GomiStation.refight

I LOVE U,I KILL U

カテゴリ: アクション作画

久々の新作野中作画(※NCです)、そしてこれは一つの到達点だろうとおもう
(こんな人材を独占しているスタジオがあるってマジ?)

ベッドに飛び込むひな:1カット目
20201127224214nonaka.mp4_snapshot_00.00.459nonaka.mp4_snapshot_00.04.213

頭部の動きと髪の毛や布のリアクションに注目。飛び込んだ際、頭部は2、3回跳ねて、それに連動して髪の毛がパサパサと動いていく。首を完全に起こした後に、少し首がベッド方向に戻っていくところがすごいのよ。良い仕草・所作とはこういうもの。
(※あと、球体や球面を正確に取ろうとしている。これは2019年ぐらいからの傾向)





だらだらするひな:2カット目★
20201127224222

身体を捻りながら、上体を起こす。腰~太ももに上体の体重を乗せて、よっこらセイーと身体を起こす。太ももに乗った体重を受けて、右足が浮く。このカットめちゃくちゃリアルですよね。あとはシーツのしわも良い。

たいてい次のカットは、そういうカットに引っ張られてリアルになりがちですが、そうならないのが野中のすごさの一つです。3カット目へ。



うむ!:3カット目★★★
20201127224403
nonaka.mp4_snapshot_00.12.887nonaka.mp4_snapshot_00.13.471

首をかしげて、肩が少し上がり、髪の毛が少しだけ揺れる。
デフォルメの女の子が可愛く映る。
これが野中だ。これこそが野中作画だ。

派手な動きではないけれど、良い芝居ですよね。このように細かい芝居・仕草を入れることで、キャラクターの性格はよりいっそう伝わる。昨今よく見る目立ちたいだけのクソ作画とは違って、キャラに魂を感じる。そこが良いですよね。



んなことわなぁい!:5カット目★★★
20201127233507

いやあ、びっくりした。これは野中作画の一つの到達点だろう、とおもう。

なぜ、これほどまでの衝撃を受けているのか。それは野中さんはオバケを昔はこんな風に乱れ打ちしていなかったからです。



2013~14年あたりの野中作画では、オバケ+「線ブレ」or「デフォルメ崩し」で残像を表現してたんですよ。百聞は一見にしかず。ご覧あれ。

未確認で進行形#2(2014/TV)
20201128001757

真白たんがびっくりしてお兄ちゃんに抱きつくシーン

nonaka_mideshi02.mp4_snapshot_00.00.292nonaka_mideshi02.mp4_snapshot_00.01.126

こういう崩し方で残像を表現していた。
どこまで崩しても、あくまでも線画だったんですよ。



線画・主線ではないオバケを使うようになったのは、わりと最近、2017年あたりから

エロマンガ先生(2017/TV)#8
20180308202949

こういう感じです。オバケを使うことで、一瞬だけタイミングをずらす。そして、オバケを少し目に残すように描く。これをなぜ多用し始めたかなんですが、もともと、中抜きのタイミングを多用していた野中さんはおそらく、オバケを代わりに使っている。つまり、中抜き・中無しだった部分のタイミングにオバケを入れている、と思う。


20180308202949.gif_snapshot_00.00.500
線がない(主線・輪郭線がない)オバケ

いい意味で野中作画は洗練されていき、2014年ほど中抜きをしなくなりました。ただ、そのタイミングの貴重さ、みたいなものは野中さんも重々承知なはずで、それをもっと良い形に昇華したんじゃないのかな。それがこのオバケの多用に繋がったと考える。


で、この流れを踏まえた上で、今回の「神様になった日」7話の5カット目を見てみましょう。


20201127233507

同スロー
20201128004748

ここまでオバケの乱れ打ちをした上で、元の作画スタイルを保つ(洗練されている)のは異常としか言えない。このオバケの多用は、2014年あたりの中抜きタイミングの進化だとぼくは考える。
nonaka.mp4_snapshot_00.26.276nonaka.mp4_snapshot_00.27.444

