」ということに気付きます。どちらも卓越した技術で走行していたけども、あんこうチームが一枚上手だった。



・ローズヒップ被弾
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これは作画かなあ。砲弾がはじけた感じを全方位火花でかっこ良く。



・急制動+急旋回
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激しい火花とボロボロになった車体も映すことで、試合のクライマックスを盛り上げる。突っ込むノンナのシーンもそうですが、場面転換の役割もありますね。「こっから最終決戦や!」というシーンへ移り変わっていく。



・カール着弾、飛び交う破片
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1カット目もチラホラ見えるが、2カット目カチューシャの周りを飛ぶ破片が分かりやすいか。破片の嵐の中を抜けるカチューシャの身を案じてしまうほどに、臨場感がすごい。



・ジェットコースターその1
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疾走感・臨場感の演出


・ジェットコースターその2
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ジェットコースターのフレームを無理やり走っているので、チョビ子車両よりも多くの火花が発生。大量の火花によって、大学選抜メンバーの必死さが伝わる。



・T28 パージシーン ☆☆
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これを紹介したかった。めっちゃカッコいい。ジグザグ左右に火花が散っていく、そして、一瞬間を置いて装甲が外れる(その後、少し車体が浮くのも地味ウマ)。この流れが最高。劇中のカットの中で一番痺れました。






ひゃっほう!火花・破片は最高だぜぇ!

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<おわりに>

破片・火花といった、パーティクル(粒子表現)の表現は画面のクオリティを左右するどころか、今やアニメーションの画面に必要不可欠なものになりつつあります。「画面のリアルさ・正確さ」を追求する風潮は留まることを知らず、多くのスタジオにおいて撮影(1*)の役割は大きなものになりました。

リアルさを追求するのは、決して悪いことではありません。問題は、そのリアルさが似通ってしまっていて個性がないことです。もう、現実のカメラに嘘をつけなくなってきている。いかに嘘をつくことがアニメーションという表現媒体の本質であるのに、カメラをコントロールするどころか、カメラに振り回されている。アニメでしか出来ない表現を待っているのに、実際はそうではない。表現したいこととは別に、関係のないしがらみに怯えた映像になっている。

ガルパンは近年では珍しく、(他に比べ)撮影が少なめの作品です。それでいて演出したい部分には力を入れるので、はっきりとした意図が感じられる。「ここはこんな風に見せたい」という意図があるからこそ、画面は多様性を失わず、見ていても飽きないものとなりうる。だからこそ、ガルパンの画面は良いのだと思います。

・2012年F1 ベルギーGP決勝 オープニングラップ・クラッシュ


F1のオンボード映像(0:32~;車体のインダクションポッドという部分にカメラが付いていて、そこから撮られている映像のこと)。

これは日本人ドライバー、小林可夢偉が自身初のフロントローを取った時の決勝レースです。このクラッシュは簡単に言うと、グロージャン(黒い車体)という危険なドライバーが、ハミルトン(銀色の車体)にひどい幅寄せをしてタイヤ同士が接触。後は、コントロールを失ったグロージャンがハミルトンに押される格好になり、フェルナンド・アロンソ(赤色の車体)の上を通過するという事態に陥りました。本当に死者が出てもおかしくない危険なクラッシュ。

それで、F1とガルパンに何の関係があるかということなんですけど、ガルパンってPOV(主観視点)をすごく多用するじゃないですか。ガルパンが持つ臨場感は一体どこから来ているのかと思って考えてたんですけど、僕はF1のオンボードが一番イメージとして近いと思う。


ちょっと比較してみる。

・ベルギーGP決勝のクラッシュと、ガルパン劇場版ラストシーンの比較
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ガルパンの方はキャラ主体のPOVですね。共通するのは、車体に固定されたカメラが衝撃などをダイレクトに受けることです。激突されて車体がバウンドすると、カメラの位置も高くなる。どんなことがあっても、「カメラは固定されたまま」というのが重要なポイントっぽい。



モナコGPとかは聞いたことがある人も多いと思うんだけど、ガルパンPOV戦闘シーンの持つ気持ちよさは、まさにああいった市街地コースのオンボード映像からよく分かると思います。