この線画なしのオバケ!
線なしのスカッシュアンドストレッチ(潰しと伸ばし)!
いやあすごい目に残る。2014年のタイミングに近い。再現ではなく進化している。


野中正幸ほどのトップアニメーターが何の意図もなしに、オバケ乱れ打ちをするはずがない。2014年のころのパカパカした、中抜きのタイミングを洗練させた。正直に言うと、これ以上進化すると思っていなかった。写実に傾倒した「Summer Pockes」や「バイブリーアニメーションPV」などで、正確なだけで面白くもないリアル系の動きになると思っていた。そういう部分は恥じ入る気持ちです。

野中正幸の作画のすごさとは、リアルと漫画(デフォルメ)の同居にあります。1カット内で、リアルな動きを保ちつつ漫画的な表現を入れてくる。5カット目で言うと、ヒナの困った顔ですよね。こんなデフォルメを入れながら、リアルで可愛い動きを描く。これがすごい。


野中正幸は、ひとことで言えば、2010年代前半にもっとも作画ファンを驚かせたアクションアニメーターの1人であり、現在も活躍中です。

現在は天衝主催のバイブリーアニメーションに所属。2010年代後半の作画界隈に影響を及ぼしたであろう、と考えています。どの辺が影響となって他の作画にあらわれているのか。それらを説明していきたい。

野中正幸の作画に対して、作画のスタイル変化から以下のように5つの区分を設けました。

(1)初期(2010-2012)★→この記事
(2)中期    (2011-2013)
(3)デフォルメ期(2013-2015)★

(4)転換期   (2015)
(5)リアル傾倒期 (2015-2020)
★・・・大事な時期

全ての時期について、説明記事は出す予定。そうでなくっちゃ、このブログではないでしょう。

おまえら…おまたせした ^し^

野中作画、語っちゃうぜ



初期の野中作画をとりあえず整理していく





(1)初期:アゴガクガク/予備動作の芝居

この時期の作品は、「ゼロの使い魔F」「ゆるゆり(1期)」など、2011年前後のものです。では、その作品内でどのような特徴があるか。



<1、アゴガクガク>

20200526172210
(■「ゼロの使い魔F」2012/TV #12)

姫様とルイズの口げんかシーン(後に手も出る)
さて、野中さんの初期から今に至るまで変わらぬ特徴があります。それは、「頭部(顔)~肩の芝居」を他のアニメーターよりも重視していることです。これは姫様との口げんかのシーンですが、その怒りを上半身、とくに顔(アゴ)を激しく、小刻みに動かすことで表す。最後の方では、手に力が入って腕がピンと伸びた結果、肩の位置が上がっていますね。これも上手い。

顔は動かず口パクだけの作画が多い中で、これだけ情緒たっぷりに動かすことができる。それがまずは大きな大きな魅力の一つであろうと思います。で、これを「アゴガクガク」と呼んでもらった方が速いかなと思って名付けました。もちろん、馬鹿にする意図はいっさいありません、わかりやすさ重視。


アゴガク例2
20200526172239
(■「偽物語」2012/TV #6)

月火ちゃんの狼狽シーン。駆けつけダッシュも上手いが、やはり顔アップの2カット目に注目。
誇張された、まるで舞台のような顔の動かし方。顔(アゴ)の位置が激しく上下し、遅れて髪の毛がリアクションする。音が無くても、この作品を知らなくても、彼女が慌てふためいているのは伝わる。




もう一つの特徴に行く前に、少しだけ抑えておいてもらいたいものがあります。

それは、アニメーションの基本的な動作について。簡単です。動作を3つに分けただけ。
予備動作、本動作、フォロースルー、この3つ(用語は明確に定まっていないようですが、この記事ではこのように書きます)。はい、次の画像で具体例を紹介。



動作の分割とは
20180308182248
(■「スロウスタート」2018/TV #2)

花名ちゃんのど下手ソフトボール投げがいちばん分かりやすいので採用しました。
ここでのメインの動きって「ボールを投げること」ですよね?予備動作とフォロースルーはこの動きの前後にあるものです。

投げるために体をひねる→予備動作、投げた後の慣性の動き→フォロースルー
下図をご覧ください


動作の分割

こんな感じ
どんな動作にも、その準備になるような動作(予備動作)が存在しており、さらに動作が終わった後の慣性の動作(フォロースルー)もある。まあ野球のバッティングとか、ゴルフのスイングを思い浮かべて貰えれば分かりやすいかと思います。あとは、電車は急には止まれない、とか。それで、アニメーションにおいて、これがないと非常にキャラクターの動きが堅くなったり、活き活きとした様子になりません。

これはアニメーションの基本中の基本です。どのアニメーターも意識しているはず。意識してなかったら、そいつはド下手くそだ。


それで、ようやく本題ですが、野中正幸はキャリア初期から、予備動作周辺の芝居がズバ抜けて上手い。これが最盛期(2013~)のフォロースルー傾倒/柔らかい関節の芝居と上手くハマっていくんでしょうね、と思う。最盛期って言い方はアレですけど、これらとデフォルメ作画を合わせて、あの2013-15あたりの野中作画になるので、あのころってもう再現できないんですよ。その話はまた今度、初期の野中作画に戻りましょう。




<2、予備動作の芝居>


20200526172230
(#12)

魔法が通じずうなだれるルイズ。後ろにたじろぎながら、手元をどこにやってよいか分からず落ち着いていないのが分かりますよね。体がストンと落ちてしまう、本動作よりも、1カット目の後ろにたじろぐカットの予備動作の芝居が上手いんですよ。本動作にキレイに繋がるのは理由がある。これを業界に入って、たった3年でやってしまう。



20200526172220
(#6)

これは姫様との喧嘩シーンの続き。姫様が気に食わないのを、顔を「ふんっ」と振る芝居を見せることで描写(予備動作1)。肘関節を柔らかく後ろに回しながら(予備動作2)、ビンタ(本動作)。キャリア初期の野中さんは意外と過小評価されているんですが、これだけのことをやっている。

姫様の顔が2回に分けて落下していくのも注目ポイントです。確実に、野中さんは頭部の重さを重視して描いている。これぐらいの落下だと、だいたい2回にわけないと衝撃を吸収できないだろうというのが野中さんの思考だと思う。

ここら辺をちゃんと見とくと、そら「未確認で進行形」の芝居作画とかに納得いくんですわ。アニメーションの基本となる、予備動作の土台がしっかりと(センスも基本も)あるわけですので。だから、野中MADでここを外していない人を見ると、「渋いなあ~お客さん」となるわけです。嘘です。ニコニコの野中MADがいちばん好きではあります。


ようやく出せた。野中ファンの方々には大変お待たせしました。
次回は、中期を扱う予定。この辺から特徴がずいぶんと出てきますかね。

リハビリ更新



「盾の勇者」6話には野中正幸が参加

野中正幸というのは、かんたんにいえば、100年にいちどのアニメーター。そう易易とは出てこないアニメーターと思ってもらえれば。


フィーロてくてく
20191208110841

初めて見るものばかりでキョロキョロと周囲を見渡しながら、走り回るフィーロ。最初は少し緊張気味で腕に力が入っている。面白そうなところと分かった瞬間、肩の位置が下がり腕を軽く振りながら走る。最後の方で、また視線が右側に来ているのはフィーロにとってやはりこの衣服屋が新鮮ということなんだろうな。

ああ、こういったとても高いレベルの作画を難なくやってのけてしまう、そういう存在になってしまった野中正幸は。結果的に、さほど目立ちはしない作画になってきた感じ。「未確認で進行形」「きんいろモザイク」のころは、まだタイミングがパカパカ(今よりもっと中抜き作画をしていた)ので、もう洗練されきったんでしょうね。