・F1 2014年 モナコGP オンボード映像


狭い道をヒュンヒュンと抜けていく、危険が常に隣り合わせでハラハラするような感じですよね。ガルパンPOVというのは、やはり高速で駆け抜けるF1を参考にしている気がします。それ以上のことは今は分からん。普通のPOV/FPSとはまた違うのかなあ。


「超音速の貴公子」というセリフを自動車部が言ってましたが、あれはアイルトン・セナのことですね(正確には「音速の貴公子」)。古舘が実況で広めた。ちなみに「皇帝」というと、ミハエル・シューマッハ。後は、エリカ「スリップするのか?」カチューシャ「スリップストリームね」とかもありましたね(スリップとは、前車の後ろに付くことで空気抵抗を減らし加速する現象・技術)。そういう観点から見ても、F1は出したかった要素なんだと思う。


セナとモナコというと、やはり1992年の対マンセルが浮かびます。ノーズトゥテールの戦い。三宅さんの名実況も素晴らしい。





<参考文献>
F1マシンの概説

「ガルパン劇場版」は興収21億円も超え大ヒットしました。良いことです。先日ようやっと見ましたが、作品の内容は王道を往くものであり、なるほどこれは好評を得るのも当然と思った次第です。

さて、突然ですが「ガルパン」といえば何でしょうか?そうです、戦車です。戦車といえば、砲撃。砲撃といえば、そうエフェクトです。今回は、煙を中心に「エフェクトに含まれる意味」といったものを詳しく説明していきたいと思う。なに、たかが煙に意味なんてない?いえいえ、煙って意外と重要なんです。

戦車道には、エフェクトの大切な全てのことがつまっている。スナフキンおばさんの言葉を借りて、そう言っても過言ではありません。二部構成でエフェクトを紹介していく。(大洗女子優勝記念)エキシビションと、対大学選抜メンバー戦の2つ。特に素晴らしかったエフェクトをご紹介。まずはエキシビションから([追記]2016/09/12修正済み)。



・砲撃2発の地面への着弾
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CG+作画エフェクト(1発目がCG、2発目は作画)。
1発目の着弾は、時間が経つにつれ、煙が上昇しつつ下のほうはスーッと消えていくのが自然で上手いです。2発目は、着弾の勢いそのままに煙が発生した後、丸まって漂うのが良いですね。破片の散らばり方もグッド。



・うさぎさんチーム被弾
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ノンナによる無慈悲な砲撃。この前のシーンでギャグをやってることもあり、痛快にスパーンとぶっ飛んでいく。2カット目にぶわっと入る衝撃波が、またいい味出してますね。



・スイーッと開く店の入り口 ☆
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あんこうチームの砲撃で店のドアが開く。店の内外で煙のレイヤーが分けられていることで、煙の多層感が上手く出ています。めっちゃ上手いです。その後、砲撃により、広がっていたあんこうチームの砲煙は消え去り、代わりにプラウダ校の砲煙が店内に充満します。煙をかき消すほどの砲撃ですから、ここで「プラウダ校が優位に立っているんだ」ということが分かります。



・連続着弾
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ここは全部作画かな。注目してもらいたいのは、画面右下の煙。画面左で3つの煙が発生した後に、この煙が起こることで隅々まで攻撃しているのが伝わる。すなわち、プラウダ校は容赦無い攻撃をしているんですね。まさしく集中砲火です。



・戦車同士の衝突による爆発
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作画+波ガラス(撮影)、小澤作画(※推測)
透過光を全面に押し出しながらの大爆発。時間が経つにつれ、爆発は冷やされていきます。このカットでは、透過光の小さくなっていくスピードが上手いですね。ぶわっと広がる衝撃波や、画面の四隅が一瞬暗くなるパラフィンも良い。

(※「波ガラス」は、簡単に言うと、陽炎のような表現をするためのフィルターで、「パラフィン」は、画面の一部に影を落とすためのフィルターです)



・落石と煙
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これ地味に良かった。落石と一緒に煙が落ちていくわけですが、細かいところまで描写していると画面の写実性は増します。そして、物語にも納得しやすくなる。ここは後退命令が出ているわけですが、落石と煙がその理由になっているんですね。建物もヤバイし、まあここは退く場面だ、というのをエフェクトでも表している。知波単学園はそんなのお構いなしなんですが。