洗練されたのもあるけれど、今の野中正幸はリアルに傾倒しているとおもう。あまりタイミングや動きを誇張することが少なくなった。あとはやっぱり球体ですね、フィーネの目元に注目。


20191208115033

目線の水平位置は固定されながら、球体的に移動していく

この辺りの特徴が出始めたのは「Summer Pockets(2018)」OPから



(※1分49秒あたりから「振り返るよ~」の白髪少女の振り向き)

こういう感じに球形で取っている。これ分かりづらいかもしれないけれど、デコまで描くことが球形で描いているということです。こういうのやらなかったんですよ、みでしの頃の野中正幸は。上手い人が最後にたどり着くのは、今も昔も球体、球形とか、そういったシンプルなものになるんだなあと、さいきんしみじみと実感している。

Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-|https://anime.fate-go.jp/ep7-tv/

飛ぶ鳥を落とす勢いのFGOのアプリセールスによって、アニメ化2作品連続もさもありなんという感じ。

──────────────────────────────────────────────────
制作会社は、CloverWorksというA-1Picturesのいちレーベル
2018年1月にレーベル化し上記名称に変更した。代表作に、「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」「ダーリン・イン・ザ・フランキス(※TRIGGERと共同制作)」など。

CG制作は「GENBA」
https://www.gemba.co.jp/
https://cgworld.jp/stdatabase/21106.html

「デジタル・フロンティア」の子会社
直近での作品は「いぬやしき(2018)」「荒野のコトブキ飛行隊(2019)」などのCG制作を担当した。

──────────────────────────────────────────────────


1話スタッフ
脚本:武井風太 
絵コンテ/演出:赤井俊文
総作画監督/作画監督:高瀬智章

(よく分からない)話はええ!絵はどうなんや!


クソ上手かったのは最初のマシュの駆けつけダッシュ

ぴょんぴょん
FGOB01-01

マスターの元に最速で駆けつけるために、マシュが画面左に切れ込みながら走る。右足の踏み込みが強く、バネっぽく跳ねて左足の動きへ。これだけ横に大きく重心をずらす走りは珍しいと思う。


同スロー
FGOB01-02

脚の装備が当たらないように、脚同士の間隔を空けてジャンプしているのかも。







あとは全体的に俯瞰のカメラワークが目立った

FGO 絶バビ.mp4_snapshot_18.42_[2019.10.07_19.43.00]
FGO 絶バビ.mp4_snapshot_21.39_[2019.10.07_19.30.24]FGO 絶バビ.mp4_snapshot_21.47_[2019.10.07_19.30.33]

締めのローポジから俯瞰へとアングルが変わっていく回り込みCGはやっぱいいですね

以下2つ、おっこの祖母ミネコの小さい頃の回想シーンです。回想シーンの特にここがヤバい。


1,足滑らし瓦突き破り
20190902004854

ミネコはウリ坊と会話しているときに、体の重心を下げて覗き込む。気が大きくなり、すっと脚を伸ばして上がろうとして、重心が端にかかり瓦を踏み抜いてしまう、というワンシーンなんですが、すげえいいですよねコレ。


重心移動の中心についてはあまり考えたことがなかったので、考えてみよう。
中心ってなんだ?

<重心移動の中心>
重心01重心02


重心比較

ミネコの体、たとえば、頭や腕、脚はめっちゃ動きますが、腰回りはそんなに動いていない。つまり、映像におけるキャラクターの重心とは、おそらく「あまり動かないところ」にある、と言って良いのではないか。だから、だいたいが現実と同じく腰付近になる。あとはアニメーターそれぞれの考え方によって、それがお腹に近くなったり、脚に近くなったりするのでしょう。




と重心を抑えつつ、このシーンでいちばんすごいのはタイミングです。
2→3カット目に注目

20190910023026

001002

1カット目は体を揺らしながら割とリアルに重心移動するんですが、2、3カット目はデフォルメなタイミングなんですよ。ミネコの顔のバウンドとか、デフォルメ絵を使いつつ後ヅメしている。「後ヅメ」と言うのは、まあ1カットの後ろの方に多くの絵がある、という認識でいいです。


思い出せば、本田雄は意外と後ヅメっぽいタイミング(動きの終いを多くの絵で描く;一言で言えば、フォロースルー)を重視しているのかも?



2、受け止め吸収→転び
20190902004932

シチュエーションとしても多いんだろうけれど、ウリ坊がくたっとなるところとか、アクセントになっている気がする。



参照例
20190910032356 20190910032334

手すりに覆いかぶさる部分、壁に手をつく部分。動きのスタートよりも終いを枚数多く表現(「東京ゴッドファーザーズ」)
階段から転げ落ちた後の足先のリアクション(「パーフェクト・ブルー」)



20190910032315 20190910032259

両方の脚にそれぞれ重心が完全に乗ってから次の動きへ(「劇場版 NARUTO -ナルト- 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!」)

体勢を崩したナオコを、二郎がぐっと強く抱き上げる(「風立ちぬ」)



──────────────────────────────────────────────────

おっこは、まだまだ甘えたがりで幼かった感じが事故のときにありました。その年相応の雰囲気が、いっぺんしたのは気丈に振る舞っていたからです。ときどきインサートされる、おっこの両親の描写は、亡くなったことを受け止めきれずに、幻を作った、おっこの心です。そうでなければ、おっこは耐えられなかった。車に乗ったら事故を思い出してしまい苦しくなるように。立派な子どもになった、というよりは、気丈に、若女将の仕事に夢中になることによって、亡くなった辛さをどうにかしようとしているように映りました。

だから、最後に同じ境遇の、同じ子ども、が来たのです。ここで、ついに「亡くなったこと」に面と向き合います。旅館にきた最後の男の子はもうひとりのおっこであるので、車に乗らないことや、若おかみの仕事に夢中になることでは、他の場所に逃げることができないのです。そして、自分の境遇を話すことによって、その辛さを消化できた。初めてだれかに自分の胸の内を話すことができた。周りが思いやるがあまりに、おっこは話すことができなかった。誰が悪いという話ではいっさいありません。ただ、いろいろな経験をしないと、ここには至れなかったんだろうなと。


監督・高坂希太郎にとっては、初めての長編映画でしたが、難しいテーマに挑みました。ラストに訪ねてきた客が、事故の加害者であるという部分は必要だったかなと思うとちょっと微妙ですが、そこは結果論でしょう。いい作品でした。次回作にも、とても期待したいです。

『僕のヒーローアカデミア』ヒロアカ3期第1クールノンクレジットOPムービー

20190624211148
原画:高橋しんや

奇抜なポーズの連続が、なぜか繋がって見えてしまう。やわこい間接の運びと重心の動き。それが高橋しんやの魅力らしいが、よくわからないので、これがどうして起きているかを考えていくぞ!


重要なのは、体勢の崩しと、右腕のひねりこみ。

ヒロアカ03-02OP.mp4_snapshot_00.27_[2019.06.24_20.59.42]ヒロアカ03-02OP.mp4_snapshot_00.27_[2019.06.24_20.59.45]

ここで注射器の女の子が体勢を崩すのがいいんですよ。右手を大きく広げて注射器を投げる準備をする。だから、体勢が崩れてしまうし体が沈み込む。



ヒロアカ03-02OP.mp4_snapshot_00.26_[2019.06.24_20.59.41]ヒロアカ03-02OP.mp4_snapshot_00.27_[2019.06.24_20.59.46]

体が沈み込んだ後、内側に右腕をひねりこんで胸を張って、投げる力を蓄える。



ヒロアカ03-02OP.mp4_snapshot_00.27_[2019.06.24_20.59.47]ヒロアカ03-02OP.mp4_snapshot_00.27_[2019.06.24_20.59.48]