・爆発、3連続
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橋本作画[追記]。ドンドン、バーンみたいな感じで。こういうの大好き。3つ目の爆発の広がりと透過光が小さくなっていくスピードが同じなのがいいですね。こういう感じのスピードだと、爆発の後に余韻が出ます。後、1、2つ目の煙がわずかに上昇しながら漂っている感じも細かくて、写実的です。



・海の中からこんにちわ ☆
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橋本作画かも?(※推測)
吉本雅一さんのようです(情報をいただきました。ありがとうございます)

水作画ですが、素晴らしかったので紹介。海から上がる時、まず履帯周辺にあった海水が流れ落ちていき、その後戦車の上に乗っていた水が流れていく。それぞれ流れ落ちていく感じも良いですが、特にいいのが戦車前方の流水。ヨッコイショと持ち上がった水が、前方の装甲部に張り付きながら流れていく。いやあ、めちゃウマです。誰だろう。



・カモさんチームの被弾
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阿部作画かも(※推測)。被弾した後、カメラを追い越して飛んで行く。1カット目の爆発もタイミングが良くていいんですが、2カット目がもう最高ですね。戦車が飛んで行く時に煙も付随して伸びていく。そうして、止まった後には、煙はその上空で漂いながら消えていく。言うことなし。素晴らしい。



・テールランプの尾引き
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光エフェクト。尾っぽが目に見えるとやっぱりカッコイイですね。廃校を気にしていないように振る舞う自動車部の哀愁が、儚く消えていくテールランプから伝わってくるようです。





ちなみに、「ガルパン」のCGはTVシリーズからグラフィニカが担当しています。3DCGI監督は、柳野啓一郎さん。昨季ですと『楽園追放』だとか、印象的なエフェクトを作る会社です[追記修正]。エフェクト作監(作画)は阿部宗孝さん。


さて、次は対大学選抜メンバー戦を見ていきましょうか。
大きな見所は、やはりカール自走臼砲の周辺です。

・集中砲撃されるうさぎさんチーム
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集中砲撃。前後左右、全てに着弾しており逃げる場所がない。大学選抜メンバーの強さは、この森のシーン周辺で示されます。サンダース大付属の各車両は何とか戦況を把握しながらも、応戦することができません。なおさら熟練度が低い、うさぎさんチームや知波単学園なんかはレベルが違うことを思い知らされるわけです。



・カール自走臼砲その1:アブノーマルな状況
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ライティング(光の明暗)に注目。カール自走臼砲の砲弾が着弾した後、逆光になり、煙の中に覆われてしまうので戦車は暗くなってます。また、履帯や砲身にハイライトが入ることで、爆心地の状況を写実的に描写。このように異質なほどリアルにすることで、他のシーンと差異を出し「アブノーマルな状況」を演出をしている。



・カール自走臼砲その2:煙の中をすり抜ける ☆
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このカットもスゴイ。ここはプラウダ校の戦車がPOV(主観視点)で後退しているんですが、カール自走臼砲の砲撃によって生じた煙の中を通る様子をCGの煙で描写しているんですね。作画ではやや困難、可能ではあるけれどCGの戦車とは多分合わない。POVを存分に活かした、この臨場感は素晴らしいです。いやあ、このカットはグラフィニカの真骨頂ですね。



・追撃をかける大学選抜チーム ☆
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ニュッと出る砲身が何とも言えず不気味。プラウダ校(カチューシャ)に対して、大学選抜メンバーが追撃をかけるシーンです。砲身だけが煙の中から現れ、次のカットで戦車全体が煙から出てきます。煙だらけで見えづらい視野の中、臆することなく追ってくる。



・カール自走臼砲その3:砲撃
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カール自走臼砲のすさまじい砲撃。この煙の多層感(特に2カット目)は、何個かCGの煙を重ねたりしてるのかな。透かした煙を3個ほど配置して衝撃波とすることで、カールの規格外さを表現。



・マフラーの排煙 ☆
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このマフラーの排煙は、物語の「転」です。カール自走臼砲というのは、平たく言えば、チートです。プラウダ校や黒森峰といった手練でも苦しい戦いを余儀なくされている。そういった重苦しい空気を振り払うために、小気味良く振動しながらのマフラーの排煙があるわけです。再始動みたいな感じ。