そしてスローイング。右腕ひねりこみの力をそのまま、左腕に移す。このような(全体を通して、「力がどのように移動していくのか」という)流れがあるから、奇抜なポーズの連続であっても、やわらかく繋がって見えるのではないか、そう考えました。



スローでもう一度

20190624211202 

とりわけ表情もエロい。ハートマークのショックコマのあたりで、ジト目で見つめられる。その後に、元気いっぱいに口を大きく開けて注射器を投げる。小悪魔的。というか、記事書いているこのあたりで、「あ、この子レフティや!」って気付きました。なんという。



復習として再掲

20190624211148

高橋しんや、うめえなあ。

すごいなあと感嘆していたんですが、あまり触れられていないので取り上げ


20190616214853

腰のあたりに注目。エーリカは大きく腕を振って、その勢いのまま前傾重心で全力ダッシュ。一方で、シャーリーはルッキーニをおんぶしながらなので全力ダッシュせずに、後傾重心でエーリカに追いつくように追走している。着地するたびに、腰で重さをキャッチしている感じ。

2人の走りを書き分けていて芸コマ。服のなびきや髪のリアクションもいいなあ。

田中宏紀はライトなアニメファンにも人気なアニメーターです。人気なのは分かるけれど、彼の本質はずっと理解できていなかった。派手で分かりやすいな~という評価でした。心から恥じ入る気持ち。ストライクウィッチーズを見て、唖然としました。特に、5話と10話は、田中宏紀作画の最高峰とも思います。これは惚れるなと。

彼の作画は、ストパンを見ているか見ていないかでがらっと印象・評価が変わる。田中宏紀においてストパンはきわめて重要度が高いと考えます。

もはや確固たる地位を築いている田中宏紀について、今更ですが書いていこう。



<1、田中宏紀の作画:パターン化>


20190528031246
(5話Bパート-田中01)

ダイナミックに腕を振って、しなやかに走るシャーリーとルッキーニ。なんでこれだけ枚数と1シーンで、女の子がウキウキしながら、元気に海に飛び込もうとするまでの表現ができるのか。

ちょっとスローにしてみよう


20190528031247

シャーリー・ルッキーニともに、腕は体の前で大きく動いてますね。女の子走り。走りに付いてくる髪の毛やおっぱいのリアクションもいいですが、ここは(我慢して)腕だけ見てください。やわらかい動きなのに、じつは単純で2つのパターンを繰り返している。


これ見ると分かる

ストパン05-010ストパン05-011

腕の角度に注目してください。びーんと「直線」に伸びているか、肘から先が曲がって「直角」になっているかの2つなんですよ。これを繰り返して、エネルギッシュな動きを表現している。



カメラ追い越しリーネちゃん(12話-田中02)
20190531071419

腕はあるていど固定しておいて、手首はプルンプルンと



もうひとつの具体例として、みんな大好きおねえちゃんも


クロール・バルクホルン(5話-田中03)
20190528044815

クロールっていうところがいいよね。この時期のバルクホルンの厳格さを表す。
この時期はね・・・

20190528044816

ストパン05-036ストパン05-037

基本となるのは、やはり「直角」と「直線」ですよね。



001田中宏紀-腕・肘角度


直線、直角といえば、金田系(※アクションが決めポーズから決めポーズへと移る作画系統;金田伊功)ですね。田中宏紀は金田系っぽいけど、タイミングとかパースは金田系ほどはっちゃけていない。田中宏紀が金田系フォロワーがどうかは知らないけど、基礎は踏襲しているに違いない。それで、金田系の基礎ってなにかというと、「決めポーズのパターン作り」だと僕は思うんですよね。


・「ハ」の字の形:腕、足
ストパン05-068ハの字-01
(5話-田中04、05)

・「ヘ」の字の形:手首
手首-ク01手首-ク02
(5話-田中06、07)

このように手首を書くことによって、腕全体を退屈にせず柔らかさを出す

推測するに、田中宏紀は、たとえば「走り」については上記のようにパターン化していた。この時期にはすでに完成させていて、後はタイミングとディテールを中心に調整していたのではないかと。現象の映像や実写などから、いろいろなパターン・ストックを作っていった。




20190531071417
(10話-田中08)

ストパン10.mkv_snapshot_19.07_[2019.05.31_07.01.45]ストパン10.mkv_snapshot_19.08_[2019.05.31_07.01.48]

この時期も今もそうですけど、「髪の毛」は彼の最たる特徴の一つですよね。ストパン研究の間に、盾の勇者を見てたんですけど、「あ、今のは田中の髪の毛じゃないかな」って感覚的に分かった。そこで、なんで分かったんだ?と。田中アクションなんて、ほとんど興味なかったのに。

僕らが、田中宏紀の髪の毛に気づける理由は、他のシーンとまったく異なっていたりするのもそうだけど、いちばんは作画の特徴が出ているからですよね。つまり、田中宏紀はすでにこの時期に多くのパターンを持っていて、いっけん縦横無尽な「髪の毛」にも実はパターンがあると思うんですよ(※ストパンだけでは分からなかった。「つ」の形っぽいんだけどな~確信に至れない、また分かれば書くかも)。




<2、パターン化の利点>

パターン・ストック化の利点は2つほどあります。まずは、原画を書くスピードが速くなる。この時期、田中宏紀はガンガン書きまくっていた。元々の手の速さというものもあるでしょうけど、流石にそれで全部片付けるのは少し強引ではないかなと以前から感じていたところで。もうひとつ、こっちの方が重要で、あるていどパターンが決まっていると、他のことに時間を使える。

つまり、レイアウトやタイミングなどに多くの時間を使える。ということは、そのクオリティは他よりも段違いのものになるはず。だから、次のような作画が可能になったのかなと。


サーカスするルッキーニ!(10話-田中09)
20190531071416

ふんだんにカメラを動かすレイアウト。海面から始まり空中に至り、終盤では最初と反対方向まで画面を回す。センスもあるだろうけど、田中宏紀だって最初からこんな画面は思いつかないと思う。


他のアニメーターも(パターン化)してないわけじゃないけど、田中宏紀は確実に多くの引き出しを持っていた。そのおかげで、レイアウトの検討やカメラワーク、タイミングについて、大幅に他の人よりも考えられた。だからこそ、たくさんの仕事をこなせたし、その中においても、クオリティの高い作画ができた。いっけん天才と言われることが多いけれど、実は多くのパターンを彼は持っていて、かつ改善しているからこそ、今もなお最前線で戦えているのではないか。そのように思います。

<参考文献>
・田中宏紀パート?集Ver1.1


記事を書くときにGIF作るのメンドクセーと思っていたので、動画にメモをすることを試みた。まあ、GIFよりメンドクサかったんですけど(※グリッドマンはなんでこんな長いシーン選んだんだろうNE?)。やはり、作画というのは、根拠と論理で述べたいという気持ちが多くあります。無理な論理は、ただのこじつけ・屁理屈だから良くないんですが。早計な結論よりも、考える過程、確実な答えよりも良い間違え、そういったものを大事にしていきたい。

この動画でいうところの「要素」は、2つあり、状況と技術です。どういったシークエンスなのか、なぜこのアクションなのか、どういう感情を抱いているのか、そういったものを表すのが状況であり、それに付随する形で、PAN、中なし、ブレ線、オバケ、ツメ方、構図などの技術があると考えています。

年内も残り少ないですが、
☆野中正幸 整理記事
☆グランクレスト田中宏紀記事
☆佐藤利幸 記事

あたりを作っていければなと。3本中1本は書きたい。

↑このページのトップヘ

©GOMISTATION 2012-2023 All rights reversed