・カール自走臼砲その4:マンガな動きとリアルな煙
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爆発が良いのは言わずもがな。ここはタイミングに注目。最初のカールの砲弾は少し溜めてから、向こう側に飛んで着弾しています(※これを作画で「先ヅメ」と言ったりします)。それから煙が2つあると思います、どーんと後ろに広がる煙と、前に押し寄せてくる煙。後ろの煙はじんわりですが、前の煙は素早いので、タイミングに差があるんですね。このギャップによって臨場感が増します。

このカット、背景以外は全てCGです。スゴイ。



・カール自走臼砲その5:カール討ち取ったり
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トリプルアクション。作画エフェクト。
とてつもない破壊力を持つ、カール自走臼砲を倒すということは、この試合で大きな意味を持ちます。それを強調するために、3回映してるんですね。じんわりと発生して漂う大きな衝撃波は、カメさんチームの砲撃の破壊力、ひいてはこの試合におけるファインプレーを表現しています。




・超重戦車T-28の登場 ☆
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T-28の初登場シーン。ただ煙の中を砲身が通っているだけなのに、まるでオーラのごとく煙が砲身を包む。この1カットだけで、「この戦車は強い・ヤバイ」というのが伝わってくる。



・避けて、当たって、もう片足走行さ
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危険を察知したダージリンの警告で、すぐさま引き返すローズヒップ車両。T-28の砲撃を寸前のところで交わしたが、衝撃波を受け壁に叩きつけられる。地面を這うように起きる衝撃波の煙が上手い。砲弾に追随するような衝撃波の起き方で、マッハの描写みたい。



・T-28、再登場
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T-28は超重戦車で、スペックが高い戦車です。装甲も厚く、中々普通の攻撃では倒せない…というようなことを逐一言葉で説明していてはダサくなる。そこで、このように砲撃後に大きな煙の中から出て来させるんですね。「T-28はとんでもない戦車」というのを言葉ではなく、画で語っているわけです。



・観覧車の崩壊 ☆
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観覧車と土台を繋ぐ部分の破片が良いです。あと、観覧車のフレームが地面に落っこちた後、その反動でゴンドラのガラスが割れてキラキラと光っているのも細かくて素晴らしい。フレームが落ちた後、煙が発生してますが、これは観覧車のスケールを表すのに効果的ですね。滞留する煙も上手い。

CG破片はこのシーンに限らずよく出てきますが、作画のエフェクトと合わせても違和感がなくて驚きました。多分すごく試行錯誤してますよ、あの破片は。





・アリスとのラストバトルその1:アトラクション破壊
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爆煙と破壊。煙の中に入り込んでいく破片が良いです。アリス(大学選抜メンバー隊長)とのラストバトルでは、このように大きな爆発が散見されました。たった一手でも間違えれば、即座に白旗が上がってしまう。そんなレベルの高い攻防が繰り広げられていることが、エフェクトから伺えます。



・アリスとのラストバトルその2:アトラクションへの砲撃と揺れ
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CG+作画エフェクト。よく見ると、二度爆発してますね。アトラクションに着弾した後に一度爆発し、それを押して動かす時にもう一回爆発した、という感じでしょうか。



・アリスとのラストバトルその3:大スケールの爆発 ☆
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作画エフェクト+CG破片。
遮蔽物を挟んでの大爆発。大スケール。2色の影により、まるでティラミスのように多層的で立体的な煙になっている。各方向へ伸びていく煙も見事です。後は、アトラクションの一部がラストで手前に寄ってくることで臨場感がさらに出てますね。はらりと落ちていくCG破片も良い。





いかがでしたでしょうか。他にも良いエフェクトがあったんですが、これぐらいで…。エフェクトも意外と奥深いことが分かると思います。何より楽しいものです。エフェクトとは、いわば、ガルパン劇場版における遊園地のような存在です。どのようにでも楽しめる。また、ガルパンのように爆発や煙がたくさん出てくるアニメでは、エフェクトが持つ意味はさらに大きなものとなります。

ガルパン劇場版は大変楽しかったです。ガルパンを通じて、エフェクトの楽しさも伝われば、これ以上のことはありません。

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